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Business News リシュモン会長、中国市場の低迷に合わせて生産調整を行うライバル時計メーカーを称賛

中国における需要の低迷を受け、リシュモンのスペシャリスト ウォッチメーカーズ部門では売上高と利益のいずれもが減少した。しかしカルティエの親会社である同社は、生産体制の見直しをすでに実施していると明かしている。

カルティエをはじめ、ジャガー・ルクルト、IWC、パネライなど多くのブランドを擁するスイス拠点のラグジュアリー・コングロマリット、リシュモン。同グループを率いるヨハン・ルパート(Johann Rupert)会長は、中国主導の需要減退に対応して一部の時計業界大手が生産量を調整したと述べ、その対応を称賛した。

 ルパート氏は、リシュモンの年次決算発表後のカンファレンスコールで次のように述べている。「大多数のメーカーがそのように対応してくれたことをうれしく思っています。ロレックスやパテック(フィリップ)、AP(オーデマ ピゲ)といった企業も、生産量を見直した。我々はみな、分別ある行動を取ったと言えるでしょう」

Johann Rupert

 南アフリカ出身の富豪であるルパート氏は、昨年9月に行われたリシュモンの年次株主総会において、時計業界全体に対し生産の抑制を訴えた。市場で供給過剰が生じれば値引き販売に繋がり、ブランド価値が損なわれる可能性があると警告したのである。「私はこの業界全体が、市場が求める現実的な需要に合わせて生産すべきだと強く訴えました」と、ルパート氏は金曜日のカンファレンスコールで語った。

 この発言は、リシュモンが発表した通期および四半期の財務結果の直後に行われた。そこでは、カルティエおよびヴァン クリーフ&アーペルを擁するジュエリー部門が予想を上回る好業績を示した一方で、スペシャリスト ウォッチメーカーズ部門は売上および営業利益の大幅な減少に見舞われた。リシュモンの経営陣は、アジア太平洋地域(特に中国)における継続的な需要の低下に対応して、一部の時計ブランドで生産量を引き下げたことを認めた。同地域は、同部門における年間時計売上の44%を占めている。また同社は中国の一部小売業者から在庫を買い戻し、スイスの“短時間労働制度”を活用して、一部製造拠点の労働者を一時的に休業させたと明かした。

 リシュモンによればヴァシュロン・コンスタンタンおよびA. ランゲ&ゾーネは市場平均を上回る実績を上げており、カルティエの時計販売も同様に好調であった。アナリストの推定によれば、カルティエは売上ベースでスイスのトップ5ブランドのひとつに数えられている。

 「一部のメゾンは中国市場への依存度が高く、そのためにより大きな影響を受けています」と、ルパート氏は時計売上の落ち込みについて述べた。

 時計部門の売上は会計年度後半にやや回復を見せ、第4四半期には11%の減少にとどまったものの、通期では前年比13%減の33億ユーロ(日本円で約5360億円)となった。アジア太平洋地域(日本を除く)への売上は27%の減少を記録。一方、他地域では相対的に堅調または安定した推移を示しており、アメリカ大陸では7%、日本では9%の増加が見られた。ヨーロッパへの売上は1%の減少、中東およびアフリカ地域では1%の増加となった。

 経営陣は貴金属価格の高騰、スイスフラン高、中国の一部小売業者からの在庫買い戻しといった要因が、時計部門の利益率を圧迫したと説明。年間営業利益は69%減少し、1億7500万ユーロ(日本円で約284億円)にとどまった。

 リシュモンの通期決算は、ライバルであるスウォッチ グループに続いて発表された。同社は2024年の売上が15%減少し、営業利益も75%減となったと報告している。オメガ、ロンジン、ブレゲなどを代表ブランドに擁するスウォッチも、中国における需要の低迷が業績悪化の主因であると述べている。

 リシュモンの経営陣はスペシャリスト ウォッチメーカーズ部門について、今後は恒常的な部門責任者を置かない方針を確認した。これは同部門の再編の一環であり、前部門責任者であったエマニュエル・ペラン(Emmanuel Perrin)氏が2024年3月にパネライへ異動し、同ブランドのCEOに就任したことを受けたものである。経営陣によれば、今後は各時計ブランドのCEOがそれぞれのブランドの業績、売上、財務に責任を持つ体制となる。

 ペラン氏のパネライへの異動は、スイス本拠のリシュモンにおける一連の経営陣再編の最新事例である。現在の最高経営責任者(CEO)であるニコラ・ボス(Nicolas Bos)氏のもとで進められており、同氏は2024年にヴァン クリーフ&アーペルでの成功を受けてリシュモンのCEOに就任した。彼の在任中、同ジュエリーブランドの売上は3倍以上に拡大している。

 またリシュモン元CEOであるジェローム・ランベール(Jérôme Lambert)氏は、最近ジャガー・ルクルトのトップとして現場に復帰した。その他の人事としては、ヴァシュロン・コンスタンタンの前CEOであるルイ・フェルラ(Louis Ferla)氏がカルティエのトップに就任し、ジャガー・ルクルトの前CEOのカトリーヌ・レニエ(Catherine Rénier)氏がヴァン クリーフのCEOに就任。さらにローラン・ペルヴェス(Laurent Perves)氏がヴァシュロンのCEO職を引き継いでいる。

Vacheron Constantin Overseas Grand Complication Openface

 ルパート氏およびリシュモンのほかの幹部は、米国における消費者マインドの見通しについてコメントを控えた。輸入品への関税を含む米国の通商政策の劇的な変化により、市場および消費者の信頼感が大きく揺らいでいるためである。しかしリシュモン会長であるルパート氏は、関税に関する状況はいずれ明確になると見ていると述べた。「米国は関税を交渉の手段として用いていると私は考えている」と語り、さらに「米国財務省には、世界貿易の完全な停止を望んでいない賢明な人物がいると信じている」と付け加えた。