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Business News スイスがアメリカとの貿易協定で前進。時計業界への関税緩和の可能性が高まる

スコット・ベッセント米財務長官は、スイスが貿易協定締結に向けた最前列に躍り出たと語った。

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スイスとアメリカ両国による建設的な2国間協議の結果、両国における貿易協定締結に向けて大きく前進した。この動きは、関税の影響を受けていたスイスの時計業界にとって、朗報となる可能性がある。アメリカ財務長官スコット・ベッセント(Scott Bessent)氏は月曜日、ジュネーブで記者団に対し、スイスがアメリカとの貿易協定を目指す諸国のなかで先頭集団に躍り出たと述べた。これは週末にスイスで行われた中国との交渉により、一部関税の停止および引き下げが発表されたことを受けての発言である。

 「イギリスとスイスは、アメリカとの貿易協定締結に向けた“優先交渉国”となった。一方で、EU(欧州連合)は対応が遅れている。我々はこうした前向きな姿勢を重視している」と、ベッセント長官はジュネーブのインターコンチネンタル・ホテルで開かれた記者会見で語った。イギリスは先月、トランプ政権による一連の関税発動を受けた15の優遇対象国のなかで、アメリカとの貿易協定について“原則合意”に達した最初の国となった。

swiss watches in a cabinet

 スイスの財務大臣であり、現大統領でもあるカリン・ケラー=ズッター(Karin Keller-Sutter)氏は週末、スコット・ベッセント米財務長官および通商代表のジェイミーソン・グリア(Jamieson Greer)氏との協議を経て、今後2週間以内にアメリカ側に正式な提案を提出する考えを明らかにした。ケラー=ズッター氏は、「まだ合意には至っておらず、楽観視するのは時期尚早だ」と述べつつも、「アメリカが交渉の加速に前向きな姿勢を示していることは、非常に心強い」と、一定の進展に手応えを見せた。

 500億ドル(日本円で約7兆4000億円)規模を誇るスイスの時計産業は、4月2日に発表されたスイス製品への31%関税により大きな打撃を受けた。その後、こうした相互関税は発表から1週間後に90日間の一時停止が決定されたが、包括的な10%の関税は依然として継続しており、関係各国は新たな貿易協定の締結に向けた動きを加速させている。

米通商代表ジェイミーソン・グリア氏(左)、米財務長官スコット・ベッセント(右)。

 アメリカはスイス時計最大の単一輸出先であり、2024年には約44億スイスフラン(日本円で約7700億円、卸売ベースで全体の約17%)にまで増加した。ここ数年、中国市場の減速を背景に、アメリカの購買層は多くの主要ブランドにとって最大の成長ドライバーとなってきた。こうしたなか関税の影響に加え、対米ドルで高騰するスイスフラン、そして過去最高水準に達した金価格への対応としてロレックス、チューダー、オメガ、オーデマ ピゲなど複数のスイス時計ブランドが、アメリカ国内での価格を引き上げた。

 スコット・ベッセント財務長官は月曜日、ジュネーブにて対中貿易協議の開催地としてのスイスの役割と、米国との経済的結びつきの深さを強調した。「我々はこの関係を非常に重視している」とベッセント氏は述べ、スイスが人口900万人の小規模経済でありながら、米国にとって6番目に大きな投資国であることに触れた。さらにベッセント氏は、「米国が製造業分野の再構築を進めるにあたり、スイスの優れた職業訓練制度をぜひ導入してほしい」と語り、スイスから学べることは多いと評価した。

a watchmaker assembling a watch.

 ベッセント財務長官とグリア通商代表は今回の協議で、中国代表団が実質的に続いていた米中間の“貿易封鎖”を終わらせる意志を示したことを高く評価した。両国は合意の一環として、90日間の協議猶予期間を設け、その間に恒久的な貿易協定の成立を目指す。この枠組みのもと、アメリカは中国からの輸入品に対する関税を145%から30%へと大幅に引き下げ、中国側もアメリカ製品への関税を125%から10%へ引き下げる措置を講じた。この発表を受けて市場は即座に反応。株式先物は上昇し、貿易摩擦の緩和を好感したドルがスイスフランなどの“安全資産”通貨に対して上昇する展開となった。

 今回の関税引き下げは、中国で時計の製造を行っているブランドやブレスレットなどのパーツ類を中国から調達しているメーカーにとって、コスト面での大きな追い風となる見込みである。