trophy slideshow-left slideshow-right chevron-right chevron-light chevron-light play play-outline external-arrow pointer hodinkee-shop hodinkee-shop share-arrow share show-more-arrow watch101-hotspot instagram nav dropdown-arrow full-article-view read-more-arrow close close email facebook h image-centric-view newletter-icon pinterest search-light search thumbnail-view twitter view-image checkmark triangle-down chevron-right-circle chevron-right-circle-white lock shop live events conversation watch plus plus-circle camera comments download x heart comment default-watch-avatar overflow check-circle right-white right-black comment-bubble instagram speech-bubble shopping-bag

Introducing A.ランゲ&ゾーネ 1815 ラトラパント・ハニーゴールド 2020年新作

A.ランゲ&ゾーネから、初めてラトラパンテがソロで登場した。

ADVERTISEMENT

ラトラパンテだけに絞り込んだ複雑機構の時計は、A.ランゲ&ゾーネとして本機が始めてだという事実を知り、私は驚いた。「そんなはずはないだろう」と、今あなたの脳みそも、軽く震えたのではないだろうか? だが、この事実は正しい。確かに、この複雑機構はA.ランゲ&ゾーネだけでなく、ランゲ愛好家達にも知れ渡っているムーブメントだ。秒針と分針をスプリットしたダブルスプリットや、フライバック クロノグラフ。更に、秒針・分針・時針を分割した唯一のスプリットセコンド クロノグラフであるトリプルスプリットも以前から発表している。

 加えて、よりレアな、 トゥールボグラフ・パーペチュアル “プール・ル・メリット”ラトラパンテ クロノグラフと、ジャンピングセコンドの5分の1秒フドロワイヤントが搭載された、グランド・コンプリケーションもある最も製造頻度の低いコンプリケーションのカテゴリーにある1本で、私のお気に入りとしてGPHGの賞に推薦したい時計だ)。

 しかし、本当に、ラトラパンテのみの腕時計は今まで無かった。故に、今回発表された1815 ラトラパント・ハニーゴールドは重要なのである。グラスヒュッテから始まったA.ランゲ&ゾーネ創立175周年を記念した、アニバーサリーエディションだ(1845年にフェルディナンド・アドルフ・ランゲが最初の工房を設立した記念)。本機は、Watches & Wonders 上海で発表された新作トリオのうちの1つで、ケース(41.2mm x 12.6mm)には、プラチナよりも硬いといわれる独自の金合金であるハニーゴールドを採用している(この合金に何が含まれているのかは、しばらく知ることは無いだろう。ランゲは、KFCが11種類のハーブやスパイスをブレンドした秘伝のレシピよりも厳重にその秘密を守っているのだから)。

1815 ラトラパント・ハニーゴールド。スタート/ストップは2時位置のプッシャーで行い、4時位置のプッシャーでゼロリセットが可能。10時位置に、スプリットセコンドボタンがある。

 ラトラパンテ クロノグラフは "スプリットセコンド "とも呼ばれている。ハートカムを備えた最初の近代的なスプリット機構は、1838年にヨーゼフ・ウィナールが開発した。伝統的には、パーペチュアルカレンダー、ミニッツリピーターと共に、3つの古典的なハイコンプリケーションの1つとされており、グランド・コンプリケーションの称号を得たい場合は、これら3つを組み込む必要がある。ラトラパンテ クロノグラフは、そのコンプリケーションとしての繊細さと、製造、組み立て、調整段階における職人達の卓越した技術が必要であり、この3部作の1部を構成している。

 さて、ムーブメントについてだが、ラトラパンテ クロノグラフがどのように機能するのか、初めは理解に苦労するかもしれない。我々が、普段慣れ親しんでいる機械式時計と異なるからだ。

 下の図は、ドナルド・デ・カールの著書『複雑時計とその修理』(『Complicated Watches And Their Repair』未訳)より抜粋したものだが、メカニズムがどう機能するかに興味がある場合、役に立つ。図の下部にあるのが、ムーブメントの中心(図の下部)に位置しているスプリットセコンド歯車だ。スプリットセコンド歯車は、ムーブメントを貫通する形で文字盤側にある中空のパイプに取り付けられており、スプリットセコンド秒針はこのパイプにくっついている。パイプの中央には、センタークロノグラフ秒針のためのホゾがある。ホゾと針を司る、センタークロノグラフ秒の歯車は、スプリットセコンドの上に位置していて、それに覆い被さるようにあるのが、ハートカム(G)だ。2つの針がスプリットされていない状態でクロノグラフが作動している場合は、ルビーのローラー(I)が、バネ(J)の圧力を受けて、ハートカムの最下点にあるノッチに座る。これにより、スプリットセコンド針とクロノグラフ秒針が機械的に結合され、スプリットセコンド針とクロノグラフ秒針が共に回転するという仕組みである。

クラッシックなラトラパンテのメカニズム; Donald de Carle, 『Complicated Watches And Their Repair』 より抜粋。

 スプリットセコンド用プッシャーを押すと、コラムホイールが回転し、ハサミ(K)が、バネ(F)の圧力で、スプリットセコンドホイールの上に落ちる。これが、スプリットセコンド針の動きを制御する(スプリットセコンド針を止める)。一方で、クロノグラフの秒針とその歯車、そしてハートカムは回転を続け、回転と共に、ルビーのローラーがハートカムの外周を上下に動く。ハサミが開くと、(スプリットセコンド針が押され、コラムホイールがもう一段階回転することで開く)、バネ(J)の圧力でルビーローラー(I)がハートカムの低い位置まで瞬時に回転し、スプリットセコンド針がメインのクロノグラフ秒針に“追いつく”のだ。

 この機構は非常に軽やかだ。クロノグラフ秒針とスプリットセコンド針は、2つの針が一致した位置に戻ったときに機構にかかる慣性負荷を軽減するために、通常は非常に薄く作られている。2つの針の位置を正確に合わせるのは、調整に手間と時間がかかるからである。また、クラシックなスプリットセコンドクロノグラフには、通常2つのコラムホイールが付いている。1つはクロノグラフの開始、停止、リセットのためのもので、もう一方は、スプリット機構を制御するためのものだ。

Cal.L101.2

 新しいラトラパンテ キャリバーの名は、L101.2だ。多くの点で、古典的なラトラパンテを体現している。注目すべきはラトラパンテ機構そのもので、伝統的な方法で組まれている。上の画像の3時位置には、自社製チラネジテンプ用のテンプ受けが見える。また、ムーブメントの中心には、ラトラパンテのハサミとスプリットセコンド歯車が、それらを制御するコラムホイールと共に確認できる。9時位置に見えるのは、クロノグラフのスタート、ストップ、リセット機能のためのコラムホイールだ。

クロノグラフブリッジとラテラル・クラッチシステム、そしてメインのコラムホイールが確認できる。

 さすがはランゲとあって、ムーブメントの装飾は、細部に至るまで精巧に施されている。スティールパーツには面取りと、筋目仕上げか、ミラーポリッシュの仕上げが施される。ジャーマンシルバーのプレートやブリッジには、19世紀から20世紀のランゲの懐中時計に用いられていた、金メッキのような、美しいグレイン仕上げが施されている。クロノグラフブリッジとテンプ受けには、通常通りのエングレービングが施されているが、今回はそれ自体にブラックロジウム処理が施されており、より良いコントラストを生み出している(逆にそのままのデザインの方が良いかもしれないとも私は今感じている — ありのままの金属にも素晴らしく繊細な美しさがあり、本機ではそれは見られなくなる。だが、実際に見られる機械を待ってから、心を決めるのが無難かと思う)。

ダブルスプリットセコンド。

ADVERTISEMENT

 1815 ラトラパント・ハニーゴールドは、6時位置に秒針、12時位置に30分積算計を備えた、珍しい配置のサブダイヤルとなっている。スプリットセコンド機能を搭載したモデルで、このようなものは今まで無かったと記憶している。ダブルスプリットとトリプルスプリットの両方とも、スモールセコンドと分積算計は文字盤の下側に配置されていたからだ(ダブルスプリットの場合、ダトグラフ・アップ/ダウンのアウトサイズデイトの位置はパワーリザーブ表示、トリプルスプリットの場合はスプリットアワー積算計)。

 私が思うに、この独特のチョイスは、本機に懐中時計のような雰囲気を与えていると思う。従って、懐中時計が好きな者にとって、このデザインは極上のデザートのようなものだろう。

トゥールボグラフ・パーペチュアルに配された、Cal. L133.1。中央にラトラパンテ機構が見える。

1815 ラトラパント:Cal.L101.2のムーブメント側(ケースバック側)。

 ラトラパンテを搭載したトゥールボグラフ・パーペチュアルは、既にランゲのラインアップにあるので、新作と比べてみたら面白いかと思った。2つのムーブメントには、明らかな共通点があるが、大きな違いもある。当たり前だが、トゥールボグラフは、文字盤の6時位置にトゥールビヨンを、そして12時位置にムーンフェイズと永久カレンダーの日付表示を配するスペースが必要だ。従って、このムーブメント(Cal.L133.1)では、30分積算計が9時位置にある。上の画像から、30分積算計用の大きな金色の歯車が、トゥールボグラフCal.L133.1では3時にあり、ラトラパンテCal.L101.2では、12時にあるのが確認できるであろう。ラトラパンテのハサミ、歯車、コラムホイール、ラテラル・クラッチの一般的な配置は、どちらのムーブメントも同様だ。

 最近、真に気に入る時計がなかなか無いのだが、本機はそれになり得る。ランゲ・ウォッチは特に、そのディテールについて永遠にデスカッションができて、そこからランゲの楽しみの半分を(いや、半分以上)引き出せる気がする。

 少なくとも私が今考えられる限りでは、1815 ラトラパント・ハニーゴールドの欠点は非常に少ない。ラトラパンテだけを搭載したクロノグラフというアイデアは非常に魅力的だ思う。同社が今まで作ってきた他のクロノグラフの特徴である、標準的な正三角形の構成から、変化球を投げてきた点が特に気に入っている。

 唯一、何か欠点を挙げるとするとすれば、もしトラディショナルなものになりたいならば、モノプッシャーのラトラパンテの方がより良いかもしれないという点だ。だが、この1815 ラトラパント・ハニーゴールドには、ドイツ的魅力が十二分に詰まっているため、モノプッシャーのようなジュネーブの雰囲気は必要ないともいえる。これもまた、実機を見て初めて心を決められる時計のひとつなのかもしれない。もし、そんな機会が私にあればの話だが。

 A.ランゲ&ゾーネ 1815 ラトラパント・ハニーゴールド"F.A.ランゲへのオマージュ":ケース、41.2mm x 12.6mm、18Kハニーゴールド製、表裏両面サファイア。文字盤はブラックのソリッドシルバー。ムーブメントはCal.L101.2、ラトラパンテ クロノグラフ、30分積算計(32.6mm x 7.4mm) と、58時間パワーリザーブ、36石、2万1600振動/時。プレートとブリッジはフロスト/グレイン仕上げのジャーマンシルバー、クロノグラフのブリッジとテンプ受けには手彫りエングレービングが施されている。世界限定100本。グラスヒュッテの時計製造175周年を記念して、1815 フラッハ・ハニーゴールド、トゥールボグラフ・パーペチュアル・ハニーゴールドと共に発表された。価格は、 1475万円(税抜・予価)。ブティック限定で、発売予定時期 は2020年11月。詳しくは、A.ランゲ&ゾーネ へ。