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Hands-On A.ランゲ&ゾーネ トリプルスプリット

A.ランゲ&ゾーネのラトラパンテは、一見すると控えめだが、裏返してみるとさすがの貫禄だ。

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2018年のSIHH(通称ジュネーブサロン)で最も驚かされたのは、A.ランゲ&ゾーネのブースだ。(「ブース」という言葉は、大手メーカーがバーゼルとSIHHに建造する手の込んだ小空間を表現するには、笑ってしまうぐらい不釣り合いだが)。いくつかのブランドは多少なりとも前年と同じようなデザインを用いており、A.ランゲ&ゾーネも基本的な構造は前年と似たようなものだった。しかし、この展示の中心となっていたのは、この年に発表されたトリプルスプリットの巨大な模型だ。内側のムーブメントはひとつひとつアルミで制作されており、重量は数トン、そして洋銀のメッキ加工が施されていた(実際のランゲのムーブメント同様に、いったん分解して組み直される二度組みが行われており、その理由も同じだ。つまり各部品が正しく組み合って正確に時を刻むことを保証し、最終的に出来上がったものが傷ひとつなく完璧であることを確認するのである)。

A. Lange & Söhne Triple Split

 これはランゲの、トリプルスプリットのデザインが何に重点を置いているかを、意図的に伝えるためだったのかもしれない。プレスリリースでは、トリプルスプリットの表面のデザインに何か特別なところがあるとは書かれていない。これはダトグラフ、1815 クロノグラフ、ついでにいえばダブルスプリットなどと同じように、ちょっと執拗ではあるが、より明確な方向性をもったデザインがなされている。文字盤は品質という観点では完璧だが、奇をてらったり、これ見よがしな独自性を出そうとしていないのは明白だ。

A. Lange & Söhne Triple Split dial side

 もしあなたが既にダブルスプリットに慣れ親しんでいるのであれば、触った感じや装着感という点では、このトリプルスプリットに驚きはないだろう。直径はダブルスプリットと全く同じ43.2mmで、厚みの違いはごくわずかだ。ダブルスプリットが15.3mmなのに対し、トリプルスプリットは15.6mmである。まあ、私はダブルスプリットを普段使いしていないわけだが、そもそもトリプルスプリットが欲しいと思う人は、0.3mmだけ厚みが増したところで、それが原因で購入を断念することはないのではないだろうか。

トリプルスプリットの紹介

トリプルスプリットの全スペックと価格を含む核心に興味をお持ちだろうか。こちらで紹介記事をご覧いただきたい。

 トリプルスプリットにおいて意図されるところは、ダブルスプリットと同義である。堂々として、むしろ重たく、あれこれいわずとも強力に印象的なホワイトゴールド製の時計。ある種確かな記念碑的なものであるが、現在のランゲの複雑なウォッチメイキングの特徴であり、そして過去においてもランゲの主な要素であった、外観をほぼすべて控えめに落ち着かせるという特徴が、この時計にも当てはまる。これは、ある意味時計の機械性を否定するものだ。フランスとスイスの時計製造の中心である以前のパリや現在のジュネーブで、伝統的に極薄こそ魅力とされている感覚とは対象的なのだ。多くのランゲの時計は、とりわけトリプルスプリットにはその外観にマシン感が溢れている。

A. Lange & Söhne Triple Split caseback
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A. Lange & Söhne Triple Split movement closeup

 ムーブメントは、文字盤から受ける印象を裏切らないだけでなく、それ以上だ。全体の印象は伝統的なA.ランゲ&ゾーネであり、ダトグラフやダブルスプリットのムーブメントがガラスの中に閉じ込められた都市である、とよく形容されるが、トリプルスプリットは巨大都市そのものだといえる。ムーブメントの奥行き感は見事で、ブラックポリッシュされたステンレスのパーツは、光を受けてまばゆく輝くのだ。またグラスヒュッテストライプが施されたブリッジは、表面は光を吸収するが、面取りされたエッジは鋭く光を反射する。
 複雑機構は印象的で、この時計の美しさはそれに依るところも大きいが、時計づくりの技術的側面を全く知らなかったとしても、この機構が放つ論理的必然性と、ムーブメントを仕上げる卓越したセンスや細やかな配慮には、賞賛の気持ちが湧き上がってくるだろう。機械の美しさに全く興味がない人でさえ、サクソニア・フラッハ 37mmのようなシンプルな時計であっても、ランゲの魅力にはあらがい難く、トリプルスプリットともなればなおさらである。

A. Lange & Söhne Triple Split wrist shot

 トリプルスプリットを装着してみると、人間工学だけでは時計の良し悪しを測れないということを思い知らされる。たまにしか着けられる機会がないにしろ、どの程度、この強力な時計学的火力を楽しみたいかという問題なのだ。

 「ステートメントウォッチ」という表現はどんな時計にもあてはまると言える。グルーベル・フォルセイ GMTはステートメントウォッチだが、イエローゴールドのロレックス デイデイトだってそうだし、その意味では状況が揃えば(例えばSIHHの会場で着用していれば)アップルウォッチもステートメントウォッチだといえる。自分が心地いいと思うステートメントを好きなように掲げればいいのだ。
 トリプルスプリットはランゲが過去に作ったどの時計よりも明確なステートメントウォッチだが、それはある意味で、A.ランゲ&ゾーネの時計づくりが非常に尊敬される理由の根源に限りなく近く、真の時計好きであれば誰でも喜んで掲げたい願うステートメントだと、私は思っている。

トリプルスプリットについての詳細はA.ランゲ&ゾーネの公式サイトへ。