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October 29, 2020
October 29, 2020
Hands-On A.ランゲ&ゾーネ ツァイトヴェルク・デイト

Hands-On A.ランゲ&ゾーネ ツァイトヴェルク・デイト

日付表示のほか、一見目につかない様々な新機能を備えたツァイトヴェルク・デイト。

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2009年に初めて発表されたツァイトヴェルクは、A.ランゲ&ゾーネにとってまだまだ若いコレクションだが、既にブランドアイデンティティの中核を占めている。独立時計師ヴィアネイ・ハルターがハリー・ウィンストンとのコラボで誕生したオーパス3や、IWCのパルウェーバー(懐中時計と腕時計の両方)、そしてF.P.ジュルヌのヴァガボンダージュⅡとⅢといった時計と同じく、ツァイトヴェルクも小サイズでありながら、ジャンピングアワー(これだけでもかなり複雑な機構だ)に加えジャンピングミニッツカウンターを備えている。

同コレクションはランゲのハイエンド プラットフォームとして、ミニッツリピーターをはじめ多くの複雑機構が搭載されてきた。また、仕上げ装飾の面でも、ハンドヴェルクスクンスト仕上げが施されたモデルもある。最新作は一見、それまでのハイコンプリケーションに比べればシンプルな出来栄えとなっている。デイト表示は見て日付が分かればいいのだ、という人もいるかもしれないが、高い水準を誇るツァイトヴェルクのようなコレクション、いや、全体の基準と比べても、少々退屈な印象を持たれてしまうかもしれない。しかしこの新作は、単に機能をシンプルにまとめあげただけのものではなく、いくつかの優れた新機能を秘めているのだ。

最初にツァイトヴェルク・デイトというモデルを耳にしたときは、(多くの人がそうであるように)おそらく日付のジャンピング・デジタル表示を備えているのだろうな、と考えた。もしかしたらそれは、ランゲ1にあるような大きな日付のデジタル表示を、ツァイトヴェルクに加えたものなのかもしれない、と。しかしその代わりに我々が目にしたのは、文字盤の円周に設えられた、艶消し加工が施されたガラス製の、慎ましやかな日付リングだった。現在の日付は赤で表示されるようになっており、この赤色はツァイトヴェルク・ハンドヴェルクスクンストのパワーリザーブ計と同色で、そこに使用されて以来初めて文字盤に加えられた色である(ストライキング・タイムの文字盤受けのゴールドや、デシマル ストライク ハニーゴールドのモデルを除けばの話だが)。2つの赤い輝きは、まるでたそがれ時の松林を染める緋色のようであり、この華やぎが見る人に親しみを与える。もしこれを欠いていたのなら、このモデルはモノクロで単調な印象を与えていただろう。

ツァイトヴェルク・デイトには、日付機能に加え、ケースに2つのプッシャーを備えている。8時位置にあるのは日付調整、4時位置にあるのは時間調整用だ。分表示はリューズで調整することができる。このデザインの優れたところは、プッシャーを完全に押し込んでから離すことで初めて、日付と時刻の変更が可能になるということだ。最後まで押し込んでから力を緩めると、スイッチ機構が作動するようになっている。

この機能には2つの利点がある。1つ目は、誤って日付や時間を進めてしまうことがなくなるということ、そして、時間を合わせるために分表示を一つひとつ進めるという、うんざりするような作業をしなくても良いということだ(部品への負担も軽減される)。

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ランゲは期待を裏切らない。時が進むにつれ、切り替わる時刻表示はとてもスマートで素早い。日付表示に関してもそうだ。以前のモデルのほとんどは写真でしか見たことがないが、ツァイトヴェルクなら、注目すべきポイントはもちろん表示が切り替わる動作である。日付も含めたすべての表示が深夜、微かな機械音を伴って切り替わる瞬間を眺めるのは楽しいものだ。

全ての動作が極めてスムーズに起こるため、一連のメカニズムを確実に、そしてスムーズに動かすことがいかに難しいかということを、我々は忘れてしまいがちだ。日付の数字が印字された歯車は両手の力よりもはるかに強い慣性で動いている上に、 テンプ振幅を損なわないまま、表示を切り替えるための動力を伝える。つまりは正確さと精度こそが問題なのだが、ランゲはそれを、ルモントワール機構を用いて解決してみせた。通常、主ゼンマイの力をそのままエスケープメントに伝えると、ゼンマイが緩くなるにつれ、力の変化が大きくなる。この現象を防止するためランゲはルモントワール機構を用いた。 (ルモントワールとは、テンプに恒常的な動力を送り続けるため、主ゼンマイの動力を用いて歯車列上の他のゼンマイを巻き上げることだ) これは、第3歯車に繋がっているもうひとつの小さい補助ゼンマイに1分間に一度、頻繫に巻き上げる一定のトルクを供給し、分、時、日付表示を切り替えるスイッチと動力源としての機能を果たしている。 

ツァイトヴェルク・デイトのルモントワール機構は、オリジナルのモデルとおおよそ同じ位置に取り付けられているが、その構成が異なっている。オリジナルのツァイトヴェルクでは、36時間のパワーリザーブを持つと共に、ブリッジの末端が主ゼンマイ香箱に向かって約45°のカーブを描いていた(主ゼンマイ香箱には、ゼンマイを巻き上げられないほど蓄えられた動力が低下した場合、時計が動作しなくなるように、ルモントワールにマルタ十字型のストップ機構が備えられている)。

2009年に発表された最初のツァイトヴェルクに実装したルモントワール機構(キャリバーL043.1) 。

ツァイトヴェルク・デイトに搭載したキャリバーL043.8。

今回の新作においては、ルモントワールのブリッジはとてもエレガントな直線的ラインに設計されており、横に伸びる部分もオリジナルのムーブメントのような、装飾的な錨のような形状に見えない。マルタ十字型のストップ機構も主ゼンマイ香箱から取り除かれており全体の見栄えはクリアに、整ったものとなった。従来のランゲのキャリバーと比べて、よりシンプルな外観からは、よりモダンで、より実用的な雰囲気が感じられる。

旧作の美学と新作の美学。そのどちらを好むかは、ランゲのムーブメントデザインに漂う、微かではあるが意図された華やかさと古風さを、あなたがどう感じるかによるだろう。過去10年でランゲのムーブメントデザインの哲学がどのように進化してきたのかを物語る興味深い例は、ランゲ 1である。ランゲ 1のムーブメントのレイアウトは、2015年に大幅に刷新された。ムーブメントの大部分が工学的に見直された結果、はるかに整ったデザインとなったのだ。 

しかし私の中に潜む理屈を超えたノスタルジーは、オリジナルランゲ 1の魅力の一部であったドイツ人風の一徹なこだわり、その微かな空気感が失われてしまったことを寂しがった。確かに、新しいツァイトヴェルクのレイアウトが持つ明瞭さと整った配置はそれ自体がいたって素晴らしいものだ。しかしその一方で旧型には、新型がより整ったデザインによって犠牲にしてしまったバロック風の魅力が確かに備わっている(私はダトグラフの旧作と新作についても同じような実感を抱いている) 。

ツァイトヴェルクは鑑賞するときでも着用する場合でも、全体のデザインや工学的設計においてランゲらしさ満点である。たとえ最もシンプルなモデルでも、ランゲの時計には「重み」がある。その重みは質量のことではなく、メカニズムの機能美を積み重ねてできた、ランゲの美学そのものだ。機械式時計を所有する最大の、あるいはそれなりに期待される潜在的な喜びのひとつは、機械を操作しているという物理的な感覚である。ケース、ムーブメントのデザイン、そしてランゲの時計を使ってみるとよく分かることだが、その機構上のすべての動作が、ユーザーに最適な使用感を与え、かつ感覚的な満足を供するよう、極めて丁寧に考え抜かれ作られている。こういった一つひとつすべてが合わさり、歯車と歯車が協働してひとつの機械を動かしているような、ランゲの時計ならではの動作感覚があるのだ。

ランゲが時折なされる批判のひとつに、その時計のあまりに実直なデザインが鈍臭く見える、というものがある。このレベルの時計に関しては、どんな事柄についてもいえることだが、ある程度その人個人の嗜好の問題である(ある人は質素なものを嫌い、別の人はシンプルなものを好む)。しかしツァイトヴェルクの持つバランス感覚は素晴らしい。それは、我々がランゲの時計作りを愛する重要な要素である。ほとんど強迫的なまでの真面目さを備えていると同時に、それとは対極的に、表示自体の移り変わりを見て喜ぶような、ほとんど間抜けといってもいいぐらい、まるで子供じみた喜びを喚起させる要素も併せ持っている。この時計を楽しむ最高の方法は、深夜に日付リングが時間と共に変わるその瞬間を眺めることである。4つの表示が同時に変わるのを眺める楽しみに加えて、夜更かしのスリルを感じることができるだろう。

 ツァイトヴェルク・デイトの価格は987万円(税抜)、WGケース。詳細な仕様については、A.ランゲ&ゾーネの公式サイトへ。