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Hands-On バルチック HMSとバイコンパックスを実機レビュー

限定ではなくなり、さらにサーモンダイヤルもなくなった。

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以前にも言ったが、もう一度言おう。今年は多くのブランドが過去の既存モデルのダイヤルをリニューアルする「ダイヤル交換の年」だ。だが、バルチックは、今年発表したばかりの2つのモデルのダイヤルに新たなバリエーションを加えることを発表した。それは、新ダイヤルの年として新記録となるかもしれない(ただ、その元となっったモデルは、3月にリリースされたWorn&Woundとのコラボレーションウォッチで、少量生産のHMSとバイコンパックスのサーモンダイヤルの限定版だったことを思えば、筋が通っている)。

 バルチックは9月に、HMSとバイコンパックスを(再び)発表した。このモデルは、基本的には限定デザインの通常生産コレクションだが、今回はダイヤルのカラーバリエーションが豊富になった。ダイヤルカラーは、ゴールドのアクセントが効いたブルー、ブラックかブルーのアクセントが効いたシルバー、ホワイトのアクセントが効いたブラックの3種類から選択でき、ストラップも選ぶことができる。バルチックは、 "ヴィンテージにインスパイアされた "ブランドとして有名だが、これらのダイヤルは間違いなくそれに当てはまっている。

 限定だったサーモンカラーのダイヤルはもう無いが(各モデル100本のみだった)、今回のモデルは同様に興味深く、より多くの選択肢を提供している。新しいダイヤルのバリエーションは、限定モデルで重要な要素であったテクスチャーと素材の融合を含むセクターダイヤルの美しさを維持している。コレクションを構成するのは、HMS(時間のみ)とバイコンパックス(クロノグラフ)の2つのモデルで、それぞれ統一されたダイヤルデザインを採用。HMS、バイコンパックスともにヴィンテージ感あふれる39mmのサイズで、とても装着感が良い。特にバイコンパックスは優れていると思う。

 まず、通常生産モデルに引き継がれたダイヤルの特徴をいくつか見てみよう。セクターダイヤルは、おそらくこの時計の美しさを最もよく表すデザインだ。ダイヤルの各セクターを仕切っている同心円は、単なる線だけでなくテクスチャーの違いと色によっても分けられている。ダイヤル中央の一番内側の円はサンドブラストのようなテクスチャーであるのに対し、アラビア数字を含む部分はサンレイメタリックのような仕上げだ。外側の円とミニッツトラックの部分を見ると、再びテクスチャーを感じる。光の当たり方によってもさまざまな様相を呈す。多くのセクターダイヤルの時計で、各パートの色の違い(または少なくとも単一色の濃淡)が見られるが、本機では違いをテクスチャーだけで表現できている。それぞれのダイヤルにおける各パートは、同じ色、同じ濃淡でありながら、素材の違いを活用してバリエーションを生み出している。

 両モデルは、セクターのモチーフと共に、ダイヤルの中央に十字線を配している。これは、クロノグラフ針が十字線の垂直方向のラインを隠してしまうバイコンパックス よりも、HMSの方がはるかに分かりやすい。そのため、 バイコンパックスではスモールセコンドのサブダイヤルにも十字線を配している(メインダイヤル内に2つのインダイヤルがあるため、 バイコンパックスと名付けられている)。このことはバイコンパックスのセクターダイヤルを面白いものにしていてるし、「ダブル・クロスヘアー(二重の十字線)」という呼び名がアメリカンフットボールのパスルートのように聞こえたとしても、これは限定版のバージョンには存在しないものなのだ。

 アラビア数字のデザインが維持されているのは嬉しい。サーモンダイヤルの限定版の記事でも触れたが、私がこのシリーズで最も好きな部分であり、最初のモデルから改良された部分だと思っている。ここで使用されている書体は、完全にオリジナルであると同時に、ヴィンテージ感もあるように見える。特に3と9が反転しているところが気に入っている。

 これらのデザイン要素自体は新しいものでないにしても、間近で細かな部分までよく見れたことは、手首に装着してみたことと同じくらい良い経験だった。しかし、最終的には、このモデルの大きな魅力は新しいダイヤルの色だと気づいた。

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 まず、ブルーのダイヤルから。これはバイコンパックスにもあるが、私はHMSモデルで試した。ネイビーのようでもっと濃い、リッチなブルーだ。ブルーのダイヤルと、数字、ロゴ、そして基本的にダイヤル上の全てのマーカーにおける暖かみのあるゴールドとの組み合わせは、この時計に格別な特別感を与える。ゴールドのダイヤルは確かにヴィンテージウォッチを連想させるが、ブルーダイヤルは違う。この2つの要素をミックスさせることで、ヴィンテージ感とモダンな印象を同時に感じることができる。針のゴールドには全体をまとめる効果がある。直射日光の当たる場所ではダイヤルのテクスチャー部分が独特に光を取り込み、その細かな粒子状の模様まで見ることができる。

 ブラックダイヤルは、今回のモデルにおいて大化けし、ヒットを予感させる存在だ。グリーンのストラップで試したが、普段時計との色合わせにはあまり興味がない私でも非常に面白い組み合わせだと思った。多くの人がブラックダイヤルは退屈だと言うが、退屈は長続きの別の言い方でもある。我々に愛され、よく知られているアイコニックな時計の多くが、ブラックダイヤルに白のアクセントなのには理由があるのだ。私はこの時計をアイコニックなデザインと呼ぶわけではないが、カラフルで明るいダイヤルのオプションと並んでも、このブラックは異彩を放っている。特にグリーンのストラップとの組み合わせは良い。

 最後に、シルバーダイヤルのバリエーションだ。私にとってこの色は、イデオロギー的にはサーモンダイヤルの限定版に最も近い色だ。なぜか、セクターダイヤル上のシルバーカラーは、サーモンカラーのダイヤルと同じような効果というか、同じような気持ちを私にもたらすのだ。それがどこに顕著に表れているかというと、ダイヤルのアラビア数字部分だろうか。ブラックやブルーとは異なり、シルバーはよりメタリックな外観だ。このメタリックな光沢と、内側と外側のダイヤルにおける質感のコントラストが際立って見える。私はこのバリエーションをHMSとバイコンパックスの両方で試したが、それができてよかったと思う。 バイコンパックスでは、シルバーダイヤルにブラックのアクセントで、それはHMSも同様だ。ただ、1つの重要な違いは、後者の時・分針はブルーということだ。このブルーは素敵な追加要素であり、 バイコンパックスにはないカラーアクセントだ。

 サーモンカラーの限定版とこれらの時計のムーブメントは同じである:ミヨタのCal.821A自動巻きムーブメントがHMS用、シーガルのCal.ST1901(バルチックによってテストされ認定されている)の手巻きクロノグラフムーブメントがバイコンパックス用だ。ムーブメントについて文句を言う前に、それがこのブランドの価格を維持するための重要な要素の1つであることを理解して欲しい。これらのモデルを "ヴィンテージにインスパイアされた "ものにするのは、バルチックが明確に表現した美しいディテール(すなわち、アクリルガラス、リーフ針、ラグホール)によるところが大きく、ムーブメントに関しては高級とは言えないまでも、与えられた仕事をきちんとする時計なのだ。バルチックが提供する全てのモデルにおける標準的な仕様で、これらのムーブメントはスティールのソリッドケースに格納されている。HMSとバイコンパックス共に、裏蓋にはバルチックの刻印があり、エッジ部分にはムーブメント名が刻印されている。そこには防水性能などの重要な情報も記載されている。

HMSのケースバック。ミヨタのムーブメントを搭載。

バイコンパックスのケースバック。シーガルのムーブメント搭載。

 ダイヤル交換の年に、バルチックは確かにそれを実践した。HMSとバイコンパックスの通常版は、コレクションにカラフルなバージョンを加えた。あなたがサーモンダイヤルの100本の限定版を買いそびれていたなら、今回の新しいバージョンは手に入ること以上のものを与えてくれるだろう。前述したように、2つのモデルは3色、つまり全部で6通りで展開されている。 どちらのモデルも驚くほど手頃な10万円以下で、HMSは4万7000円(税抜)、 バイコンパックスは7万5000円(税抜)という価格だ。サーモン(ダイヤル)は売り切れたが、バルチックという海には他の魚がいることは確かである。

バルチック HMSとバイコンパックスは、直径39mm、厚さ12mm、ラグ幅20mm。HMSはミヨタのCal.821A自動巻きムーブメントを搭載。バイコンパックスは、シーガルのCal.ST1901手巻きクロノグラフを搭載。カラーが選べるレザーストラップ、ドリル加工されたラグホール、アクリルクリスタルの風防。ダイヤルカラーは、ゴールドアクセントのブルー、ホワイトアクセントのブラック、ブラック(HMSではブルー)アクセントのシルバーの3色から選べる。いずれもH°M'S WatchStore 表参道で購入可能。価格は、HMSが4万7000円(税別)、 バイコンパックスが7万5000円(税別)。詳しくはこちらへ。

Photos:カシア・ミルトン