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In-Depth ゼニスがデファイ エクストリームで未来を切り開く

輪列が2倍になれば、楽しさも2倍になる。


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告白しよう。 私は1970年代から80年代半ばに生み出されたファンキーでがっしりとしたスポーツウォッチが本当に心から大好きだ。ヴィンテージチームのサオリ(Saori)、リッチ(Rich)、ショーン(Sean)には新品同様に状態がいいホイヤーのケンタッキーが出てこないか常に見張っていてほしいとお願いしている。スピードマスター マークⅡも同様だ。しかし、私が本当に彼らを煩わせているのは1970年代のラダーブレスレットをそなえたゼニス デファイについてだ。

A wrist shot of a vintage Zenith Defy

 以前ショップに入荷したときにつけたことがあったが、最近ジュネーブ・オークション・ウィークのためにスイスを訪れ、ル・ロックルにあるゼニスのマニュファクチュールを訪問した際、ゼニスの製品開発責任者兼ヘリテージ・ディレクターのローマン・マリエッタ(Romain Marietta)氏が所有するほぼまったく同じ時計を手に取ることができた。

 ゼニス デファイはラグジュアリースポーツウォッチというジャンルの発展に数年先駆けて、1969年に独特なデザインを持つ無骨な時計コレクションとして誕生した。八角形のトノーケースに14角形のベゼル、そしてゲイ・フレアー社のラダーブレスレットを備えており、人を夢中にさせるのに十分なものだった。ル・ロックルでは、ハイテクを駆使した最新のデファイとヴィンテージの先代モデルを比較できたことで経験がより深まった。

A wrist shot of the Zenith Defy Extreme.

 ゼニスは親切にも2021年新作のデファイ エクストリームのサンプルを私に貸し出してくれた。これはゼニスの現代的なフラッグシップモデルであるデファイ 21の大胆な拡張版だ。この時計を初めて見たときには、21世紀の先進的な時計デザインをボトルに封じ込めようとする野心的な試みとして簡単に退けてしまうかもしれない。硬質なへりと角に満ちたマット仕上げのケースを見ればその通りだが、ケースデザインに1970年代初期に作られたオリジナルのゼニス デファイシリーズの特徴が深く関わっていることも事実だ。この新しいデファイは21世紀の時計づくりのハイテク化に対するゼニスの回答であると同時に、このスイス企業が忘れ去られた歴史をついに表現する手段でもある。

 私はスイス滞在中にゼニスのCEOジュリアン・トルナーレ(JulienTornare)氏と歓談し、デファイがどのように現在のブランドの目標と合致するか、とりわけクロノマスター スポーツ や クロノマスター オリジナルのようなアイテムが今年のあらゆる賞や見出しをさらった状況についてたずねた。

 「デファイは私たちのクロノメトリーのノウハウとクロノグラフの熟練した技術を21世紀に持ち込むものです。デファイは現在と未来のもの。クロノマスターは過去と現在のものです。私にとってデファイとは、ブランドを牽引する機関車なのです」


時を刻む機構

このデファイを特別とするポイントは、中のムーブメントと複雑に結びついている。エル・プリメロ Cal.9004は経過時間を100分の1秒まで計測できる時計史上でも数少ないクロノグラフムーブメントのひとつだ。ゼニスは中央に1秒ごとにダイヤルを超高速で1周するクロノグラフ秒針を配することでこの性能を実現した。タグ・ホイヤー、F.P.ジュルヌ、モンブランなど過去に同様の速度を実現したブランドがいくつかあるが、5万ドル(約570万円)をはるかに下回る価格の量産型時計に、この技術を最も早く搭載した会社のひとつがゼニスである。

A macro shot of the upper half of the dial of the Zenith Defy Extreme

 Cal.9004はオリジナルのエル・プリメロの構造を基本としているが、36万振動/時(50Hz)で動く高振動脱進機を備えた第2の輪列とふたつ目のゼンマイを収めた香箱が組み込まれている。5Hz、つまり3万6000振動/時で動作する従来のエル・プリメロと同様の通常の計時機構があり、さらにムーブメントにはストップウォッチ専用の第2のパートがあり、これは基本の計時機構のエネルギーが流出しないように隔離されている。両者は同じ地板上に統合されてはいるが、2つの独立した機構をつなげるクラッチはない。そのため、クロノグラフを動かしても基本の時刻表示に関して計時の狂いや振幅のロスは一切起こらないのだ。

 このことを最も明確に示しているのが、各々の調速機構が別々のパワーリザーブを持つという事実だ。通常の時・分表示はスタンダードなエル・プリメロ同様の50時間パワーリザーブがあり、クロノグラフのほうは50分間動かす分しかない。デファイ エクストリームに経過時間を示すインダイヤルがないことにお気づきだろうか。これがその理由だ。

A caseback shot of the Zenith Defy Extreme
A macro shot of the Zenith Defy Extreme movement
A macro shot showing the balance of the Zenith Defy Extreme movement

 ゼンマイを収める2つの香箱は互いに独立していて、別々に巻き上げるようになっている。通常の計時機構はローターによって、もしくはリューズを反時計回りに回すことで巻き上がるが、クロノグラフはリューズを手作業で時計回りに回して巻き上げるしかない。およそ50回巻くとクロノグラフのパワーリザーブが満タンになる。そしてクロノグラフの動作時間を確認できるように12時位置にはパワーリザーブインジケーターがある。

 デファイ エクストリームのムーブメントをかなり重視したゼニスは、色付きサファイアクリスタルをそなえた部分的にオープンなダイヤルを用いている。8時の位置には時刻表示のためのテンプが見えており、その主ゼンマイを収めた香箱は12時付近にある。分離されたクロノグラフ用のテンプはサファイアクリスタルのシースルーバックから見ることができる。クロノグラフを使用する際にはこれが驚異的な36万振動/時(50Hz!)で動き、あまりの速さのために動いていることはほとんど認識できない(オープンワークを用いたゼニスの時計で私が気に入っているディテールのひとつに、星の形をしたシリコン製ガンギ車がある)。

A macro shot of the lower half of the Zenith Defy Extreme dial

 デファイ エクストリームは100分の1秒まで計測可能であるため、ゼニスはそれを確実に読み取れるようにした。ダイヤル外周上のチャプターリングには1から100までの目盛りがある。そして3つのインダイヤルがあり、3時位置にはクロノグラフの30分積算計、6時位置にクロノグラフの秒カウンター、そして9時位置は時刻表示のスモールセコンドとなっている。通常のエル・プリメロ 400やエル・プリメロ 3600とは異なり、日付ウィンドウはない。

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重要である理由

ゼニスは今も昔も最も知的好奇心を満足させてくれる時計会社だと常々思ってきた。そして、そのネーミングの傾向はマウンテンデュー(Mountain Dew)のマーケティング部の甘ったるいもやのなかで生まれたかのようではあるが、デファイ エクストリームをつけていると私の意見は正しいと確認できる。

A macro shot of the clasp on the titanium bracelet the Zenith Defy Extreme

 ゼニスは自社製の機械式ムーブメントのみを使用する数少ない大手時計メーカーのひとつだ。現在生産されているのムーブメントは他社からの供給を一切受けていない。これは本当に希なことだ。ラグジュアリーブランドでありながら、ゼニスは手の届きやすさにも特別に気を配って事業展開をしている。ゼニスが100分の1秒まで計測できる機能を5万ドル以下の量産時計に搭載した最初の会社のひとつだということにはすでに言及した。しかしそこにどれほど の、あえて言わせてもらえば、“エクストリーム”な差があるかには触れなかった。モンブランのタイムウォーカー クロノグラフは2014年に6万7000ドル(約760万円)で、タグ・ホイヤーの初代マイクログラフ(デファイと同じ技術を用いている)は2011年に5万ドル(約570万円)、そしてF.P.ジュルヌのサンティグラフの価格はまちまちだが、常に4万5000ドル(約510万円)を超えている。デファイ エクストリームは? 1万8000ドル(日本では税込211万9700円)だ。もしあなたが内部の技術的長所の真価を認めるとすれば、デファイは感動に値する価値提案のひとつだ。

A wrist shot of a man wearing a Zenith Defy Extreme and holding a sandwich in his hand.

 結局のところ、デファイ エクストリームは45mm×15.4mmという大きなプラットフォームとしてゼニスの技術力を誇示する役割を果たしているのだ。我々はA.ランゲ&ゾーネを眺めてダブルスプリットやトリプルスプリットにおける高度な技術的達成に羨望の眼差しを向けるのと同じように、ゼニスのエル・プリメロ 3600やエル・プリメロ 21の高度な技術的達成を眺めるべきだろう。

A macro shot of the chronograph pushers and crown of the Zenith Defy Extreme

 このサイズを知り、うーんと不満の声をもらす人がいるかもしれない。しかし、もしデファイ エクストリームと同じ空間に居合わせることがあったら、ぜひ試してみてほしい。そうすればサイズと重さの組み合わせによるほかにはないつけ心地を実感できるだろう。腕に巻いたときに存在感がしっかりとあるが、重荷になったり過度に目立ったりはしない。私はこの時計を着用しブレザーを着てGPHGに行き、さまざまなドレスシャツを着ていろいろなオークションに出席するために何日かジュネーブを駆けずり回った際にもつけていた。そしてこの時計を腕につけているのを見事に忘れていたことが何度もあった。

 また、機会があればいつも集まったコレクターや記者たちにこの時計を見せびらかした。するとどうだろう? 人々はクールだと思ったようだ。なぜなら正真正銘、クールなものだからだ。ヴィンテージのロンジンを着用したジョン・ゴールドバーガー(John Goldberger)氏もその1人で、彼はうなずいて私に賛同の意を示してくれた。

A lifestyle image of a vintage Zenith Defy.

 数人からデファイ エクストリームはゼニスが一体型ブレスレットの流行に乗ったことを示しているという意見を聞いた。また、同じLVMHの時計製造部門に属するゼニスより歴史が浅く、にもかかわらずより成功しているウブロの派手さによる過度な影響がにじみ出ているという意見もあった。だが、私はそうは思わない。自分の意見が正しいことを証明するため、皆さんに紹介したのと同じヴィンテージのデファイの写真を見せた。

 ゼニスはずっとそこにあり、同じことを続けてきたのだ。

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オン・ザ・リスト

デファイ エクストリームについて最も驚いたことは以前のデファイ 21に比べてはるかに楽しめたことだ。確かに大きく、それほどカラフルではないが(この点でデファイ 21は本当に良かったと思う。私はウルトラヴァイオレットが大好きだ)、私が手にしたサンプルのマイクロブラスト加工がほどこされたチタンはとても洗練されていて、マットなガンメタルの美しさも魅力的だった。また、この時計は実物を見るとプレス写真で最初に見たときよりもはるかに落ち着いた印象をもたらしている。

A wristshot of a man wearing a Zenith Defy 21 Ultraviolet in a purple jacket.

ゼニス デファイ 21 ウルトラヴァイオレットはとびきりクールだが、デファイ エクストリームとはまるで違う。

 つけてみると見た目は整然としており、シャープな角が多く、面がすっきりとしていて、その彫刻的なフォルムはブルガリのオクト フィニッシモの建築的でスリムなシルエットに心得顔で気取って笑いかける。同じチタン製の3リンクブレスレットも新しいもので、力強いラインと一体感のある外観がたちまち私の注意を引きつけた。ほかの多くの一体型ブレスレットとは異なり、デファイ エクストリームは独自の工具が不要な機構を採用しているため、付属するテクスチャードラバーストラップとベルクロストラップへの交換が手軽にできる。私はラバーストラップを好まないという最近の言葉に反して、この時計を主にラバーストラップでつけていた。人生は矛盾に満ちているのだ。仕方がない。

A close look at the patented Zenith easy adjustment strap-changing system on the Zenith Defy Extreme.

ゼニス デファイ エクストリームの特許を取得したゼニス イージーアジャストメントストラップチェンジシステムをクローズアップ。

 デファイはヴィンテージファンにも流行を追い求めるハイテク好きにも同じように魅力的に映ることが想像できるレアな時計だ。フル装備のG-SHOCKと同じような魅力をそなえている、それもとびきり最高の形で。それはあなたに冒険気分をもたらしてくれるのだ(それに最初に気づいた私のルームメイトには脱帽する)。

A macro shot of the titanium bracelet on the A close look at the patented Zenith easy adjustment strap-changing system on the Zenith Defy Extreme.

 デファイ エクストリームは大きく大胆で、とても機能的な時計であり、サイズは大きいのに非常に着けやすい。ヴィンテージウォッチでいっぱいのコレクションの隣にもふさわしいと思えるタイプの時計だ。中央の針が1秒に1周するのを見られるクールさだけで仲間入りを果たすだろう。いやはや意外や意外、人間というのは速いものが好きなのだ。


次にくるのは?

ル・ロックルにあるマニュファクチュールを訪問、トルナーレ氏と話し、デファイ エクストリームをつけてスイス中を周ってみた経験から私が得た最も大きな収穫は、ゼニスが何か新しいことに挑戦しようとするとても数少ない時計会社のひとつだとわかったことだ。確かに、トルナーレ氏やゼニスは来る日も来る日もクロノマスターを販売することもできるが、それで新たな客層を引きつけられるかというとそうではない。

 トルナーレ氏は今年何度もゼニスが売上高でスイスの時計会社のトップ10に入れると信じていると私に語った。簡単な目標ではないが、それを達成する唯一の方法は既存のコレクターたちと対話しつつも新たなコレクターたちと新たな対話を始めることなのだ。

 ゼニスは代表的なエル・プリメロ ムーブメントを進化させ続けていることについて十分な評価を得ていない。とはいえ、私はエル・プリメロをデファイシリーズの文脈で語ることさえ躊躇する。100分の1秒計測機能はいずれより大きくより大胆なコレクション専用に残ることになると思われ、一方クロノマスターにはクロノマスター スポーツ、クロノマスター オリジナルに見られるように新たな10分の1秒ムーブメントであるエル・プリメロ Cal.3600が搭載されるからだ。

 「私たちは時間計測と精度の世界にいます」とトルナーレ氏は言う。「私たちはその限界を打破し続けなければならず、それは簡単なことではありません。というのも技術的に今後どれだけの向上が見込めるでしょう? 物理学には越えられない限界もあります」

A soldier image of the Zenith Defy Extreme.

 デファイシリーズはどこにも行かない。2年前に50周年を迎えたという点ではエル・プリメロと同様だが、祝福のファンファーレはかなり少なかった。

 エル・プリメロはこの半世紀の間ゼニスを支えてきたが、トルナーレ氏のビジョンに耳を傾けるなら、ゼニスを新たな高みに導くのはデファイ エクストリームのような時計だろう。

Images by Tiffany Wade. 

詳細は、ゼニス公式サイトへ。

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