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Hands-On アクアスター ディープスターⅡで仮想の海を旅する

時の流れのなかで失われてしまったレガシーに捧げる、最高にすばらしいオマージュだ。


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ヴィンテージリバイバルのトレンドが僕の好みに合っていないと感じていた矢先、アクアスターが僕を引き戻してくれた。ヴィンテージリバイバルを知り尽くしたリック・マレイ(Rick Marei)氏のもと、2020年に生まれ変わったアクアスターは、このたび新たにディープスターⅡを発表したのだ。人気を博した2020年のディープスター・クロノグラフ・リ・エディションに続くものとして、ディープスターⅡは、1960年代初期のアクアスターの美学に重きを置き、もしもアクアスターがクォーツ危機のなかで人気を失っていなかったら、何を作っていただろうかというある種の可能性に対する答えを提示している。

the aquastar deepstar ii sitting next to a plastic lego shark

 アクアスターファンはこの画像を見て首を傾げていることだろう。オリジナルのディープスターを知っている人には懐かしいものがたくさんあるが……すべてが違うのだ。1970年代半ばにアクアスターが残したものを引き継ぐという明確な目的を持ったディープスターⅡは、特定のリファレンスの複製ではない。むしろ、ブランドの影響力のある歴史のなかで最高のものを集めた、一種の夢の創造物なのだ。

 37mm径、厚さ13mm、ラグからラグまでが46.5mmのスティール製スキンダイバーズケースを採用したディープスターⅡは、非常にヴィンテージ感のある時計だ。ヴィンテージのディープスター・クロノグラフと同じサイズでありながらディープスターⅡは時刻表示機能のみで、9時位置のシルバーのインダイヤルにスモールセコンドを備えている。オリジナルのクロノグラフのレイアウトと比較するとディープスターⅡにはプッシャーがなく(当然だ)、ダイヤルのレイアウトは基本的にクロノグラフとは逆になっている。

the aquastar II on the author's wrist.

 ディープスターⅡはアクアスターの全盛期に作られたもののように見えるが、それはアクアスターのCEOであるリック・マレイ氏の仕事によるものだ。彼はヴィンテージモデルを忠実に再現することに関してスペシャリストのような存在で、ドクサのSUB 300 50周年記念モデル、アクアダイブとシンクロンのリバイバルモデル、そしてイソフレーンやトロピックのようなヴィンテージに忠実なストラップなどを開発した人物だ。

 多くの点で、彼は今ではおなじみのトレンドを先取りしていた。ヴィンテージのダイバーズウォッチへの造詣の深さ(そして当時の多くのブランドにまつわるすばらしいストーリー)が長い間途絶えていたブランドを復活させることにつながったのだ。彼のリバイバルはブランドのレガシーを尊重すると同時に、当時のブランドの特徴を知っている人たちにも楽しんでもらえるようになっている。その適切な例が、ディープスターⅡだ。

The case profile of the aquastar deepstar II

 特にアクアスターとディープスターⅡで、またしてもヒット作を生んだように思う。この時計は、単に過去のモデルを忠実に再現するのではなく、アクアスターのデザイン言語がどこに向かっていたのかを探る思考実験のようだ。そしてそれは僕が忠実な再現を楽しんでいないということでなく(僕は前作のディープスター・クロノグラフと50周年記念モデルのドクサの両方を持っている)、この違いがこの時計の魅力を際立たせているのだ。

 ねじ込み式リューズ、200m防水、アクアスター・シグネチャー入り減圧ベゼルを備えたディープスターⅡは、単なるダイバーズウォッチではなく、その機能はインスピレーションの源であるダイバーズウォッチに匹敵するものだ。写真はグレーダイヤルだが、ブラックとブルーのサンバーストダイヤルも用意されている。

A close up shot of the Deepstar II's dial

 グレーダイヤルは、少なくとも(そして予想通り)個人的な好みにマッチするもので、優れたフォントのていねいな使用、特大のアプライドマーカー、“オールドラジウム”スーパールミノバのイエロータンのカラーリングを合わせる背景としてはすばらしいと思う。美しさは見る人の目のなかにあるように、僕の意見は非常にシンプルで、ディープスターⅡはすばらしいの一言に尽きる。

 SS製ケースバックに覆われた内部には2万8800振動/時で動作し、38時間のパワーリザーブを持つ日付なしのセリタ Cal.SW-290が搭載されている。一般的には9時位置にスモールセコンド、3時位置に日付が表示されるが、幸いなことに、ディープスターⅡではこのスイス製自動巻きキャリバーには日付が表示されず、リューズ(巻上げから時刻設定までを行うもので、非常に頑丈な作りになっている)のなかには幻の日付ポジション(ファントムデイト)もない。些細なことだが実際に手にしてみると大きな違いがあり、この時計で見落とされなかったいくつかの工夫のうちの1つでもある。

The caseback of the deepstar II

アクアスターからの貸与品に見られる素のケースバック(左)と、製品版ディープスターⅡの刻印と個別の番号が刻まれたケースバック(右)。

 もう一つの魅力的な要素は120クリックで作動する両方向回転ベゼルだ。セラミックベアリングを採用したこのアクションは滑らかでありながら手触りもよく、2000ドル以下の時計に求められるものよりもワンランク上のものだと感じた。特徴的なベゼルの目盛りはオリジナルのディープスターと同様、マーク・ジャシンスキー(Marc Jasinski)がデザインしたもので、ダイビング中にダイバーの体組織内に蓄積される窒素を管理するための機能的な方法として開発されたものだ。ダイブコンピュータがなかった時代、ダイバーは潜水時間だけでなく、ダイビングとダイビングの間にどれだけ上にいたかを記録しなければならならず、これをダイバーはサーフェスインターバル(surface interval)と呼んでいる。

 ゆっくりと上昇して安全停止を行い、必要な減圧を行うことは安全なダイビングの一部だが、同じ日に再びダイビングをする場合は一定の時間を空けないと1回目のダイビングで体内に残留した窒素が戻ってくることになり、理論的には恐怖の潜水病を引き起こす可能性が高くなる。

A bezel close up photo of the deepstar II

 ジャシンスキーは2回目のダイビングを安全に計画できるように、フランス海軍の潜水表(60年代後半のダイビングキットに含まれていたもの)を参考にして、一定の浮上間隔を考慮したディープスターの特徴的なベゼルをデザインした。これについては、友人のジェイソンが2020年にディープスター・クロノグラフ・リ・エディションをレビューした際に詳しく紹介している(ヒント:これは一読の価値あり)。要するに、これはスクーバダイビングにおける計算尺のようなものだ。

 僕は歴史的に正確ではない伝統的なダイビングベゼルを選びたいと思っていたが、ディープスターⅡの外観は信じられないほどすばらしくオリジナルにかなり忠実であり、正しい判断であったと認めざるを得ない。ましてや、この時計を唯一のボトムタイマー(潜水時間タイマー)としてダイビングに持ち込むオーナーはほとんどいなだろう(メインにはコンピュータを使ってほしい)。アクションはすばらしく、ピザを食べるのにも十分使えるし、鏡面仕上げと奇妙なスケールはアクアスターのルーツに深く関わっていると感じる。

A lume shot of the deepstar II

 手首につけてみたが、ディープスターⅡはその宝石のような印象に加え、非常に身につけやすいプロポーションと優れた装着感が魅力だ。手首にフィットし、僕が所有している36mmのヴィンテージのシルバーナ スキンダイバーと存在感がよく似ている。ドーム型風防と傾斜したベゼルのおかげで、この時計は13mmの厚さを感じさせず、カーブしたラグは7インチ(約18cm)の僕の手首にも平らに収まる。

the deepstar II on the author's wrist

 ダイヤルの仕上げ、ポリッシュ仕上げのマーカーとベゼル、そしてシルバーのインダイヤルの相互作用がとても美しく、ディープスターⅡは19mmのラグに合うストラップを見つけることができた。僕のように頻繁にストラップを交換する人間にとって、一般的なラグのサイズではないことは残念だが、僕が借りたディープスターⅡにはグレーのNATOストラップが付属しており、予約販売のモデルにはトロピックのラバーとホーウィンのレザーストラップの両方が付属する予定だ。近い将来、アクアスターはSS製のライスブレスレットを追加料金で提供することを計画しているので、オーナーにとっては選択肢の幅が広がることになる。また参考までに、僕は20mmのレザーやナトーのストラップを装着してみたが大きな問題はなく、ほんの少し生地がよれるくらいだ。

 各色とも300本の限定生産となっており、希望の色を1490ドル(約17万円)で予約することができる。プレオーダー期間終了後に在庫が残っていた場合は正規販売価格の1890ドル(約21万5500円)となる。プレオーダー価格の方がお買い得であることは間違いなく、200m防水、優れたベゼル、すばらしいサイジング、そして限定生産という特徴を持つスイス製自動巻きダイバーズウォッチとしては適切な価格だと思う。

the deepstar II on the author's wrist.

 フィット感、仕上げ、そして計時機能は過去に何度かその強い魅力を称賛してきたセイコー プロスペックスのSPB143(日本版はSBDC101)を上回るものであり、プレオーダー価格であればSPB143などの価格にわずかなプレミアムを支払うだけで済む。

 しかし最終的には、僕が考える率直な偏見を強調しなければならない。僕はスキンダイバーのシルエットが好きで、ダイヤルに名前が入っているのも気にならない。昔はヴィンテージのディープスターを所有することを夢見ていたが、比較的手ごろな価格だった頃には手が出なかったように、認知度が上がり、コレクターの数が増えてきた今では購入することができないのだ。

The deepstar II lying on a table.

 ディープスターⅡは個人的な空虚感を満たすものであり、読んでいるすべての人がそうであるとは保証できない。しかし、僕は僕でなければならないのだ、わかる? そう、これはヴィンテージ風のダイバーズウォッチだ。そしてこの分野には限りない競争があり、たくさんのすばらしい選択肢がある(もっと安い価格のものもある)。だが、僕のシーランブレル(ドクサのSearambler)のように、この時計は僕を笑顔にしてくれる時計なのだ。

 実現しなかったことへのオマージュ、つまり深いアネモネ(行ったことのない時代や場所に郷愁を感じること)を代表するダイバーズウォッチであり、ディテールへの鋭い観察眼とマニアの心を持った深いこだわりを心に秘めた人が作ったものとして、アクアスターのディープスターⅡは一般的な時計デザインの流れのなかで誕生したにもかかわらず、特別な存在になっていると思う。

 次の作品が待ち遠しい。

アクアスターのディープスターⅡは、Aquastar.chでオンライン販売されている。