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コロナウイルスによるパンデミックから3ヵ月が経ち、設立間もないウォッチブランド、バーチャル&テイラー (Birchall & Taylor)に問題が起こった。彼らは「リファレンス1」の成功を受けて、より大きな工房に移転したばかりだったが、パンデミックにより先行きが不透明になる中、注文の半分がキャンセルされてしまったのだ。状況からして、事業を継続することは不可能だった。彼らはやむを得ず店を閉めることにした。
バーチャル&テイラーの共同経営者であるブラッドリー・テイラーは、再出発を必要としていた。「僕は離婚を経験したことはありませんが」と彼は言い、「これがまさにそのようなものだと思っています。僕が愛する時計づくりの道具を売りたいとさえ思っていました。レアなものを探して集めたものです。友人たちは“2、3ヵ月で元に戻るよ”と言ってくれましたが、実際、その通りでした。1、2ヵ月の間、時計製造から離れていた僕は、戻るのが待ちきれませんでした。作らないわけにはいかなかったのです」
そして、時計製作への熱い思いが、彼が2年近く前から取り組んでいた“ブラッドリー・テイラー パラゴン”のデザインを結実させることに繋がった。カナダ出身のテイラーは、ケースバックを時計に固定するロバートソンネジ(“スクエアドライブ”ネジは1908年にカナダで開発された)のようなカナダの伝統を示すセンスの良いデザインを取り入れ、そのテイストはサーモンとビーバーテイルのストラップにも現れている。パラゴンは1月に鳴り物入りで発売され、彼は現在、注文に応えるため時計を製作中だ。針だけで製作に約20時間もかかる。
ブラッドリー・テイラーとは何者?
年齢:29歳
出身地:トロント, カナダ
この世界に入るきっかけ:全てはテイラーが購入したセイコーのモンスターから始まり、彼はすぐに安価な時計道具一式を揃えた。ピンセットを7S26ムーブメントに突っ込んでいじりまわし、彼によると「全てを台無しにしてしまった」そうだが、その経験が彼を夢中にさせた。アイスランドのミケルセン・ウォッチズ(Michelsen Watches)のミケルセン氏のオンライン推薦を介して、テイラーは、スイスのル・ロックルにあるコルペラ&ヘフス(Korpela & Hofs)という時計学校を見学した。入学するには、器用さと適性を試験する21日間の“机上評価”をパスする必要があった。
「彼らは僕にバネを数本与えて、紙に文字を書きました」 と彼は言う。「緩んだ時に文字の上に正確に載るようにバネを曲げなければなりませんでした」。そして、これは全て「6時間連続で3mm厚の鋼板からパターンを切り出した作業の後に」と、言われたそうだ。
試験に合格した後、テイラーはル・ロックルで3年間、時計作りを学び、アメリカンフットボールをプレーし、技術習得の時間以外はフランス語を習った。卒業後、トロントに戻る前にパテック フィリップやウブロから認証を得て、プロとしての経験を積んだ。
彼が愛される理由
テイラーの復活ストーリーと時計製造への情熱には伝染性があるようだ。彼は2000ft²(約186m²)の工房から80平方ft²(約7.4m²)の工房に移ったが、以前にも増してやる気に満ちていた。
パラゴンのブレゲ書体はカナダの書体デザイナー、イアン・ブリグネル(Ian Brignell)がデザインし、ダイヤルはカリ・ヴティライネンのダイヤル工房、コンブレマイン社(Comblémine SA)によって製作された。パラゴンにはパープルの針が採用されているが、これはブルーの針が「均一で完璧なパープルの色合いを実現することに比べれば、公園を散歩する(くらいリラックスしてできる)ようなもの」だからだとテイラーは言う。これを行うには、ブラックポリッシュと内外のエッジの面取りに加えて、6回ほどの焼き直しが必要になるのだ。
「人はその価値に気づくか、気づかないかのどちらかです」とテイラーは言う。「結局のところ、時計の品質に責任をもつのは自分です。時計には僕の名前が記されています」。時計を構成する全ての部品は、テイラーが手作業で製造する部品を補完するために、可能な限り最高のサプライヤーから調達されている。例えば、マイクロローターのムーブメントは、ヴォーシェ社のものを使用している。ローターは、エンジンターンドのスモールセコンドダイヤルに合わせてエンジンターンドデザインになっている。ダイヤルカラーなど、時計のいくつかの部分は、購入者の好みに合わせて調整することができる。
次は何を?
テイラーの次のプロジェクトは野心的なものだ。彼は、歴史的なハイビートのフライバック・クロノグラフ ムーブメントを分解し、ブリッジとテンプの部品を改良するために再設計し、約3ヶ月かけて各ムーブメントを手作業で仕上げる、ということを計画している。ケース、ダイヤル、針は全てムーブメントを中心にして作られる。これは大がかりな事業だが、テイラーのもう一つの近い未来の目標である“人を教育し、彼の情熱を広めること”と結びついているのだ。
「僕はレッドバー(Redbar;アメリカ発の時計ファンコミュニティ)・トロントのメンバーでした」と彼は語る。「そこで僕の仕事に興味をもつ人たちに出会いました。とんでもないコレクションをもっている人でも、2、3本のセイコーしかもっていない人でも構わず、彼らを工房に連れていき、時計製造がどのように行われているかを見せました。人に時計を作る道具を見せるというのは、この仕事で好きな部分です。僕が針作りに使っているドリルプレスの厚さはわずか0.3mm。実際に見てみると視覚的にも印象的です」
自分の目で確かめるには
パラゴンは12本のみが生産され、そのほとんどが既に予約済みだ。ブラッドリー・テイラーへのコンタクトは、 bt@bradleytaylor.caまたはウェブサイトから。彼の時計は小売されていないため、直接注文を受けている。彼のスタジオがあるカナダで、一つ一つ手で組み立てられており、スイスから輸入された部品以外は全てカナダで作られている。
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