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Hands-On カルティエ プリヴェ タンク ノルマルを実機レビュー

新作タンク ノルマルは、サイズこそモダンになったが、タンクデザインの最も純粋なエッセンスを体現していると言えるだろう。

私が考えるカルティエのヒエラルキーのなかでは、タンク サントレは依然としてトップに君臨しているが、その名前とは裏腹に、新しいカルティエ プリヴェ タンク ノルマルはとにかく別格だ。実際、カルティエのカタログにはタンク ルイ カルティエやタンク マストといった派生モデルがあったものの、私のようなヴィンテージファンにとっては、真のオリジナルタンクがないまま、長らくラインナップに空位があった。しかし、いつまでもそうであるはずはなかった。

The Cartier Tank Normale

 シンプルな外見とは裏腹に、“ノーマルな”タンクは、決してヒットする保証などない。シンプルでクラシックなデザインだからこそ、細部にまでこだわるコレクターが多いからだろう。カルティエは、注目のカルティエ プリヴェ コレクションの一環として、7種類の新しいタンク ノルマルを発表したが、特に私が最も期待したのは、YGとPtのブレスレットモデルで、いずれも100本限定生産だ。

The Cartier Tank Normale

 まずはダイヤルから見ていくと、どちらもサテン仕上げのシルバーで、ローマ数字にレイルウェイ ミニッツトラックの真骨頂であるハッシュを内側に配している。この時計には、1920年代に見られたブランド表記をより大胆にした、リフレッシュされたサインが刻印されている。また、ダイヤルにはVIの数字を挟んで“Swiss Made”の文字があり、“VII”の“V”のなかには1917の年号が隠されている。針は1940年代のノルマルのエペ針で、YGケースにはブルーの針、Ptケースにはグレーの針が使われている。全体として、支障なく視認性の高いダイヤルに仕上がっている。しかしヴィンテージファンのいち意見として、YGケースのダイヤルはクリーム色でマットな質感にすべきだったと思う。斜めにカットされたサファイア風防も素晴らしい。写真では少し歪んで見えるが、手首につけているときは特に邪魔に感じなかった。Introducing記事ではブレゲの針を希望したが(今も希望)、実際に見てみると、これも同様に素晴らしい出来栄えだと思う。ここまでは素晴らしいが、あとはどうだろう?

The Cartier Tank Normale
The Cartier Tank Normale
The Cartier Tank Normale

 ケースは現代の購買層の嗜好を反映してサイズアップされている。私は幸運にも、ネパールの王子のために作られたカスタムウォッチを再現するために作られた1996年のユニークな作品を含む、3本のヴィンテージのタンク ノルマルの個体の実物を見ることができたのだが、ブレスレットでわずか32.6 mm×25.7 mmの新しいモデルと比較しても、それは小さなものだった。7.25インチ(約18.4cm)の手首に装着したところ、完璧で、快適で、私の好みからするとまったく小さく見えない時計だと感じた。しかし、約2mという不必要なほどの高身長にもかかわらず、私は小さめの時計が大好きなのだ。大きい時計を好む層に小さい時計を押し付けるつもりはないが、この時計が非常にクラシカルであるということもあって、体格に関係なく着用できると考えている。

 過去、しかも100年以上前の発売当時、カルティエはジャガー・ルクルトからの供給ムーブメントを使っていたはずだ。当時はそれが一般的だったが、メゾンは(よくも悪くも)外注のムーブメントでも十分な性能を発揮できるのに、自社製であることを喧伝するようになってきている。今回のケースでは、カルティエがル・タン・マニュファクチュールから供給された最小のムーブメント、手巻きCal.070を採用することで、自らの歴史的先例を踏襲した。このムーブメントにはカルティエの刻印が施されているようだ(クローズドケースバックのため眺めることは叶わない)。また、専用ムーブメントではないが、ほかのメーカーで採用された記録は見当たらない。ただ言えることは、非常に満足のいく巻き上げ感と、リューズを1回転回すだけで1時間単位で信じられないほど速く針が動くということだ。

The Cartier Tank Normale

 ケースのプロポーションが不整合だという懸念や不満も見受けられるが、それは私よりも何十年も経験を積んだ専門家にお任せすることにする。しかし今週、友人のジョン・ゴールドバーガー氏と新しい(数ある話題のなかでもとりわけ)カルティエ プリヴェ タンク ノルマルについて語り合ったなかでは、彼はこうしたデザインの問題を指摘することはなかった。カルティエのケースプロポーションは(そして基本的にほかのカルティエの時計のあらゆるディテールも同様に)、年ごと、10年ごとに変化を遂げている。1946年製のノルマルに忠実ではないかもしれないが、1924年製のものにより近いのは確かだ。いずれにせよ、私はこの時計が素晴らしいと思っていいる。

The Cartier Tank Normale sitting on its bracelet
The Cartier Tank Normale

YGモデルに施されたサファイアカボション。

 ケースに施された垂直のサテン仕上げは、特にサイドに沿ったブランカード(フランス語で“担架”を意味し、タンクのケース側面が担架のハンドルに似ていることからその名がついた)の鏡面研磨された面取りと相まって、まさに完璧だ。サテンのブレスレットに完璧につながりながら素晴らしいコントラストを作り出している。私にとって注目すべきは、このブレスレットである。

 私はカルティエのブレスレットの大マニアだ。カルティエのブレスレットのデザインや変遷について、何時間でも語り続けることができるし、これまでも、そしておそらくまたすぐにでも語り続けるだろう。あまりに深くマニアックなので、1時間のミーティングではカルティエのチームを怖がらせてしまったと思うほどだ。でも、この時計はカルティエ プリヴェで初めてブレスレットになった時計だから、ご容赦いただきたいものだ。

 当初ゴールドモデルしか見る機会がなかった私は24時間スケルトンダイヤルやレザーストラップをすっ飛ばして、ダイヤルとケースをざっと見て、ブレスレットの観察に没頭した。一体型ブレスレットではないので取り外すこともできるが、ケースとブレスレットの継ぎ目があってもビジュアルとしては美しい。

The Cartier Tank Normale
The Cartier Tank Normale

 このブレスレットを、私が撮影したさまざまな時代のカルティエの画像と比較してみたが、そのほとんどがこの7リンクの“ア・マイヨン”(à maillons)と呼ばれるスタイルで、どのブランドの、どの時代のブレスレットと比較しても最も美しくエレガントなデザインのひとつだと思う。しかしこのブレスレット(タンク ノルマルだけでなく、タンク サントレやトーチュなどにも採用されていた)は、時代とともに変化してきた。現在の構造とは異なり、ヴィンテージのリンクはゴールドやプラチナの板を折り曲げて中空にしたものが多く、横から見るとリンクの隙間が見えるようになっており、比較的タイトな構造ながら、時には少したわみが生じることもある。また、ケースのプロポーションと同様、ヴィンテージのブレスレットにもデザインバリエーションがあり、平らな“レンガ”のようなものもあれば、リンクの端が丸みを帯びているものもあり、カルティエが多くの外部業者に作らせたことによるものだ。また、これらのヴィンテージのブレスレットは、新しいカルティエ プリヴェ コレクションのものよりも薄かった。つまり、デプロワイアントバックルによる厚みがブレスレットと同じ位置に収まるようになっていたのだ。

 新しいカルティエ プリヴェ コレクションでは、ブレスレットは厚く非常に堅牢で、1920年代のモデル(ケースサイズは27mm×19mmに近い)に近いデザインとなっている。私が最初に感じたのは、このブレスレットにどれだけの手間が掛けられたかということだった。ブレスレットはヴィンテージのものより厚いため、基本的な構造の複雑さ(ネジ留めで追加/取り外しできるリンクを用意)に加え、デプロワイヤントが腕に食い込むことで、手首にフィットする時計のエレガントなラインを崩すのを防ぐ課題があった。そこで、カルティエは“ネパールの王子”リメイクモデルを参考に、ラグ側から数えて11.5リンクあたりの内側の約3分の1程度凹みを設け、ブレスレットと同じ位置にデプロワイヤントバックルが収まるようにしたのだ。

The Cartier Tank Normale
The Cartier Tank Normale
The Cartier Tank Normale

 また、ブレスレットの開閉もプッシャーのない、美しくきれいな開閉が可能だ。ヴィンテージウォッチでは、ヘリを設けて開閉部分がわかるようになっていることが多かったが、このモデルはそのようなことはない。徹底的に考え抜かれたものだ。

The Cartier Tank Normale

 新しいカルティエ プリヴェのコレクションとの限られた時間を終え、私はそろそろお時間ですと優しく諭してくれた素敵な広報担当者に申し訳なさそうに視線を送った。あの時ほど、時計を手放すのが辛かったことはないかもしれない。そして、さらに惜別の感情が高まっていった。

The Cartier Tank Normale

 広報担当者にもう少しお時間があるかと声をかけていただき、帰り際にカルティエの写真専用ルームを案内された。その時計を見るのをどれだけ楽しみにしていたことか、プラチナモデルを持って戻ってくるまで待つようにと言われたのだ。待つ価値は十分にあった。彼らのプラチナの扱いは共通してとても美しく、汎用性があり、圧倒的に優れているのだ。サテン仕上げのプラチナの実用的な雰囲気から、腕につけたときの重厚感まで、この時計はここ数年で最も気に入った時計のひとつだ。確かにグレーの針は少し読みにくいが、カルティエ プリヴェ タンク ノルマルを所有していれば、それを乗り越えることは何でもないことだ。

The Cartier Tank Normale
The Cartier Tank Normale

 ゴールドのブレスレット仕様は679万8000円、Ptモデルは778万8000円(ストラップはそれぞれ451万4400円、506万8800円。すべて税込)だ。昨年登場したストラップ仕様のペブルの640万2000円(税込)と比較すると、プラチナのタンク ノルマルがお買い得に見える。ペブルと違って、新しいタンク ノルマルはブティックに入店して注文することが可能だが、ペブルのオーナーは発売のかなり前にカルティエによって厳選された。そしてブレスレットモデルとしての価値もある。

 私の知り合いで、“New Special Order”プログラムでカルティエのカスタムピースの製作を依頼し、このデザインのブレスレットを希望していた人が複数いる。ブレスレットの別作の見積は、この時計全体の価格の2.5倍以上だが、量産することで、その価格の引き下げが期待される。

The Cartier Tank Normale
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 ひとつのモデルが100本の上限があるのは残念だと思う部分もある。ゴールドバーガー氏もそう思っているようだ。しかしカルティエ プリヴェ コレクションは一般的に、市場で好まれるよりもジャーナリストや純粋主義者に愛されることが歴史的に証明されている。何十年にもわたってマーケットを追いかけてきたある人物は、限定100本のカルティエ プリヴェ タンク サントレが、HODINKEEを含むメディアから絶賛されたにもかかわらず、発売後数カ月間ケースに入ったままだったことを思い出したようだ。ブレスレットはこの時計をよりセクシーな存在に押し上げているが、タンク ノルマルはこの価格帯あるほかの多くの時計と競合している。たとえば、ロレックスのプラチナデイデイトは、はるかに万能性が高いが、スタイルはあまり洗練されていない時計である。

 タンク ノルマルは、カルティエの多くの商品と同様に、長年にわたって多様なサイズが展開されてきた。今後、スティールとWGで、最も伝統的なスモールサイズからさらに大きなサイズまで、3種類のサイズがリリースされても不思議ではない。それまでは、最も純粋なカルティエの時計が帰ってきて、再びラインナップが充実したという事実にまずは満足したいと思う。

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詳しくはカルティエ公式ウェブサイトをご覧ください。HODINKEE shopでは、カルティエの中古時計を多数取り扱っています。