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Just Because テレビ番組60 Minutesのストップウォッチが文化財に

アメリカで最も視聴されたニュース番組の定刻を常に保ったストップウォッチ。

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機械式時計のムーブメントが奏でる音を想像してみて欲しい。時計に情熱を注ぐよりもはるかに前からその音は頭の中にあっただろう。そしてそれは、これまで最も視聴されたニュース番組『60 Minutes(シックスティーミニッツ)』がそうさせるのかもしれない。とてもキャッチーな、カチカチという音をアメリカの大衆にもたらしたうえに、テレビのニュースショーでありながら、雑誌のような新しい形式を取り入れたのだ。

 60 Minutesは、1968年9月24日の初回放送以来、これまでに起こった大きな事件をすべて網羅してきたが、このショーの最も忘れられない瞬間はおそらく、イントロとコマーシャルの直前に現れるストップウォッチだろう。この非常にアイコニックなストップウォッチは、1998年にスミソニアン博物館に加わり、それ以降日曜の晩のショーにはCGのストップウォッチが登場している。

 時計、またはこの場合はストップウォッチが計時デバイスの機能を超越し、計っていたものの象徴となるということは非常に稀である。ビッグ・ベンはロンドンのシンボルであり、アメリカではアリスト社のストップウォッチがニュースメディアの象徴となったのだ。
 我々の趣味という視点では、どんな時計も何らかの形で重要なものであることは間違いないが、『60 Minutes』の時計はもっともっと幅広い視聴者にとって大切なものであり、あるいはそうでなくても少なくとも見覚えのあるものなのだ。

現在テレビ番組『60 Minutes』で写されるCGで作られたストップウォッチ。

 スミソニアン博物館に収められたストップウォッチは、確かにアリスト社の時計であるが、それはショーで使われた3つの時計のうちの1つにすぎない。初期の番組では、ミネルヴァが最初のエピソードに使われ、その後ホイヤーに代わり、最後に名高いアリストのものに代わった。
 ロゴは、さまざまな配慮があってすべて削り取られている。特定の軍用時計は、個人の身元を隠すためにブランド名を印字しない名無し文字盤(sterile dial)と呼ばれるものもある。この場合、アリストがスポンサーに見えないよう配慮されたというのは実に理にかなっていることだ。とはいえ、同社には一体どんなストーリーがあるのだろうか? 

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 近年ETAベースの時計を生産し、インターネット販売をしているアリストというドイツのメーカーがある。この会社は、1907年にドイツ南西のバーデン=ヴュルテンベルク州プフォルツハイムに創設されたメーカーだ。この町はかつて、ラコやストーヴァ(ストーヴァはその後エンゲルスブランドに移った)の本拠地でもあった。これら2つのブランドと共に、アリストも“フリーガー”として知られるパイロットウォッチのデザインを中心に製造を行っていた。今もなお過去のモデルに焦点を当てた腕時計を製造しているが、eBay でサクッと見てみるとアリストが1960年代~1970年代にいくつものストップウォッチを含む計時機器を作っていたことが分かる。あるモデルの保証書には、テネシー州レバノンやコネチカット州ウォーターベリー(タイメックス誕生の地)にあるロバートショウ社についての言及がある。ドイツの時計メーカーとの関連は不明だ。

しかし、60 Minutesに登場するストップウォッチには、スイス製であると6時位置に記されている。

『60 Minutes』のストップウォッチに記されている"MADE IN SWITZERLAND"の文字。

 ストップウォッチの正確な出所がどこであれ、はっきりしていることはひとつだ。何世代にもわたる何百万人ものアメリカ人が、ストップウォッチのあのカチカチという音をすぐに思い出せるということだ。アリストの有名なカチカチ音は、多くの我々にとって機械式時計の入り口であるわけだが、当時の我々はそれを知る由もなかった。