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Hands-On チューダー ブラックベイ クロノ S&G

頑丈なスポーツウォッチのコンビバージョン。

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正直言うと、最近のコンビウォッチの流行を受け入れるには、かなりの時間を要した。今はもう分かるが、その域になかなか到達できなかった。80年代当時、派手なファッションや尋常でない量のヘアスプレー、そしてパワースーツといった背景を理解できるほど私は成熟していなかった。私自身が経験していなくとも、80年代の映画やテレビなどのメディアから教えられたことは、コンビのプロフェッショナルスポーツウォッチを手首にぶら下げているのが、周囲でいちばんクールな男である、ということだった。 それ以外では、ウォール街勤めで無罪の人々を無差別殺害した、映画『アメリカン・サイコ』(1987年の設定)の主人公パトリック・ベイトマンがコンビの時計を身に着けていた。いずれにせよ、コンビのスポーツウォッチは80年代スタイルの顕著な消費文化を代表するものだという印象を持っていたのだ。なんてこった!

 しかし、チューダーのブラックベイ クロノ S&Gに実際に触ってみると、そういった浪費嗜好との関連はあまり感じなかった。それどころか、かなり2019年的な時計であるとさえ感じた。デザインの観点からは、80年代のトレンドをリミックスする現代的な精神を巧みに取り入れており、実用性としては、他のチューダーの時計となんら変わらず、魅力的プライスで素晴らしい完成度を実現している。

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 コンビ時計が人気を博していたころの金の磨き方と、モダンウォッチの金の輝きは全く異なるため、これを「ゴールド」というのは、誤称に近いかもしれない。写真を見ていない段階では、チューダーがデザインした2019年版のコンビモデルは、私には想像のつかないものだった。そして、ゴールド部分の柔らかなサテン仕上げは写真を見ても完全には伝わってこないのだ。
 このチューダーの時計は、過去のケバケバしいコンビ時計をリバイバルするためのモノというよりも、貴金属でいくらかドレスアップされた有能な道具というべきだ。リューズ、ねじ込み式のプッシュボタン、ベゼル、そしてブレスレットのセンターリンクまですべてゴールドが配される。リューズは技術的には「ゴールドキャップ」であるが、この専門用語は形式だけのものとなる。小さなステンレススチールの筒がリューズの中に入っており、それは固形の金がリューズ内部の繊細なムーブメントに対応することができないからなのだ。リューズの大部分は、実際に純金でできている。時計の重さに大幅に影響を与える程の金は使われていないため、ブラックベイクロノグラフと全く同様の着け心地だ。

 ブラックベイ クロノグラフとは違い、スチール&ゴールドには、アナクロなカフスストラップを再現したものが付属するバージョンもある。取り外すこともできるが、カフスストラップはブレスレット程自然な着け心地ではない。思想的にも、見た目的にも、しっくりこないのだ。
 存在感を放つゴールドがセンターリンクに配されたブレスレットの完成度があればこそ、この時計の個性を輝かせている。コンビに挑戦するなら、ぜひブレスレットで挑戦して欲しい。とはいえ、既にブレスレットの時計をいくつか持っているのであれば、レザーストラップで楽しむのもアリだろう。

 また、MT5813は実に堅牢なムーブメントだ。チューダーが自社製クロノムーブを作り出すために、ブライトリングのCal.01にフリースプラングとシリコン製のテンプを追加したものである。プッシュボタンは押しやすく、先が赤くなった秒針は、その滑らかな動きを見やすくしている。MT5813は垂直クラッチを用いているため、プッシュボタンが押された際に「針飛び」することもない。45分積算計は針の動きがより大きいため、通常の60分積算計よりも変化が分かりやすく見た目にも面白い。とはいえ、人の生活に関わるさまざまなイベントやショー、講義といったものは、45分ではなく1時間単位で構成されるため、60分積算計の方が実用的かと思われる。

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 ムーブメント工場のことを鑑みると、このようなものを自社生産することは、価格が跳ね上がりそうなものだが、本機の販売価格は、68万9000円だ。SSモデルの51万3000円と比較しても、莫大な価格差があるわけではない。自然とロレックスのデイトナと比較したくなるところだが、実際にはそう簡単にできるものではないとも思っている。ロレックスのGMTマスターIIとブラックベイGMTを比較するのは容易だろう。なぜならどちらの時計も、同じ用途だからだ。しかし、ブラックベイ クロノグラフ S&Gは、基本的にはダイバーズウォッチであるブラックベイラインの派生だ。もともとはクロノグラフではなく、たまたまクロノグラフの機能を持ったブラックベイになった、というわけだ。200mの防水性が、それを証明している。

 アシッドウォッシュのデニムジャケットが、ソーホー地区のストリートを彩り、エンタメ業界ではストレンジャー・シングスやジ・アメリカンズのようなドラマが次々と放映されている。チューダー ブラックベイ クロノグラフ S&Gが、今マーケットに登場するのも不思議なことではない。言わせていただくならば、もしもあなたがコンビモデル好きであれば、今回の時計にはコンビらしさが足りないかもしれない。地味すぎるといってもいいかもしれない。だが、もしもあなたが長く続きそうなトレンドに乗ってみようかと思うのならば、とっつきやすい時計といえるだろう。サテン仕上げが施され、コンビ時計としてはこれ以上無いくらいに全体的に落ち着いた雰囲気で、私から見れば、ピンストライプのスーツよりも、シャンブレーシャツに似合う時計なのだから。

 流行は繰り返す、とよく言ったものだ。今流行ではなくなったとしても、数年、もしくは数十年待てば、また格好いいアイテムになるのだ。個人的にブラックベイ クロノグラフ S&Gを気に入っている点は、実際に2019年の多様な人々を念頭に置いて開発されたと思えるところと、抑制された美的センスが、コンビのスポーツウォッチに古臭い考えを持っていた人の心を開くかもしれないというところだ。そう、私がそうであるように。

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