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Hands-On ウルベルク UR-100V Magic Tにハンターグリーンが登場

ウルベルクを象徴するワンダリングアワーウォッチに、カラーバリエーションが限定リリース「。

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“ウルベルク”と“控えめ”という言葉が同じ一文に並ぶことは、まずない。というのも、同ブランドの時計はたいていサイズが大きく、大胆で、遠くからでもひと目でそれとわかる独自のデザインを誇っているからだ。1997年の創業以来、共同創業者のフェリックス・バウムガルトナー(Felix Baumgartner)氏とマーティン・フライ(Martin Frei)氏はワンダリングアワーのコンプリケーションを活用。時の表示とその進行を再定義するような、極めてスタイライズドされた(造形美にこだわった)“手首に装着するマシン”を一貫してつくり続けてきた。

 そんななか2023年に登場したUR-100V Magic Tは、100シリーズのデザイン言語を受け継ぎながら、フルチタン製のブレスレットを採用し、全体のトーンをいくぶん抑えた仕様に仕上がっていた。結果として、ウルベルクのコレクションのなかでは“もっともミニマル”ともいえる1本になった(あくまでウルベルクのなかで、ではあるが)。湾曲したサファイアクリスタルの下に堂々と構える彫刻的なワンダリングアワーモジュールという“これぞウルベルク”とでもいうべきディスプレイとマットな質感を持つクールグレーのトーンとの対比は見事で、このモデルはたちまち私の“密かに欲しい時計”リストのトップに踊り出た。常識外れなウルベルクにあえて挑むなら、このモデルしかないと本気で思ったのだ。だがオフィスで“グリーンダイヤル担当”として通っている私として、冗談まじりにこんなことも言っていた。「このモデルにグリーンのブレスレット仕様が出たら最高だよね」と。なぜならすでにウルトラヴァイオレットとブループラネットのバリエーションが存在しているのだから、“色相環トリロジー”として完成させるには、緑が加わってこそだろう。

Wristshot of UR100V Green

 今年の1月、ウルベルクがついにUR-100V Magic Tから“ハンターグリーン”エディションを発表したとき、「願いが通じた」と思わずにいられなかった。今回の限定モデルはわずか35本限定で価格は6万6000ドル(日本円で約950万ドル)と決して安くはないが、この新たなカラーは実に新鮮な印象を与える。金属的な質感をもつ、ダークでアーシーなグリーンは視覚的にも非常に魅力的だ。ダイヤル下部のメタル製時刻表示や、ワンダリングアワーモジュールの一部には円状のヘアライン仕上げによるメタリックグリーンが施され、それに対してほかの部分はマットなサンドブラスト仕上げとなっており、アワーディスクとの質感のコントラストが映える。わずかな違いではあるが、同じ色調のなかにも驚くほどの奥行きと立体感が生まれている。

 とはいえ、複雑なダイヤル構造に惑わされてはいけない。多層構造や可動部が多数あるにもかかわらず、UR-100Vの時刻表示は意外なほど読みやすい。ワンダリングアワーが時計回りに回転するにつれ、ネオングリーンの矢印がダイヤル下部のミニッツトラックを指し、その真上には現在の時間を示す数字がディスク上に表示される。このディスクは個別のサテライト(機構)に固定されている。時間が進み、分が60を過ぎると、ネオングリーンの矢印はダイヤルの下に消え、次の時間の数字と分針が右側から現れる。役目を終えたディスクはサテライト内を移動しながら回転を続け、次の時間に向けた数字が正しい位置に収まるようになるという仕組みだ。時間表示に関わるアワーディスク、ミニッツトラック、ミニッツ針の矢印部分にはすべてスーパールミノバが塗布されており、暗所でも視認性が確保されている。

UR100V Green Lying Horizontally
Minutes track
Planetary Scale

 このワンダリングアワーのモジュールにはサテライトが3基搭載されており、それぞれにアワーディスクとネオングリーンの矢印付きミニッツ表示がセットされている。いずれかのサテライトが時刻を指すあいだ、残りのふたつも裏側で回転を続けており、カットアウトされた小窓からその様子を部分的に確認することができる。このカットアウト部分には、地球の自転と公転を示す天文系コンプリケーションが配置されている。一方は20分間で地球がどれだけ自転するかを示すスケール、もう一方は同じ時間で地球が太陽の周囲をどれだけ公転するかを表している。実用性はともかく、通常なら無駄になるスペースを巧みに活用したアイデアだ。

 時刻合わせも視認性と同様にシンプルで、通常の時計の12時位置にあたる部分にある大型リューズで操作する。巻き上げや時刻調整の感覚は一般的な時計と同じだが、このモデルでは操作するたびにサテライトとアワーディスクが連動して動く様子を間近で楽しめる。ケースはモダンに再解釈されたトノー型で、幅41mm、ラグ・トゥ・ラグは49.7mm。厚さは14mmと手首の上ではやや高く感じるが、実際にはプロポーションが非常にバランスよく設計されている。しかもこの数値には、特徴的な高めのサファイアクリスタルも含まれている。ケースサイドには、限定モデルであることを示す小さなプレートがビス留めされており、その特別性が視覚的にも際立っている。

UR100V Soldier Shot Lifestyle
Caseback shot
Crown shot

 UR-100Vを裏側から眺めると、ハンターグリーンの世界がさらに広がっている。今回はローター部分にそのカラーが採用されており、円状のヘアライン仕上げと多数のペルラージュ装飾で彩られている。このローターは自動巻きのCal.UR 12.02に組み込まれた一部であり、ヴォーシェ製のベースムーブメントにウルベルク独自のワンダリングアワーモジュールを組み合わせた構成だ。細部に目を凝らせば、ローター中央付近に“Planetary Turbine Automatic System”の刻印を見つけることができるが、これはファン状のパーツがその心臓部であることを示唆している。このファンはウルベルク独自のウィンドフェンガーと呼ばれる形状のエアスクリューで、空気抵抗を利用して巻き上げスピードを調整するタービンの役割を果たす。さらにキャリバーを突発的な衝撃から保護する機能も併せ持つ。ウルベルクの多くのモデルに搭載されているが、知る人ぞ知るクールなディテールである。

 ブレスレットもまた、実際に手に取ると非常に高品質であることがわかる。リンクが短く設計されているため、全体として非常にしなやかな装着感が得られるうえ、各リンクが一般的なブレスレットのハーフリンクのような感覚で、細かな調整がしやすい。仕上げは意図的にインダストリアルな印象をもたせており、ケースと同様にサンドブラスト仕上げが施されているが、それでも各リンクのファセット(面取り部分)が光をとらえることで時計としての存在感をしっかりと演出している。

Clasp Macro
Urwerk Bracelet
UR100V Green Wristshot

 実際に腕につけてみると、その体験はまさに唯一無二だった。一方では、スペックから想像するよりも意外とフィット感がよく、その理由の多くはブレスレットのエンドリンクがまっすぐに落ちる設計にある。しかし同時に、エンドリンクのデザインには上下で非対称性があることにも気づかされる。ケース下部には一般的なラグとエンドリンクの構造が採用されている一方で、上部のエンドリンクは大型リューズに対応するよう成形されており、こちらのラグはブレスをカバーする構造になっている。技術的には私のような手首の細い人間にもケースはフィットしたものの、ケース上部がブレスレットの上を覆い、やや突き出る感覚には少し慣れが必要だった。そのため、このモデルはより手首の大きな人に装着したときに、見た目としては自然に映る。この記事に掲載されている写真は、同僚のマットの手首で撮影したものだが、着用時の見た目は遥かに“普通”に感じられた。

 とはいえこのUR-100V Magic T “ハンターグリーン”エディションは、つけていてただただ楽しい1本だった。上下非対称のエンドリンクのデザインにもやがて慣れ、バウムガルトナー氏とフライ氏が築き上げたこのインダストリアルなデザイン言語が、手首の上で心地よく感じられるようになっていた。UR-100Vを含む100シリーズは、インダストリアルでありながらも、決してブルータリズム的(過度に無骨)ではなく、複雑なダイヤル構造を全面に打ち出しつつも高い視認性を保っているのが魅力だ。こう言うのも妙な話だが、この時計は意外なほど“さりげなく時刻を確認する”のに向いている。ダイヤルを横目で見るだけで、傾斜したミニッツディスプレイに表示された現在時刻が自然と目に入ってくるのだ。グリーンの色味はチタンのクールなトーンと相性が抜群であり、ウルベルクが多くのモデルで用いるレッドのアクセントをこのモデルでは排した点も、個人的に非常に好感が持てた。

Urwerk on blue background

 ワンダリングアワーというコンセプト自体は、ウルベルクだけのものではないし、決して新しい仕組みでもない。だが同社はその表現方法をUR-150 “スコーピオン”のレトログラード針や、UR-120の分割型サテライトなど、数々のモデルで次の段階へと押し上げてきた。それに対し、このUR-100V Magic Tはこの複雑機構の魅力を視覚的に最大限引き出す“ウルベルクらしさの原点”の延長線上にある1本だと感じられる。そして、そこにグリーンが加わることで、筆者の心はすっかり奪われてしまったのだった。

詳しくは、ウルベルクの公式ウェブサイトをご覧ください。