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Staff Picks 僕たちの“父親になって欲しい”時計

時計を父親的存在として、父親を時計に置き換えて考えてみる。

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父の日がもうそこまで迫っている。だが、心配はいらない。日曜の朝にコンビニやドラッグストアでギフトカードでも買ってプレゼントすれば、きっと喜んでくれることだろう。さて、今回はHODINKEEのスタッフに、父親にちなんだStaff Picksを考えてもらおうと思う。父親をテーマにした真面目な記事も執筆しているなかではあるが、ちょっとバカげたことをするのもおもしろいかもしれないと思い、同僚たちに自分の父親になってもらいたいと思う時計を考えてもらうことにした。それ以外は、僕からはほとんど追加の説明はしなかった。むしろ、この軽妙な思考訓練で、みんながそれぞれ異なる方向に進んでいったのがとてもよかった。

 それでは、僕たちが選ぶ“いい父親になりそうな時計(とその理由)”をどうぞ。もし、あなたが時計を父親に見立てて擬人化するとしたら、どんな時計を選ぶだろうか?

ジェラルド・ジェンタ オクタゴン ミニッツリピーター パーペチュアルカレンダー - マライカ・クロフォード

 目を閉じて父の一番輝いていたころを想像してみると、彼は90年代半ばのクラシックな服を着て、(何時間も抗議したにもかかわらず)私をジャズコンサートに引っ張り出すか、クルマのなかで窓を全開にしてハウスミュージックを爆音で流していた。90年代のジェンタ自身のブランドデザインのように彼は本質的には反骨精神にあふれていたが、それを理解する者からすると最高にクールに見えていた。

genta octoganal

Image: courtesy of Phillips.

 すべての父親がシンプルなフィールドウォッチやツールウォッチが好きというわけではない。このオクタゴン パーペチュアルカレンダーのように、ちょっと風変わりで、キラキラしていて、楽しい時計が好きな人もいる。そして、このような父親/時計にはそれまで積み上げてきた分の厚みがあり、聡明で、次のようなことを言われるまで気づきもしなかったような奥深い魅力に満ちている。「ああ、86年に君のお母さんとパラダイス・ガレージにラリー・レヴァンを見に行ったときのことを覚えている。彼女はダンスフロアでとても美しく輝いていたよ」。もしくは、オクタゴンのミニッツリピーターを鳴らして、どうしてこんな小さい35mmの楽器がリクエストに応じてあんなに完璧にチャイムを鳴らすことができるのだろうと疑問に思うときもそうだ。私が感傷的な気分で思い出に浸っているとき、大切な思い出として蘇るのは、ちょっとした音やフレーズ、そして愛着のあるものなのだ。

 スケルトナイズされたオクタゴナルの立体的なシェイプは私の父と同様にスタイリッシュで、とびきりクールで(若いころの話だが、私がそう言ったことは父には内緒だ)、そしてちょっとイカれている……、もちろん、いい意味で。

チューダー ペラゴス 39 - トニー・トレイナ

 この極めて奇妙な企画は、私の非常に風変わりな上司が考えてくれたものだ。このお題に答えるために、私は彼のお気に入りの時計を選ぶことにした。だってカメラを持ち、チョアジャケットを羽織り、実物は驚くほど背の高い彼をお父さんと呼ばずにはいられないだろう? チューダーのペラゴス 39を使ったA Week On The Wristで、ジェームズはこの時計を“パパ(またはママ)ダイバー”と呼んでいた。彼がその意味するところを説明したとき、私は "こういうパパが欲しい”と思わずにはいられなかった。

 「僕のように、子供や仕事、生活上の理由で、ダイビングがご無沙汰になったらどうだろう?」ジェームズは続けてこう書いた。「あるいは、ダイビングは嗜まないが、その楽しさとカジュアルな魅力に引かれるなら? ペラゴス 39はそんな人にぴったりなのだ」。

tudor pelagos 39

 いつもそばにいて、自分の家族、私、そしておそらく一番重要なのは、(もし入学できれば)私の大学の学費を、自分のばかばかしいささやかな趣味よりも優先してくれるお父さんだって? 私を養子にしてくれ! とはいえ、彼らはよく働いているし、自分のために素敵な(そして何よりもカッコいい)時計を買うべきだと思っている。

 なぜなら、私は父にそばにいて欲しいと思う一方で、父に何か特別な魅力がある(少なくともかつてはそうであった)ことを理解しておきたいと思うのだ。今、彼のジャージは屋根の垂木に吊るされている。けれども、ミニバンでサッカーの練習に迎えに来てくれるわけでもなく、Fitbitで“歩数を稼ぐ”などという年寄りじみたことを気にかけている様子はない。だが、私には頑張り過ぎないクールなお父さんがいて、彼はチューダーのペラゴス 39を身につけているのだ。

MB&F レガシー・マシーン パーペチュアル - リッチ・フォードン

 ジェームズからのこの一見シンプルに見える指示には、実に多くの解釈がある。腰を据えて考えてみたが、父親を時計で表現するのは難しい! 当然ながら、私は現実でもこの架空の筋書きでも、多くの時計を所有する私自身の父を思い浮かべた。もし父を1本の時計に集約できるとしたら(まあ、できないが)、それは彼が信頼を寄せるロレックス サブマリーナー Ref.16613のツートンカラー(文字盤は完璧に褪色した紫色)だろう。頼もしく、少ししゃれていて、優雅に年を重ねた父についてのコメントをここに記してみよう。

mbf legacy machine perpetual

 ではそのうえで、なぜMB&Fのレガシー・マシーン パーペチュアルを選んだのか? そう、私は自分の父親よりも、仮想の父親を時計に落とし込みたいと思ったのだ。父親とはまるで物語に出てくるオーガや玉ねぎのようなもので、(臭いからとか泣かせるからとかではなく)何層にも重なった人間的な厚みを持っている。MB&Fもまた、とても重層的なブランドだ。マックスとそのチームが創り出す時計はすべて、時間を確認するよりも、過剰なドーム型サファイアクリスタルや大型のバランスホイールに目を奪われ、その奥深くへとあなたを誘う。レガシー・マシーン パーペチュアルではそこに複雑機構を加えることで、さらなるレイヤーを築いている。

 あらゆる複雑機構のなかでも、パーペチュアルカレンダーは父親というものをもっともよく表している。一見するとそこではいろいろなことが起こっているように見え、また、初めて接する場合、ほとんどの人はパーペチュアルカレンダーとどのように付き合っていけばいいのかわからないだろう。しかし、トゥールビヨンやミニッツリピーターに比べれば、パーペチュアルカレンダーはそれほど複雑な機構ではない。オックス・ウント・ユニオールは、わずか9つの部品を追加するだけでパーペチュアルカレンダーを作り上げた。そして、ざっと操作方法を教えてもらえれば、どのボタンを押せばすべてが正しく設定されるかを簡単に理解することができる。父親もまた見かけによらず単純なものであり(どのボタンを押せばよいかを知っていると便利である)、1日の終わりには、人生を生き抜くために必要なあらゆる知識を教えてくれる。

G-SHOCK MRG-B5000B-1JR - タンタン・ワン

 なんてばかばかしいジョークだろう! と、冗談はさておき。この記事を執筆するなかで、私がG-SHOCKのMRG-B5000を気に入っている理由が、信頼性、多用途性、チタンを使用した設計といった、まさに私が父として求める要素であることに気づいた。まあ、3つ目は冗談だが、G-SHOCKのMR-Gは誰もが望む高い汎用性を体現している。誰とでもうまくやっていけるだろうし、とても控えめだが、真の理解者には深い尊敬の念を抱かせるプロダクトだ。

g-shock MRG

 MR-GシリーズはG-SHOCKの最高級ラインであり、真のツールウォッチであるという本質を維持しながら、ラグジュアリーでもあるという素晴らしい仕事をしている。たまに洒落たことをするけれども、その1日の終わりには自分らしくいられる、そういう堅実さを備えている時計だ。

 時計本体は高硬度のチタン合金製で、ベゼルはコバルトクロム合金のコバリオン、さらに極めて傷のつきにくいDLCコーティングが施されている。そしてそれだけでない。このほかにも標準的なG-SHOCKのラインと異なる点として、ケース構造の複雑さ、そして随所に施されたザラツ研磨が挙げられる。その強靭さのなかに、洗練が隠されているのだ。過酷な状況にあっても、あなたのお父さん/時計はどんな困難にも立ち向かっていくだろう。素晴らしいことだ。

ジェラルド・ジェンタ レトロファンタジー ミッキーマウス ゴルフ - マーク・カウズラリッチ

 小学2年生のとき、両親に連れられてフロリダのディズニーワールドに行った。乗り物に乗ったり、NASAのケネディ宇宙センターを訪れたりした数々の楽しい思い出のなかで、特に印象に残っているのは父に買ってもらったミッキーマウスがゴルフをしている公式スケッチだ。今でも頭に思い浮かべることができるが、赤いゆるやかな線でミッキーのバックスイングをスケッチしてあって、父のオフィスに飾ってあった。父は自身が子どものころから私の子ども時代にかけてずっと熱心なゴルファーで、私をゴルフ練習場やコースに連れて行ってくれていた。父が定年退職を迎えたタイミングで私はゴルフを再開し、父に合わせてもっとリラックスした、きままなゴルフ三昧の生活を送りたいと思っている。そんなライフスタイルにぴったりの時計が、ジェラルド・ジェンタのレトロファンタジー ミッキーマウスウォッチだ。

genta golf mickey watch

Photo via The Keystone

 ジェンタの復活のおかげで、これらの愉快なジャンピングアワーウォッチは一部のコレクターのあいだで再び注目を浴びている。しかし、ジェンタが自身の名前でデザインした時計の成否について議論が交わされるなか、彼のディズニー ゴルフウォッチが純然たる気まぐれから生まれた以外の何物でもない、という意見には異を唱えにくい。私はしばらくのあいだ、密かにこの時計を探していた。自分のコレクションとしても楽しめるだろうし、定年退職を迎える父に贈ることで、ゆっくりと自分の情熱のために費やす時間を楽しんでもらおうと思ったのだ。また、カルティエ パシャのゴルフスコアカウントウォッチのように、ゴルフをテーマにしたコレクションを作るのも楽しそうだ。しかし価格は上がり続けており、どちらも手が届かなくなってしまったように思える。まあ、だからといって、父がこの腕時計をして引退試合で球を打つ姿を想像することはやめられない。あの時計が私の父だったら……、ただ彼にはこの時計のミッキーよりももう少しボールに集中してプレイして欲しい。

ロレックス Ref.8171 “パデローン” -エリン・ウィルボーン

 これまでの人生において父親的な役割を無生物に求めることはあまりなかったが、もし私がこのような形で時計を擬人化するとしたらロレックスのムーンフェイズ Ref.8171のようなものを選び、父としての責任を担ってもらいたいと思う。豊かな歴史を感じさせるこの時計は、必要なときに父親としての賢明なアドバイスをしてくれることだろう。

rolex 8171

 この時計のイエローゴールド一色の装いは確かに豪華だが、冷たくよそよそしいものではない。むしろ、温かみのある華やかさに心を奪われ、ムーンフェイズにはユーモアのセンスがあるようにも感じられる。確かに複雑な時計だが、見やすくて信頼でき、必要な情報をシンプルに教えてくれる。また、この時計は資産運用のための素晴らしいヒントも与えてくれるだろうし、そしておそらくあなた自身のための信託基金にもなるだろうと思う。

A. ランゲ&ゾーネ ランゲマティック アウトサイズデイト - ジョナサン・マクウォーター

 課題は自分が父であってほしい時計を選ぶというものだったが、正直なところ、父がかつて身につけたことがない時計以外には考えられなかった。シルバーのタペストリー文字盤、エンジンターンドベゼル、ジュビリーブレスレットのロレックス デイトジャスト Ref.16220は父自身にあまりにもフィットしてしまっていた。質問が出される前に、もう答えは決まっていたようなものだった。

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 父は飾り気のない男だ。毎日ゴルフをして、アトランタ・ブレーブスを観戦したいだけなのだ。今は定年退職して、まさにそのようにして過ごしている。そんな彼が引退してしまったので、私はRef.16220から少し高級な37mm径のプラチナ製A.ランゲ&ゾーネ ランゲマティック アウトサイズデイト(Ref.308.025)へと乗り換えることにした。サクソマット(Cal.L921.4)搭載のモデルだ。「でも、ジョナサン、君は父のことを“飾り気はない”と言っておきながら、5桁ドルはする時計について話をしようってのかい?」。そう、そのとおりだ。

 まず第1に、グレー文字盤のプラチナモデルは、ホワイトゴールドケースとのコントラストが効いたブラック文字盤に比べて、彼らしい落ち着きがある。ただ、これだけだとちょっとやりすぎだろう。ブルーのスモールセコンド針で十分だ。デイトジャストが素晴らしい時計であることは言うまでもないが、引退後の父を象徴する時計としてはさらにステップアップしたものにしたい。たとえ父の意思に反していたとしても、ちょっとしたセレモニーは彼にとってよいものだ。仮に父が四六時中ゴルフをやるような男でなければ、間違いなく曜日がわからなくなっていただろう。そしてそれこそが、私の目指すべきところだ。必然的に、始球式やティータイムのような重要なことを記録する大きな日付が必要になってくる。

 さらに、サクソマットムーブメントを搭載した初期のランゲマティックであるため、時間をリセットするためにリューズを引き出すと秒針がゼロにリセットされる便利な“ゼロリセット”機能を備えている。航空宇宙産業で40年近くを過ごした彼にとって、これは素晴らしいことだ。引退したとはいえ、彼の几帳面さは健在だ。

ハミルトン カーキ フィールド チタニウム オート 38mm - ジェームズ・ステイシー

 この意味深なばかばかしい質問にはいろいろな答えがあるだろうが……、オメガのプロプロフという僕にとって恒例のStuff Picksセレクションに加えて、ハミルトンのカーキ フィールドは父親に通ずる魅力にあふれた時計だと思う。どんな優れた父もそうであるように、偉大な歴史の一部であり、タフでありながら複雑ではなく、シンプルでありながら経験に基づいた世界観を持っている。

hamilton khaki field

 信頼性が置けてハンサムで、しかも派手さはない。また、夜光は懐中電灯を持つときに必要十分な光量であるほどいい。僕自身の父親の面影と重なる要素をいくつか思い出しながら、チタンケースで38mm径の自動巻きモデルを選ぶことにした。オールドスクールとモダンが混在したパッケージが気に入っているし、また機械式時計のため一生の付き合いができるのも魅力だ。ダメ押しに、この時計にはオレンジのアクセントが入っている(これは父の好きな色のひとつだ)。

 ハミルトンのカーキ フィールドは、ロレックス エクスプローラーのような偉大な存在ではないかもしれないが、ドラマ性や複雑さといったものを微塵も感じさせない、よき父親のように完璧な万能性を備えている。信頼性が高く、冒険にも連れ出せる、まさに模範とすべき時計なのだ。長い冒険の終わりや特にハードな一日の後に手首を見れば、たとえ声にならなくても、この時計があなたのことを誇らしく思っていることが伝わるだろう。