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Just Because ロールスロイス、今度はヴァシュロン・コンスタンタンの特注品をダッシュボードクロックに搭載

いや、ロールスロイスについて同じ記事をアップしているわけではない。さて、あなたならどちらを選ぶだろう?

 今週もカー・アンド・ドライバー(Car and Driver、アメリカの自動車誌)は大忙しだ……、待ってくれ、このサイトはHODINIKEEで間違っていない。今週、ロールスロイスが初のオーデマ ピゲ製ダッシュボードクロック/ウォッチを搭載したドロップテイルを発表した記事でクルマと時計史の結びつきについて触れた。だがしかし、これほど早くに同じようなニュースが発表されるとは思わなかった。

Rolls-Royce Amythest Droptail

 これらは似ているようで、まったく違う。ヴァシュロン・コンスタンタンは今週初めにデジタルでプレス内覧会を開催し、ロールスロイス アメジスト・ドロップテイル専用にデザインされた新しいレ・キャビノティエ・アーミラリ・トゥールビヨン(Les Cabinotiers Armillary Tourbillon)を発表した。このクルマは、英国でのマニュファクチュールによる完全オーダーメイドの“コーチビルド”カーシリーズの第2弾で、価格はやはり3000万ドル前後といわれている。オーデマ ピゲのロイヤル オーク コンセプトは、既存の製品ラインをベースにした現代的なもので、クラシックなロールスロイスとは少し不釣り合いだと私は指摘した。この試みは、コメント欄で若干の波紋を呼んだようだ。一方、ヴァシュロンはよりクラシックなアプローチをとった。これに対し、みんながどのような見方をするのかは興味がある。

Vacheron Armillary Tourbillion

 レ・キャビノティエ・アーミラリ・トゥールビヨンは、ヴァシュロン・コンスタンタンが1928年以来初めてクルマのために製作したユニークな時計である。ヴァシュロンはクルマが持つテーマに忠実で、2016年にIn-Depthで取り上げたCal.1990を使用し、クルマのスピードメーターによく似たフライバック機能付きのバイレトログラード式の時分表示を搭載している。このムーブメントは、ヴァシュロン製のRef.57260 スーパーコンプリケーションの機構を利用したもので、公にはこれまで2度しか使用されていないようだ。ムーブメントは直径35.5mm、厚さ10mmで、パーツ数299個、45石、パワーリザーブ58時間という重厚なものだ。

Vacheron armillary tourbillion

 文字盤の6時位置には、シリンダー状のヒゲゼンマイを備えた“アーミラリ”球形トゥールビヨンも見える。これは、アーミラリと呼ばれる遊星歯車を備えた動く球体を発案した18世紀のフランスの時計師、アンティード・ジャンヴィエ(Antide Janvier)氏の作品にちなんだものである。入れ子になったふたつのキャリッジが60秒ごとにふたつの軸を中心に回転し、運動する球体を形作る。また、15秒ごとにトゥールビヨンケージの各部が交差し、マルタ十字のモチーフを成す。腕時計にトゥールビヨンを搭載するのは少々過剰なことだが、ダッシュボードクロックにトゥールビヨンを搭載すれば、時計の精度を向上させる効果が期待できる(でも、これであまり大きな段差を越えるのは正直言って怖い)。

Vacheron Armillary Tourbillion
Vacheron Armillary Tourbillion movement
Vacheron Armillary Tourbillion movement

 ロールスロイス アメジスト・ドロップテイルという名前から、ファサード全体が深い紫色を帯びていることがわかるだろう。そこでヴァシュロンはロールスロイスと綿密に連携し、サファイアダイヤルから見える地板に、円形のサテン仕上げを施したモーヴ(灰色がかった紫)カラーのNACガルバニックコーティングを採用した。ムーブメントのシルバーカラーの上にホワイトのフォントが配されているため、少し読みにくく見えるが、実物はもっと見やすいはずだ。

Vacheron Armillary Tourbillion sketch
Vacheron tourbillion
Vacheron tourbillion

 この時計は手巻きのため、リューズは簡単にセットと巻上げができるように大型化されている。時計はホルダーに収められ、3時/9時方向に180°傾けることができるようになっているため、巻き上げやセッティングに加えて時計の裏側やムーブメントのスケルトンケースバックを見ることも容易となっている。フレームはポリッシュ仕上げのSS製、面取りを施したSS製インナーフレームにはブラックPVD加工が施されており、センター部分には、手作業によるサンバースト状のギヨシェ模様とマルタ十字が植字されたホワイトゴールド製の地板が取り付けられている。

 しかし、この時計は本来懐中時計である。ホルダーから完全に取り外すことが可能だが、着用するためのリボンはない。その代わり、ホルダー全体も助手席のコンパートメントから取り外すことができ、シート表皮と同じウッドとモーブ色のレザーで作られたお揃いのディスプレイに置いておける。全体を取り外した場合は、同じサイズと形状のフィラーボックス(詰め物用の箱)が付属しているので、それを挿入して隙間を埋めることも可能だ。また、時計を大切に保管したい場合は、マルタ十字型のロックで固定されたスティール製の蓋でホルダーを覆うこともできる。

Guilloche

 ダッシュボードマウントの形状はオーデマ ピゲとヴァシュロンで若干異なるようだが、ロールスロイスがリリースを予定している限定生産のドロップテイルの半分、つまりこれまでに発表されたすべてのドロップテイルについて、ふたりのオーナーがそれぞれ同じアイデアを思いついたとは考えにくい。この作品を発表したヴァシュロンのスタイル・アンド・ヘリテージディレクター、クリスチャン・セルモニ(Christian Selmoni)氏にこの質問をぶつけてみたところ、明確な答えは返ってこなかった。

 「ご存じのように、オーダーメイドのプロジェクトに関してはクライアントの詳細はお伝えしていません。言えることは、このクライアントとは数十年来の付き合いで、ヴァシュロン・コンスタンタンの非常に情熱的な顧客であり、ロールスロイスのドロップテイルに装着できるヴァシュロン・コンスタンタンの時計をデザインして欲しいと依頼されたということです」と彼は私に語った。

 「言い換えれば、これはロールスロイスとヴァシュロン・コンスタンタンの両方が主導するコラボレーションやプロジェクトではなく、クライアントのイニシアチブによるものなのです。だから、あなたが挙げた、(オーデマ ピゲとヴァシュロンの)ふたつのプロジェクトは本当に異なるものだと思います」。

Rolls-Royce Droptail

 しかし、このアイデアはどこからか出てきたはずで、もしロールスロイスが手を貸していなかったとしたら、少々驚きである。そういえば、ロールスロイスのデザインについて、ちょっと気になることがある。ハザードランプのボタンだが、時計の下に不格好に設置するのではなく、もっといい場所を見つけられなかったのだろうか? あんなに美しいラインとよく練られたデザインのダッシュボードに、まるでロールス版“4時半の日付表示窓”をつけたようなものだ。自動車デザイン関係の情報筋によれば、ロールスロイスも同じように考えていたようだが、アクセシビリティやハザードランプの配置に関する法律が彼らの手を煩わせたのだという。安全性やハザードランプの位置に関する法律が、彼らを追い込んだのだ。

 時計だけを見て、私ならどちらを選ぶだろうか? ドロップテイルは6.7リッターV型12気筒で最大593馬力、最大トルク620ポンドフィート(約1.6キロ)を誇るだけあって確かにキレはあるが、もし私がコーチビルドのロールスロイスを持っていたとしても、ドラッグレース(停止状態から急発進し、ゴールまでの速さを競うアメリカ発祥のレース)はしないだろう。だからこの文脈では、スプリットセコンド クロノグラフのオーデマ ピゲよりもヴァシュロンの方がずっと理にかなっているというわけだ。しかしまあ、APは実際に身につけることができるし、どちらの主張もよくわかる。ロイヤル オーク コンセプトを所有したいのは山々だが、この場合はエレガントなヴァシュロンに軍配が上がるだろう。

Rolls-Royce Droptail
Rolls-Royce Droptail

 クルマのブランドが顧客のためにこのようなサービスを今後ますます提供するようになっていくのか、興味がある。古いホイヤーのダッシュクロックを購入して、新車やクラシックカーに取り付けることは今でも可能だが、フェラーリやシンガー(1905年創業の英国の老舗)のようなカスタマイズメーカーが、オーダーメイドのダッシュクロックを依頼し始めたとしても私は驚かない。今週紹介したふたつのスタイルからひとつを選ぶとしたら、どちらか。コメントで教えて欲しい。

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HODINKEE Shopでは、ヴァシュロン・コンスタンタンの中古およびヴィンテージウォッチを取り揃えております。残念ながら、当ショップではロールスロイスのお取り扱いはありません。ヴァシュロン・コンスタンタンについて詳しくはこちら