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自動車業界は2023年のモントレー・カー・ウィークを締めくくったところだ。クルマと時計は密接な関係にあるため、必然的にいくつか時計関連のニュースが飛び込んできた。私は会場にいなかったものの、ロールスロイスはオーデマ ピゲをおまけに搭載したコーチビルドモデルの最新作で“クルマと腕時計の競演”を見せ、ショーの主役となったようだ。まあ、当然だろう。
ロールスロイスのラ・ローズ・ノワール・ドロップテイルは美しいカスタムカーであり、このクルマを依頼した一族の家長が愛してやまないバカラローズへのラブレターでもある。何千時間にもおよぶカスタム作業と、約3000万ドル(日本円で43億5700万円)ともささやかれる価格からして、まさに車輪の上の芸術品だ。だが、その話はまた後で。その前に、語るべき時計がある。
クルマの発明以来、クルマと時計の歴史は密接に絡み合ってきた。したがってこのオーダーに時計の項目があるのは理にかなっている。ダッシュボードの助手席左側にあるボタンを押すと、オーデマ ピゲによる唯一無二の時計、ロイヤル オーク コンセプト スプリットセコンド クロノグラフ GMTが現れる。
この時計は2023年初頭に発表されたばかりで、今作はこのプラットフォームを使って製作された初のユニークピースだろう。オーデマ ピゲ ロイヤル オーク コンセプト スプリットセコンド クロノグラフ GMTは、(まさにロールスロイスのドロップテイルのような)先進的な素材とテクノロジーを採用したブランドを象徴するモデルである。直径43mm × 厚さ17.4mmの巨大なケースはチタン製で、カーブしたケース形状のおかげで実寸よりもコンパクトに見えるが決して小さくはない。コンプリケーションを詰め込むには、かなりのボリュームが必要だ。約70時間のパワーリザーブを誇るオープンワークの自動巻きムーブメント 4407は、ローターの軸受けにスプリットセコンド機構を内蔵し、12時位置にはGMTとラージデイト表示を備えている。
オーデマ ピゲ ロイヤル オーク コンセプトのユニークピース。
特注の赤いカウンターと、ラ・ローズ・ノワールの色調に合わせた赤いインナーベゼルを備えたこの時計は、クルマのダッシュボードのなかに収められている。またダッシュボードそのものが寄木細工の傑作であり、彼らが“バラの花びらが舞い散る様子を抽象的に表現した”と語るこの作品は、2年の開発期間を経て1603ピースのブラックウッド製ベニヤの三角形から作られている。そしてボタンを押せば、2枚の小さな扉の後ろに隠された時計がゆっくりと姿を現す。
バラ色の内装。
時計を操作するために停まるときは、必ずハザードランプをつけること。
個性的な時計を装着しているときに、ダッシュボードにぽっかり穴が開いてしまうことがないよう、代わりになるコインが用意されている。
オーデマ ピゲの新しいコンセプトはストラップを簡単に付け替えることができるため、車載時にはヘッドをクルマのマウントに取り付けてダッシュボードクロックとして使用することもできる。ラバーストラップを使用しないときには、ドアポケットに入れることを想定した専用のレザーポーチも付属する。時計がないときでもチタン製のフレームが、オーデマ ピゲの職人が手作業でバラのエングレービングを施したホワイトゴールド製のコインを強調する。映像では時計の代わりにコインが収まっているのが確認できるため、時計を腕に装着しているときにもここに隙間ができることはないだろう。なお、ストラップ用のクイックリリースはケースバック側からアクセスする形になっているので、どうやって時計を取り出すのか実はよくわかっていない。おそらく、ほかの場所にちょっとした隙間があるに違いない。
ボートテイルには近未来的なテクノロジーが投入されているが、その一方でエレガントなアートのような印象もある。そのため、ロイヤル オーク コンセプトを、より伝統的なロイヤル オーク(同じぐらいモダンに見えるかもしれない)や特注品の懐中時計の代わりに使うのは少し場違いな感じもする。しかし私は顧客に特注ロールスロイスに対する感想を述べる権利はないと思っているし、そんなこととは関係なくこのクルマは本当に美しい。
“コーチビルド”のロールスロイスを手にするということは、いまやほとんどの時計ブランドで味わえないであろう贅沢の極みである。まるでヘンリー・グレーブス(Henry Graves)氏やジェームズ・ウォード・パッカード(James Ward Packard)氏がパテック フィリップにグランドコンプリケーションやスーパーコンプリケーションを特注していたあのころのようだ。ハイブリッドティーローズであるブラックバカラの花びらは、光の加減でブラックから濃いレッドバーガンディ、そしてポメグラネート(ザクロ色)へと変化する。これらの色は、寄木細工からカスタムカラーによる“トゥルーラブ”ペイントに至るまで、車体全体に使われている。取り外しできるようカスタムされたルーフにはエレクトロクロミック(電流を流したり電圧をかけることで色が可逆的に変化する技術)ガラスパネルが装備され、ロードスターとクーペをひとつにしたような雰囲気を味わうことができる。モノコックボディはスティール、アルミニウム、カーボンファイバーからなっており、インテリアからエクステリアまでその造形は驚くほど彫刻的だ。内部には6.7リッターV型12気筒エンジンが搭載され、最大馬力は593ps、最大トルクは620psを誇る。
また、新しいオーナーが新しいクルマ(と時計)を祝う準備が万全でないことを心配しているのなら、このクルマには特別に手配したシャンパーニュ ド ルッシのヴィンテージを入れる特注のロールスロイス製シャンパンチェストが付属している。足りないのは、ロールスロイス製のシャンパンサーベルぐらいだ。
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ロイヤル オークの詳細については、オーデマ ピゲのウェブサイトをご覧ください。
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