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Auctions クリスティーズ香港オークション"Legends of Time"で販売される3つの希少なパテック フィリップ

今週末のイブニングオークションには、凄まじい火力がありそうだ。

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今週末に開催されるクリスティーズ香港のイブニングセールは、アジアにおける10年に一度の時計オークションと言われている。香港時間の5月22日午後7時から開催される「Legends of Time」は、わずか18ロットで構成され、パテック フィリップの印象的な作品やその他の歴史的な作品が集まり、息を呑むようなクラフツマンシップが披露される。また、少しでも早く参加したい方のために、香港時間の同日午後2時から147個のロットからなるデイセールも開催される予定だ。

 ピストル型をした香水の噴霧器(もちろん時計が隠されている)から、プラチナ製のユニークなパテック フィリップ ワールドタイム Ref. 1415 HUまで、時代とメティエ(優れた技工)が芸術的に融合したセールとなっている。プラチナ製のワールドタイムに加えて、パテックのハイライトは、1890年にポーランドの貴族に販売されたグランド・コンプリケーションと、ユニークなムーンレス・パーペチュアルカレンダー(Ref. 3448 "センツァ・ルナ")である。Ref. 3448 "センツァ・ルナ" は、1975年にアンリ・スターンとフィリップ・スターンがアラン・バンベリーに贈ったものだ。


ロット 2513 – アラン・バンベリーの3448J "センツァ・ルナ"プロトタイプのリープイヤーインジケーターつき

 パテック フィリップにおいて、この特別な改造が施されたユニークピースのRef.3448に匹敵するほど、出自が明らかな腕時計はほとんどないだろう―これはジュネーブのマニュファクチュールで着用されたものだ。Ref.3448は、パテック フィリップの元セールスヘッド、アラン・バンベリーに贈呈されたものだ。

 バンベリーはスターン家とともに、パテックが時計のピラミッドの頂点に立つため、1970年代という重要な時代において大きな役割を果たした。後にバンベリーは、フィリップ・スターンがパテック フィリップミュージアムのコレクションを揃えるのを手伝った人物として、またマーティン・フーバーとともに権威ある書籍『Patek Philippe Wristwatches』を執筆した人物としても知られるようになった。

 1975年、スターン家からバンベリーに贈られたのが、このユニークなイエローゴールド製の伝説的モデル、Ref.3448自動巻き永久カレンダーだった。このモデルは、文字盤と機構に改良を加え、通常のムーンフェイズの代わりにうるう年表示を採用している。

 この時計に見覚えがあるならば、それは間違いない。これは20世紀のパテック フィリップの時計製造を象徴する作品であり、パテックの指導者一族が、最も重要で信頼できる幹部の一人に贈ったユニークな時計なのである。バンベリーは1999年に売却するまでの約25年間、このユニークなセンツァ・ルナを私物として着用していた。2008年以降は、アジアの著名なコレクターのコレクションとなっていた。

 完全な証明のついたバンベリー センツァ・ルナは、公に販売された他の6つのムーンレス(ムーンフェイズ表示のない)Ref.3448と比べても際立っており、月の代わりにうるう年を表示するように修正されたことが確認されている唯一のモデルだ。センツァ・ルナは、一般的に議論の余地がある時計ではあるが、バンベリーの個体は100%正規のものと考えられる。

 ハイ・エスティメートは、4000万香港ドル(この記事を書いている時点では約5億6000万円)となっており、このリファレンスの記録を更新することになりそうだ。この時計と、他の6つのムーンレスRef.3448の不思議なケースについての詳細は、2017年にカーラ(・バレット)が執筆した詳細な記事「パテック フィリップ Ref.3448 “センツァ・ルナ”と呼ばれる好奇心をそそる存在」をご覧ください。

ロット2513に関する詳細はこちら


ロット 2507 – プラチナ製のパテック フィリップ Ref.1415 HU、ユニークピース

 ミッドセンチュリーのパテック フィリップ製ワールドタイムは、それ自体がひとつのカテゴリーと言っても過言ではない。ちょうど1週間前、フィリップスがふたつのリューズを備えたRef.2523「ユーラシア」を800万スイスフラン(約9億7103万円)近くで販売したのを見た(詳細は、「フィリップス・ジュネーブ・ウォッチ・オークションXIIIで予想落札価格を大きく超えた10本の時計」参照)。これは、2019年にクリスティーズ香港が7017.5万香港ドルで販売した、ブルーエナメルの文字盤を備えたピンクゴールド製で、ミラノにある正規店ゴッビ(Gobbi)のダブルネームの例に続くもので、アジアで販売された最も高価な時計の記録を打ち立てた。

 Ref. 2523よりも小さく、初期のデザインを採用したプラチナ製の1415HUは、今回クリスティーズに出品された時計の中でも特に興味深いもので、独自の歴史をもつ時計だ。2002年に最後に出品されたとき、この時計は660万3500スイスフランで落札され、当時、世界で最も高価な腕時計の記録を打ち立てた。現在のハイ・エスティメートである2400万香港ドル(本稿執筆時には約3.3億円)だ。大型のパテック フィリップ Ref.2523ワールドタイムの価格と比較して控えめと感じるのは、現在の嗜好が、同じく出品されているRef.2523/1のような大型ケースとダブルクラウンの時計が好まれるからだろう。1415 HUは、2523と同様に、ジュネーブの有名な時計師でありムーブメント製作者であるルイ・コティエの作品であり、彼が1931年に発明した革新的なワールドタイム・コンプリケーションで知られている。

 ロット2507は、香港のイブニングセールで販売される2つの1415のうちのひとつだ。その次のロットは、1949年に製造されたクロワゾネによる世界地図のダイヤルを配したピンクゴールドの個体だ。そして、パテック フィリップのワールドタイムのロットをまとめると、1ロットあとにはイエローゴールドのRef. 2523/1が登場する。興味深いことに、これら3つのロットの高額査定額はすべて同じ2400万香港ドルだ。どれも特別なものだが、プラチナのユニークな性質と、かつて世界で最も高価な時計として君臨していたという事実は、特に注目に値する。

ロット 2507の詳細はこちら

ロット 2508: パテック フィリップ ワールドタイム Ref. 1415

ロット 2508: パテック フィリップ ワールドタイム Ref. 1415

ロット 2509: パテック フィリップ ワールドタイム Ref. 2523/1

ロット 2509: パテック フィリップ ワールドタイム Ref. 2523/1

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ロット 2506 – パテック フィリップ グラドフスキ グランドコンプリケーション

 1890年、パテック フィリップは、当時最も複雑な時計であった「グラドフスキ グランドコンプリケーション」を製作した。ポーランドの貴族であり、パテック フィリップの顧客であったジャン・ド・グラドフスキ(Jean de Gradowski)が購入したこの時計は、グランド&プチ・ソヌリ、瞬時送りの永久カレンダー、ユリウス暦とグレゴリオ暦の表示、ムーンフェイズ、60分まで記録可能なクロノグラフなどの複雑機構を搭載している。

 なぜ、2つの異なるカレンダーシステムによる日付の表示が必要なのかと思われるかもしれない。いい質問だ。グレゴリオ暦は、1582年にローマ教皇グレゴリウス13世によって公布されたが、ユリウス暦に代わる暦として一律に採用されたわけではない。ブルガリア(1915年)、ロシア(1917年)、オスマン帝国(1917年からルミ暦がユリウス暦からグレゴリオ暦に変更された)など、東欧やイスラム圏の国々があとになって採用したこともある。ジュネーブに住む貴族であるグラドフスキは、ユリウス暦を採用し続けている国の日付を知りたかったのかもしれない。

 グラドフスキの名は、グレイブスやパッカードといったアメリカの有名なコレクターの影に隠れているかもしれないが、この初期のユニークなパテック フィリップ グランドコンプリケーションは、時計製造の歴史の中で重要な作品であり、2002年に先出の2本と同じく香港で販売された。ハイ・エスティメートは1200万香港ドル(約1億6800万円)だ。

ロット2506の詳細はこちらから

クリスティーズの「Legends of Time」セールは、5月22日(土)香港時間午後7時(日本時間は午前8時)に開始される。詳しくは、クリスティーズ公式サイトへ。