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In-Depth 姿を消した最も偉大な12の腕時計

ポール・ニューマン(Paul Newman)のデイトナ、ジョン・レノン(John Lennon)のパテック フィリップ、最初のムーンウォッチ、そして大統領のプレジデントはいずれも姿を消した。

※本記事は、2014年6月2日に執筆した記事であり、登場する時計には既に発見されているものも含まれる。

 政治や大衆文化と腕時計との接点は興味深く、そのことを疑う余地はない。というより、私に仕事があるのはそのおかげだ。同様に興味深いのは、この接点の中心で、時計のコレクターやディーラー、そしてオークションハウスによってこういった時計の追求が繰り広げられている点だ。記録に残っている数少ない重要な腕時計や懐中時計が、未だに世界的に探し求められている。つまり、公に売却されたり所在を特定されたりしていないものの、35mmフィルムで撮影された不鮮明な写真や、人伝いに存在が確認されているような、例えばエリック・クラプトン(Eric Clapton)のプラチナの2499(パテック フィリップ)、マハトマ・ガンディー(Mahatma Gandhi)のゼニス社製懐中時計、スティーブ・マックイーン(Steve McQueen)のサブマリーナー5512(彼が所有していた数え切れないモナコについてはあえて触れないでおこう)といった時計だ。
 以下に、存在が確認されており強い関心を集めているものの、どうやら姿を消してしまったらしい時計を12本だけ紹介する。

パブロ・ピカソのジャガー・ルクルト トリプルカレンダーとロレックス GMTマスター

 有名な肖像写真家ユーサフ・カーシュ(Yousuf Karsh)によるピカソの肖像写真で目を引く、20世紀の巨匠の腕にはめられたジャガー・ルクルトのトリプルカレンダーについて、詳しいことは知られていない。しかしこの写真自体の愛好者はかなり多く、数千ドルで定期的に売却されている。またピカソがロレックスのGMTマスターを着用している写真も存在するが、その時計の所在も明らかではない。

カロリーヌ・ミュラのブレゲ No.2639(史上初の腕時計)

 史上初の腕時計は行方が不明だ。冗談抜きで。ブレゲNo.2639は、ナポリ王妃カロリーヌ・ミュラ直系の子孫によって1855年に修理に出されて以来、行方が知れない。私はパリのブレゲ・ミュージアムを訪れた際、ブレゲのアーカイブに記録されたオリジナルの記入を目にしたが、それに関するこちらの記事も興味深い。またパリに行く機会があればぜひ訪れてみて欲しい。この時計をハイエック一族が探し求めているのは確かだろう。

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マーロン・ブランド演じるカーツ大佐のロレックス GMTマスター

画像提供:Jake's Rolex World

 『地獄の黙示録』でカーツ大佐を演じたマーロン・ブランドの演技は伝説的としか言いようがないが、彼がトロピックストラップに搭載されたベゼルなしのロレックスGMTマスターを着用していたことは知っているだろうか?そう、着用していたのだ。彼が明らかに実生活でも使用していた、このGMTを着用するようになった経緯や撮影された後どうなったかについてはほとんど情報がないが、歴史に残る腕時計であることは確かだ。ロレックス愛用者であったブランドについてはこちらに詳しい記事がある。

編集者追記:この時計は既に見つかっている

もう1つのグレイブス アストロノミック コンプリケーション

 ヘンリー・グレイブス・ジュニア(Henry Graves Jr.)の超複雑時計は、1999年に1100万ドル(約1億2000万円)を超える値段で売却されたのち、行方が分からなくなった。時計はやがてサーニー家が所有していたことが明らかとなる。そして実はほとんど知られていない時計がもう1つある。公に売却されたことがなく、その時計の値段も数百万ドルにのぼる可能性がある。グレイブスのパテック コレクションの写真を見ると、数多くの時計の筆頭に超複雑時計があるが、そのすぐ下にアストロノミカル コンプリケーションの懐中時計がもう1つあるようだ。グレイブスを扱った2012年のサザビーズのオークションでは、製造が予定されていたこの時計用の箱が売れた。しかも3万ドル(約328万円)で、ただの箱がである。そう、この入札の関係者の中に、もう1つの偉大なグレイブス・ウォッチがどこに眠っているのか、見当がついている人がいたのではないだろうか。この時計が見つかるようなことがあれば分かるが、とてつもない時計だ。

ポール・ニューマン本人のロレックス ポール・ニューマン デイトナ 6239

画像提供:Jake's Rolex World

 この時計の所在は、なんとなく見当がついている。ポール・ニューマンの5本のデイトナはおそらく、上の写真で彼が着用している業界のゲームチェンジャーとなった6239も含め、今も彼の近親者の手元にある。近代のヴィンテージ・ロレックス収集界を現在の最高値圏へと押し上げたのはほぼ間違いなくこの6239で、ポール・ニューマン個人のポール・ニューマンの値打ちは全く見当がつかない。だが私は、いつか値段がつけられる日が来るだろうと思っている。

編集者追記:この時計は既に見つかっている 

バズ・オルドリンのオメガ スピードマスター

 これは20世紀で最も重要な腕時計かもしれない、それも紛失された時計の中で。ニール・アームストロング(Neil Armstrong)もオメガのスピードマスターを着用して月に行ったが、月面では着けていない。彼のモジュールはミッションタイマー機能が故障していたため機内に置いてきたのだ。一方バズ・オルドリンは時計を月面で着用していたので、彼のスピードマスターは伝説の時計となった。しかし地球に帰還後、オルドリンの時計がスミソニアンへ輸送中に紛失あるいは盗難にあったことはご存じだろうか?  彼のスピードマスターの行方が分からなくなったのだ。
 アームストロングのオメガは無事だったが、彼のオメガは月面に初めて着陸した時計ではない。オルドリンのオメガを所有していると主張する人も少数あらわれたが、いずれも信憑性に欠ける。オルドリンのオメガを手に入れた人間はその重要性を全く理解していなかったとみられているが、現在のところ、非常に不可解な近代の時計ミステリーのひとつだといっていいだろう。さて、バズ・オルドリンのオメガ スピードマスターは一体どこにあるのか?

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ジャン=クロード・キリー本人のジャン=クロード・キリー ダト・コンパックス

 ジャン=クロード・キリーは昔も今も超クールだ。ひと目見れば分かるだろう。スキー選手の王者キリーはスポーツ経営と事業で実りある成功を手にし、のちにロレックスの理事会メンバーにもなっている。ロレックスのダト・コンパックスを着用する彼は記録としてはほとんど残っていないが、所有していたことはよく知られている。実際、数年前にキリー氏に会う機会があり、オリジナルのダト・コンパックスがどこにあるか聞いてみたところ、当時の親友がその時計を非常に気に入っていたため結婚祝いとして彼に贈ったと教えてくれた。その友人がジャン=クロード・キリー本人が所有したジャン=クロード・キリーをまだ持っているかは不明だ。

ジョン・レノンのパテック フィリップ2499

画像提供:Beatles Photo Blog

 このことを知っている人はほとんどいないうえ、彼が実際にこの時計を所有していたのかこの写真の中で着けていただけなのかさえ定かではないが、「ジョン・レノンのパテック フィリップ2499」というものが存在する可能性は十分あるし、そうだとすればとにかくすごいとしか言いようがない。2499は、過去の記事にもあるとおり、地球上でもっとも伝説的で魅力的で貴重な時計の1つだが、そのうえビートルズメンバーの所有物コレクター(?)がどれだけ興味を持つか想像がつくだろう。噂によるとこのパテックは、オノ・ヨーコが40歳の誕生日にジョンに贈ったものだというが、これは全く裏付けのない情報である。

フィデル・カストロのロレックス  GMTマスター

画像提供:Reddit.com

 カストロは生涯にわたりロレックスのファンだった。少なくとも3本はあるロレックスのどれかを身に着けた写真は多数あり、1675を着用したこの写真もその1枚だ。他にクラウンガードのない初期のベークライトベゼル6542とデイトジャストを着けているところも目撃されている。彼の時計は今どこにあるのか? おそらくまだ彼か彼の家族の元にあると思われるが、カストロの6542を所有していると主張する男性に以前イタリアで出会ったことならある。

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マイルス・デイヴィスのブライトリング ナビタイマー

画像提供:Magnum Photos

 マイルス・デイヴィスはナビタイマー愛用者だったのか? 写真からも分かるが、まさにそのとおりだ。ジャズ演奏家だった彼の時計がどこにあるかは誰も知らないが、ある日ひょっこり出現したとしても驚かないだろう。興味深いのは、マグナムに所属していた写真家デニス・ストック(Dennis Stock)によって撮影された、最も有名なデイヴィスの写真の一部で彼がナビタイマーを着用していることだ。こちらに詳しい記事がある。

ジョンソン大統領のロレックス デイデイト

画像提供:Jake's Rolex World

 ジョンソン以前の大統領もロレックスを着用していたが、LBJ(リンドン・B・ジョンソン)のイエローゴールドのデイデイトこそが、この主力モデルに「プレジデント」という単語を印象づけたといっていいだろう。もちろん「プレジデント」は、実際にはデイデイトによくみられるブレスレットのクラスプが隠されたスタイルを指すのだが、このブレスレットに搭載された時計が「President's watch(大統領の時計)」として宣伝されたとき、それはそれで文字通り受け止められた。歴代すべての米大統領の時計を取り上げたエリック・ウィンド(Eric Wind)の素晴らしいレビューにもあるとおり、ジョンソンのデイデイトは現在行方不明だ。

 世界が、今なお行方を追っている最も興味深い時計を一部紹介したが、楽しんでもらえただろうか。今後もこういった話を入手したら記事を更新していく予定だ。