Bring a Loupe 1万ドル（約150万円）以下で手に入る珍しいロレックス3選

本稿は2013年7月に執筆された本国版の翻訳です。

　まずは1960年頃製の14Kイエローゴールド製ロレックス、Ref.6590だ。3・6・9時位置には、このリファレンスでしか見たことのない、興味深い“シャークティース（サメの歯）”インデックスがある。美しいクリーム色の文字盤にはわずかにパティーナがあるが、これはおそらく7時58分の位置に針が長期間（おそらく数年）置かれていたためにうっすらできた“ラジウム焼け”によるものだ。もうひとつ変わっているのは、ゴールドのドットミニッツ/セコンドマーカーの上に夜光が施されていること。もともと文字盤には夜光がないはずだが、夜光が追加されたのだろう。このリファレンスのほかの例を2、3見たが、ゴールドドットの上に同様の夜光があったので、これはロレックス自身が工場で後付けした可能性が高い。この時計はWannaBuyAwatchの1stDibsにて4250ドルで出品されており、日常的に見かける時計ではない。

　このロレックスは1955年製の素晴らしいRef.6480だ。文字盤は“シェブロン”と呼ばれるもので、防水性は50mと記載されている。文字盤が新品同様のように見えるのは、おそらく夜光が塗布されておらず、元の針にも夜光がなかったことが大きいと思われる。ヴィンテージウォッチのレビューを見ると、文字盤の保存状態がいいものは放射性物質が含まれた夜光を使用していないことが多い。逆に放射性物質があるとそれが針から落ちたり、夜光のドットが割れ、文字盤が焼けたり、またまだら模様になったりする可能性がある。

　ケースは軽くポリッシュされているように見えるが、美しくも太いラグを備えている。ロンドンでその時計を見る機会があったのだが、すっかり気に入ってしまった。ムーブメントは17石の手巻きムーブメントで、素晴らしいコンディションである。多くのコレクターがシェブロンダイヤルのRef.6480を愛用しているが、その理由は明確だろう。これは私が見たなかで初めての夜光なしバージョンであり、防水性表示も初見だ。興味深いことに、赤い防水性表示を持つ非常に魅力的なロレックス　エクスプローラー Ref.6610や、そのほかの珍しい防水性表示を持つロレックスも、1955/1956年の期間に登場している。こちらは19mmのストラップまたはブレスレットに対応する。Corr Vintage Watchesで時計の確認が可能だ。

　興味深い起源を持つロレックスは常に特別であり、この個体も例外ではない。一見するとこれは1930年代に製造された珍しい18Kゴールドのロレックスで、見事な光沢を放つブラックギルト文字盤と美しいアラビア数字が特徴である。クッションケースも見事で、1度もポリッシュされていないように見える。また“ステップ”ラグも必見だ！　70年以上経った今でも、それがそのまま残っているのは非常に珍しい。また時計のラグは固定されており、ロレックスアーミー（クッション）のRef.3139に似ているのも興味深い。

　ケースバックにはさらに別のことが書かれている。ダリー語による刻印は、1919年から1929年までアフガニスタンを統治していた“ガージ（英雄）”として知られるアマーヌッラー・ハーン（Amanullah Khan）からの贈り物であることを示唆する、王室の紋章がエングレービングされている。刻印の下にある4つの文字は、イランでいうところの1318年を表しており、グレゴリオ暦では1939年から1940年であることから、この年に贈られたものであることがわかる。ハーンは1929年にアフガニスタンを離れてインドに亡命し、その後イタリア、そして1960年に亡くなるまでスイスに移住していたため、この時計は亡命中に与えられたものであるとわかる。全体的に素晴らしい時計だ。Fourtanéにて、1万ドル以下で提供していた。