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コレクターと時計界の人物にフォーカスした新しいインタビュー・コラムをスタートすると決めた時点で、最初にインタビューすべき人物はジョン・ゴールドバーガー氏であるというのは、すぐに決まりました。Talking Watchesでの彼のエピソード(かの有名なチーズナイフのシーン)や世界一すばらしい時計たちについて書かれた彼の本、あるいはオークションや世界中のイベントに常に参加している姿などを考慮すると、ゴールドバーガー氏こそが時計業界そのものであり、ファンの憧れであるという結論に至ったのです。今回は、彼のコレクションがどのように進化を遂げてきたのかを始め、時計の魅力に最近取りつかれた人達へのアドバイスや、なぜ彼は5711マニアのことを受け入れられないのかなどを伺う予定です。
さあ、さっそくジョン・ゴールドバーガー氏をお迎えしましょう。
編注:10 Questionsは、時計界において最も興味深い人達を選び、インタビューするという新たなコラム連載です。時計収集の現状について、レジェンドたちが思うことをお話頂く予定ですので、どんな方の出演を希望するか、ぜひコメント欄からご連絡ください。
ゴールドバーガー氏所有、ロレックスRef. 6098 の美しいスターダイヤル。
1.2013年のあなたのTalking Watchesのエピソード以降、新たにコレクションに加わったお気に入りの時計は何ですか?
過去数年、私は自身のコレクションを縮小し、時計の質と希少性を改善しよう努力してきました。お気に入りの新しい時計は、ゴールドのパテック フィリップ 自動巻きパーペチュアルカレンダーRef. 3448。珍しいギルトダイヤルに、夜光塗料付きのマーカーと針が特徴です。この時計は、オリジナルの外装箱と1971年の証明書も付いているという完璧な物です。このモデルはジュネーブのメーカーによる、最後の素晴らしいデザインの腕時計のひとつだと信じています。
2.2020年を迎え、新たな10年の周期に入りました。過去10年を振り返ってみて、時計収集において一番大きく変化したことは何だと思いますか?
ソーシャルネットワーク革命、特にインスタグラムが時計コレクションの世界を根本から変化させました。しかし、ウェブ民主主義によってコレクターにも新世代が生まれましたが、同時に頭でっかちでお馬鹿なコレクターもたくさん作り出してしまったようです。過去20年の間に、時計コレクターとディーラーのコミュニティはより緊密でしっかり絡み合ったものになり、インターネットに負うところが大きいとはいえ、交換・利用される情報量も飛躍的に大きくなりました。インターネットのおかげで世界の人口の相当な割合の人達が、少数の人しか知りえない、あるいは奥義のような時計や時計学についての情報にもアクセスできるようになりました。ウェブ上のディスカッション・フォーラム、ブログ、そしてSNSによって巨大かつグローバルな聴衆が生まれ、ヴィンテージ、モダンを問わず時計に関するあらゆる情報に飢えた状態になっています。
パテック フィリップ Ref. 3448イエローゴールド。
3.コレクター初心者が最初に持つべきベスト・ヴィンテージウォッチは何だと思いますか?
私は、時計収集を始めるベストモデルはオメガ スピードマスターだと思います。オメガはこのモデルを1957年から今日まで生産を続けていますので、モデルの数も多く、ケース、ダイヤル、ムーブメントのバラエティも豊富です。コレクター初心者でもこの時計の情報は、フォーラムやブログから見つけることができるでしょう。また、この時計に関する素晴らしい本もたくさん出版されています。一番大切なことはこの時計はデイリーウォッチとしても素晴らしいものだということです。
ゴールドバーガー氏はコレクター初心者にクラシックなオメガ スピードマスターから始めることを推奨しています。
4.今、一番コスパの高いヴィンテージウォッチは何だと思いますか?
いい質問ですね。誰もが時間の経過と共に値上がりするブランドやモデルは何かを知りたがるものです。市場に出回っている時計で一番割安なのは、パテック、オーデマ ピゲやカルティエの複雑機構の懐中時計です。腕時計に関しては、過去から忘れられているようなブランドやモデルについて思い当たるものが今、私にはありません。つまり、見つかっていないものはもうないということです。数年前、私は、価格もそれほど高くないと思ったので、ヴィンテージ・グランドセイコーのコレクションを少し始めようと思いました。ところが、信じられないことに既に世界中に素晴らしいコレクションがあり、価格も大変高いことが分かりました。
ジェンタのデザインはクラシックではありますが、ゴールドバーガー氏にはロイヤル オーク、ノーチラスなどの生まれ変わりのような時計を収集するマニアが理解できないようです。
5.現行のブレスレットタイプのSSウォッチ(ロイヤル オーク、ノーチラスなど)というトレンドについてはどう思われますか? このトレンドはまだ続くと思いますか。それともこのトレンドもすぐ変わると思われますか?
これらの時計は普段使いにも素晴らしいものです。ヴィンテージでありながら、コンテンポラリーな外観でこのデザインは流行に流されるものではないでしょう。しかし、私が理解できないのは、過去15年間に製造されたモデルにとんでもない価格がついていることです。
成功するコレクターとは時として
イノベーターでもあり、
多くの人が見過ごす物の中から
素晴らしい物を掘り出すことが
できる人のことです。
6.ヴィンテージウォッチ愛好家にとって世界一の都市はどこですか? なぜその都市が一番なのでしょうか?
私の長いコレクター人生で、ヴィンテージウォッチを求めて旅をし、時代毎に違った数多くの興味深い都市と巡り合いました。80年代であれば、ニューヨーク。90年代はミラノ。2000年代初頭は、バンコク。そして今私が一番エキサイティングな都市で何よりもハマっているのは、たくさんの興味深い店やコレクターがいる東京です。
ゴールドバーガー氏所有のRef. 4113 ロレックス スプリットセコンド クロノグラフ。
7.どのコンプリケーションを気に入っていますか? それはどうしてですか?
スプリットセコンド・クロノグラフです。パテック フィリップの古くからの時計技術者と話したことがあるのですが、取り付けるのが一番難しいコンプリケーションムーブメントがこれなのだと言っていました。私はパイロット用あるいはカーレース用に作られたオーバーサイズのスプリットセコンドが大好きです。
8.もしあなたが若い時計コレクター初心者に何かアドバイスするとしたら、それは何でしょうか?
あなたが大好きなもの(もちろん購入できる価格のもの)を購入すること。本物のコレクターとは、自身のコレクションの限界を誇張せずにしっかり決めて、時には冷酷に、素晴らしい決断をしなければなりません。しっかり時間をかけて必要な知識を習得し、理に適った決断ができるようになれば、自分の手持ちの予算に見合う美しい時計コレクションを築き上げることでできるでしょう。成功するコレクターとは時としてイノベーターでもあり、多くの人が見過ごす物の中から素晴らしい物を掘り出すことができる人のことです。このような直観がベストな買い物を可能にし、コレクターに幸先の良いスタートをプレゼントしてくれるのです。情熱をもって収集し、マネーゲームであるという考えは捨てることです。
ホワイトゴールドのデイトナ Ref.6265 通称"ユニコーン"は、593万7500スイスフラン(約6億6050万円)で2018年5月に落札され、収益は子供たちのための慈善事業に寄付された。
9.2018年にあなたは“ユニコーン”6265(Talking Watchesのエピソードでも取り上げた)をフィリップス社を通じて慈善事業のためにオークションに出品しました。この大変珍しい時計を売る決断をするのは大変だったのではないでしょうか。特別な時計を売るかどうかを決めるときはどんなことを考えたのでしょうか。
私は、この時計を売り、慈善事業に寄付することで社会にプラスのインパクトを与えることができると考えました。あの時計も新しい家に移るタイミングだと思いましたし、同時に私自身が常に気にかけている社会問題の原因をケアすることは必要なことだとも思ったのです。過去にも、時計を売ったことがありましたが、その時は希少価値の高い他の素晴らしい時計を購入する資金を得るためでした。
もしもまだジョン・ゴールドバーガー氏のインスタグラム(@goldberger)をフォローしていないのであれば、あなたは相当損していますよ。
10.今現在探している時計は何でしょうか。なぜその時計に興味を持っているのでしょうか?
夢の時計というのは、私にとっていつも次の新しい発見です。今はホワイトゴールドあるいはプラチナのグランドセイコーを見つけたいと思っています。ケースのクリーンなデザインが好きですし、ムーブメントの仕上げが素晴らしいからです。
ジョン・ゴールドバーガー氏、インタビューをお受け頂きありがとうございました。そして、皆さん、お伝えした通り、次の10 Questionsで誰の話を聞きたいか、ぜひ以下のコメント欄に投稿お願いします。
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