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In-Depth フリースタイル シャークウォッチの最も信頼のおける詳細解説

サーフスタイルのシャークは、ある世代にとって究極のスターターウォッチだった。今回は、かつてのオーナーが子供のころに愛用していた時計の歴史を探る。


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私の最初の時計について2回ほど話したことがある。どちらも、文字通りの最初の時計ではないことをほのめかしていた。いずれこの時計について書くことになっても、誰にも嘘つきと言われないように。

 私はもちろん、フリースタイルのシャークウォッチについて語ろうとしている。カシオでもなくタイメックスでもない、我々の多くが子供のころに親しんだデジタルウォッチだ。1981年、南カリフォルニアの荒波と砂浜のなかで生まれたシャークは、現在40周年を迎えた。初めてこの記事を読んで年を取ったと感じるかもしれない(この記事だけではないだろうが)。私を含め多くの人間がこれを子供時代の時計だと思っているが、子供ために作られたものではない(あるいはなかった)。シャークは昔も今もサーファーのための時計なのだ。

 80年代初頭、フリースタイルブランドは、エクストリームスポーツ、すなわちサーフィンに適した時計を作ることに専念していた。実際、シャークはサーフウォッチとして設計された最初の時計だった。南カリフォルニア出身の2人のブランド設立者は、海での過酷な使用に耐えうる時計を求めていたのだ。

 一見、特殊に見えるかもしれないが、このアイデアは受け入れられた。フリースタイルの初代オーナー(現在に至るまでオーナーの名前は謎だ)は、基本的に事業運営に関してはすべて自分たちで行っていた。時計をデザインし、製造する。海外の工場との提携も交渉した。少しずつファンを増やし、80年代から90年代にかけてブランドは絶大な人気を博した。ちょうどそのころ、サーフカルチャーがブームになり始め、キアヌ・リーブスやパトリック・スウェイジが主演した『ハートブルー(原題:Point Break)』が公開されていた。

1988年、サーフィンをテーマにしたシャークウォッチの広告

 シャークウォッチがどのような時代に登場したかを認識することは重要だ。1981年はクォーツ革命の真っ只中にあった。80年代には、ニコラス・ハイエックがスイスの時計業界を崩壊の危機から救うためにスウォッチを発表した。この時代のスウォッチの広告を見ると、色とりどりのアバンギャルドなデザインが目に飛び込んでくる。なぜなら、時計に電池を搭載するなら、いい意味でクレイジーなデザインでなければならなかったからだ。

 しかし、シャークはスウォッチに2年先んじて市場に投入されていた。色や色調など、オリジナルのスウォッチに影響を与えていることは一目瞭然だ。しかし、その影響やインスピレーションはお互いに与え合ったものであり、それは時計業界では当たり前のことだった。この2つのブランドの決定的な違いは、流通にあった。スウォッチはフリースタイルに比べ流通量が圧倒的に多く、大きなデパートで販売されていたのに対し、シャークウォッチはサーフショップを中心に販売されているニッチな商品だった。

水中に沈められた80年代のシャークウォッチコレクション。

 フリースタイルは、知る人ぞ知る存在のインディーズ企業という役割を担っていた。逆にスウォッチは、時計業界におけるラジオのトップ40に相当する存在だった。

 裏を返せば、フリースタイルにはスウォッチのようにビジネスを拡大する力がなかったということだ。そのため、フリースタイルは地味な存在であることに満足してはいたものの、それが唯一の道であることも認識していた。しかし、80年代にビジネスがうまくいっていなかったわけではない。それどころか非常にうまくいっていたのだ。家族経営の小売店の世界ではシャークは非常に成功しており、ショップオーナーがシャークを店の主力アイテムにしているほどだった。店が消費者に売ろうとしたのではなく、消費者がそれを求めていたからだ。シャークは、チェック柄のVANSに合う時計を必要とする、ジェフ・スピコリになりたい若者の文化に浸透していったのだ。

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 誤解のないように言っておくと、シャークは優れた時計製造や計時を主張するものではない。まず、デジタルであること、そして60ドルという低価格であること(サブマリーナー1本は、シャーク166本分の価格だ)が挙げられる。また、この時計がサポートしているスポーツのように、この時計はある種の自由な空気、そして波のような雰囲気を醸し出す。メリーランド育ちの若者だった私が求めていたのは、まさにこれだった。

 私はかつてフリースタイルのシャークを所有していたことを誇りに思っている。1980年代の終わりに生まれた私にとって、この時計との出会いはすべて90年代のことだった。シャークをつけていたときは、ニコロデオンを見たりベーグルバイツ(冷凍ピザ)を食べたりするのに忙しかったので、スピコリが何者かはわからなかったが、時計のことはわかっていた。私がもっていたのは黒のシャークリーシュで、特殊なベルクロストラップがついていた。何度か紹介したことがあるが(特にここここ)、これが私の本当の最初の時計だったのだ。この時計と、その後に購入した時計製造的に重要な作品との違いは、所有していた当時、私は何も考えていなかったということだ。時間を教えてくれて、その見た目が好きだった。ただ、それだけだ。私は10歳だったのだ。

 オリジナルのシャークウォッチには2つのモデルがある。クリップとリーシュだ。2つのモデルの主な違いは、ストラップの取り付け方法で、1つはスナップイン方式、もう1つはベルクロ方式だ。最初に発売されたリーシュは、サーフボードに付いているリーシュ(コード)を模したベルクロ式ストラップが付いていた。次に登場したクリップは、ベルクロではなくプラスチック製のケースを採用した。この2つのモデルは、シャークコレクションの礎となっており、現在もほぼオリジナルの形で販売されている。

 フリースタイルは1990年代の終わりまで、この2つの時計で成功を収めたが、それをピークにシャークのビジネスは衰退していった。これにはニクソンのようなブランドが登場したことや、スケートボードの台頭がサーフィン人気を上回ったことなどが関係している。ビジネスが停滞してしまったのだ。

 同社は提供する商品を多様化することを決めたが、それは伝統的なシャークから離れ、新しい時計コレクションを作ることを意味した。フリースタイルは、カシオやタイメックスといったエントリーレベルのブランドに対抗する選択をした。ニクソンやG-SHOCKが市場でより積極的に展開したため、フリースタイルはアナデジモデルのシャークXで対応した。さらにブランドは、サーファーのシェーン・ドリアンやコーリー・ロペスを起用した特別仕様の時計を展開した。ハンマーヘッドと呼ばれるダイバーズウォッチも作られた(現在も生産されている)。典型的なラバーストラップ、頑丈なステンレススティールケース、回転ベゼルが特徴だ。

フリースタイルのハンマーヘッド

 これらの時計はいずれも、シャークウォッチの売上減少を補うという意味では、ある種の成功を収めた。しかし、シャークほどの成功を収めたものはなかった。

 2000年に元のオーナーはフリースタイルを売りに出し、ジュネーブウォッチグループ(Geneva Watch Group、以降GWG)に買収された。ケネス・コール、トミー・バハマ、スペリーなどのライセンスブランドで知られるアメリカの会社だ。この間もフリースタイルブランドは存続したが、シャークウォッチの人気は衰えた。

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 2004年、GWGのもと、フリースタイルはシャークに再び光を当てた。デジタル表示とベゼルに小さな改良を加え、それぞれを大きく読みやすくしたのだ。その結果、フリースタイルはある程度人気を取り戻したが、まだいくつかの問題が残っていた。ひとつには市場が変化し、顧客のブランドに対する認識が変わったことがある。サーファーのための時計であるシャークウォッチという会社ではなく、多様な時計のポートフォリオの一つであり、中心的なアイデンティティーをもたない普通の時計会社であると認識されていたのだ。

 それからの数年間、ブランドは前進し続けた。GWGは百貨店の会社であり、このチャネルにアクセスできるため、百貨店へ進出した。そしてフリースタイルブランドの高度計など、アウトドア関連製品の提供も試みた。フリースタイルのスマートウォッチやニクソンに対抗したベルベットシャークと呼ばれるスケートウォッチまであった。しかし、何も起こらなかった。

ベルベットシャーク

 GWGは2015~2016年に破産申請を行い、ライセンスと製造販売の会社であるILG(International Luxury Group)というブランドの子会社となった。ILGはGWGを買収したのち、フリースタイルブランドを売りに出した。破産手続きの混乱のなか、フリースタイルの生産活動は停止した。工場が閉鎖され、時計の生産、出荷、販売ができなくなってしまったのだ。ブランドの存続が危ぶまれた。

 アメリカの個人投資家たちが、休眠状態にあるブランドに将来の可能性を見出した。彼らは2017年にフリースタイル(とシャークウォッチ)を衰退から救い出した。この買収(プライベートセールだったので金額は不明)は、フリースタイルが再び100%株式非公開の企業になったことを意味する。ブランドの原点回帰とも言えるものであり、現在でも続いている。

 新オーナーは、限られた在庫を購入し、今後の方針を決める必要があった。疑問はなかったのだろうか? シャークはブランドの人気を高めたものであり、今でも消費者に知られているものだ。リーシュとクリップは、再びブランドの未来を担うものとなった。前進するために、フリースタイルは過去を振り返らなければならなかったのだ。

 その間、フリースタイルの時計はさまざまなグレーマーケットのウェブサイトで60~70%という値下げ率で出回っていた。新しいオーナーは、それらの製品を統合して社内に戻したいと考え、時計を買い戻すというミッションを実行した。それは基本的にブランドの品位のためだった。

 彼らはシャークフィンのシルエットにすべてを集中させ、リニューアルに際し、インスタグラム上でそれに焦点を当てて紹介した。サーフカルチャーの主な宣伝は、ほかのあらゆるカルチャーと同様、SNAに移行した。特に若々しくカラフルで、手ごろな価格の商品に関してはそうだ。

 現行のシャークは、10歳の私がつけていたモデルと実質的に変わっていない。今でも専門店やズーミーズ(Zumiez)などの店舗で販売されているが、オンラインで直接購入することもできる。一見すると、カシオや小振りなG-SHOCKと間違えてしまうかもしれない。というのも、最近のシャーク(というかフリースタイル)には、デジタル界の競合他社のようなブランド力や知名度がないからだ。また、G-SHOCKのような耐久性ももたない。その代わりに、シャークはシンプルな時刻表示を提供し、波に対する100mの防水性を備えている。

 ケースはどこから見ても四角い。ケースの直径は38mmで、フリースタイルブランドではミディアムサイズとしている(子供にはかなり大きいようだが、私は問題なく装着できた)。子供のころはケースをじっくり見たことはなかったが、今見てみると、技術的にも全体的なデザインにも注意が払われていることがわかる。スロープ状のラグをはじめ、あらゆるところに角度がつけられ、ベゼルのようなものも組み込まれている。ケースの両サイドには、さまざまな機能をコントロールするボタンが配置されており、デュアルタイム、アラーム、ミリタリー(24時間)タイムなどの機能を備えている。

 これらのボタンは“ハイドロプッシャー”と呼ばれ、水中でのボタン操作を可能にしている。これは一般的な機械式クロノグラフでは絶対に不可能(要注意)だ。ハイドロプッシャーは全部で4つある。モードボタン、バックライトを作動させるボタン、計時またはストップウォッチ機能を開始するボタン、そしてリセットボタンだ。

 タイメックスのデジタルウォッチではバックライト機能をインディグロと呼んでいるが、これはとても素敵で覚えやすい名前だと思っていた。シャークウォッチのネーミングは、私の子供心をくすぐるものだ。その名も“ナイトビジョン”。夜になって時間が読めなくなったらどうするか? ナイトビジョンを起動するのだ。ベゼルの上部には“Night Vision”の文字が刻まれている。

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 最新のデジタルウォッチと比較すると、シャークのディスプレイ面積は小さいが、どこか懐かしい雰囲気を醸し出している。そこには、時刻、曜日の2文字、日付、AM/PMが表示される。ディスプレイを囲むフレームの表面には、レトロなスクリプト書体で書かれたフリースタイルのブランドと不朽のフィンロゴをもつシャークの両方のロゴが配置されている。

 シャーククリップとリーシュの違いは、その固定方法にある。クリップは文字通りのスナップクリップシステムを採用している。リーシュのストラップは丈夫なポリエステル製(肌触りはあまり良くないが)で、クリップのストラップはナイロン製だ。どちらも2つのブランドパッチが付いている。1つはケースの上部近くに、もう1つは下部にあり、時計のモデルを表現している。ストラップの幅は20mmだ。

シャーククリップ

シャークリーシュ

 若いころの私がシャークリーシュを評価したのは、マジックテープの使いやすさだった。ストラップを手首に巻きつけて、それを押し下げるだけでよかったのだ。まるで、靴ひもの結び方を覚える前に使っていたベルクロのスニーカーのように。私にとって(そして多分、多くの人にとって)、シャークは単に時間を知らせるだけでなく、さまざまな意味でスターターウォッチなのだ。

 独立して経営されている現在の形で、フリースタイルとシャークウォッチは上手くいっている。ブランド担当者によると、2017年以降の成長は“二桁”だという。そして「今年はその軌跡を25%上回っています」とのこと。

 フリースタイルは、商品のリリースを少量のモデルに移行し、その過程で元々あったカルト的な人気を取り戻した。ファンは時計を集めるだけでなく、自分の日焼けした手首(シャークタン)をSNSで共有している。10代のカップルは、ペアでシャークウォッチをもっている。こうした口コミによるマーケティングは、この時計のインディーズのルーツによく合っているようだ。

 現在のフリースタイルは、顧客からのフィードバックを非常に重視しており、その意見を新しい製品に反映させている。最近ではApple Watch用のストラップにも参入し、アイコンであるシャークのストラップをApple Watchのユーザーが装着できるようにした。

 80年代半ばから90年代に生まれた人たちにとって、この時計は子供のころの記憶を呼び起こすに違いない。昨年のHODINKEE Friday Liveで、カーラ・バレットと子供のころにシャークウォッチをもっていたという話をしたのを思い出す。彼女は、私がまだ踏んでいない論理的なステップを踏んで、大人になった自分のために驚くほどカラフルな1本を買った。

 自分が使ったオリジナルを思慮深くキープしていた第一世代のシャークオーナーは、今ではそれを自分たちの子供に渡せる年齢になった。子供たちはSNSを駆使するジェネレーションZだ。フリースタイルがこのようなプロモーションに力を入れているのも納得である。

 すべての時計が技術的に優れていたり、永続的な価値をもつ必要はない。時には過去への憧れが我々に喜びをもたらすこともあるし、2人分のディナーよりも安い値段で楽しめる時計の魅力もある。私はシャークウォッチを、ゲームボーイやメンコ、ストレッチアームストロングのフィギュアと同じように考えている。私の青春の記念なのだ。年を取ったからといって、それらがなくなるわけではない(ゲームボーイ、メンコ、ストレッチアームストロングはもうもっていないが)。シャークがまだマーケットで現役で、新しい世代を取り込んでいるのを見るのは嬉しいことだ。

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