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Buying, Selling, & Collecting イエローゴールド崇拝者のためのツールウォッチ入門

光り輝くものすべてがゴールドとは限らない。オイスタースティールだってアリという話。

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Photos by Mark Kauzlarich

私はイエローゴールド(YG)の祭壇の崇拝者だ。大げさに聞こえるかもしれないが、YGは私にとってかけがえのない存在であり、その崇高さを布教したいと考えている。

 これほどまでに私を引きつける素材はほかにない。YGはまさに豊かさの象徴だ。クラブでタバコの煙を燻らせ、全身ダイヤモンドジュエリーで着飾った時代を彷彿とさせる。また、YGは私の快楽主義的な面も刺激する。映画『カジノ』でブルガリのジュエリーと毛皮を纏ったシャロン・ストーン(Sharon Stone)を気取って、1日中グレイグース・マティーニをあおっていたい。私はよく70年代のブルジョア・ボヘミアン(高等遊民。フランス人はボボと呼ぶ)の生活を夢想する。私の脳裏には16歳の頃からホルストン(HALSTON)のランウェイでエルサ・ペレッティ(Elsa Peretti)が彼女の名を冠したボーンカフスをつけているイメージが焼き付いている(クリスマスには、YGのボーンカフスを買おうと宣言している)。私は、誰もが認める80年代に一世を風靡したフープイヤリングの女王、シャーデー・アデュ(歌手)の祭壇に18KYGの供物を捧げるだろう。

 閑話休題。今回の話題は時計だ。

 私は何が自分の好みなのか熟知した女性だと自負している。YGの3重巻きのセルペンティは? 欲しいわ。ヴィンテージのYG製ピアジェのポロはいかが? 1本買うかも。カルティエのサントスは? 考えてみただけで足がすくんじゃう。では、なぜ私は敬虔なプレシャスメタル信者から、豪華絢爛とは対極にあるロレックス エクスプローラーのオーナーになったのか説明したい。

Rolex Explorer with jewelry

ロレックスのエクスプローラー Ref.114270は、私の腕にとてもよくなじんでいる。ジュエリーはすべてCamilla Dietz Bergeron Ltd.より提供。

私のツールウォッチの旅が始まった、まさにその瞬間をはっきりと覚えている。それは、猛暑のマイアミで開催されたF1グランプリにIWCをつけて観戦したときのことだ。このイベントのために、IWCは寛大にもパイロット・ウォッチ・クロノグラフ 41を貸し出してくれたのだ。私の好みからすると少し大きめだったが、新しい発見は、時刻が読みやすいことだった。HODINKEEのツールウォッチ博士、コール・ペニントンは満面の笑みで、半ばからかうように“こっちの世界へようこそ”と話しかけてきたが、実際のところ彼は正しく、その日から私の旅は始まった。私はすっかりツールウォッチに興味津々となった。

 正直に言うと、特別な機能を持った時計を探していたわけでもなく、ダイビングや登山をするわけでもなく、はたまた読者が想像するようなアウトドアなど夢にも思っておらず、ただ視認性の高さに引かれたのだ。雰囲気重視の実用的な外見も嫌いじゃなかった。見た目が好きなら、機能はどうでもいいことだってある。知的完成度の高いことがすべてというわけではない。時には、それがどう見えるかが大事であって、私にとって“時には”とは、“常に”ということでもある。

 私はまず38mmのオメガのスピードマスターから探し始めたが、楕円形のサブダイヤルは私にはしっくりこなかった。次に見たチューダーのブラックベイ 36は、何だかロレックスになり損なったみたいな気がしたのに加え、アラビア数字がないのはツールウォッチというジャンルには致命的欠陥にも思えた。IWCのパイロット・ウォッチ・オートマティック 36も検討したが、まずはなじみのあるブランドで徐々に慣らしていく必要があった。

 最大の決め手はサイズだった。自分の性別を主張するような時計は避けたかった。女性は社会批判のために大きな時計をつけるわけではない。大きな時計を楽しんでいる女性をたくさん知っているし、彼女たちはそれを身につけることが心地よいからこそ、うまくつけこなしているのだ。一方、私は大きな時計が好きではない。自分の手首に大きな時計があると、ややパフォーマンス過剰な感じがするからだ。明日には気が変わるかもしれない。しかし今に限っては、大きな時計にはNOと言いたい。

 「騙されたと思ってロレックスのエクスプローラーを試してみてよ」と、時計愛好家界隈の末席にいる無名のジャーナリストが言ってきた。スムースベゼルのロレックスを想像するだけで、私は違和感を覚え、あえて言えば、少し吐き気を催した。私は母の26mmのデイトジャストを見慣れていたので、ロレックスにはフルーテッドベゼルがしっくりくると感じていたからだ。見た目よりも実用性を重視するには、私は未熟だった。

Rolex Explorer surrounded by gold

 その後YGのレベルソやパテックのRef.3800など、ほかの時計に興味が移ったため、ツールウォッチ探しは一時中断していた。

 そして、6月のある晴れた日、ある撮影でたまたまロレックスのエクスプローラーと対面することになった。“あら”と一瞬考えて、その後私は感じた。時計を身につけた瞬間、体中にアドレナリンが放出され、これは運命だと感じ、そしてその時計を外す時に叫びたくなった。

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 エクスプローラーは、時計愛好家が選ぶロレックスのエントリーモデルとして、多くのファンを抱えているモデルだということを知るようになった。マーク・チョー氏の最初の高級時計はエクスプローラーだったし、ベン・クライマーも例に漏れず、Collective Horologyのゲイブ・ライリー氏も3本を購入したという伝説があるモデルだ。エクスプローラーにまつわるエピソードは人それぞれだが、私の場合は控えめなラグジュアリーを求める気持ちがきっかけだった。YG好きな女の子が控えめでありたいなんてお笑い種だって? さらに言えば、ロレックスを身につけておきながら、控えめでありたいなんて矛盾していないだろうか? しかし、エクスプローラーに限っては、時計をしない一般の人から見て、それがロレックスであることに気づくことはない。この時計には、影響力を誇示するGMTベゼルはないが、「私はこの時計が好きなだけで、承認欲求を満たす必要はなく、地味だからつけている」という洗練された体裁があるのだ。それに2022年は控えめなラグジュアリーが、旬に感じられる。

 だから当然、次のステップはその時計を借りて、テストすることだった。57番街にあるTourneau Bucherer Time Machineの中古時計コーナーから取材用として借りてみた。無料のコーヒーバーで何週間もたむろして、話を聞いてくれるスタッフなら誰とでも話をしたあと、普通の人と同じようにこの時計を購入した。

Rolex Explorer surrounded by gold jewelry

ロレックス エクスプローラー版『ウォーリーを探せ』。あなたは見つけられるだろうか? ジュエリーはすべてCamilla Dietz Bergeron Ltd.より提供。

 いつかロレックスもYGのエクスプローラーIを作るかもしれないが、今のところオイスタースティール製のRef.114270は、私のスピリチュアルな朝のアクセサリー装着の儀式の一部になっている。私はこの時計をジーンズや、クレージュのロイヤルブルーのパテントレザーのスカートとジャケットに合わせて身につけている。街を歩きながらメルセデス針を眺め、YGの装飾品を身につけていないにもかかわらず、グラマラスな気分に浸ることができる。地下鉄に乗ると、3、6、9の数字が完璧に読み取れ、所有者としての誇りと、盗まれやしないかと恐怖で胸が高鳴る。私はこの時計を眺めるのが好きだ。時間を知ることができるという単純なスリルに始まり、今ではもっと複雑な理由でこの時計を愛している。この新しい時計は、私に人前で安心して活動するためのライセンスのようなものを与えてくれるのだ。それが、私のIYKYK(If You Know, You Know, 知る人ぞ知る )ウォッチだ。ロレックスファンの同僚、ダニー・ミルトンも私に同意している。「身につける感覚が好きなんだ。とても小さくて控えめだから、まるで自分の一部のように感じるんだ」

 私たちはまだハネムーンの段階だ。この先、どうなるかは誰にもわからない。腕時計を1本に絞る夢はあるが、これを買ってしまった以上、人格を入れ替える余裕はないだろう。はっきりさせておきたいのは、この時計が決して私の嗜好を変えたわけではないということだ。先述したように、私は自分が好きなものを熟知している。YGに彩られたことで、私は自分のレパートリーを充実させただけだ。そしてその旅はまだ続く。

Malaika in her watch

エクスプローラーをつけた筆者。Camilla Dietz Bergeron Ltd.にこの場を借りて感謝したい。ここはヴィンテージジュエリー愛好家のための、ニューヨークの至宝だ。

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HODINKEE Shopでは、アウトドアに最適な腕時計を厳選してご紹介しています。コレクションの詳細はこちら。また、HODINKEE Shopではロレックスの中古品も取り扱っています。ロレックスの詳細については、ロレックス公式サイトをご覧ください。