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Auctions アンディ・ウォーホルが所有していたパテック フィリップ 2526(そのほか6つの偉大なパテック)をサザビーズで見つける

最新のサザビーズ・ニューヨークのオークションでは、パーペチュアルカレンダー クロノグラフやモダンなクロノグラフ、そして懐中時計までてんこ盛り。ではそのなかで、どれがいちばんいいものなのだろうか? 我々はいくつかアイデアを出してみた。

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Photos by Mark Kauzlarich

時計愛好家同士で議論を始めるのはとても簡単だ。いくつかのリファレンスナンバーについて話題を投げかけて、そして、なぜ一方が優れているのかについて考え、ゆったりと構えながらも強い意見を持ち、混乱が起こるのを黙って見るだけ。

 先週、私はニューヨークのアッパー・イースト・サイドにある、サザビーズの時計、宝石、蒸留酒などが出品するLuxury Editというセクションの一環として開催予定の高級時計のセールをプレビューしてきた。“しかしトニー、アッパー・イースト・サイドのサザビーズでは、毎週Luxury Editが行われているんじゃないのか?” と思うかもしれないが、それに対しては“もちろんだ”と答えよう。だが、毎週ウォーホルのような品が出品されるわけではなく、特に絵画とは関係のないものが売りに出される。

Andy Warhol Patek 2526 calatrava dial

アンディ・ウォーホルが所持していたピンクゴールド製のパテック 2526

 ここでは、アーティストが所有していた、とてもすばらしいPGの2526について語っていく。さらに、珍しいカラトラバと並び、ペアで考えることこそ最良だと思うパテックを複数本見つけたため、これにあやかりパテックでバトルロワイヤルを仕掛けてみようと考えた。

 パテックの永久カレンダークロノグラフ、モダンクロノグラフ、懐中時計の3組を取り上げ、それぞれから(これは私の完璧な主観)勝者を選んだ。楽しんでもらえるとうれしい。また最後に、アンディ・ウォーホルが所持していたカラトラバを詳しく紹介しよう。

パテック パーペチュアルカレンダー クロノグラフ: 3970 vs. 5270
Patek 3970ep platinum

 パテックのパーペチュアルカレンダー クロノグラフ Ref.3970は、これ以上ないほど(そしてこれ以上ないかもしれないほど)素晴らしいモデルである。1986年から2004年まで製造された3970は、1518と2499の後継機だ。パーペチュアルカレンダー クロノグラフは、ロレックスにとってのデイトナのように、パテックにとってのパーペチュアルカレンダー クロノグラフといえるほど、最も重要な機能を組み合わせたモデルである。

 3970のことはあまり意識したことはなかったのだが、初めて試着してみて、(私にとって)この完璧なサイズの36mmの時計が一生欲しくなるような時計であることを知り、私の心は満たされた。プラチナにブラックダイヤルを組み合わせた3970は実際に見たことなかったため、サザビーズでのこの例はさらによく感じた。セリフ付きのタイプライターフォントはもちろんのこと、カレンダー窓、そのほかのクラシックな示唆など、この時計がどんな時計であるかを鑑みると、言葉にするのも変だが、3970に少しスポーティな雰囲気が加えられているようである。

 3970はレマニア製ムーブメントを採用した、初のパーペチュアルカレンダー クロノグラフだ。しかもこのモデルは80年代に時計業界が激変したときにも、パテックが伝統的な複雑機構とサイズにこだわったことを表している。モダンウォッチとヴィンテージウォッチのよさがすべて凝縮されているのだ。

Patek 3970EP perpetual calendar chronograph platinum

極めて美しいムーブメント、3970EP

 私にとって3970は、史上最高のコンプリケーションウォッチといえるかもしれない。

 一方、5270は違う時代を歩んで来た。これは2011年に発表された、パテック初の自社製パーペチュアルカレンダー クロノグラフである。前モデルである3970と5970とは異なり、これはすぐに普及しなかった。大きすぎてかさばったりして(実際に5270Rをつけてみると違和感はない)、さらにコレクターのあいだでは“顎(あご。文字盤スケールが6時位置のインダイヤルを避けるようにして配したもの)”の問題に非難が集中していたこともある。サザビーズで出品されていたこの5270Rは2018年のもので、幸いにもこの時点で、パテックはよりバランスのとれたデザインにたどり着いていた。

Patek 5270J perpetual calendar chronograph
Patek 5270J perpetual calendar chronograph

 しかし3970のすべての要素、特に5270と比べると、とても引き締まったデザインに重きを置いているように感じる。5270はまったく悪い時計ではない。それどころか大変素晴らしい時計である! パテックが6つの特許を持つ自社製Cal.29-535 PSは、クロノグラフがスムーズに作動し、しかも仕上げも優れている。現在、フィリップスに務めるポール・ブトロス氏は、2014年に5270の秀逸で詳細なレビューをしている。

 80年代と2010年代では、パテックに投げかけられている問いがまったく違うのだが、私は80年代のチャレンジに対するパテックの答えのほうが好きだ。2018年にカーラは、3970のほうがいつもより少しソフトな仕上がりのように感じるのはなぜだろうと考えていたが、ここ数年、その結果が上昇に転じてきている。サザビーズでは、この2本のパーペチュアルカレンダー クロノグラフが、同じ高価格でのエスティメイト(12万ドル/日本円で約1629万6900円)となっているが、私は毎日3970EPをチョイスしている。

 マークと私が、ほかのどの時計でもなく、3970でリストショットを撮ることにしたのには理由があるのだ。勝者:パテック 3970EP

Patek 3970 perpetual calendar chronograph wrist shot
パテック クロノグラフ: 5070P vs. 5170P
Patek 5070p and 5170p chronographs together

5070P vs. 5170P

 5070と5170のバトルというのは、パーペチュアルカレンダー搭載のクロノグラフを比較するようなものである。1998年、パテックにとって約30年ぶりとなるクロノグラフとして、5070が先に登場した。サイズは42mmと大振りで、パテックの伝統的なスタイルとは一線を画すものだった。5070も3970と同様、レマニアキャリバーをベースに展開している。というのもレマニア製のベースがケースに対して少し小さくはあるが、デザインの多くはワイドなダブルステップベゼル、文字盤外周の複数のスケール、そしてキレイなシンメトリーのサブダイヤルなど、より大きな時計に対する要望によって決定される。

 レマニアのエボーシュは共通だが、5070と小振りな3970の共通点はそれくらいだ。3970がパテックの伝統的な時計づくりへのこだわりであるならば、5070はパテックが現代というステージにおいて自らの存在を宣言するものだったといえよう。

patek 5070p chronograph
patek 5070p chronograph movement

 5070は常にちょっとしたカルト的人気を誇っているが、もし手に入れるなら間違いなく5070Pになるだろう。パテックは10年間にわたって5070を製造し、今回紹介した華やかな5070Pでその幕を閉じている。そしてこのブルーダイヤルを用いたプラチナ製の最終モデルは、2008年から2009年までのわずか1年間だけ作られたものであり、おそらく250本はつくられたようだ。

 それでも私は5170のほうが気に入っている。ピュリストは自分たちの信念を守るために、5170と5070のそれぞれ異なる特徴を挙げているが、私は5170の小さなサイズ感とオールドスクール的な雰囲気のほうが、色あせることのない魅力を持っていると思う。

Patek 5170p chronograph

 パテックにとって5170は、初の自社製クロノグラフキャリバーを搭載したリファレンスという一風変わった存在だ。5070と同様に、パテックはリファレンスの終盤に当たる、2017年から2018年の1年間だけ5170Pを生産している。数秒間この時計を眺めてから、そうそう、これはサンバーストブルーの文字盤に施したバゲットダイヤモンドのインデックス(!)だと思い出すことだろう。

Patek 5170p movement

 このふたつのクロノグラフの素晴らしいところはここにある。正真正銘の希少モデル(それぞれ1年間生産されている)であり、現代のパテックを語る上で重要なピースである。どちらのリファレンスも、今後数年で爆発的に価値が上がるということはないだろう。コレクターが深みにはまっているからこそ、この時計を手に入れて愛でる。そして、たまたま大々的に宣伝されていたスティール製のスポーツモデルを追いかけるために、同じ金額を費やすというのはおかしいと気づくのだ。5070の価格は過去10年間、比較的横ばいで推移しており、5170はまだ登場して日が浅いため“コレクターズアイテム”になるかはわからない。

 私にとっては5070Pよりも、8万ドル(日本円で約1085万8000円)という高額なエスティメイトをたたき出した5170のほうがより価値を感じることができる(高価格でのエスティメイトで12万ドル/日本円で約1629万3000円、とはいえ、20万ドル/日本円で約2715万1000円くらいで売れそうな気もする)。だが5070が好きな人に、それが間違っているとは思わない。勝者:5170

懐中時計: ベイリーバンクス&ビドル社製のスモールサイズorビッグサイズ?
Patek minute repeater and split second minute repeater pocket watches

 ベイリーバンクス&ビドル。それを5回、早口で声に出してみて欲しい。いま声に出したBBB(ところで、ラバー/LaVar のビッグボーラーブランド/Big Baller Brand はどうなったのだろうか?)とは、20世紀初頭のフィラデルフィアにあったリテーラーである。サザビーズは今週のオークションで、パテックと同リテーラーのダブルネーム入り懐中時計(ビッグサイズとスモールサイズ)を出品している。

Bailey banks Biddle Patek pocket watch minute repeater

ブルーのブレゲ数字がスモールモデル。簡単に見分けがつく。

Patek Philippe pocket watch minute repeater

 このふたつのBBB懐中時計を見てまず驚いたのは、“小さいほう”がどれだけ小さいか、カタログで伝えるのは本当に難しいということ。サザビーズのウォッチスペシャリスト、ジャネット・タム氏は、この時代のミニッツリピーターとしては2番目に小さいと述べている。ちなみにもうひとつの小さいモデルは、約4万5000ドル(日本円で約611万1000円)で落札されたAPである。素材にはプラチナという、リピーターにはあまり向かない金属を使ったものだった! 大きいほうの懐中時計は、分単位のスプリットセコンドクロノグラフという、なかなか見かけない組み合わせのタイプだ。

Bailey banks Biddle Patek pocket watch
Bailey banks Biddle Patek pocket watch

 この2本は同じ委託業者から来たものであり、セールが開始する24時間前にこれを執筆している時点では、どちらも低めに設定されたエスティメイトを超えている(今のところスモールサイズの時計が高く落札されている)。小さいほうはPG(大きいほうはイエローゴールド)で出来ており、ブルーのブレゲ数字がエナメルに映えて華やかな印象。サイズはAppleのAirTagの直径(33mm)ほど。

 どちらもすでに、2桁台で落札されているのには理由がある。というのもどちらもとんでもない時計であるからだ。私にとっては、より小さいミニッツリピーターがあらゆる細かいディテールで勝っている。勝者:小さいミニッツリピーター

アンディ・ウォーホルが所有していたパテック 2526
Andy Warhol Patek 2526 calatrava

 そして最後に、アンディ・ウォーホルが所有していた、ブレゲ数字をあしらったもうひとつの2526と比較するのであれば別だが、これを読んでいるあなたが望む場合を除き、比較する必要のない時計の番となった。

 パテックの2526はどれもスペシャルな時計だと思うが、アンディ・ウォーホルのコレクションから出品されたとなれば、ほかに匹敵するものはないだろう。これはウォーホルが、ベネズエラにあるセルピコ・イ・ライノで購入したPG製の2526だ。6時位置にダブルサインが刻印されている。サザビーズが1988年にウォーホルの遺品として初めて販売したものであり、その後同じ場所に収蔵されており、当時とほぼ同程度のコンディションを保っているとのことだ。

 コンディションはとてもよく、リューズは少し遊びがあるが、大した問題ではない。この時計を手に入れる理由としてあるのが、その確かな出自、2度焼きされたエナメル文字盤、そしてポリッシュ仕上げされつつも、その特徴をよく表したケースにある。

Andy Warhol Patek 2526 calatrava dial
Andy Warhol Patek 2526 calatrava case

 先ほど紹介した3970を史上最高のコンプリケーションウォッチだと伝えたが、そのような言い方をしたのは、2526が史上最高の時刻表示のみの時計であるからにほかならない。こちらはパテック初となる自動巻きムーブメント、Cal.12-600 ATを搭載している。パテックはこれを、温かみのあるエッグシェルのような色合いのエナメル文字盤と組み合わせて製作した。ブランドは50年代に、このエナメルを用いつつ、永続的に使える文字盤を作ろうと考えたのだ。なぜか2526のエナメルの仕上げは温かみがあって控えめな印象で、PGケースを完璧に引き立てると同時に、薄暗い部屋でタングステンライトのように輝きを放つ。これにより文字盤にプリントされた文字が浮いているようにも見える。2526についてあと4000字は書けるのだが、この記事でもう済んでしまっている

 この時計はサザビーズで試着した時計のなかでいちばん高価なものではないし、この栄誉はおそらくアドバンスド・リサーチ・アクアノートのものだと思うが、私の心にもっとも長く残る時計だと思う。なおウォーホルのほかの2526は、2013年に6万8000ドル(日本円で約924万9000円)で落札されている。特にアートのコレクターたちが所持していたりなど関与していれば、もっと期待できるだろう。勝者:すべての時計

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