Introducing ショパール　アルパイン イーグル ケイデンス 8HF 2021年新作

　2019年に最初のコレクションを発表、2020年に自動巻きのフライバック・クロノグラフを投入してラインナップを拡大してきたアルパイン イーグル。そんな同コレクションに新バリエーションとなる、アルパイン イーグル ケイデンス 8HFが追加された。

　この新作の見どころは大きく2つある。一つは搭載ムーブメント、そしてもう一つは外装だ。まずは搭載ムーブメントから。モデル名にもなっているケイデンス（Cadence）とは、リズムや拍子、回転数のこと。そして8HFの“HF”とはハイフリークエンシー（High Frequency）、周波数を意味する。時計好きなら、もう想像がつくだろう。本機は、一般的な機械式ムーブメントの2倍の速さに相当する毎秒8Hz、つまり5万7600振動/時の振動数を誇る自動巻きムーブメントを搭載している。

　ショパールが、このハイビートムーブメントモデルを発表するのはこれが初ではない。以前から一部の製品に投入されており、2012年にL.U.C 8HFに搭載されたCal.L.U.C 01.06-Lが初だ。ムーブメントは、フルリエにあるショパールグループの時計開発研究所、ショパール テクノロジー（現ショパール マニュファクチュール）で設計・開発・製造が行われ、5万7600振動/時という高速振動ムーブメントとしては初めてCOSCのクロノメーター認定を受けた高精度機だった。本機に搭載されるCal.01.12-Cも同マニュファクチュール製であり、もちろん、COSCの認定を取得している。

　2012年のCal.L.U.C 01.06-Lを皮切りに、同社はハイビートムーブメントモデルとして、15年にL.U.C 8HF パワーコントロール（Cal.L.U.C 01.09-L搭載）、17年にはスーパーファスト パワーコントロール ポルシェ 919 HF（Cal.01.11-M搭載）を発表した。いずれも高速振動で高精度を実現するために、単結晶のシリコン製パーツを使用している。軽量で注油を必要としないこの素材は、アンクル、ガンギ車、振り石と、激しい摩擦力を受けるすべてのパーツに使用され、摩擦の発生を最小限に留めた。さらに同素材の軽さ、平滑性を生かして、エネルギーの消費量を増加させることなく、高振動を可能にする脱進機を開発。これにより、通常なら高振動とは両立しない60時間という長いパワーリザーブの確保にも成功した。

　基本スペックはCal.01.12-Cも過去のモデルと大きく変わらない。Cal.L.U.C 01.06-L（12年）とL.U.C 01.09-L（15年）がスモールセコンド＋パワーリザーブインジケーターという構成で、Cal.01.11-M（17年）は、そのセンターセコンド仕様。もちろん、すべてにおいて装飾や仕上げは異なるが、Cal.01.12-CはCal.01.11-Mからパワーリザーブインジケーターを排したムーブメントと解釈すればいい。

　また、過去に発表されたハイビートムーブメントモデルは、ほかにも共通項がある。それはすべて数量限定のリミテッドモデルであったこと、そして外装にチタンを使用したモデルということだ。アルパイン イーグル ケイデンス 8HFも世界限定250本のリミテッドモデルであり、外装にはTIを採用している。ただし、過去のモデルと大きく異なるのは、その仕上げへの並々ならぬ力の入れ具合だ。

　アルパイン イーグルのデザインコードに則り、ベゼルとミドルケースはブレスレットのラージリンクと同様のサテン仕上げ、さらにセンターキャップにはケースの面取り部分やベゼルのサークルにスリットを合わせた8本のネジと同じくポリッシュ仕上げが施されている。この丁寧なチタンの加工、仕上げは過去のモデルとは一線を画すものである。

　価格は239万8000円（税込）、すで発売中だ。

　本作の発表に先立ち、筆者はアルパイン イーグル ケイデンス 8HFのサンプルを手に取ることができた。一見すると、既存モデルのムーブメント違いのようにしか見えない本作。そう感じさせるところが、この時計最大の魅力だと筆者には感じられた。ルーセントスティール A223製モデルと比較してみると、それがよくわかる。

　まずはダイヤルを比較したい。パッと見る限り、既存のルーセントSSモデルのグレーダイヤルとそっくりだ。しかし、こうして写真を並べてみると違いがよくわかる。
　アルパイン イーグルでは、その名が示すように、コレクション共通でインスピレーションの元となったイーグルの鋭い目をモチーフとするイーグルアイリス（イーグルの虹彩）パターンが刻まれている。それは本作も同じだ。だが、その色調は既存のグレーダイヤルよりも明るい。本作はコレクションのその他のモデルとは異なり、手作業による緑青塗装を施すことが独自の色合いを表現したという。このグレーには「ヴァルスグレー」という名前が与えられているが、これは屋根に珪岩を敷き詰めた特徴的な住居で有名な、スイスのグラウビュンデン州にあるヴァルス村から取られたものだ。

　また、インデックスに目をやると本作は12時のローマ数字以外はバトン型インデックスをあしらうが、既存モデルは3・6・9・12がローマ数字でそれ以外はバトン型インデックスという組み合わせだ。人それぞれ好みは分かれるだろうが、高精度モデルである本作にはやはりこのようにシンプルなダイヤルが合うように思う。また、フランジ部分に施された既存モデルよりも細かな目盛りも高精度モデルらしいディテールと言えるだろう。シンプルなデザインゆえに、ダイヤル下側にあしらわれたショパールの超高振動ウォッチのシグネチャーであるアロー型のロゴが引き立つし、ダイヤルの特徴的な美しい装飾も、より際立って見える。

　しかしながら、最も驚くべきは本作がチタンモデルということだろう。一見しただけで見分けることは困難なほど、外装はルーセントSS製の既存モデルと同じように見える。
　ルーセントスティールA223は金属アレルギーを起こしにくく、高級時計に一般的に使用される316LSSよりも硬く光沢のある明るい質感を特徴としている。本作は加工しづらく磨きにくいと言われるチタンでありながら、この特別なSSに引けを取らない仕上げと質感を実現しているのだ。もちろん、じっくり見比べてみると本作の方が色調がダークトーンであるのは一目瞭然なのだが、見比べないとそれを感じさせないところは驚きだった。

　そして、チタンならではの軽さは本当に魅力的だった。重さは個人の感じ方に左右されるものだが、既存のSSモデルは鍛造で目が詰まっていることもあって、筆者には重く感じられたのだ。重い時計は短時間で外したくなる。筆者がどうしても気になってしまうポイントだった。だが、本作は見た目は重厚なのに、手に取ると驚くほど軽量だ。既存のSSモデルの重量感を知っているがゆえに、なおさらかもしれない。正確な重さの数値までは確認が取れなかった（判明次第、情報をアップデートしよう）が、この軽快なつけ心地は非常に魅力的に映った。

　チタンをここまでキレイに加工するところには、並々ならぬ情熱が感じられる。気になるのは限定モデルであるということと価格だろうか。ルーセントSSの41mmモデルが161万7000円、ゴールドとルーセントSSのツートーンが248万6000円であることを考えると、本作の239万8000円（すべて税込）という価格は高額な印象を受ける。ただ、筆者と同じように既存モデルの重さが気になっていた人には、つけ心地の軽い本作は間違いなくおすすめだ。

ブランド： ショパール（Chopard）
モデル名： アルパイン イーグル ケイデンス 8HF
型番： 298600-3005

直径： 41mm
厚さ： 9.75mm
ケース素材： グレード5TI
文字盤： イーグルの虹彩に着想を得たサンバーストモチーフを型打ちしたブラス製ダイヤル、ガルヴァニック加工により光沢を帯びたヴァルスグレーカラー
インデックス： ロジウム仕上げのバトン型インデックス（12時位置のみ数字）
夜光： ロジウム仕上げのバトン型時・分針、及びバトン型インデックス（12時位置のみ数字）にルミノバ®グレード X1
防水性能： 100m
ストラップ/ブレスレット： グレード5TI製ブレスレット（両サイドはサテン仕上げを施したラージリンク、ポリッシュ仕上げのセンターキャップをセット）、グレード5TI製トリプルフォールディングバックル（SS製ブレード）
追加情報：  SS製ネジ込み式リューズ（コンパスローズモチーフつき）

キャリバー： Chopard 01.12-C
機能： 時・分表示、センターセコンド、4時30分位置に日付表示
直径： 28.8mm
厚さ： 4.95mm
パワーリザーブ： 約60時間
巻き上げ方式： 自動巻き
振動数： 5万7600振動/時
石数： 28
クロノメーター： あり。COSC認定
追加情報： シリコン製の振り石、アンクル、ガンギ車、フラットなターミナルカーブを描くヒゲゼンマイを備えた環状テンプ、特許取得の高振動調速機構

価格： 239万8000円（税込）
発売時期： 発売中
限定： あり。世界限定250本

詳細は、ショパール公式サイトをクリック。