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70年代のある時期は、画期的なアメリカらしいフューチャリズムが日本から押し寄せる波をくい止めるかに見えた。世界初のデジタル時計、パルサー・タイム・コンピュータは、ジョニー・カーソン(Johnny Carson)が司会を務める『ザ・トゥナイト・ショー(The Tonight Show)』にも登場した。とはいえ、ボタンを押すと数秒間、赤いLEDの数字が光る“タイムスクリーン ”には、ジョニーは感銘を受けなかったようだ。それでもこの時計は大ヒットし、アメリカの電子機器メーカーがウォッチメイキングに参入し、オメガにLEDモジュールを供給するまでになった。悲しいことに革新的なLEDの輝きはアメリカのウォッチメイキングと同様すぐに色あせてしまったが、70年代が復活を遂げつつあり、LEDはこれまでで一番輝いているようだ。
ゴールド風味で復活したGP キャスケット2.0
ジラール・ペルゴ キャスケット Ref.9931は、LEDシックの象徴的存在だ。しかし1976年、日本製クォーツの波が押し寄せるなかで登場し、ブランドの忠実なバイヤーたちに衝撃を与えた。マットな宇宙産業御用達のマクロロン複合材やスティール、さらにはゴールドメッキを施したケースは、まるで空気力学に基づいたヘルメットのようだった。キャスケットという名称も実のところ、サイクリストがレースや練習で使用するぴったりとした帽子のことで、現在は主に表彰台で着用される。しかしそのワイルドなSF的ルックスにもかかわらず、2年間で8200本が生産されるヒット商品となった。
さて、ロンドンのジョージ・バンフォード(George Bamford)氏がOnly Watchのために鍛造カーボンファイバー複合材の有機的な渦巻き模様でカルトクラシックを復活させた2021年まで話を進めよう。ジラール・ペルゴはこの“ユニークピース”を経て、2022年に42.4mm×33.6mm、チタン製ケースバックのセラミック キャスケット2.0を発表した。しかし今回は、ラバーを裏打ちしたきわめて革新的なセラミック製ブレスレットに、真新しい多機能クォーツムーブメントを搭載したのだ。オリジナルのダークバージョンは、2023年にサンローランのクリエイティブ・ディレクターによる限定バージョンがいくつか発表され、(映画スター・ウォーズに登場する)シスの世界観を体現していた。
先月、ジラール・ペルゴはデジタルルネサンスのさなかに、サテン仕上げのチタン製キャスケットを発表した。試着してみたところ、正直に言えばすっかり魅了されてしまった。最新技術のLEDスクリーンを備えたこの時計は、視認性が最高な時計とは言えないが、起動ボタンを押すのはちょっとした儀式である。このキャスケットは私の感性に完璧に響き、身につけることでまるでタイムトラベルをしているような感覚に包まれる。ジラール・ペルゴはその最終モデルとして、18Kのアプライドケースロゴとプッシャーが鮮明な輝きを放つ、洗練されたフルチタン製バージョンを発表した。
軽量なチタンは常に歓迎されるものであり、ブレスレットを快適につけられるラバーライニングが隠されているのも粋な計らいである(ほかのブランドも学んで欲しい!)。称賛に値する動きとして、キャスケット2.0のために開発されたCal.GP3980もリバースエンジニアリングされており、1976年製のキャスケットに後付けできるようになっている。先月69万3000円(税込)で発表されたキャスケットは、すでに完売間近もしれないが、ゴールド風味が効いたオールドスクールなLEDエレガンスを味わいたいのであれば、神に祈るしかない。
詳細はジラール・ペルゴ公式ウェブサイトまで。
スイスの洗練を身につけたアメリカのパイオニア、ハミルトン PSR
ツールウォッチに重点を置くハミルトンが、2020年に復活した伝説的なパルサーのパワーアップ版、PSRを発表するとはうれしい驚きだ。しかし限定生産のキャスケットとは異なり、主力モデルへとアップグレードされている。我々は2020年に発売されたパルサーを取材したが、今では最新技術の有機ELディスプレイを誇るこの堅牢なスポーツウォッチには3つのバージョンが展開される。70年代のパルサー・タイム・コンピュータを短期間で再現したこのモデルは、100m防水と分厚いARコーティングサファイア風防を備え、日常使いに最適と言える。
厚さ13.3mmのケースのスリム化とレトロ回帰の願いは、ハミルトンが先月発表したPSR 74(上の画像)で叶えられた。2020年モデルを購入寸前までいったのだが、PSR 74のファンキーなアルマジロのようなシングルリンクブレスレットに軍配が上がり、PVDゴールド仕様で決まりだと思った。
バングルのようなこのPSR 74は、H-40eクォーツキャリバーを搭載し、反射型LCDと有機発光OLEDのハイブリッドディスプレイを搭載している。31mmのクッションケースは幅が狭いと感じる人もいるかもしれないが、私はすでにトッド・スナイダーのブラウンのカシミアタートルネックを合わせる準備ができている。小売価格は13万5300円(税込)。
詳細はハミルトン公式ウェブサイトまで。
ブローバ コンピュートロン
MADE IN USAのLEDウォッチのなかで際立っているのはハミルトンだけではないし、ウェッジの効いたブローバ コンピュートロンほどワイルドばものもない。元同僚のジャック・フォースターが2019年に発表したその復活に関する記事を読むと、私は過去の栄光を復活させようとする限定的で勇敢な試みだと思った。しかしこの時計がパンデミックを乗り越え、その過程でより洗練されたダークバージョンへと変貌を遂げなかったとしたら、私は納得できない。
このことは、70年代や80年代を受け入れ、団塊の世代に似合う時計を身につけるZ世代を含む、時計バイヤーの想像力豊かなセンスについて多くのことを物語っている。コンピュートロンは厚さ13.8mmのドラマチックなしま模様のウェッジケースが特徴的で、鮮明なディスプレイと今ではおなじみの側面となったアクチュエーターを備えている。プッシュを繰り返すと、秒表示、日付表示、セカンドタイムゾーンまで表示される。レストアされたAMCグレムリンで近所を流しているときに、ディスプレイで気を散らさないようにしよう。
2022年にデザインを一新したブローバ コンピュートロンは、ゲームチャンピオンのD-Caveとのコラボレーションによるトロン風ブラックバージョンでゲーマーを魅了した。しかし私が即座に気に入ったのは、スリムな31mmケースに赤いLEDを備えたRef.97C110の派手なゴールドだ。私はスター・ウォーズ(CGI以前の)ファンなので、C-3POのドレスウォッチを思わせる輝かしいルックスで4万4000円(税込)なら十分だ。
詳細はブローバ公式ウェブサイトまで。
GPHGノミネートのメカオルタナティブ、アミダ デジトレンド
なぜ非LED表示のデジトレンドを選んだか、理由を説明しよう。私は最近、クルマにインスパイアされた時計について書いた。そのなかにドライバーに対してダイヤルが向いたキャスケットを加えたかったが、起動ボタンを押すためにハンドルから手を離す必要のある本機は安全上の配慮から省くことにした。しかし最近、スイスの競合モデルとして、ドライバー中心のデジタル表示を備えたアミダ デジトレンドが復活を遂げた。視認性のイロハを押さえたものではないが、視覚的なひねりを加えた70年代の雰囲気を提供してくれる。
デジトレンドには3つのオプションがあるが、私はベイダーを思わせるブラックエディションを選ぶ。このモデルは70年代復刻の第2弾で、2024年のGPHGにノミネートされた。スイス製自動巻きムーブメントのソプロード社製P092を搭載したデジトレンドは、1976年のアミダを忠実に再現し、素晴らしいディスプレイ技術を搭載している。ダイナミックなフォルムはモーターレースにインスパイアされたもので、ドライバーに向いたサファイアクリスタル風防には1974年に取得された光学特許が使用されている。
ブラック地にオレンジのジャンピングアワー、回転するミニッツ表示の少し歪んだ縦型表示は、ディスクがムーブメントに水平に取り付けられていることから、潜水艦の潜望鏡に例えることができる。時刻表示は1974年に特許を取得したプリズムをとおして表示され、潜望鏡の光学系をほうふつとさせる。
アミダ デジトレンドは50m防水に対応し、日常での使いやすさを徹底的にモダナイズしている。また約44時間パワーリザーブとサファイアケースバックを特徴とし、そこからジュネーブストライプやサンドブラスト、サーキュラーグレインを眺めることができる。デジトレンドはポップなオレンジのカーフライニングが施されたアンスラサイトカラーのアルカンターラストラップが3250スイスフラン(日本円で約57万円)で提供され、わずかな追加料金でブラックDLCブレスレット仕様も選べる。
詳細はアミダ公式ウェブサイトまで。
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