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時計業界2021年の振り返りから導き出した2022年、5つの予測

2022年がスタートを切った。今年の時計業界では、一体どんなことが起こるのだろうか?

2021年もオンラインでの情報発信がメインとなるなど、急速に変化する情勢への対応を迫られた時計業界。市場を席巻するラグジュアリースポーツウォッチの行方や多くの時計好きが熱いまなざしを向けるロレックスの新作など、2022年の気になる時計業界動向を2021年の振り返りから予測する。

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1. ラグジュアリースポーツウォッチのさらなる人気上昇

この数年のことだが、オンオフ問わずシームレスにつけられる時計として一体型ブレスレットを備えた、いわゆるラグジュアリースポーツ(以降、ラグスポとする)ウォッチが高い支持を得ている。今ではさまざまなブランドがこの時計をラインナップに加える状況だが、2021年はその人気ぶりにより拍車が掛かった年だった。

 2021年、ラグスポウォッチの絶大な人気を支えるふたつのアイコンが生産終了となった。オーデマ ピゲのロイヤル オーク “ジャンボ” エクストラシン 15202ST、そしてパテック フィリップのノーチラス 5711だ。両者はこのジャンルのなかでも特に抜き出た支持を集めていたモデルである。その人気は凄まじく、セカンダリーマーケットで異常とも言える価格で取引されていることからも注目度の高さがうかがえる。両ブランドともはっきりと言及していたわけではないが、生産終了の発表に際して後継機の登場を示唆するコメントを残しており、新型モデルの発表はほぼ確定路線。2022年はこの両者の新型モデルに注目が集まるとともにラグスポウォッチがさらに市場を席巻することだろう。

2. ロレックスの話題の中心は新型デイトナか、新型ミルガウスか

ダニー・ミルトン(DANNY MILTON)も書き記しているが、ロレックスが何を発表するかを推測することは難しい。昨年ロレックスは50周年を迎えたエクスプローラーII(初代モデルのRef.1655は1971年に誕生)をアップデートし、最新作となるRef.226570を発表した。50周年を迎えることから多くの人が新型エクスプローラーIIの登場は予想していたが、エクスプローラーにもテコ入れが行われ、ラインナップが一新されるとは誰が予測できただろう? ケース径が39mmから36mmにダウンサイジングされた新型のRef.124270が登場しただけでなく、史上初となるステンレススティールとゴールドのツートンモデル、ロレゾールのエクスプローラー Ref.124273が投入されたのだ。

 2022年、ロレックスはどんな新作を投入するのか。筆者は新型コスモグラフ デイトナ(以降、デイトナとする)か新型ミルガウスではないかと予測している。初代デイトナの誕生は公式情報によると1963年だ。普通に考えれば60周年を迎える2023年にビッグイベントがありそうだが、ロレックスがデイトナ・インターナショナル・スピードウェイのオフィシャルタイムキーパーに就任したのは初代デイトナが発表される1年前の1962年のこと。2022年も歴史的意義のある年だ。

 一方で、これまでの歴史を振り返ってみると、新型モデルの発表は決してアニバーサリーのタイミングに合わせてというわけではなかった。デイトナが搭載するCal.4130は登場から20年以上も経っており、多くのモデルが新型ムーブメントへ切り替わっていることを考慮すれば、デイトナにおいても新型ムーブメントが投入されてもおかしくはないだろう。そうした点で言えば、ミルガウスも2007年の登場以来変わらず同じムーブメントで製造が続くモデルだ。新型ムーブメントを搭載した新型ミルガウスが登場してもいいタイミングだろう。

 2022年のロレックスはどんなサプライズを用意しているのだろう。いずれにせよ確実に言えることは、ロレックスの新作は2022年も時計好きの話題の中心になるということだ。

3. ブランドを代表するアイコンへの大胆なテコ入れ

2021年の時計業界を振り返ると、時計好きの興味を引きつけ、話題を集めることができたのはラグスポウォッチに関連した新作やニュース、そして価格的にも製造本数的にも購入できる人が限られる特定のブランドや一部の時計に集中していたように思う。そんな状況のなか、筆者の記憶に強く残ったのは新型のCal.3861を搭載したオメガ スピードマスター プロフェッショナル ムーンウォッチや新しいエル・プリメロCal.3600を搭載したゼニス クロノマスター スポーツなど、ブランドのアイコンモデルに関する刷新のニュースだった。裏を返せば、それほどインパクトのあるニュースでないと、もはや印象に残らないほど新作情報が氾濫しているとも言える。

 ほんの1、2年前までは多くの時計ブランドが伝統的な見本市などリアルイベントのみで新作を発表していたが、今ではそういった特定の時期だけでなく、1年を通して情報を発信できる環境が整った。おそらく今後もインパクトのあるニュースや内容でない限り、人々の記憶に残るのは難しいだろう。そうした現状を踏まえると、資金力のあるところではブランドを代表するアイコンに大胆なテコ入れを行うような大胆な戦略のもと、話題づくりを強力に推し進めるのではないかと筆者は考えている。ブランドのアイコンがより魅力的になることは歓迎すべきことだ。今年は魅力を増したアイコンウォッチが数多く登場することを期待している。

4. 時計業界におけるSDGs、サステナブルの加速

企業におけるSDGs、サステナブルなものづくりの重要性が加速度的に増している。それは高級時計ブランドにおいても然りだ。この傾向はこれまでにも見られたが、一部のモデルでリサイクル素材や環境へ配慮した技術や手法を用いて、その姿勢を示すという場合が多かった。しかし、2021年は、SDGs(持続可能な開発目標)、サステナブルを意識した時計ブランドの存在が顕著だった。特に印象的だったのはカルティエの「タンク マスト」ソーラービート™️だ。本作は新しい「ソーラービート™️」ムーブメントを搭載したカルティエ史上初のソーラーウォッチであり、ストラップに食品産業用に栽培されたリンゴの端材から作られた動物性ではないレザーを使用している。SDGsやサステナブルを強く押し出すのではなく、コレクションのなかで当たり前のものとして取り入れられているのだ。こうしたスタンスで発表された製品は、これまではあまり見られなかったように思う。

 高級時計においても大きく動き出したSDGs、サステナブルなものづくりの潮流。これ見よがしなものではなく、当たり前のものとして時計づくりに取り入れられることが今後はますます重要になっていくのではないだろうか。

5. オークション&セカンダリーマーケットのさらなる台頭

はじめにはっきりと言っておこう。昨年のオークションが見せた異常とも言える時計価格の高騰、そしてセカンダリーマーケットで特定の時計が投機的に扱われていることを肯定する意図はまったくない。むしろ時計好きのイチ個人としては、1日でも早くそうした状況が収束に向かうことを望んでいる。だが現実問題として、時計愛好家や収集家とは異なる資金力を持った人たちも関心を寄せる現状において、かつてのリーマン・ショックのときのような市場に強烈なインパクトをもたらす出来事がない限り、現在のような市場の活況は今年も続くと考えている。

 投機的な資金が流れ込んで異常なまでに価格が高騰したり、正規店で欲しい時計を買いたい人が買えない状況というのはデメリットでしかないが、オークション&セカンダリーマーケットが注目を集めることはデメリットばかりではない。ニ次流通マーケットが活況となることで、これまでは一部の時計好きしか注目しなかったようなヴィンテージウォッチや生産終了モデルも注目を浴び「こんな時計があったんだ」と、これまで知らなかった時計の存在に気づかせてくれる可能性も大いにあるだろう。現行新品ばかりが時計の世界ではない。オークション、そしてセカンダリーマーケットの活況は思わぬ時計と出合えるという魅力も秘めている。

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