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Hands-On ローラン・フェリエ スポーツ オートを実機レビュー

ローラン・フェリエは一体型スポーツウォッチ需要に代わる、インディーズという選択肢を提供できるだろうか?

ひと月以上前、私はローラン・フェリエ スポーツ オート40の限定モデルを取り上げた。これは1979年のル・マン24時間レースで、フェリエ自身(そして彼の友人であるフランソワ・セルヴァン氏とフランソワ・トリスコーニ氏)が運転したポルシェ935 ターボ40へのオマージュモデルである。そのレースではチーム総合3位、グループVでは2位という結果のほか、フランソワ・セルヴァン氏(ローラン・フェリエの創設者兼社長)はこの大会の最優秀フランス人ドライバーにも選ばれた。それはヴィンテージポルシェを引き立てる、大胆な色の本質的な部分について触れた、とても興味深い物語だった。同記事のなかで、私はローラン・フェリエの時計を実際に手にする機会は滅多にないと書いた。そこでブランドはポルシェ935ではなく、チタン製のマットなグラデーションブルー文字盤のスポーツ オートを見せてくれた。

Laurent Ferrier Sport Auto

 ブレスレット一体型のスポーツウォッチの需要は、それほど冷え込んでいないように見える。ティエリー・スターン(Thierry Stern)氏がスティール製のノーチラスを廃止したのは間違っていなかったようだ。SS製の5711や5811を腕につけているのをしばらく見かけていないし、以前のように“ノーチラス”という言葉が飛び交うこともない。つまり、“パテックはひとつの才能しかない時計だ”という新参者の理解から、徐々に脱却しつつあるのかもしれない。だからといってノーチラスが格段に入手しやすくなったわけではない。その代わり、需要の多くはロイヤル オークに集中しているようだ。ノーチラスのコアモデルと同じように、ロイヤル オーク “ジャンボ”はまだ小売店で手に入れるのが難しい。ではブレスレット一体型のスポーツウォッチを求めるなら、ほかにどこに行けばいいのだろう?

 私は最近、この疑問について考えている。もっと広く言えば、ラグジュアリースポーツウォッチについてだ。永遠に来ないかもしれない配分のために頭を悩ませるのではなく、苦労して稼いだ現金の束で、特定の悩みを解決できるものはほかに何かないだろうか? この想像しやすい問題の解決策のひとつは、(私にとっては)お金を出せばよりよい仕上がりになる可能性のある、小さな独立系メーカーに目を向けるということだった。これらのメーカーは理論上、ユーザーが腕時計を購入する(あるいは購入を待っている)際に、より多くのコミュニケーションをとってくれる。この事実は多くの人にとって、追加料金を払うほどの価値があるだろう。返答のない虚空に向かって叫んだり、無反応の正規代理店にお金を受け取ってくれるよう懇願する必要はない。

Laurent Ferrier Sport Auto

 そんななか、ローラン・フェリエは真っ先に思い浮かんだブランドのひとつだった。ハイエンドのラグジュアリー一体型スポーツウォッチというカテゴリーでは(独断で2万ドルという切り口とする)、ノーチラス、ロイヤル オーク、オーヴァーシーズと競合する選択肢は比較的少ないが、その数は刻々と増えているようだ。ショパールはアルパイン イーグル ケイデンス 8HFを2万800ドル(日本では税込303万6000円)で販売しているほか、ラインをギリギリ下回るのはブルガリ オクト フィニッシモ クロノグラフ GMT(1万9300ドル、日本では税込282万7000円)だ。どちらのブランドも決して“小規模”なわけではないが、ふたつの素晴らしい選択肢を提供している。

 価格をさらに上げれば選択肢は広がる。チャペック アンタークティック “ダーク・セクター”は3万7600ドル(日本では税金594万円)で買えるし、4万ドル(日本円で約583万2000円)台であればF.P.ジュルヌ オートマチック・リザーブがある。また、おそらく最も高い価格帯は、チタン製のA.ランゲ&ゾーネ オデュッセウスの5万6600ドル(日本円で約825万3000円)だ(私の知る限りではまだ納品は始まっていない)。あなたはおそらく、私が見落としているほかのオプションについて心のなかで叫んでいることだろう(もちろんほかにもある)。しかし注意深く観察すれば、それらのオプションとスポーツ オートを結びつける共通のテーマがあることに気づくはずだ。これはスポーツ オートの体験のなかで、最も驚きとやりがいのある部分のひとつでもあった。

Laurent Ferrier Sport Auto

 ローラン・フェリエ スポーツ オートは、チタン素材を使ったハイエンドのブレスレット一体型スポーツウォッチの小さなグループに属するひとつだ。手首にチタンを装着したときの軽さについては、いまだに頭を悩ませることがある。リシャール・ミルが2005年に発表したRM-009を振り返ってみると、人々はしばらく前から、重量=価値または品質という概念に挑戦してきた。しかし4700ドル(日本では税込60万9400円)のチタン製チューダー ペラゴス39には納得できるようになってきたが、4万6000スイスフラン(日本円で約765万9000円)するスポーツ オートのような時計になると戸惑う。

Laurent Ferrier Sport Auto

 グレード5チタン製ケースの時計のサイズは、直径41.5mm、厚さ12.7mmだ。ハイエンドのスポーツウォッチにしては、特にこの価格帯では少し厚いほうだ。これは自動巻きマイクロロータームーブメントを採用しているからである。理論上、マイクロローターの利点のひとつは、ムーブメントを薄くできることだ。そして私にとっての適正サイズは、8.1mmから8.3mmの厚さである。オーデマ ピゲやパテックのジャンボのバランスがいいのには理由があるのだ。しかし重量は100g未満(残念ながら計量器を見つけることができなかった)と、その軽量化により気になる厚みを十分に打ち消しているようで、装着性の観点からは快適につけられた。

Laurent Ferrier Sport Auto

 一般的に価格が高くなればなるほど、実用的なスポーティさ、つまり防水性を少し諦める必要があるのだが、このレベルでの考え抜かれたデザインとハイエンドな仕上げには何かがある。このモデルではロイヤル オークの50m防水性ではなく、5711と同じ120m防水が得られる。しかし、ノーチラスよりも改良されたポイントのひとつは、文字盤のデザインが若干配慮されたことだ。

 質感のあるマットな文字盤は、タぺスリーや水平にエンボス加工された文字盤ほど象徴的でも複雑でもないかもしれないが、ブランドは“オート”と名が付くふたつの意味で遊び続けている。ムーブメントは自動巻きだが、例えば日付窓はレーシングカーの傾斜したボンネットやサイドベントの形をしている。日付窓を隠そうとするのではなく、日付そのものをデザイン要素にしているのだ。

Laurent Ferrier Sport Auto

 ほかのデザイン言語の多くはグランドスポーツコレクションに由来している。私がオフィスで非公式に行ったアンケートによると、好みが分かれる傾向があるのはそれだ。ローラン・フェリエのウェブサイトによると、ケースの形状は“レーシングカーのエレガントで時代を超越した曲線を想起させる”と書かれている。私の“クルマ好き”レベルが足りないのかもしれないが、そうは見えなかった。むしろ本作のケース形状は、どんなスポーティなクルマよりも初代オールズモビル・シルエット バンのように感じた。オフィスでは気に入る人もいれば、ピンとこない人もいた。私はその前身であるグランドスポーツのビジュアル言語と同じように、心からそれを楽しんだひとりである。トゥールビヨン付きのスポーツウォッチが20万ドル(日本円で約2917万2000円)近くする代わりに、スポーツ オートは4万6000スイスフラン(日本円で約765万9000円)で買える。

Laurent Ferrier Sport Auto

 価格から想像できるように、スポーツ オートを独自のものとして際立たせるディテールはほかにもたくさんある。例えばオニオンリューズは防水性を維持するためにねじ込み式になっている。しかし、サイズが大きいにもかかわらず、手首を見下ろしてもそれほど違和感はない。スポーツウォッチとして期待していたものとはちょっと異なるが、それがいい。デザインに関してすべてが1点に収束してしまったら、何が楽しいのか? 先ほども言ったように、文字盤の質感や文字盤とインダイヤルのあいだの遊びは何度見ても楽しい。

Laurent Ferrier Sport Auto
Laurent Ferrier Sport Auto
Laurent Ferrier

 人々が独立時計メーカーを注文する理由の大部分は、ムーブメントと仕上げである。ローラン・フェリエは、スイスの時計メーカーでよく見るありがちな伝統的スタイルではなくとも、その期待を裏切ることはない。ジュネーブストライプは定番だが、少し趣向を変えてみてはどうだろう。ジンク(亜鉛)ポリッシュ仕上げの表面や、サテンブラシ仕上げ、サーキュラーグレイン仕上げの数々は、よりモダンな雰囲気を持つ魅力的な選択肢である。これらの仕上げは、何世紀にもわたって特定のスタイルに慣れ親しんできた一部のコレクターの好みに合わないとは理解しているが、ここで見られるアングラージュは、深くよく磨かれた切れ味を持ち、かつての巨匠らに敬意を表している。

Laurent Ferrier Sport Auto
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 スポーツ オートで少しがっかりしたところがあるとすればブレスレットだ。しっかりとしたつくりのブレスレットの醍醐味のひとつは、つくりの締まりと見た目のタイトさにある。スポーツ オートブレスレットのファセット加工されたポリッシュ仕上げのエッジとサテン仕上げの表面は気に入っているが、リンクとリンクのあいだのギャップが少し気になった。ブレスレットのデザインは、それ自体が“毛を巻き込む”ようなものではないが、これらのパーツの範囲を狭くして、隙間を少なくすることは可能だろう。時計のほかの部分がこんなに洗練されているなら、ブレスレットにもそれを取り入れてはいかがだろう?

Laurent Ferrier Sport Auto
Laurent Ferrier Sport Auto

 ここでは触れなかったが、市場にはもうひとつ競合製品がある。少量生産のスポーツウォッチの新たな選択肢として、ブレスレット一体型のモデルをつい最近発表した、ローマン・ゴティエである。C by ローマン・ゴティエ(旧コンティニュアム)コレクションに、チタン製ブレスレットが登場したのだ。このモデルを装着したことはないが、ラバーストラップモデルは驚くほど装着感がよく、スポーツ オートよりも薄型だ(防水性は劣るが)。価格は4万2000スイスフラン(日本では税込781万円)と、スポーツ オートと比べるとかなりお買い得に見える。

 年間の総生産本数が500に満たないスポーツ オートは、最近の時計と同じようにキャンセル待ちが発生するのは避けられない。ローラン・フェリエでは一律2年待ちだ。問題は、それを待つ価値があるかどうかということ。それは購入者に大きく依存すると思う。

 私はスポーツ オートを愛したい。実際に手に取って1週間ほど着用してみたが、時計の裏に隠された仕上げを疑う余地はなく、全体的に感心させられる完成度だった。しかし、4万6000スイスフラン(日本円で約765万9000円)だと、ほかにお金を使う先がたくさんある。流通市場では5711をはるかに下回り、16202の半分強の価格ではあるのだが、この価格になると私の心はスポーツウォッチからヴィンテージのほうに向かってしまう。一方、独立時計メーカーが好きな人にとっては何の問題もないかもしれない。私の希望は来年のいつか、工房を訪れて職人技を自分の目で確かめて、潜在的なブランドへの愛情を全開にすることだ。ひょっとしたら、ジュネーブ郊外でポルシェ935を乗り回すことになるかもしれない。

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ローラン・フェリエについての詳細は、ブランド公式ウェブサイトをご覧ください。