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Hands-On パネライ ルミノール マリーナが大幅な進化を遂げて再登場

パネライは今回、ルミノール マリーナのラインに多くの価値を付加したが、いくつかのトレードオフ的な要素も存在する。

Watches & Wondersでひっそりと成功を収めたリリースのひとつが、パネライ ルミノール マリーナであった。このモデルがあまり注目されなかった理由のひとつは、ラインナップの変更点が軒並みささやかに見えたためである。少なくとも、新しいケース形状や素材が話題を独占する現在の環境においてはそうであった。しかしそれらの変更は、過去にパネライに関心を持ちながらも、近年のブランドの提案力に疑問を抱いていた自分にとってこの時計の魅力を大きく高めるものであった。なおこれまでそのような疑問を抱かせていた多くの要素が、新たに登場したPAM03312、03313、03314、03323、そして03324においては、確かに変化している。

Panerai Luminor Marina

 新しいルミノール マリーナのバリエーションについては、Introducing記事ですでに紹介した。記事内で紹介したブルーとブラックのサンレイダイヤルモデルは、44mm径、13.7mm厚のAISI 316LVM(1.4441)ステンレススティールケースを採用しており、下記に示すグリーンダイヤルモデルは同じ寸法でグレード5チタン製となっている。これは、2020年版(厚さ15.65mm)に比べ、約2mm薄くなっている。さらにこのモデルはサファイアクリスタルを採用しており、過去のドーム型クリスタルを愛する層からすれば賛否両論あるだろうが、使用感と装着性においては確かな改良だと感じている。もっとも、自分は筋金入りのパネリスティではない。むしろ、身長6フィート7インチ(約200cm)、手首周り7.25インチ(約18.4cm)の自分でも、これらの時計を十分につけこなせると(やや渋々ながら)認めるに至った者である。そしてそれができるのであれば、なぜ試さない理由があろう。さらに言えば、なぜ旧来と新しさのベストブレンドを望まない理由があろうか。

Panerai Luminor Marina

 ムーブメントの評価は短時間の実機レビューでは難しい。全体的なクオリティを判断するには、時計と数分以上向き合う必要があるからだ。紹介記事でも触れたように、パンデミック期間中に従来のルミノール マリーナは仕上げと機能の両面でひそかにダウングレードされていた。しかしブランド側からその事実が積極的に開示されることはなく、その点については少々不審に感じている。ただし、パネライは新たにP.980ムーブメントによって、それらすべてを修正してきた。

 仕上げは改善された、もしくは以前の水準に戻ったとも言える。ムーブメントの厚みも薄くなり、秒針停止機能も復活した。仕上げの水準はあくまで工業的であるが、以前よりは確実に向上している。パワーリザーブは72時間であり、ブランドが誇る超ロングパワーリザーブではないにせよ、週末をカバーするには十分である。唯一のダウングレードはフリースプラングテンプが廃止された点であり、その影響が精度や長期的な信頼性にどう表れるかは今後を見守る必要がある。

Panerai Luminor Marina
Panerai Luminor Marina
Panerai Luminor Marina

 その他の改良点は日常使用において必ずしも実用的とは言えないかもしれないが、価格に対する品質の指標を引き上げるうれしい付加価値となっている。まずひとつ目は、上の写真に示したが、シースルーバックの採用である。パネライの純粋なツールウォッチ的デザイン思想からすれば多少反するかもしれない。しかしブランド全体がより高級路線へとシフトするなかで、これは一部の顧客が求めるポイントでもある。また過去モデルにおいて行われたダウングレード(シースルーバックがあれば容易に発見できたであろう)を、パネライが隠そうとしない姿勢を示す機会にもなっている。これは、今後パネライが自らにより高い基準を課していくという、暗黙の約束であると受け取っている。

 ふたつ目はケースサイズを小型化し、シースルーバックとしながらも、防水性能を500mに向上させた点である。これらを同時に実現するのは極めて難しい。もっとも、実用性という観点では実際に500mもの防水性能を必要とする者はほとんど存在しないと思う。しかし、パネライが純粋に“できるところまで突き詰める”という姿勢を示している部分でもある。

 その他の構成要素は、まさに自分がパネライに求めるものそのものである。これまでさまざまなモデルを見てきたが、たとえばホワイトゴールド製のヘリテージにインスパイアされたラジオミール PAM00376など、変わり種にも引かれたことがある。ちなみにこちらは、チタンモデルに約40万円ほど上乗せすれば入手できることもある。しかしそれでもなお、“これぞパネライだ”と直感するのは、サンドイッチダイヤルにスーパールミノバX1を備えた仕様、大型のリューズガード、そして存在感のあるサイズ感(ただし、いまやよりつけやすくなっている)である。クイックチェンジ式ストラップの採用は、まさに“ケーキの上のアイシング”(優れたものに、さらにプラスの要素が加わること)である。

Panerai Luminor Marina
Panerai Luminor Marina
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 先ほど私は、“もし試せるなら、なぜパネライをつけない理由があろうか?”と書いた。しかし実際のところ、ためらっていた理由は大きく3つに集約される。第1に、体が大きい自分にとってわざわざさらに目立つために大きな時計を必要としているわけではなかったこと。第2に、パネライの時計は自分が普段使っているものに比べてやや扱いにくいと常々感じていたこと。しかしこのふたつはいずれも個人的な判断であった。正直なところ、商業ブランドとして初期のパネライにとってはむしろセールスポイントだったし、今でもそう感じる人も多い。

 だが、今回の新しいケースは、より洗練され、着け心地も向上していると感じる。手首に載せた際の快適さも増しており、実際に所有を考えたくなる時計に仕上がっている。唯一残る批判点を挙げるとすれば、価格である。市場に対してやや攻めすぎた設定に思える。スティールモデルが132万円、スティールブレスレットまたはチタンモデルが147万4000円(ともに税込)であり、1万ドル以下でダイバーズウォッチを探している一般消費者向けの市場における潜在的な空白を狙った価格設定になっている。愛好家層はまた別の視点で市場を比較検討するかもしれないが、ネームバリューとデザインだけでも、引き続き一般消費者を店舗に呼び込むことができるだろう。これは、Watches & Wonders全体で見られるひとつの傾向だと感じている。今後6〜9ヵ月間で、このモデルが中古市場でどのような位置づけになるか注視していきたい。

Panerai Luminor Marina

紹介記事はこちらから読むことができる。さらに詳しい情報はパネライ公式サイトを参照してほしい。