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How To Wear It チューダー ブラックベイ フィフティ-エイトのスタイリング

これは本当にジェンダーレスな時計なのだろうか? それとも私たちが気にしていないだけなのか?

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Photos by Fujio Emura

 スタイルエディターのマライカ・クロフォードが愛用の腕時計をより最高の状態にするための方法を紹介するHow To Wear Itへようこそ。このセクションではスタイリングのコツから現代におけるファッションの考察、歴史的な背景、ときには英国流の皮肉も織り交ぜて、その魅力をお伝えしていこう。

現代における全ツールウォッチに対して私が抱いていた印象を一変させた時計、チューダー ブラックベイ フィフティ-エイトを紹介しよう(重要な補足として、この記事の撮影はBB54が発表される前に行われたものであり、それも私を夢中にさせたものだ)。

 正確にはこの時計はスモールサイズではないのだが、私の主張を通すためにこれを“スモール/ミディアム”と呼ぶことにする。直径39mm、厚さ11.9mmというプロフィールに、そのすべてが詰まっている。無駄がなく、しかしこの上なくスポーティであり、現代のツールウォッチの枠組みにおいて驚くほど表現しにくい要素を兼ね備えている。

 なぜこの時計が優れた時計として私の目に留まるのか? 聞いて欲しいのだが、私はチューダーのようなモダンなものを賞賛することはおろか、身につけることなど考えたこともなかった時計愛好家であるが、イエローゴールドに軽い優越感を持ちながらもこのツールウォッチの仲間入りを(盲目的に)果たした(この文章で混乱させて申し訳ない。真意を理解して欲しいが、99%の時計ブランドは女性に話しかけるのが下手なのだ)。実際、私が時計の世界に深く足を踏み入れる前に、このブランドをどう思うかと聞かれたら、おそらく“チューダーね。それはいいからロレックスをちょうだい”と嘲笑しただろう。

 この時計がリリースされた2018年まで巻き戻すと、当時のダイバーズウォッチはケースサイズが大きくなりがちであったが、BB58はそれに逆行するサイズだった。そしてチューダーの歴史的モデル、Ref.7922 サブマリーナーを踏襲しながらも、現代的な素材と自社製Cal.MT5402を搭載した、ヴィンテージ風ウォッチという一面も持っていた。

Dara in a BB58

シャツ/ラコステ、イヤリング/スタイリスト私物。

 BB58には、スポーツウォッチにありがちな頭でっかちな雰囲気がない(それに先立ったオリジナルのブラックベイ 41mmも含んで)。不格好な時計は、直径がどうであれ、私のような程い手首にはほとんど役に立たない。BB58は決して小さいわけではなく、ヴィンテージの基準からしても小振りではないが、バランスはよくてすっきりとしている(っぽい)。

 個人的なツールウォッチの選び方に関して、私は現代的なものに偏る傾向がある。忘れちゃいけないのは、私はまだツールウォッチを使い始めたばかりなので、あとに何が起こるか誰にもわからないということだ。BB58は多用途で、耐久性に優れている点が気に入っている。むしろ、あまり大事に扱わないほうがカッコよく見える。ライダースジャケットや(リーバイスの)501のように、使い込んで自分のものにするのがいい。

 価格はもうひとつのボーナスだ。この価格帯のモダンな時計は、いま欲しい時計のカテゴリーに入ることはあまりない。でも決して50万4900円(税込)が安いと言っているわけではない。とはいえ、私はYGやジュエリーのようなデザインに引かれるので、当然、欲しいものがすぐ手に入るとは限らない。Googleによると、これは私をシバライト(贅沢にふける人)にしているそうだ。ただ単に私のセンスがいいということだと思うのだが。結果はまだでていない。

 ありがたいことに、私は伝統的な時計趣味に縛られていないので、少し違うレンズを通してBB58を見ることができる。機能性ではなく見た目のために実用に富んだ時計を身につけるというアイデアが大好きだ。ピンクゴールドの金メッキは私の好みにはちょっと合わないかもしれないが(この間にBB54が登場したが、これは完璧だ)、マットで日付のない文字盤というこの時計が持つ純粋さはとても気に入っている。それとブレスレットにした方が100%いい。

 とても完璧に近いヴィンテージのディテールにより、BB58は、デザイン的には洗練されているがスポーティな雰囲気を醸している。すべてのヴィンテージマニアのために、知る人ぞ知る小さなディテールが取り入れられているのだ。ディテール(例えば12時位置の赤い三角形、ケースのハッシュマークや太い面取りなど)は、製品をより技術的にではなく上品なものにしてくれる。私はこれまでの人生で、合計4回ほどベゼルを回転させたことがある。だから私は、潜水するときのタイミングを計るのではなく、これがどう見えるかに注意を払っている。だって正直言って、この時計を買う人がダイビングのタイミングを計っているとは思えない。

 39mmという直径は、私が求めるサイズより少しデカいかもしれないが、もう少し重厚で存在感のある手首を好む女性にはぴったりだろう。

 これは極端な事象を好む女性たちのためのものだ。よきスモール/ミディアムライフを。

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ルック1: マッチポイント

 私はジムの外でテックウェアを着ている女性に強い魅力を感じる。ナイキ Dri-FITのトップス、アローのヨガレギンス、ホカのスニーカーなど、彼女らがマンハッタンのアップタウン通りを練り歩く姿を目にする。間違いなくそれがユニフォームだ。

 個人的に、アスレジャー(スポーツウェアを普段着などに取り入れること)を着るのは大嫌いだ。本当に嫌いなんだ。ナイキのGyakusouトラックパンツに、セリーヌ バイ エディ・スリマンのツイードジャケットをミックスする以外、どうか私に近づかないでほしい。でもマーティン・ローズ×ナイキは、ストーリーを見失ったと感じる前に自分でできる範囲だ。

 いつものことだが、私はスポーティな時計が好きなので矛盾に満ちている。BB58はスポーティだが、スポーティさとエレガントさを兼ね備えている。カントリークラブのスポーティさとか、芝生のクロケットのスポーティさとか、トライアスロンのようなスポーティさではない。

 プレッピースポーツウェアは、それ自体がひとつのカテゴリーだ。そしてポロシャツは、世界中のだれもが認めるプレッピーのエンブレムである。もしあなたが2000年代の子どもだったとしたら、ラコステのポロが引き起こしたノスタルジックな要素は間違いなく計り知れない。

 ただし、これは『The O.C.』でマリッサ・クーパー(Marissa Cooper)が着用していたラコステのポロではない。2004年のY2Kパステルとポップカラーのポロシャツによるレイヤードスタイルからはほど遠い。それらはきつくてピチピチな、ティーンエイジャー向けのものだった。これはミュウミュウのFW22にインスパイアされたプレッピーバージョンだ。BB58をつけるように、少しルーズに、少しバギーに、そして少し無造作に着るのだ。

Model wearing Lacoste Polo and BB58

シャツ/ラコステ、パンツ/エルメス、シューズグッチ、イヤリング/スタイリスト私物。

 ベーシックなTシャツ、ボタンダウン、襟付きシャツ、ポロシャツという永遠の課題は、私と同年代以上の女性なら誰もが共感するだろう。どのくらいタイトか? 長さは? クルーネックかスクープネックか? 袖の長さは? 白かオフホワイトか? スタイルにこだわる消費者には難しい。

 1年ほど前、私はふと大人の風刺的なひらめきを得た。それをマライカ的に、“ベイビーT”と呼ぶことにしよう。ご存じない方のために説明しておくと、ベイビーTは若い女性向けのTシャツである。多くの場合がクロップド丈かつ、とてもタイトだ。これらのTシャツは、22歳以上のほとんどの女性にとって感情を揺さぶるきっかけとなる。

 そして内なるモノローグ(私の外見に対する、母の臆面もない批評から受けた健全な量のトラウマが混じっている)は、私のTシャツフェチに向き合うことにした。“あなたは16歳ではないのだから、ブランディー メルビルのパラダイムを超越しなければならない”。私はプチバトー(とてもシックでとてもフレンチなベビー服ブランド)に移動した。大人のTシャツの出番が来た。きれいにカットされ、袖は上腕の真ん中くらいまであり、裾はヒップの下にくるようになっていて、ぴったりとした場所に少し当たるがあまりきつくはない。私はこのTシャツを10枚くらいと、クラシックなラコステのポロシャツを2着持っており、これらを常にローテーションしている。信じて欲しいのだが、この真っ白なシャツは人生を変えてくれる。

 真の勝利は、これらのシャツを所有することで少し怠けていてもいいという許可を得られること。ブルージーンズや、黒のAラインスカート、テーラードパンツなど、下半身で履きたいものがあればあとはそれを羽織るだけでいい。選択肢は無限にある。成功の鍵はすべて、ミックスとマッチングにあるのだ。ポロはスポーティなので、レギンスやスニーカーではなく、絶妙なカッティングのレザーパンツとヒールを合わせてみて。大切なのはコントラストであり(カルティエのタンク サントレを着たスウェットスーツを参照)、ベーシックなアイテムが、ワードローブにあるほかのおもしろいアイテムとどのように調和するかだ。白シャツ闘争は、最後に必ず価値が生まれる。パリッとした白いTシャツやポロシャツは、その日のアパートや頭の中がどんなに散らかっていても、清潔できちんとした人に見せてくれるのだ。

 『セックス・アンド・ザ・シティ』から、バニー・マクドゥガル(Bunny McDougall)の田舎の屋敷にいるシャーロット・マクドゥガル(Charlotte McDougall)、もしくは『Belle Du Jour』のブリジット・バルドー(Brigitte Bardot)など、私の好きなキャラクターたちがテニスをしている姿を思い浮かべるのは好きだが、このポロシャツはテニスの話ではない。しかしやり過ぎないように、楽に見えることが重要である。というのも私たちが目指しているのは、ワードローブを開いて、目の前にある3つのアイテムを掴んでどうにか完璧に見えるようにした女性、つまり2007年頃のケイト・モス(Kate Moss)のようになることだからだ。

 時計も同じだ。まるでどうでもいいかのように羽織り、カルティエ タンクと合わせれば、このコーディネートは一変する。ピケポロとタンクはシックだが、とても女性的に配慮している。

 ジムの外のレギンスにはうんざりするが、20世紀で最も影響力のあった、女性“スポーツウェア”デザイナーのクレア・マッカーデル(Claire McCardell)は称賛したい。ウエストラインやダーツラインを排し、ゆとりのある美しいカッティングを採用するなど実用的な着こなしで、女性のカジュアルウェアの先駆けとなった。アッパー・イースト・サイドをはじめとする女性たちが、テックウェアを着て走り回るに至るまでのリベラルなアプローチは、マッカーデルも想像していなかったかもしれないが、先見の明があれば、きっとマッカーデルはBB58のようなものをつけるよう勧めてくれたに違いない。

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ルック2: 80年代のアイコン、ティナ・チャウのようなドレッシング
Yves Saint Laurent Rive Gauche Jacket with BB58

ジャケット/チェリー・ヴィンテージ、パンツ/ケイト、バッグ/ルイ・ヴィトン。

 最近、レイチェル・チャジャン(Rachel Tshajian)のニュースレター、“Opulent tips”を読んでいて、スタイルアイコンでありイヴ・サンローランのミューズだった、ティナ・チャウ(Tina Chow)のことを思い出した。ボンヌ・ヴィバン(フランス語でよく食べよく飲む人生を楽しむ人)であり、1980年代のディスコ・クイーンでもあったチャウは、非常にファッション性の高い服を簡単に、セクシーに、そしてクールに見せるような女性だった。

 チャジャンが正確に表現したように、彼女は”バレンシアガ、アライア、シャネルの服の偉大なコレクター”だった。これはオブジェを所有するように服を所有するというこだわりを物語っている。時計コレクションのようにそれらを所有し、愛し、そして管理するのだと。

 このリヴ・ゴーシュのサンローランのジャケットはティナ・チャウっぽい。これは生易しいジャケットではないから着るときには注意が必要だ! 勇気のある人はスキニーパンツと合わせてふんぞり返り、自分が、“ベビーブーム(赤ちゃんが生まれる前)”のブラック&クロームのワシリーチェアが並ぶアパートメントに住むダイアン・キートン(Diane Keaton)になったか、あるいは80年代後半にパトリック・デマルシェリエ(Patrick Demarchelier)に撮影されたブルック・シールズ(Brooke Shields)になって想像して欲しい。

 この衣装もまた、『虚栄のかがり火(原題:Bonfire of the Vanities)』をほうふつとさせる。1980年代のニューヨークの社会批判としてこの本を読むか、ブライアン・デ・パルマ(Brian De Palma)の非常に出来の悪い映画を見て、非常にいいワードローブの演出を楽しんで欲しい。ただメラニー・グリフィス(Melanie Griffith)の衣装を少し希釈することをお忘れなく。私たちはシルエットからインスピレーションを得たいだけで、何もパロディをしようとしているのではない。

 ヴィンテージのYSLを着ているように見えるか、Etsyや地元のリサイクルショップで大幅に値引きされた80年代製のスエードジャケットを着ているように見えるかは紙一重だ。信じて欲しいが、私は経験から知っている。一点ものの宝石を見つけることができるかもしれないが、肩パッドが過剰に詰められたパッチワークのような、ゴールドのジグザグ縫いが施された、恐るべき出来栄えのジャケットを着ることになる可能性もある。

Model wearing BB58

ジャケット/チェリー・ヴィンテージ、パンツ/ケイト、バッグ/ルイ・ヴィトン。

 完璧なシルエットマスターであるイヴ・サン=ローラン(Yves Saint Laurent)は、男性用に作られてきた従来のアイテムを女性用に作り変えるという、とてつもない先見の明を持っていた(時計ブランドは要注意!)。1966年に発表されたル・スモーキング(女性のためのタキシードスタイルコレクション)は、当時かなりカルチャーショックだった。タキシードは男性が着ていたもので、夕食後は喫煙室に引きこもって葉巻を吸い、政治や経済の話をしていた。女性向けのタキシードを作るということは、男性的なシルエットのデザインコードを女性の体に合わせて再構成するというだけでなく、女性が喫煙したり、ズボンを履いたり、ビジネスの話をしたりできるようになるという暗黙のアイデアでもあった。

 意図的に女性向けの時計をデザインすることは、この上なくパワフルなことだと思う。女性が実際に何を求めているのか、注目してもらえないだろうか? このBB58のように、メンズで小振りな時計を売ってもらえたら喜んで付き合おう。しかし性別の規定ではなく、クロスオーバーとデザインのバイナリへの意図的な遊びについて理解する洞察力を持っていた、ムッシュサン=ローランから学びたい。そして最終的に、完璧な世界でそのバイナリを完全に解体するのだ。

 サン=ローランが生み出したオブジェや衣服は、ヘルムート・ニュートン(Helmut Newton)やギイ・ブルダン(Guy Bourdin)などが捉えた非常に強烈なイメージにつながり、今日でも参考にしている。そして、サン=ローランのクラシカルな女性の写真は、間違いなく第二波フェミニズム(日常に潜む性差別を明るみにした女性解放思想)の視覚的言説に貢献した。これはファッションイメージが、いかに女性のアイデンティティの構築に大きな影響を与えるかを示す(もう一度言おう、時計ブランドは要注意だ!)。

 イヴ・サン=ローランは今日の多くの女性の服装を形作ったが、彼のデザインの永遠性は、彼の作品たる純粋なラインと、完璧な装飾が施されたシンプルなシルエットがすべてであったという事実から由来している。これはあらゆるタイプのデザインに当てはまると思う。基礎をきちんと固め、必要に応じて装飾をする。その好例がブラックベイのヘリテージラインだ。

 イヴ・サンローランを着たチャウの膨大な画像をあこがれるように見つめた長い午後、私はスタンダール症候群(美術や文化的価値の高い作品を鑑賞したあと不調になる心因性疾患)にかかったように感じた。あれほどまでにエネルギッシュな魅力はもはや存在しない。それにチャウは時代を先取りしていて、豪華絢爛な10年間を過ごしつつもミニマリズムを貫いていた。2010年代のシャルロット・ゲンズブール(Charlotte Gainsbourg)が、ニコラ・ジェスキエール(Nicolas Ghesquière)時代のバレンシアガを着てタバコを吸う姿の、1980年代版のように。

 大きくて派手なイヤリング(ちなみに私の好きなタイプのイヤリングだが、予想がつきすぎるだろう)を、完璧なサイズのダイバーズウォッチに交換しよう。重要なのは、とてもいいアクセサリーがひとつだけ必要な場合もあれば、ルイ・ヴィトンの黄色いハンドバッグが必要な場合もあるということだ。

 BB58は、スーツにスニーカーを合わせたり、スパンコールのスカートにTシャツを合わせたりするように、とてもグラマラスなルックにコントラストをつけるポイントとして気に入っている。そして、スーツやタキシードにツールウォッチは似合わないとくどくど言われる前に、そのルールはここでは当てはまらない。シックな服装にツールウォッチを身につけるのは力技なのだ。

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ルック3: シャツとネクタイ
Model wearing BB58

シャツ/コム デ ギャルソン、スカート/ルイ・ヴィトン、シューズ/チェリー・ヴィンテージ、ソックス/スタイリスト私物、ネクタイ/エルメス。

 女性がネクタイを着用するというのは、非常にトリッキーなスタイリングのひとつである。正しいスタイリングになることもあれば、間違ったスタイリングになることもあるという事実に異議を唱えるつもりはない。『アニー・ホール』のダイアン・キートン、1990年のゴールデン・グローブ賞でのジュリア・ロバーツ(Julia Roberts)、ウィラ・ベネット(Willa Bennett、HighSnobietyのEICでシルクのネクタイを常備している)などは、まばゆいばかりに完璧な例だ。しかし一歩間違えると、ルイ・ヴィトンのFW22ルック1~3よりも、多くの地元政治家によるビジネスカジュアルのように、あるいは『シンプル・フェイバー(原題:A Simple Favor)』のプレスツアーにパンツスーツで参加したブレイク・ライヴリー(Blake Lively)のように、もっとひどいルックになってしまう。

 心的にはマレーネ・ディートリヒ(Marlene Dietrich)のようなスーツとネクタイの組み合わせに憧れるが、私はそんな女性ではない。もし私がそうなら、下の写真のようなネクタイを締める。私は時計とネクタイを、ある種サルトリアのバンドを付けたものとは考えていない。腕時計はネクタイよりもずっと簡単に使いこなすことができる。ネクタイは企業におけるシンボルのようなもので、時計にはない震えを感じる。そして、私がセクシーだと思う最後のものは、男性の型にはまることだ。しかしもしあなたが、ネクタイを締めて常識を覆すことができる女性なら、私はあなたを称えたい。それは容易なことではないからだ。

 時計はさておき、このルックはプロポーションとジェンダーをもじったものだ。白いコム デ ギャルソンのシャツは、デコンストラクションの大御所、川久保 玲の天才的な才能を讃えるちょっとしたコマーシャルだ。実験的なカットやプロポーションで知られる川久保は、CDG(コム デ ギャルソン)を身につける者に、美の概念、身体の概念、ファッションとは何か、着こなしとは何かを再考させる。

 ここではバルーンスリーブのシンプルな白のボタンアップシャツを選んだ。男性らしさと女性らしさの厳格な概念(しばしばこのふたつを混同する)に異議を唱える、CDGスピリットを薄めたものだ。川久保の超アヴァンギャルド的ランウェイ作品は、女性の身体を形作ることを控え、アンドロジナスなフォルムを作り出している。

 このシャツは必ずしも政治的な主張をしているわけではないが、ふわっとした柔らかな袖は、通常の窮屈な服とは対照的だ。フロントで見るとシビアでストレート、サイドから見るとバルーン型で遊び心があり、さらにデニムのペンシルスカートに赤いプラットフォームシューズを合わせた。これは若いジョディ・フォスター(Jodie Foster)のバージョン2.0だ。

 この時計はこのルックにとても似合っている。主張するというよりは、コム デ ギャルソンやヴィンテージのサンローランに合う、デイリーなビーター(愛着があり気軽に身につけられるもの)という意味合いが強い。これは“男物”の時計を身につけることでも、会合場所(に合うよう)のコスプレでもなく、気分のいいものを身につけるのであり、頑丈なスポーツウォッチは女性にも万能だということだ。アクセサリーのように身につけるのは悪いことではないが(実際そうなのだから)、男らしさの証のように身につけるのは違う。

 チューダーがダイバーズウォッチのサイズを小さくしたのは、ブランドとしてのジェンダーアピールの拡大と関係があるとは思えない。それよりも、ヴィンテージと現行両方の愛好家に、より広くアピールするためのものである可能性がはるかに高い。だから、この時計が女性時計愛好家にとって幸せなアクシデントだったとしても、私はそれを受け入れる。何かを要求して自分のものにしてから、何を着るべきか、着るべきでないかをマーケティング担当者に決めさせたほうがいい。

 ファッションと時計に関する、私が永遠に相容れないモノローグに戻ろう。ここで重要なのは、私たちは楽しむために服装を整えるべきだということだ。なぜ腕時計をすることがそんなに深刻なのか? そして、なぜ個人的なアイデンティティの表現ひとつひとつに、そこまで配慮しなければならないのか? 物を身につけるのは気まぐれなことだとか、特定のアイテムへの愛着は生まれつきのものである、ということを考えたことはあるだろうか?

 時計の収集について私が評価しているのは、立ち止まらない目新しさを求める文化としての、ファッションとの本質的な違いである。私は、何年も使い続けられるものを買うという考えを尊重している。というわけで、もしあなたが長い目で見てこのBB58に向き合っているのであれば、BB58を毎日のパートナーとして、あるいはパートタイムの相棒として、またあるいは手首にもう少し重厚感を感じたいときに、たまに取り出す時計として検討してみてはいかがだろうか。

シャツ/コム デ ギャルソン、スカート/ルイ・ヴィトン、ネクタイ/エルメス。

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