trophy slideshow-left slideshow-right chevron-right chevron-light chevron-light play play-outline external-arrow pointer hodinkee-shop hodinkee-shop share-arrow share show-more-arrow watch101-hotspot instagram nav dropdown-arrow full-article-view read-more-arrow close close email facebook h image-centric-view newletter-icon pinterest search-light search thumbnail-view twitter view-image checkmark triangle-down chevron-right-circle chevron-right-circle-white lock shop live events conversation watch plus plus-circle camera comments download x heart comment default-watch-avatar overflow check-circle right-white right-black comment-bubble instagram speech-bubble shopping-bag

友人が初めて自動巻きの腕時計を買うのを手伝って得たもの

自分の趣味に対する思い込みを見つめ直し、友人のために完璧な1本を見つけることができた。


ADVERTISEMENT

私の友人ジョン・バー(Jon Barr)を紹介しよう。ジョンと初めて会ったのは彼がマンハッタンからブルックリンに引っ越してきてからだ。友達になる前から、私は彼の有名なビデオのファンだった。彼は……いや、本人に語ってもらおう。

 「トラベルビデオクリエイターとしてニューヨークを拠点に活動していますが、世界各地でコンテンツを制作しています。いかにスマートに旅をするか、いかにローカルな体験を伝えるかに重点を置いています。僕は以前、10年近くスポーツ中継のキャスターをしていましたが、その後、YouTubeでコンテンツを作るという新しいメディアの分野に移りました。ラジオやテレビのメインストリームで放送していたときも、視聴者やリスナーに今何が起きているのかを伝えたいと常に思っていました。今はニューヨークから視聴者が知らないような場所を紹介したいと考えています。まだあまり知られていないスポットを発見して、新しいニューヨーカーや観光客に皆が行くようなところを観光するのではなく、地元の人のように街を体験してもらうことが僕のやりたいことです」 彼の自己紹介は以上だ。

Jon Barr and his Seiko 5 Sports SRPD87

ニューヨークのコンテンツクリエイターであり、私の友人でもあるジョン・バー。セイコー 5スポーツ SRPD51(国内版はSBSA001)を着用。

 彼のYouTubeの登録者数は23万人を超え、圧倒的な支持を得ており、長年にわたりニューヨークをテーマにした数多くのビデオを制作している。 また、妻のアドリアナとともに彼女の故郷であるメキシコやプエルトリコ、ギリシャの島々、そしてアメリカ大陸のあらゆる場所を旅している。そんな多忙で旅慣れたジョンだが、彼の腕がいつも空白であることに気がついた。昨年のクリスマスに奥さんからもらったクォーツウォッチをたまにつけるくらいで、それ以外はつけていないことが多かったのだ。

 ジョンが私の仕事に興味を持ち始めたのは、時計、特に自動巻き(機械式)時計について質問するようになってからだ(時計好きではない人に私の仕事を説明するのが、日に日に難しくなっていた)。今回のストーリーでは、ジョンが初めて自動巻き腕時計、セイコーの5スポーツ SRPD51(国内版はSBSA001)、ブルーダイヤルにブルーベゼル、スティールブレスレットを合わせた新しいセイコー5を購入することになったいきさつについて語りたい。

 これはほとんどジョンについての話だが、同時に時計に関する教育学上、私が当たり前だと思っていたことをあらためて教えてくれた。この趣味の世界には誰もが経験する急峻な学習曲線があるが、私はジョンが初めて本当の時計を手にするまでの過程でその曲線の始まりに立ち合うことになったのだ。

Seiko 5 Sports SRPD87

きっかけは、ある晩の酒の席での会話だった。酔いが回る前にジョンが「おすすめの自動巻き時計はないか」と聞いてきたのだ。親友である私は親切に返答したが、少しばかり質問させてもらった。まず、なぜ彼が今まで自動巻きの時計に興味を持たなかったのか、なぜ所有しなかったのかを知りたかった。

 「僕がずっと自動巻きの時計を買わなかったのは、それが本格的な時計コレクターや本当に時計が好きでファッションにも興味がある人のためのものだと思っていたからだよ。自分のことを“ミスター・トレンディ”なんて思っていないし」とジョンは答えた。 さらに彼はこう続けた。「僕は50ドル以下の安い時計を買うことに慣れていた。たぶん失くすのが怖かったんだと思う。以前、高価なサングラスをなくしたことがあるんだ。心のどこかで時計にそんなお金を投資することは自分にとってリスクのように思えたし、洋服やスニーカーにもそんなにお金をかけないのに200ドル以上使うというのは昔ならリスクが高いように思えたんだ。それに時計好きの友人もいなかったし(編集部註:なぜ? でもありがとう!)。買うなら今が絶好のタイミングかも」

 ここで少し脱線して、私が時計コレクターとして、また時計ライターとして、いかに感覚が麻痺し、世事に疎くなったていたかを述べておきたい。2000ドルという価格を目にしたとき、私の頭に最初に浮かぶ言葉は“バリュー”、つまり“飲食”でよく使われる言葉だが、“お得なご提案”なのだ。2000ドルは大金だ。しかし我々時計好きはそのことをどこかで見過ごしてしまっている。ほかの人たちは同じお金を旅行などの体験に使ったり、ビジネスに還元したり、(イヤーマフを買ったり!)、貯蓄に回したりしているのだ。

 彼の場合も、そのすべてが当てはまる。そのため“1000”に近い数字の時計は話に上らなかった。私の任務は300ドル以下のものを探すことだ。この指令を受けてすぐに私の心はどこを目指したか読者諸君にはおわかりだろう。それは…、

 セイコーだ。

Seiko 5 Sports SRPD87 on a bench

私は彼の条件に合い、自信を持ってすすめられる時計、つまり1年以上(もしかしたら永遠に)使える時計を少しずつリストアップし始めた。「毎日身につけられるものがいい。派手すぎるのも嫌だし、かといってカジュアルすぎるのも嫌だし……」と彼は言った。さらに「君がセイコーの話をしたとき、時代を超越した時計だと言ったね。僕は10年、20年、30年と持ち続けたいんだ。そしていつもつけていたい。僕はコンバースのスニーカーを穴が開くまで履くような人間なんだよ」とも。

 数週間後、昔住んでいたブルックリンのボエラムヒルにある私のお気に入りのレストランで夕食をとっていたとき事態は好転した。カクテルをおかわりして新鮮なワカモレとチップスを食べていたとき、バーは私に向かって時計の購入の準備ができたと言ったのだ(そろそろこのフレーズを引退させる時期かもしれない)。このときの彼の要望はより具体的だった。ブルーのダイヤルの時計が欲しいというのだ。「ブルーはずっと好きな色だったし、ブルーが自分に似合うと思う」と。「黒はちょっと退屈で僕には地味すぎると思う。いつもブルーに引かれていたんだ」

A Week On The Wrist: The Seiko 5 Sports SRPD

HODINKEEのジェームズ・ステイシー(James Stacey)がセイコー 5 スポーツコレクションの全貌を深く掘り下げている。

 私はすぐにセイコー5の新作をすべて紹介したジェームズ・ステイシーの『A Week on the Wrist』を思い出し、そのなかのブルーダイヤル、ブルーベゼルのバリエーションに思いを馳せた。そして信頼すべきHODINKEEのアプリを立ち上げ、まさにその時計を彼に見せ、Amazon(HODINKEE、許して)を立ち上げて彼の予算のスイートスポットである220ドルの価格でブレスレットつきの1本を見つけた。これはグレーマーケット価格であることを心に留めておいてほしい。

 奥さんのアドリアナは、私に「まさにあの時計を買ってあげようと思っていたのよ!」と言ってくれた。そして暗黙の承認のもと(まるで私がすすめるだけでは物足りないかのように)、彼はテーブルの上で携帯電話を取り出し、その場で注文ボタンを押した… 前菜が出される前にである。公平を期すために言うと、フランス産トリュフのラビオリは私たちの注目を一身に集める必要があったのだ。そしてチップスとワカモレというアペタイザーとの組み合わせが奇妙なのは気にしない。食べてみてから判断してほしい。

Seiko 5 Sports SRPD87 on wrist

そしてAmazonプライム会員であれば(ほとんどの場合)保証される2日間、時計が届くのを我々は待った。私はジョンに時計はふくらはぎに(太ももにすら)フィットするほど長いブレスレットと一緒に届くが、大事な日に昼食をとりがてら近所の時計修理店まで行ってきちんとサイズを調整してもらおうと言った。

 まるでジェフ・ベゾス氏の命令だったようにたった1日で時計が届いた。プライムの価値があった。我々はランチの代わりにコーヒーを選び、通りを渡って景色の良いキャロルパークに飲み物を持って行き、遊び場で騒ぐ子供たちに囲まれながら、なんとか静かなベンチがある場所を見つけた。

ADVERTISEMENT

 その場の口頭での説明でいくつか確認することがあった。私が時計のセット方法を説明しようとしたとき、彼は 「ダイヤルに書いてあるこれらの文字はどういう意味で、どういう働きをするの?」という予備的な質問を挟んできた。

Seiko 5 Sports SRPD87 on wrist in conversation with the author

キャロルパークでの時計談義を写真で再現してみた。

 彼が言っていたのはベゼルのことだ。そのとき私は気づいた。もし彼がダイビングに興味がないのなら、この機能は意味があるのだろうかと。私は水中での機能、そしてベゼルの逆三角形を分針に合わせることでタイミングを計る方法などを説明した。さらにストップウォッチよりも便利な機能であること、卵を焼く時間など、あらゆることに使えることを説明した(エッグタイマーを覚えているだろうか?)。このとき私は時計の福音を広めるために友人たちにするのと同じような、うんざりするような話をしているのではという自覚があった。しかし同時にこの情報が役に立てばとも思っていた。

 続いてダイヤル上の曜日と日付の機能の説明になったが、使い方を説明する手前で止まってしまった。というのも、この時計の最も基本的な機能である、時計を動かすための巻き上げと時刻を合わせる設定をまだしていなかったからだ。このとき私は口を開いて言葉に出すまで、これがどれほど複雑なことなのか想像もつかなかった。たくさんの言葉。コーヒーと一緒に水も注文しておけばよかったと思った。

Seiko 5 Sports SRPD87 on wrist

 彼は私がリューズ(ケースの側面にある、くるくると回せるもの)がどのようにすべてを機能させるのかについて話すのを辛抱強く聞いてくれた。一段引き出せば、日付と曜日を設定することができる。一方を回すと日付が、もう一方を回すと曜日が設定される。もう一段引き出すと秒針の動きが止まり、時刻合わせができるようになる(Apple Watchがこれを応用したとわかる)。読者諸君はこんなことわかりきっているだろうが.……僕が丁寧な仕事をしたことがわかるように繰り返している。その後、私は彼に腕時計をわたし、自分でできるようにした。私は独白法よりも体験型教育を信奉しているためだ。 …それにたくさんしゃべって疲れてしまった。

 しかし、まだリューズについては終わっていなかった。巻き上げの時間である。30回ほど巻けばムーブメントが動き出すとアドバイスした。そしてシースルーケースバックから見えるムーブメント、4R36を見るために時計をひっくり返した。ローターが何をするのか説明するのは簡単なことではない。私は時計を回してローターの動きを見せ、巻き上げの代わりに手首の動きでムーブメントが永遠に動き続けることを説明した。この仕組みが自動巻きの時計というわけだ。それがエンターテインメントなのだ。彼は楽しんでいるように見えたかって? 憤慨していたかもしれない。

Seiko 4R36 movement

 「それで終わり? セットしておけば心配ないのか?」と彼は私に尋ねた。

 まあ……そんなところ。……でもほかに、いや、大丈夫。

 私は自動巻きの時計はクォーツウォッチほど時間を正確には刻めないこと、そしてこのセイコーは特にそうであることを説明した。彼は混乱し、少し落胆した。精度が悪いかもしれない時計にこれだけのお金をかけたのだろうか? どうするんだ? 私は時計トリビアに進むのをためらいながら、精度の足りないところを機械が補っていることを説明した。「今、何時?」と聞かれたときに正確に答えたい人もいる。あるいは会議に遅れたくない人もいる。私はこの狭い世界の新しいメンバー候補を失いたくなかったので、より感情的な方法を選ぶことにした。

 自動巻きの時計は時間が進んだり遅れたりするので、モニターして調整する必要があることを伝えた。だいたい2週間おきくらいに。そしてこれは面倒なことでも時計の故障の兆候でもなく、新しい時計との絆を深める機会としてとらえるべきだと付け加えた(ダサい言い方だが、これも事実)。私はこの時点で彼と少し距離を感じたが、彼はまだ時計自体には心を奪われていたので、先に進むことができると思ったのだ。この時点では私はいつでもメールや電話で質問を受けることができた。

Seiko 5 Sports SRPD87 on wrist

 彼が腕時計だけでなく機械式時計というものに共感してくれるかどうか心配だったと認めよう。私は常々機械式時計がニッチな分野であることを痛感していた。そのおかげで我々の多くは仲良くやっていけるのだ(直接会う仲間の話。…コメント欄はまったく別の生き物だ)。しかし私は自分がこれにどれほど情熱を持っているかを知った。何時間でも話していられそうなほど、強引な売り込みと思われそうなほどだ。でも、そうじゃなかった。本当に友人にこの瞬間を喜んでもらいたかっただけなのだ。初めての機会は一度きり。彼の場合がそれだった。いろいろな意味で私はこの結果に責任を感じていた。誰でもこういう経験をするときインターネットを頼りにできる。しかし時計のガイド、あるいは時計の第一人者を得て少しでも学ぶことは結果の良し悪しにかかわらず(良い方だったと思いたいが、彼に聞いてほしい)、すばらしいことだと思っている。

 この時点でコーヒーカップは空になり、ミニチュートリアルは(ひとまず)終了となった。このブレスレットのサイズを決め、腕時計を手首に装着するためにプロの手を借りる時が来た。

The author and Jon Barr outside a watch repair shop

ブレスレットのサイズ直しをする時計修理店の前で。筆者とバー。

カシオやタイメックスの時計が何百個もウィンドウに並んでいて、靴の修理も兼ねているような小さくて地味な時計修理屋に散歩がてら行ってみた。この店を訪れるのは初めてではない。1年ほど前、このサイトで紹介する記事のために、私の小さいけれども強力なオメガ シーマスターのケースバックを開けてもらいに行ったことがあるのだ。

ADVERTISEMENT

ジャッジする

Seiko bracelet clasp

 「人生の知恵を授けてくれる父親のように感じたよ。自動巻きの時計は初めてだったから、とてもクールな瞬間だと思ったよ。何かプロフェッショナルな感じがして、いつもと違ってちょっと高級な感じがした。僕はいつもカジュアルな時計を身につけることが多かったから……」さらに彼はこう言ってくれた。「何かとても大事なことをしているような気がしたんだ」と。

 店内を歩き回って息苦しい空気を吸いながら(もちろんマスクをして)、この店には特に魅力的なものはなかったが、職人が自分たちのやっていることを理解している場所であることは感じられた。たとえこの10年間で時計愛好家の生命線となった、意図的なヴィンテージ美学に傾かないとしてもだ。ブレスレットに少し手を加えただけで15分もかからず、しかも10ドルもかからずに彼のために時計のサイズを合わせてくれた。以前も時計を持っていたが、彼は今は自身の時計を持っている。

Inside the watch repair shop with the Seiko 5 Sports SRPD87 on wrist

魅力的なインテリアの時計修理工場。

 別れる前に、私は彼がこの経験と新しいセイコーに十分満足していること、そして我々がまだ友人であることを確認した。彼にとっては間違いなく調整期間となる。「実際にブレスレットを手にしたとき、肌に触れたときの冷たさと今まで使っていたものよりずっと重いことに気づいた」と彼は言う。「結婚指輪をつけ始めたときも同じだった。数日後には気にならなくなった。このブレスレットは一般的なストラップよりも長持ちしそうだ。ストラップのついたカジュアルな小さな腕時計をしているというイメージを卒業し、もう少し素敵なものを身につけている感じだ」

 それぞれ帰途につき、数日後、私はYouTubeで彼の新しい動画を見た。そして彼の腕にあるステンレスの板に気づいた。ダイヤルとベゼルのブルーが光に照らされて輝いている。それに気づいたのは私だけではなかった。

 「この時計は間違いなく注目を浴びたよ。僕のファッションについてコメントされることはほとんどないので、これは珍しいことだった」と彼は語る。「視聴者の70パーセントは男性だからセイコーは彼らの注意を引いたと思う。僕がつけているのを見て自分もつけたいと思ったのかもしれない。僕のファッションについてコメントをもらうのはとても珍しいから気分がよかった。ちょっと自画自賛だけど……」

Seiko 5 Sports SRPD87 on wrist

初めて機械式時計を購入する際に、ミニブートキャンプを経験した彼は、少し違った世界観を持つようになった。

 「もちろん時計に今までより注目するようになったよ。自動巻きの時計を持つという、僕の知らなかったクラブの一員になった気分だ」と彼は言う。「大したことではないけれど、より興味が湧いてきたよ。来年あたり、もう1、2本コレクションを増やすつもりだ。なぜなら…一度手にしたら、1本だけで過ごすのはかなり難しいと思うから」

 むむむ。

ジョン・バー氏はニューヨークを拠点に活動するコンテンツクリエイターだ。彼の作品はYouTubeのチャンネル "HereBeBarr" で見ることができる。

Photos, Kasia Milton

Shop This Story

HODINKEEはセイコーウォッチの正規販売店です。