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Hands-On カシオ WS-1200H フィッシングタイムをつけて鱒を釣り上げた話

しかし、釣れたのは時計とは無関係だろう。

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"我々は釣り竿で鱒を仕留めることについて語る。それを阻止するのは、鱒の努力である。"  -アーネスト・ヘミングウェイ

ニュージャージー州で過ごした10代の夏、私には確固たる習慣があった。両親が作ってくれた夕食の残り20%を小さなジップロックにこっそり入れておき、デザート(夏の間はアイスキャンディーの可能性が高い)を食べる代わりにの、GTバンプに乗り、左手とハンドルの間に釣り竿を挟んで地元の釣り場であるグローバー・クリーブランド・ポンドまで10分ほど走る。自転車の右側には、夕食の残り物を入れた小さなビニールのショッピングバッグ、釣り針を数本、浮きを1~2個、ナイフ、布切れをぶら下げていた。ショッピングバッグを右側に置いたのは、近所の友人の自転車が彼らの家の前庭に転がっていたら、シングルリアブレーキレバーを操作できるように右手を確保しておく必要があったからだ。そのような場合、私はブレーキを踏んで自転車を庭にとめ、ドアをノックして一緒に釣りをしないかと説得するのだ。

 ほとんど毎日、夕方の数時間を水面に釣り糸を垂らして過ごしていた。ときにはサニー(アメリカのほかの地域ではブリムやブルーギルと呼ばれている)に餌をとられるだけこともあったが、たいていの場合は安物の竿とリールで、時には手釣りで、獲物を得ることができた。

 その後の数年間で、私は州郊外に出て、水域はより大きくエキゾチックになり、魚も大きくなっていった。そして、魚を捕まえるための道具は、ますます複雑で高価になっていった。

 しかし、長年にわたって釣り道具を集めてきたなかで、釣りと時計の世界のちょうど中間地点に存在する道具を見逃していた。それは、魚が食いつくタイミングを教えてくれるという5段階のフィッシングインジケーターを搭載したデジタルウォッチ、カシオのフィッシングギアだ。もちろん、ストップウォッチ、セカンドタイムゾーン表示、3つのアラーム、夜間用のオレンジカラーLEDバックライトなど、通常のカシオのデジタルウォッチの特徴を十分に備えている。

 そして20年後の今、私はこの時計(WS-1200H)を購入した。26ドル(日本での小売希望価格は6050円)という金額は、今年の初めにアラバマ州オレンジビーチの「The Rod Room」で注文したカスタムのミディアムアクションの近海用釣り竿に比べれば微々たるものだったが、その竿は後に車のドアで折ってしまった。高価な道具が海に落ちたり、壊れたりするのは最初は痛いが、そのうちビジネスコストとして割り切れるようになる。それが釣りというものだ。

 釣り道具にかけるお金に限りはない。コツは、実際にクーラーいっぱいに釣り上げるのに役立つ道具かどうかを見極め、それにお金をかけることだ。かけるべきところにかける。私はこのカシオがそのカテゴリーに入るかどうかを見極めたいと思った。それは、ただの余計なアクセサリーなのか、それともより多くの魚を釣るのに役立つのか。

 スポーツマンズ・ウェアハウス(Sportsman's Warehouse、アラスカを含む全米25の州で営業しているアメリカのアウトドアスポーツ用品店)から持ち帰った後、この時計のセッティングは、編み込み釣り糸とモノライン釣り糸をFGノットでつなぐよりも複雑だということがわかった。手先の器用さだけでなく、忍耐力も必要なのだ。4つのボタンを使って操作するメニューは無限にあり、協定世界時の差と経度は必須入力で、他にも5つほどの変数があり、それぞれにメニューが用意されている。

 私はすでに、この26ドルの時計の真の価値を見出していた。それは、時計の機能とは関係なかった。この時計は、釣りにも通じる、とてもとても大切なことを教えてくれる。「焦ってはいけない」「最初からわかったつもりになってはいけない」ということだ。この時計をセットアップするだけで、怒りが湧いくる。そして、焦りや苛立ちがあるときは、魚の食いつきも悪くなるようなのだ。

 釣りには直感も関係するが、釣り道具を使うのは違う。カシオのモジュール3485の説明書は、ヘミングウェイの「老人と海」と同じくらいの長さだが、唯一の違いは、どちらか一つを手にすることで、より深く釣りを理解できるということだ。

 トップディスプレイは、その時点での釣りの「適性」を伝えるためのものだ。時刻、日付、月のデータ(月齢、ムーンフェイズ)をもとに、魚のアイコンで表されるレベル1から5までの釣りの適性を判断する。天候、場所、水の透明度、水温、水の酸素濃度、前回の雨などの自然現象、風速や風向き、海流などは考慮されないが、これらはどれもかなり重要だ。

 人生のほとんどをかけて、魚を見つけるために時計が考慮していないあらゆる要素を注意深く見てきた。そして、カシオのフィッシングギアを装着した後、私は今まで通りの行動をとることが最善であると判断した。この時計は、私がまだ知らないことは教えてくれない。貴重な手首の時間を割いて、時計が教えてくれることを要約してみよう:釣りに適しているのは夕暮れと夜明けで、満月の前後にはアタリが少ないはず(満月前後の数日間は潮流が最も強くなる)と言われている。

 水辺で使えば使うほど、この時計の魅力は薄れていった。設定もさることながら、解読するのが難しいのだ。魚群探知のディスプレイに目をやり一日中魚のレベルを確認していたが、それは時々変化するものの、現実を反映した意味のあるものではなかった。4つの機能ボタンをいじってみたが、意味のある動作をしたのは「ライト」ボタンだけだった。釣りをしているときに画面を見ている時間は無駄だ(ソナーを使って海水魚を探す場合は別だが)。また、魚が釣れたとしても、それは時計とは関係なく、水を観察したり、季節の変化を考えたり、五感で感じ取ったことが要因だ。釣りは、料理や文章を書くのと同じように、その過程が重要。釣れる確率を上げるには、長い時間をかけて技術を磨くしかないのだ。

 26ドルの時計に対して厳しいかもしれないが、26ドルあれば、新しいお気に入りの釣り場に連れて行ってくれるトラックにガソリンを入れることができるし、秘密の釣り場を発見したときに、釣り仲間と一緒に新しい国立公園に入るための入場料にもなる。しかし、これはお金の問題ではなく、ときには「少ない方が良い」という考えに基づいている。

  釣りにも人生と同様、近道はないのだ。釣りの醍醐味である「シンプルさを追求する」「自然とのつながりを深める」「デジタルの世界から逃れる」ということを考えると、ギミックの効いた時計は邪魔にしかならない。私に言わせれば、理想的なフィッシングウォッチとは、絶対的なシンプルさという概念を体現した、時間表示だけの完成度の高い時計(私は淡水釣りの際にはグランドセイコーのSBGK007を愛用している)であり、休むことなく技術を追求した作品だ。それは釣りとも通じるものである。

※編注;記事に登場する時計と同様のモデルは日本でも購入が可能。詳細はこちら

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カシオ フィッシングギアの時計を試してみたい方はこちらを。 釣り糸を巻いて、竿をしならせよう!

Photos: Katie McDermott