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ボンドウォッチというと、ロレックスのサブマリーナーやオメガのシーマスターなどがすぐ思い浮かぶ。これらはスイスのダイバーズウォッチの王様であり、007があえて水中に持ち込む唯一の時計でもある。- 待ってくれ。一つ忘れていた。
時間の経過とともにほぼ忘れられていたのは、1987年に公開された映画『007/リビング・デイライツ』で、ティモシー・ダルトンがつけていたタグ・ホイヤーのクォーツダイバー、ダイバー プロフェッショナルだった。一度知ってしまえば、見逃すことはない。なぜなら、Mの最高エージェントが身につけていたほかの時計とは異なり、PVDコーティングが施された外観(ブレスレットを含む)と真っ白なダイヤルが特徴的だからだ。そのダイヤル表面はすべて夜光塗料に覆われ、これは真昼の明るさでも重宝する。今週ずっとつけているくらいだ。
今月初め、タグ・ホイヤーはもう一つのボンドウォッチを、新しいアクアレーサーのプロフェッショナル 300 ナイトダイバーとして蘇らせた。このモデルは、今年初めにデビューしたばかりのアクアレーサーラインにぴったりとはまる。タグ・ホイヤーの専門家であるジェフ・スタイン氏は、このチタングリーンのアクアレーサーを「この夏一番の時計」と呼んでいる。
HODINKEEではGreat Outdoors Weekということで、この実用的なツールウォッチをHands-Onに取り上げるのに最適だと思い、手に取ってみることにした。実のところ、単刀直入に言えば、この夏だけでなく、今年一番のサプライズウォッチになるかもしれないと思っている。
このナイトダイバーには、いろいろな意味で驚かされた。私は、全面で発光しているダイヤルは、子供用時計のパーティーの仕掛けのように、中身よりも演出だと思っている人間だ。そのため、この時計には控えめな期待しかしてなかった。80年代のホイヤーのナイトダイバーは、昼間見てみるとダイヤルは放射状になっていた。8月にこの新作が発表されたとき、タグ・ホイヤーがダイヤルはホワイトだと言っていたのは知っていたが、私はニコロデオンのスライムのようなグリーンが下から叫び声を上げるように光るのを覚悟していた。
だが、それは間違いだった。昼間の光の下で、このダイヤルはロレックスのポーラーダイヤル(編注;エクスプローラーⅡのホワイトダイヤル)ほどの白さだ。実際には、タグ・ホイヤーはこれをオパーリン・ホワイトと呼んでおり、ダイヤル表面に配置されたブラックのアプライドマーカーとのコントラストにより、非常に読みやすい時計に仕上がっている。
ダイヤルには、今年発売されたほかのアクアレーサーと同様に、溝状のパターンが施されている。すぐに、オメガのセラミック製のレーザー彫刻された波模様のダイヤルを思い出したが、この時計ではもっと控えめだ。ダイヤルの文字は、必要なものだけが表示されるバランスのとれたデザインになっている。タグ・ホイヤーのブランド名、12時位置の下にあるアクアレーサーの名称、そして6時位置の上にある自動巻きの表示と水深表示のみだ。
この6時の位置で、4時半の日付窓のような問題に遭遇する。それはもちろん、6時位置の拡大表示付き日付窓のことだ。ダイヤル下部にあるこの巨大なサイクロップレンズを見逃すことはできない。日付表示の位置はやはり最近のシーマスターと似ているが、拡大されていることで、その存在感を際立たせている。正直なところ、私には気にならなかった。この時計の理念と仕上げは、読みやすさにしっかりと根ざしているようだ。拡大されたラージデイトの開口部以上に読みやすいものがあるだろうか?
ダイヤルはブラックのチャプターリングで縁取られており、溝のあるラインがフランジにつながって消えていくという、美しいインフィニティ効果を生み出している。風防の下はすべて、単色のコントラストのマスタークラスだ。時計のダイヤルに黒一色のマーカー(特にアプライドマーカー)を見ることはあまりないが、白と黒の色調のバランスを見事にとっている。
この時計の最も優れた部分の一つは、ほとんど注目されておらず、あまり知られてもいない - ベゼルインサートだ。正十二角形の逆回転防止ベゼル(スムーズで満足のいくクリックアクション)の内側には、完全にマットなセラミックインサートがある。これは重要でないように見えて、重要なのだ。セラミックベゼルは機能的には優れているが光沢があるものが多く、本来ツールウォッチであるはずの時計を派手で堅苦しいものにしてしまう。
このモデル、ナイトダイバーのマットセラミック製ベゼルインサートは、不要な注目を集めることなく調和している。また、DLCコーティングを施したステンレススティール製ケースのサテン仕上げにもフィットし、時計と一体化している。ケースとベゼルのほぼ全面的にマットな外観と感触が、この時計の最も強いデザインポイントであると感じたが、これは実物を見なければ実感としてわからないだろう。
もちろん、この時計は暗闇で光る。これは見ていて楽しい。私のように強制的に効果を見たい人は、強力な懐中電灯をダイヤルに向けて光をチャージし、窓のない部屋に入って照明を消すといい。すると青と緑のネオンパーティーが目の前に現れるのだ。ベゼル中央の三角形、分針、秒針がすべて青く光り、ダイヤルのほかの部分、つまりダイヤル全体が明るい緑に光っている。これは、デジタルウォッチのボタンを押すと暗闇でも一時的に文字が読めるようになることを思い出させる。この時計では、明るいところで見るのと同じようにダイヤル全体を見ることができる。ダイヤルカラーは白ではなく緑だ。ダイヤル上のすべてのテキストを読むことができ、適用されているすべてのマーカーを見ることができる(夜光塗料が塗布されていない黒いマーカーも)。
「暗闇で時計を読む」という点で唯一残念なのは、暗闇では日付が見えないことだ。それぞれのデイトディスクの背景をペイントすることがどれほど複雑なことなのか私にはわからないが、タグ・ホイヤーはきっとわかっていて、そのためにそうしなかったのだと思う。すべてを手に入れることはできないのだろう。
43mmという大きさをさほど感じさせないのは、オールブラックのDLCコーティングを施したケースが持つスリム化の魔法のおかげだと思う。しかし、このモデルには相応の重さがあると言える。自信を持たせる重さと言ってもいいだろうが、面倒な重さではない。そして、つけるために腕を鍛える必要はない。
しかし、この時計がブレスレットではなくラバーストラップに取り付けられていることを考えると、その重さは興味深いものだ。ストラップ自体はとても快適で、ケースにしっかりと、そしてシームレスにフィットする。ストラップはシンプルなデプロワイヤントクラスプシステムで手首に固定され、ストラップをスライドさせて完璧にフィットさせることができるクイックアジャスト機能を備えている。
ソリッドの(そう!)刻印入りのケースバックは、タグ・ホイヤーのCal.5ムーブメントを保護するためにねじ込み式になっているが、このムーブメントはよく知られた信頼性の高いETA 2824-2をベースにしている。これまで述べてきたように、DLCケース、マットセラミックベゼル、夜光塗料を塗布したダイヤル、クイックアジャストクラスプなど、この時計に関するすべての要素を考慮すると、この時計の価格が4000ドル以下というのは想像を絶するほど安い。事実、39万6000円(税込)という非常に手頃な価格だ。
ダイヤルにこれほどの光を必要とするほど深く潜る人にとっても、スイス時計の名門が提供する比較的手頃なツールウォッチを探している人にとっても、この新しいナイトダイバーは期待を裏切らないものだろう。実は、このモデルに新しいニックネームを付けてもいいかもしれない。ティモシー・ダルトンが演じたボンドに敬意を表して、この光り輝くモンスターを“リビング・ナイトライツ(The Living Nightlight)”と呼ぶことを提案したい。
タグ・ホイヤー アクアレーサー プロフェッショナル 300 ナイトダイバー:Ref.WBP201D.FT6197。直径43mmのサテン仕上げのDLCコーティングのSSケース。セラミック製逆回転防止ベゼル(60分スケール)。ブラックDLCコーティングのねじ込み式リューズとケースバック。300m防水。ホワイトスーパールミノバ®オパーリンダイヤル。ブラックゴールドプレートのアプライドインデックスにホワイトスーパールミノバ®またはブラックラッカーを使用。ブラックゴールドプレートの時針と分針にホワイトスーパールミノバ®。ブラックゴールドプレートの中央針にホワイトスーパールミノバ®。ブラックゴールドプレートのタグ・ホイヤーロゴ。6時位置にサイクロップレンズ付きの日付表示。自動巻きタグ・ホイヤー Cal.5(ETA 2824-2ベース)。ラバーストラップ、マイクロアジャストクラスプ。価格:39万6000円(税込)。
Photos, Kasia Milton
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