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Second Opinions チューダー ペラゴス FXDは、2021年のベストウォッチか?

百聞は一見にしかずだ。


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昨年11月、ジェームズ・ステイシーが執筆したチューダー ペラゴス FXD Ref. 25707Bのレビューには330件のコメントが寄せられ、その1週間後にはHODINKEE Radioのエピソードも加わり、この話題についてさらに加えるものはもうないだろうと思われたことだろう。ジェームズの記事を読んだとき、この時計のアイデアは面白そうだとは思ったが、実際に時計を見たり、ましてや試着してみたりすることにはあまり興味がわかなかった。抽象的には非常に興味深く、ある種の風変わりな魅力があるのだが、少しハイコンセプトすぎて、デザインの細部も詰め込まれすぎるような気がした。2019年に登場したチューダー ブラックベイ P01と同様に少なくとも幅広いオーディエンスにとっては、それ自体が良いものではないのだろうという第一印象があった。

 固定式のストラップバー(「FXD」は、"FIXED"「固定」の意)だけでなく、ケースにストラップスロットが刻まれているのも不思議な感じだし、ダイバーズウォッチなのに両方向カウントベゼルがあるのも、もちろんそうだ。この時計は、フランスの戦闘ダイバーのエリートチームであるコマンドー・ユベール(部隊名は、ソードビーチ沖のD-デイで戦死したオーギュスタン・ユベール中尉にちなむ)と共同でデザインされたそうで、おそらく彼らは自分の仕事を理解しているのだろうが、やや突飛なディテールの積み重ねは少し故意に行われたように思われた。これがペラゴスFXDだ、これで満足できないなら、お帰りをというそんな雰囲気を感じた。ペラゴスの次を行くシンプルでイージーなもの、つまりもっと薄く、小径化され、METASの認証を受けているものかなにかになるだろうかと考えていた。

Tudor Pelagos FXD on model's wrist

 後者についてはまだ疑問が残るが、私の手を止め、チューダーにサンプルを送ってくれるように仕向けた、私の中の時計学の守護天使に感謝しなければならない。私は圧倒されることを覚悟していたわけではなかったが、時計を手にして身につけたとき、多少なりとも動じない自分がいてもおかしくなかっただろう。

 こんなに早く180度方向回転したのは、1979年に運転免許を取得した日にロードアイランド州のショッピングモールの駐車場でドーナツターンして以来だと思う。私はこの時計に馴染んだというよりも、人間の自然発火に相当するような体験をしたのだ。良いことでも悪いことでも、何かに対して強い感情的な反応を示すと、自分には合理的な理由があると思いがちだが、実は心には理屈ではわからない理由がある。私はFXDに激しく惹かれたのだった。

 なぜかというと、抽象的にはマイナスと思えるものが、実際に使ってみるとFXDの魅力に欠かせないものばかりだったからだ。

Tudor Pelagos FXD  dial

 その理由のひとつは、正直なところ、ダイバーズウォッチが時計のデザインのなかでつまらないものになりがちであるからだ。そうならないようにするのは大変なこと。ダイバーズウォッチ、特に国際規格(記事「腕時計の防水表示を正しく理解する2つのISO規格に関する逸話」参照)に準拠しようとすると、視認性、最低耐圧、逆回転防止のタイミングベゼルなど、一定の条件をクリアしなければならない。つまり、ダイバーズウォッチは機能的な重複がかなり多いだけでなく、デザイン的な重複も多い傾向にあり(ロレックスは例外で、他社のダイバーズウォッチをまったく気にせず、冷ややかに見ていると思われる)、これは問題になりやすいところである。

Tudor Pelagos FXD dial closeup
Tudor Pelagos FXD strap buckle
Tudor Pelagos FXD bezel side view

 ダイバーズウォッチの魅力は、スペックとデザインの両面で目的を持っていること。ダイバーズウォッチにおいて、ただ見た目が違うだけのものを作ろうとすると、見劣りしてしまいがちだ。無駄に凝ったベゼル、無意味に複雑なリューズロックシステム、実際の空気潜水とは無関係な過剰な深度スペック、あるいはこれらの邪悪な組み合わせによって、それ自体が無駄に頑張りすぎているように見えるものを生み出してしまうのだ。

 特にオーバースペックな深度表記は面倒だ。200mを超えると(実用的な必要性からしても無理がある)、より深い水深を提供するための競争は、底辺への競争であり、高性能車にとって重要なのは馬力だけだと考えるのと同じくらい的外れなのだ(ダイバーズウォッチに関しては、毎回50m以上の深度を追加するよりも、本当に良い品質管理をお願いしたい。ただ問題は、「私たちはより良い品質管理をしています!」というプレスリリースが魅力的に聞こえないことだ)。

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 そうした部分でFXDは輝いていると思うのだ。200〜500m防水、逆回転防止ベゼル、ダークな色調のダイヤル、ホワイトハンド、数字ではないマーカーなど、ほかのダイバーズウォッチとは一線を画すものを作るために、デザイナーが時間をかけて、多かれ少なかれ機能性という点では空虚に判断していたからではない。その代わり、特殊な環境下で最大限の機能を発揮できるよう、さまざまな工夫が凝らされている。例えば、カウントダウンベゼルは、水中航行時のポイント間のデッドレコニングに使うため。また、ストラップのカットアウトは、ストラップの安全性を確保するためのものであり、恣意的に変なものを取り入れたわけではない。固定式のバネ棒は、ヴィンテージのミリタリーウォッチに見られる英雄的な実用主義のクールな証であり、現代の時計で外す理由はないだろう。

Tudor Pelagos FXD caseback

 潜水コンバットチームのエリートたちが水中でデッドレコーニングナビゲーションに使用するために作られた時計を必要とする可能性は、バージニア級原子力攻撃艦を操縦する機会を得るのと同じくらいだが(個人的にはISSに数日滞在するのと同じくらいやってみたい)、少なくともFXDではそこにあるものは理由があって存在するのだ。

Tudor Pelagos FXD dial closeup showing markers and bezel

 しかし、この時計に身につける喜びを感じないのであれば、そんなことはどうでもよいこと。正直なところ、私は、ある程度の重厚感は避けられないとしても、少なくとも「無駄のないテクニカルなダイバーズ機器」を身に着けているという感覚は、常にバックグラウンドにあると期待していたのだ。

 なんという間違いだったのだろう。FXDは、そのサイズ(ラグからラグまで52mmという、自尊心のある時計ライターなら誰でも「ベヒモス」という言葉を使ってしまいそうなサイズだが、「リヴァイアサン」の方がもっと適切だろう)からしてとんでもなく快適なだけでなく、実際に着用すると官能的な喜びを味わうことができる。このようなことは、あまり言われることがない。大型の時計は「この大きさにしては驚くほど快適だ」と言われることが多く、小型や極薄の時計は、少なくとも手首の感触に関しては、消えてなくなるようだと期待するのが一般的だからだ。

Tudor Pelagos FXD on model's wrist

 身に着けていてポジティブな喜びを感じる時計は珍しく、私は一般的にランゲ1のような金無垢の密度を連想するのですが、それはこの時計とは異なるものだ。FXDの質量、重心、湾曲、そして腕への安心感は、どんな理由であれ、身につけるとひどくセクシーな時計に仕上がっている。

 では、これが今年のベストウォッチなのだろうか? それはわからない。なぜなら私が書く時計の多くは、最近、実際に手に取ることがないものばかりで、それを判断する材料がないからだ。でも、これはすごいことなのだ。私の記憶が正しければ、ペラゴスのメジャーアップデートはレフトハンドドライブ以来で、あれは何を隠そう2016年のことだった(それも、まぁリューズが左にあるペラゴスだったのだが)。極めてクールなFXDは純粋にエキサイティングで、素晴らしい感触、ルックス、独自のタフな機能性とデザインの整合性を備えている。ブラックベイ(長年の魅力を持つ時計だが、それでも)の長年にわたるいくつかのリリースの後、チューダーがペラゴスを、常にそうあるべきであったモダンなハイテクダイバーズウォッチの機能性と整合性の申し子とすべく方向転換したことを示していると私は期待している。

All Photos, Tiffany Wade

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チューダー ペラゴス FXDの詳細は、チューダー公式サイトへ。