trophy slideshow-left slideshow-right chevron-right chevron-light chevron-light play play-outline external-arrow pointer hodinkee-shop hodinkee-shop share-arrow share show-more-arrow watch101-hotspot instagram nav dropdown-arrow full-article-view read-more-arrow close close email facebook h image-centric-view newletter-icon pinterest search-light search thumbnail-view twitter view-image checkmark triangle-down chevron-right-circle chevron-right-circle-white lock shop live events conversation watch plus plus-circle camera comments download x heart comment default-watch-avatar overflow check-circle right-white right-black comment-bubble instagram speech-bubble shopping-bag

Hands-On チューダー ペラゴス FXD Ref. 25707Bがフランス海軍とのパートナーシップによって誕生

フランス海軍とのコラボレーションモデルは、チューダーのあらゆる機能を備えたダイバーズモデルを現代の任務に合わせて進化させたものだ。


ADVERTISEMENT

何ヵ月にもわたってさまざまな憶測が飛び交い、何度もリークされてきたものだが、ついにチューダーから正式にマリーン・ナショナーレ(フランス海軍)との関係を復活させて誕生した時計、ペラゴス FXDが発表された。FXDは、フランス海軍の戦闘ダイバー部隊として知られる“コマンドー・ユベール”の協力のもと同部隊の意見が取り入れられてデザインされた。同社の人気の高いチタン製ダイバーズウォッチをベースに水中での任務におけるニーズに合わせて改良。その結果、いくつかの小さな調整と大きな変更が盛り込まれたペラゴスの厳密な進化が実現された。ではさっそくこの時計を深く探っていくべくダイブしてみよう

The Pelagos FXD laying on a table with a blue rubber strap.

 まず、はっきりさせておきたいことがある。特にダイビングに使いたい時計だというのであれば、ペラゴスは世界最高のダイバーズウォッチだと僕は考えている。モダンで、過剰なまでに作り込まれていて、スペックが高く、非常に考え抜かれたデザインを備え、最終的な製品はプロフェッショナルダイバーたちが求める性能をいい意味で裏切るようなカジュアルな存在感も備えている。水中ではダイビングギアのようにしっかりと機能し、水上では素敵な時計になるというのは驚くべきことだ。このように幅広い機能を備えているのは「すべてのチェックリストを網羅している」というジェネラリスト的なデザインの影響が大きい。

 この時計を理解するための近道をここで提示しておきたい。そもそもFXDはジェネラリストを目指してはいないし、ISO6425にも準拠していない。進化論の基礎を理解している方なら(僕も『ジュラシック・パーク』なら読んだことがある)純粋に何か付け加えたものが進化なのではなく、ほとんどの進化には対価が支払われるものであるということをご存知だろう。考えてみてほしい、エラと脚を一緒に備えた生物が最後に見られたのはいつだったろうかと。

 FXDは、フランス海軍のニーズにあわせて、標準的なペラゴスが持つ幅広い魅力の一部をより具体的で焦点が絞られたスキルセットへと交換されている。あなたの好みや実際の使用用途によって、通常モデルとFXDのどちらがより適しているかが決まるわけだが、まずは新しいペラゴス FXDの内容を見てみよう。

The Pelagos FXD laying on a table with a fabric strap.
The side profile of the FXD
The buckle of the rubber strap on the FXD.

 チタン製ケースで、直径は42mmを維持しているが、厚さは現在の標準モデルの14.3mmからFXDでは12.75mmに変更された。また、HeV(フランス海軍には不要のヘリウムエスケープバルブ)が省略され、防水性能は500mから200mにダウンしているが、これもフランス海軍の実際のダイビング環境に合わせたものである。ラグからラグの全長は52mm(標準的なペラゴスよりも2mmほど長い)。また、メジャーブランドでは初と思われる固定ブレスレットバー(はめ殺しのラグ)を新製品のスペックに盛り込んだチューダーには、大きな拍手を送りたい。

 次に、明らかに比較しやすいのがセルフグリッピング式固定システムを備え、カウントダウンスケールを目盛りを全体に配したベゼルだろう。これは水中ナビゲーション支援のため、両方向回転ベゼルになっている。これによって指や手が冷えて正確に操作しづらい場合に、例えば1分以上設定を間違えてしまい、もとに戻すためにもう一度一周させなければならない場合などに役立つ。逆回転防止ベゼルはダイバーズウォッチの定番仕様となっているが、ベゼルをぶつけてしまうおそれがない場合や、潜水時間を計測しない(フランス海軍のような)場合や水中ナビゲーションのタイミングを計測するため水中でも頻繁に操作する場合は、両方向回転ベゼルのほうがはるかに適しているのである。

A close up shot of the bezel of the Pelagos FXD.

 僕は職業としてダイビングするのではなくレクリエーションダイバーだ。アドバンスド・オープン・ウォーター資格に必要なフィンキック以上の水中ナビゲーションを行ったことがないため、ペラゴス FXDがコマンドー・ユベールの水中での動きをどのようにサポートするかを僕からではなくチューダーの詳しいプレスリリースの説明でご紹介する。

ADVERTISEMENT

水中ナビゲーションでは、綿密に計画されたルートをたどり、水面に浮上することなくピンポイントで目的地へ到達することが求められる。“ライフライン”と呼ばれる紐で互いを繋いだダイバー2名のペアが、磁気コンパスを用い連続した直線の水泳を行う。彼らは各セクションを一定の速度で、設定された時間を計測しながら目的地にたどり着くまで真っすぐ泳ぐ。


水中ナビゲーションには、新しいセクションに入る度にカウントダウンを再スタートする必要があるのだ。そこで役立つのが、本モデルのベゼルにあしらわれた反時計回りの発光性目盛りである。セクションごとに設けられた所要時間に応じて、ベゼル上の数字を分針の位置に合わせればいい。


分針が三角形のマーカーに達したらコースを変え、計時担当のダイバーが次のカウントダウンをスタートさせる。さらに、ペラゴス FXDのベゼルリングはケース本体よりも大きくつくられている。長い潜水により冷えて感覚を失ったグローブ着用の手でも操作できるよう、グリップを向上させているのだ。

– チューダー公式サイト
The Pelagos FXD on wrist.

ラバーストラップを装着したペラゴス FXD。

 ベゼルは使いやすいよう幅広になり、120クリックで回転する。ベゼルと文字盤の色は、通常版のペラゴスのブルーよりもやや濃いネイビーブルーに変更。文字盤には、"ROTOR SELF-WINDING "の文字がなくなり、マーカーを横切らない位置にステップが設けられた。最も明白な変更点は、日付表示が削除されている点だ。

 ノンデイトになったということは、つまりチューダーが異なるムーブメントをこの時計に採用していることを示している。FXDモデルでは、COSC認定のMT5602が選択されたことがわかる。本ムーブメントは2016年に発表されたパワーリザーブ70時間、4Hzの自動巻きムーブメントで、41mmのブラックベイ ダークのような日付表示を持たないブラックベイモデルにも搭載されているもの。

A lume shot of the Pelagos FXD.

 コマンドー・ユベール仕様では、ペラゴス標準の素晴らしいブレスレットやラバーストラップのオプションはなく、ラバーストラップと面ファスナー付きのファブリックストラップの2種類の一本通しタイプのストラップが付属。ファブリックストラップは、過去のチューダーMNモデルに装着されていたエラスティックストラップを彷彿とさせるものとなっている。

 新しいFXDファブリックストラップは、伝統的あるジュリアン・フォール社(詳細は記事「チューダー ストラップ製造の裏側」参照)によって作られており、22mm幅で、ブランドロゴ入りのチタン製Dリングで装着。同梱のブルーのラバーストラップも最新式で、サイズ調整と開閉を可能とするバックルが採用されている。

The FXD on the author's wrist.
The FXD on the author's wrist, showing it's case profile.
The FXD laying on a table with a blue fabric strap

 ストラップをスライドさせると、ケースバックにはマリーン・ナショナーレのロゴと「M.N.21」のサインがあり、チューダーの過去のMNウォッチへの敬意が込められていることがわかる。

The case back of the Pelagos FXD.

 さて、ここまでスペックを紹介してきたが、気になるのはつけ心地はどうなの? だろう。ペラゴスのようだが異なるものだった。ラグからラグまでの長くなった全長は視覚的な高価があるが、手首につけたときの感覚とは異なっている。ラグの形状と低めに設定された固定ブレスレットバーによって、ストラップは手首に対して非常に平らになる。そのため普通のラグを備えた時計にNATOストラップをつけたときに見られるような「食い込み」が軽減されている。ストラップが手首の上でバネ棒と干渉することがなく、すべてが平らに収まりとても快適だ。

 とはいえやはりペラゴス FXDは従来のペラゴスよりも少し大きく感じるかもしれないが、感覚的にも見た目にもかなり薄くなっており、個人的には大きなプラスポイントだ。2種類のストラップのうち、僕はファブリックのものが好みだが、チューダーとの打ち合わせの際にUTEグレーのNATOを持ち込んだ。どちらの純正ストラップも素晴らしいが、付け替えてみるとファブリックが一番しっくりきたし、ブルーとシルバーのカラーリングも気に入っている。

なかなかいい。

 フィフティ-エイトがブラックベイシリーズにさらに幅広い魅力を与えたという背景からすると、FXDはチューダーのオールラウンダーであるペラゴスによりダイバーたちのためのニッチな表現が与えられたモデルであることは間違いない。P01ほどニッチではないが、一部の人たちが望んでいたペラゴス フィフティ-エイト(またはGMT)ではないことは明らかだ。

 スペックがやや劣ること(一般的なユーザーには関係ないことだが)と、ブレスレットがないことを考慮してか、ペラゴス FXDの価格は通常版よりも低い44万3300円という設定だ(通常版はいずれも52万1400円、すべて税込)。コマンドー・ユベールのような近代的な戦闘ダイバー部隊の意見を取り入れて作られた時計として、非常に特殊なデザイン概要にもかかわらず、正当な商業的可能性を持つダイバーズウォッチが完成されたと僕は思う。

The case detail of the Pelagos FXD
The FXD next to both of the included straps
A close up of the FXD's crown.

 ペラゴスの購入をずっと迷っていた者としては、FXDはその形をディープにクールに進化させたものだと思うが、主な競合は同社の最も近い3つの兄弟機だと思われるため、どのモデルを自分の腕につけたいかを決めるのには役に立たないだろう。

ADVERTISEMENT

 標準のペラゴスのブレスレットは確かに気に入っているが、その厚さは好みではない。FXDの薄さとヘリウムエスケープバルブがなくなった点は気に入っているが、その代わりラグがもう少し短ければと思ってしまう。進化と同様に、新しい道は過去に楽しんだ要素のすべてが引き継がれるわけではないかもしれないが、FXDはダイバーズウォッチファン、特にミリタリー志向のファンにとって魅力的なモデルである。

The Pelagos FXD on a blue rubber strap.

 1日に3回、どのペラゴスを所有したいかと聞かれたら、きっと3つの異なる答えが返ってくるだろう。しかし、そのうちのひとつが、この新しいペラゴス FXDであることは間違いない。

Shop This Story

チューダー ペラゴス FXDは、チューダーの正規販売店で販売されている。詳しくはチューダー公式サイトへ。