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もし友人が新しいテレビ番組について「絶対見たほうがいいよ」というメールを送ってくるたびに10セント貯まるならば、今頃アクアノートを買えるくらいの額になっているだろう。なので我々は今、自らそういうことをしようとしているのではない。しかし、Apple TV+の新番組『セヴェランス(Severance)』は見逃せないのだ。ディストピア的オフィスドラマとしては驚くほど時計要素に満ちていて、やめられない。
ベン・スティラー監督によるこの番組は、ルーモン(Lumon)という会社で "セヴェランス "という手術を受けた会社員たちを描いている。脳にマイクロチップを埋め込み、記憶を二分化させるという手術だ。仕事中は私生活の記憶がなく、退社後は仕事の記憶がない。まるでミシェル・ゴンドリーがフィリップ・K・ディックの小説を映画化したかのような作品だ。
時計はプロットと非常に密接に関係している。この番組に出てくる時計は、登場人物たちの仕事中と仕事外での生活を象徴しており、それぞれに1本ずつある。劇中ではこのふたつの生活を、それぞれ口語的に「イニー(innie)」「アウティー(outtie)」と呼ぶ。ここでは我々もその呼び方を継続する。
主人公のマーク(ゴルファーではなく俳優のアダム・スコットが演じる)は、アウティーにボストーク、イニーに白い文字盤と革ベルトの、まったくロゴのない腕時計を身につけている。
ボストーク コマンダスキー341307は、プロップマスターのキャサリン・ミラー氏(『アンカット・ダイヤモンド』の時計も担当)の個人小道具キットからのもの。ロシアの時計は安価でデザインも豊富なため、小道具にはよく使われている。アウティー用にも適切だろう。イニー用には何のテキストもないダイヤル、数字さえもない時計が必要だった。従業員は、アウティーの世界や自分自身に、イニーからのメッセージを伝えることが許されないためだ。エレベーター内にはテキスト検出器が設置されており、規約違反をした者には破滅を告げるアラームが作動するようになっている。「登場人物たちは制服店のような店に行き、3種類の時計から選ぶような感じと想像しています」とミラー氏は語る。
あるシーンで、マークは外界と断絶された勤務に向かうエレベーターに乗る前にロッカーに行く。引き出しを開け、ボストークのダイバーを置き、無名の白い文字盤の腕時計を手に取るシーンがある。イニー用に完璧な白文字盤の腕時計を探すのは簡単なことではない。「ミニマリストのための腕時計を探すことに没頭しました」とミラー氏。「まったく見つからず、"クリスタルを外して、時計のブランドを白く塗りつぶすしかないのか "と思いました」
そして、見つかったのだ。
今回の時計は、日本を拠点として活動しミニマリズムをプロデュースしているBijouoneというブランドのもの。これは、白塗り不要の既製品だ。見たところ、ルーモン社の登場人物は皆身につけているようだ。マークのものは白文字盤、黒ストラップ、ガンメタリックのケースだ。
そして万が一、我々が楽しく充実したHODINKEEのキャリアから監視社会という地獄に突き落とされたら、イニーとアウティーにどんな時計を着ければいいのかと考えさせられた。
ダニーのチョイス
私のアウティーは、いくつかの理由からチューダー ペラゴス LHDになるだろう。まず、マークが確立したヴィンテージ調ダイバーズの外観をキープしたいからだ。そして、文字盤に収まるくらいのテキストがある時計を選びたい。ペラゴスには、読む楽しみを提供するための情報が搭載されているのだ。エレベーターのアラームは鳴り響くだろうが。
私のイニーについてよく考えてみた。ブランクの文字盤を探すのも面倒だし、ノモスのようなもので、ある程度は何とかなるのでは? そこで思い出したのが近代時計界のミニマリズムの王者、H.モーザーである。そして最近取材したモーザーから、アーモリーとのコラボレーションモデル、エンデバー・スモールセコンド トータルエクリプス×アーモリーを選んだ。この時計は文字盤の文字がないだけでなく、この番組の時計以上に、マーカーさえもないのだ。さらに言えば、この時計でルーモン社のオフィスに本格的な時計技術を持ち込むことができる。同僚が退社するときに、私のセンスのよさを覚えていてくれないのが残念だ。
コールのチョイス
どうしたらセヴェランス手術に踏み切れるのかよくわからないが、人生を変えるような破滅的な出来事が必要なのだろう。番組では、マークが妻を亡くし、その痛みを和らげるためにセヴェランスを受けるという設定になっている。私はその逆で、残された人生を精一杯謳歌するためにこの機会を利用するだろう。ブレット・ギリアム氏が身につけたような金無垢のロレックス サブマリーナー1680を選ぼう。
金無垢のツールウォッチはそれ本来の目的を逸脱していると言う人もいるかもしれないが、この場合、目的は完全に哲学的なものなのだ。この時計は贅沢と誇示を意識的に謳歌している。
私のイニーは、ブレイクルームに送られて再教育されないように、周囲に溶け込むことを目標としている。ということで、anOrdainのモデル 1、パリジャンブルーを選んだ。そのミニマルな美学は誰も眉をひそめることはないだろうが、よく見ると小さな秘密がある。それは、ガラスエナメルの文字盤で、しかも最高級のものだ。もちろん、セヴェランス手術を受けた私にはわからないはずだが、それでも少しは気分がよくなるに違いない。
あなたのチョイス
HODINKEEコミュニティでセヴェランスファンの方はいないだろうか? あなたの好きなイニーウォッチとアウティーウォッチを下のコメント欄で共有してください。
『セヴェランス』(主演:アダム・スコット、パトリシア・アークエット、ジョン・タートゥーロ、ブリット・ロウワー、トラメル・ティルマン)は、ダン・エリクソンが制作し、ベン・スティラーとイーファ・マッカードルがエピソードを監督、キャサリン・ミラーが小道具を担当。Apple TV +でストリーミング配信されています。
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