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Photos by Tiffany Wade
本稿は2022年8月に執筆された本国版の翻訳です。
マイケル・クライトン(Michael Crichton)は1990年代のポップカルチャーの帝王だった。彼の小説『ジュラシック・パーク(原題:Jurassic Park)』の映画化は大規模な映画館を賑わせ、『ER緊急救命室(原題:E.R.)』は小さなスクリーンを席巻し、『ライジング・サン(原題:Rising Sun)』や『エアフレーム-機体-(原題:Airframe)』などのスリラー映画は、クライトンをアメリカを代表する小説家のひとちとして確固たるものにした。そしてその10年間のなかごろには、クライトンは“ヴィンテージ”ムーブメントを搭載したブライトリングのクロノグラフ、モンブリランという時計で成功を祝った。
数年前にマイケル・クライトンが愛用していたオメガのフライトマスターをコールが発掘した際にも同様の記事を掲載したが、クライトンが時計マニアであったことは驚くことではないのだ。1990年代から2000年代初頭にかけて撮影された彼の写真を見れば、それは一目瞭然だ。GettyやGoogle Imagesをざっとスクロールすれば、オメガのスピードマスターやタグ・ホイヤーのモナコなど、象徴的なクロノグラフの横顔を簡単に見つけることができる。そしてこのモンブリランはクライトンに由来するかはさておき、それだけでもかなりユニークなものだ。
ニューヨークを拠点とするコレクター、ロバート・ヴェラスケス(Robert Velasquez)が最近まで所有していたこのクロノグラフ(Ref.H2308712B)は、元々宝石商であったLizard Head Mining Companyというコロラド州テルユライドの会社からクライトン宛に届いた手紙によって真贋が証明されている。手紙には、内部のムーブメントは1930年代から40年代にかけてブライトリングが製作したものであり、ケースとダイヤルはブライトリングのアーカイブのクロノグラフのデザインに基づいていると記されている。
だが、真実は少し違う。この少量生産の時計に使われているムーブメントは、1930年代のNOS(ニューオールドストック)ブライトリング製ムーブメントと記述されているものではなく、実際には1960年代のエベラール製Cal.310-82である。全体の美観も、特定のヴィンテージ ブライトリングのリファレンスを忠実に再現したというよりは、むしろ初期のクロノグラフ腕時計のデザインに“インスパイア”されたように見える。
興味深いことに、おそらくこの記述に何か不審な点があると感じたのだろう。この時計に添えられていた書簡によると、クライトンはこの時計をそれほど長くは所有していなかったようだ。彼がこの時計を購入した1週間後の1995年12月、モンブリランはクライトンからロサンゼルスにあるフェルドマー・ウォッチ・カンパニーのソル・メラー(Sol Meller)に発送されたようだ。店舗信用取引の内容を記したメモを添えて。
それから30年、時計は再び動き出した。
この時計は最近、クライトンと特別なつながりを持つハワイの匿名コレクターによって購入された。このコレクターが幼いころ、実家の敷地でジュラシック・パークのシーンがいくつか撮影され、映画のセットでクライトンについて回った思い出があるという。
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