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Review オメガ スピードマスター ダーク サイド オブ ザ ムーン アポロ8号

人類が初めて月の裏側を目にしたアポロ8号計画の50周年を記念して、オメガが発表した新作ムーンウォッチを詳しく見てみよう。

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ピンク・フロイドの傑作アルバム『The Dark Side of the Moon』最後の曲のラストに、「実は月のダークサイドなんて存在しない、すべてが闇そのものなのだ」といういう有名なモノローグがある。しかし実のところ、この一句がレコーディングされた1973年の5年前、人類は既に月の裏側を目にしていたのだ。1968年12月21日に発射された月探査ミッション――アポロ8号の乗組員たちが月の裏側を見た最初の人類である。この壮大な月軌道周回計画を讃えて、オメガから特別なスピードマスターの新作「スピードマスター ダーク サイド オブ ザ ムーン アポロ8号」が生まれた。

明るいイエローの発色、細かく施されたマットと鏡面の仕上げと、愛され続けてきた「スピーディレイアウト」が揃ったことで、従来のダーク サイド オブ ザ ムーンモデルと一味違う雰囲気だ。

フルセラミックを採用したケースに僅かなブラッシュテクスチャが輝く。

ケース径44.25mm、縦48㎜、厚さ12㎜。

バーゼルワールド2018のメインとして、このスペシャル・エディションにオメガは特別な工夫を重ねた。ダークサイド オブ ザムーンシリーズから、我々が親しみのあるセラミックケースとダイヤル配置を一転し、このアポロ8モデルは38万4402 Km彼方の「月の裏面」まで来たかのようだ。この時計には、月面を再現した独特な文字盤のテクスチャや異例なムーブメントチョイスなど、独特な仕上げが満載で、アポロ8号ミッションに深い敬意を払っている。

セラミックのタキメーターベゼルまでに夜光が施された。

50年前の12月21日、宇宙飛行士ジム・ラヴェル、フランク・ボーマン、ウィリアム・アンダースを乗せたアポロ8号が地球から打ち上げられ、月を10周回して無事に地球へ戻った。このミッションは、アポロ計画における2度目の有人宇宙飛行であり、月の裏側を目撃しただけではなく、あの名作「地球の出」(クリスマスイブに宇宙飛行士のアンダースが撮った写真)も撮影された。

誰もが知るアポロ11号と対照的に、アポロ8号は初めて宇宙の未知の領域に挑戦し(このミッションは、地球周回軌道を離れる初めての有人宇宙飛行だった)以降、人類が月に着陸するための可能性を切り拓いた。従って、このアポロ8号ミッションより特別なムーンウォッチにふさわしいインスピレーションはないだろう。

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定番のCal.1861までが“ダークサイド”仕様になった特別なスピーディ

アポロ8号ミッションを語るだけでもワクワクが止まらないが、今回のテーマは「ムーンウォッチ」のアポロ8だ。このモデルはオメガが既存のダークサイド オブ ザ ムーンシリーズからスタートさせたもので、フルブラックのセラミックケースはいつもの44.25mm径で、厚さ12㎜、縦49㎜というサイズだ。かなり大きめだと思われるが、僕の7インチの腕にも十分にフィットする。

定番のムーンウォッチより大きいが、手首への収まりは良好。

アポロ8はダークサイド オブ ザ ムーンファミリーのセラミックケースを採用しているけれど、文字盤とムーブメントこそ異彩を放つポイントだ。セミスケルトンのダイヤルに、レーザー加工によるリアルな月面が表現され、下のクロノグラフムーブメントがチラッと見える。時計を裏返すと、僕らは予期しない風景を目にすることになる――サファイアケースバック越しにオメガの名機、キャリバー1861手巻きムーブメントが現れる。しかしブリッジには、ダイヤルと同じく月面のテクスチャが施され、その黒い岩のような質感と人工ルビー、カムと歯車の仕上げ分けによってひと味違ったものとなっている。

ダークサイド・シリーズが「ムーンウォッチ」の歴史を横断する――アポロ8には、スピードマスターの名機である手巻きキャリバー1861を搭載。

ダークサイド オブ ザ ムーンシリーズは一般的に高水準のコーアクシャルムーブメントであるキャリバー9300などを搭載していたが、今回実装した(サブダイアル3つ目の)キャリバー1861は、興味深くオリジナルムーンウォッチへトリビュートしている。月面が表現された陰影ある仕上げは本当に格好いいと僕は思う。キャリバー1861を採用することによって、オメガはアポロ8号ミッションだけではなく、アポロ宇宙計画全体に敬意を表している。ムーンウォッチの「過去」から受け継いだものが「現在」のモダンな解釈をされたことで、通常版とはまた別の形でう、魅力的に思える一本である。


レビュー

本機は、ダークサイドケースと名キャリバー1861の組み合わせそして特別に加工されたムーブメントとスケルトンの文字盤の3つの要素で構成されている。文字盤に配された色合いとテクスチャの強い組み合わせが実物を見ないと言葉にするのがとても難しいと思うが、実際に記事の写真をクリックして一緒にご覧いただきたい。

オメガは、文字盤の特殊な装飾を絶妙に表現したことで、間の抜けたデザインにならないよう工夫している。その結果、文字盤を背景として機能させ、またそれと同時にもっと近寄って眺めた際にはその詳細な質感を楽しめるようデザインされているのだ。  

神は細部に宿る――写真をクリックしてズームインしてほしい。黒と黄色を用いた繊細な色彩バリエーション、文字盤越しに見えるムーブメントの一部、加えて「月の表面」をスムーズに進む秒針が見える

クロノグラフ機能からいうと、明るいイエローが配されたデザインは非常に高い視認性を持つ。文字盤にはスピードマスターの規範的なマーカーがセットされ、その外周には夜光が施されたセラミック製タキメーターベゼルが採用されている(ダークサイド オブ ザ ムーンデザインの中で僕が好きなポイントのひとつだ)。

スピードマスターが引継ぐクラシックなデザインを犠牲にせず、文字盤のディテールとコントラストを保ったことは特筆すべきだ。実際、明るいイエローがアクセントを加えるストラップと相まって、一見レーシングモデルと錯覚してしまうぐらい、この時計はスピードマスターの中でも極めて独特な存在である。

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時計の「裏側」に、我々は手巻きムーブメントの1861を一望できる。前述のように、キャリバー1861は自動巻きのキャリバー9300より精密なムーブメントではない。けれどアポロ8にとって、1861はおそらくより興味深い選択肢なのだ(ムーンウォッチマニアにとっては特に)。この月面仕上げムーブメントを囲んでいるのは「We'll see you on the other side」(裏側で会おう)という言葉の刻印だ。無線信号が月に遮断される前に、アポロ8号の司令船操縦士ジム⁠・ラヴ⁠ェルが月の裏側へ向かう時に口にした言葉である。  

「裏側で会おう」⁠の刻印と並べて、アポロ8号が地球周回軌道から離れた年月が刻まれている。もちろん、特殊な仕上げの1861ムーブメントも見てほしい。

付属のレザーストラップはイエローステッチが入って、パンチング加工されている。内側はラバーライニングで、最初は硬く感じるかもしれないが、使い込むと快適な肌触りになっていく。ありきたりの革ストラップよりもちろん良くて、同じ価格帯のモデルと比べても遜色ない。時計を腕に乗せると、大きいサイズだから着け心地が悪いことはない。想像よりも縮めた縦のサイズのおかげで、比較的フラットなフィッティングになっている。日常の明かりのなかでは、セラミックケースが黒光りをするのはもちろん、ダイヤルは特有なマット仕上げなので、他のダークサイド オブ ザ ムーンモデルにはない一風変わったディテールが楽しめる。


考慮すべきポイント

なかなか他と比較するのが難しい時計だが、ダークサイド オブ ザ ムーンシリーズの他のモデルやスピードマスターコレクションと比較するのは当然のことだろう。興味深いことに、アポロ8の定価は104万(税抜)で、他のダークサイド オブ ザ ムーンモデル(税抜120万円~)をはるかに下回る価格設定だ。そのニッチな外観と、自動巻きより安価なムーブメントがその原因だろう。

44.25㎜径のアポロ8が7インチの手首に乗る様子。普段着用しているサイズより一回り大きいが、十分に快適でかつ非常に軽い。

 他の時計と比べて思ったのは、アポロ8は類まれなデザインを持っていることだ。このデザインを受け入れると当然本機がベストだと思うが、しかしもしダークサイド オブ ザ ムーンシリーズ(もしくは単にセラミック製のクロノグラフ)が欲しい方には、アポロ8が選択肢に入ることは滅多にないだろう。実をいうと、セラミック製クロノグラフのマーケットでは、対抗馬がたくさんあるのだ。 

 IWCのトップガンシリーズ――セラミックのモデルは89万5000円(税抜)。チューダーのファストライダー ブラックシールドはより安く、4925ドル(約53万円)。ゼニスのデファイ クロノグラフシリーズも見逃せない――138万円(税抜)。さらにリストを広げてみると、タグ・ホイヤー カレラのセラミックモデルは68万円(税抜)。他にもオーデマ ピゲやピアジェ、ウブロなどのブランドが選択肢に入る。 

スピーディスタイルのミニッツトラックが全体のデザインにうまいこと潜んでいるところがたまらない。シンプルかつ明瞭なデザインが月面の仕上げと良く合う。

本当のことを言うと、僕はそれぞれのモデルを比較するのが好きだ。だからダークサイド オブ ザ ムーンのスタンダードモデルより、上記に挙げたモデルを買ってしまうことが安易に想像できる。しかしおそらく、アポロ8の場合は違うと思う。スタンダードモデルよりちょっとニッチなスタンスをとっているからだ。ムーンウォッチに興味がある人は、既にオメガにハマっていると言っても良い。アポロ8を気に入ったあなたは、さらに奥深いところにまできているだろう。

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結論

本機がターゲットしたオーディエンスは間違いなく、より広いスピードマスターファンだが、このアポロ8だけを見ても気に入るべきポイントはたくさんある。オメガはダークサイド オブ ザ ムーンで既に成功したプラットフォームを採用し、マニアには分かる楽しい要素満載のモデルを作った。目に留まりやすい作りこまれたダイヤルから、正統派かつ特殊加工されたムーンウォッチムーブメントまで、この「スピードマスター ダーク サイド オブ ザ ムーン アポロ 8 号」は新旧のオメガをブレンドした興味深い例であり、魅力の尽きないオーラを放っている。

ありきたりのスピーディではないのだ。

前述のピンク・フロイドの歌詞はおそらく、我々人間の内面に潜む未知の闇への探究について言及している。しかしアポロ8号は真の探究を行った。彼らは地図上から知られざるスポットを取り上げ、大胆な計画を練って自ら乗り出した。アポロ8号は戦後のとても重要な歴史的瞬間であり、可能性の意味を変えたのだ。僕のように肉眼で目撃していない人間にとって、アポロ8号ミッションは想像もつかないぐらいの新たな地平を開いた。

まさにアポロ8のようなコレクターアイテムが、忘れ去られていく時代のリマインダーになるように、オメガにとっての宇宙計画は、実際関わった偉大な計画というよりブランドの歴史的な一歩となっている。以前の他のモデルとは違って、本機は「スピードマスター プロフェッショナル」シリーズに属していない、でも初めて「月の裏側」を目にしたミッションの記念として「ダ⁠ークサイド オブ ザ ム⁠ーン」の肩書きよりふさわしいものはないだろう。

 詳細についてはオメガ公式サイトへ。