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One to Watch MEC Watchesのデビュー作となる、スケルトンタイプのジャンピングアワーウォッチが登場

アメリカらしさを感じさせるスタイルと、同国の時計製造の未来に対する壮大な夢とともに、MEC Watchesは力強いスタートを切った。


オリジン・ストーリー

遡ること2022年。MEC WatchesはMEC 1を引っ提げ、過去に類を見ないまったく新しいブランドとしてデビューを果たした。その他いくつかのオリジン・ストーリーと同様に、MEC WatchesもMEC 1も、情熱的なプロジェクトから誕生したものだ。ベネズエラのカラカス出身の起業家で時計コレクターのカルロス・ラミレス(Carlos Ramirez)氏、香港出身のクリエイティブディレクターでありアーティストのエリック・K・T・ロウ(Eric K.T. Lau)氏、そして、ユリス・ナルダンやF.P.ジュルヌなどのブランドで活躍するサウスカロライナ州レキシントンの時計師ジャッド・ウッド(Judd Wood)氏という3人の友人が、時計に対する共通の愛をもってアメリカを拠点とする共同創業者となった。ロウ氏とラミレス氏にはHODINKEEの10周年記念式典で実際にあったことがある。しかし彼らが時計の分野で一緒に何かを成し遂げられるかもしれないと考え始めたのは、つい最近のことである。

MEC-1 Jump Hour

 ブランド初の時計であるMEC 1は45時間のパワーリザーブを備え、2万1600振動/時で動作し、瞬間的に切り替わるジャンピングアワーを備えた自社設計の手巻きムーブメントを搭載している。同ムーブメントはCOSC認定を凌駕する基準を満たしているのだそうだ。ラミレス氏がこの業界に飛び込む(ジャンプする)ことで貢献したかった(失礼、シャレだ)重要な目的のひとつが、クラシックなジャンピングアワー表示に新しい趣向を加えることだったという。そして、ブランドのもうひとつの柱がデザインへのこだわりだ。MEC Watchesでは、共同設立者の出身地であるニューヨークとマイアミをモチーフに、アール・デコを現代風にアレンジしたデザインを提案している。

 「昨今の時計製造においては、多くのデザインキューが重複してしまっています」とラミレス氏は言う。「私たちはそのことを理解したうえで、何か違うことをしたかったのです。そしてこれらのキューにとらわれず、型にはまらないエリックが参加してくれたことは、私たちにとって本当にありがたいことでした」

MEC 1 Jump Hour

 「若い写真家のことを考えてみると......」と、自身も写真家として知られるロウ氏は続ける。「若い写真家の多くについて素晴らしいと感じるのは、彼らが偉大な巨匠を知らず、真似るべきものや歩むべき道筋がわからないために、最初のうちは自らの力で道を切り開いていくからです。本格的に仕事をするようになるとわかりますが、そこにはさまざまなガイドラインが存在します。商業的にはブランドの規定やアートディレクター、その場の状況に合わせる必要があるでしょう。そして私は写真、アートディレクション、時計など、自分の作品においてそれらに抗おうとしているのです」

 トノー型のケースには、ポリッシュ仕上げが施されたシャープなファセットと、ケース側面のカット部分が美しく混在している。一方、スモークサファイアのクリスタルにより正面からはまるで文字盤が存在していないかのように見え、セカンドディスクやムーブメントに触れられるかのような錯覚に陥る。また、背面には反射防止加工を施したサファイアクリスタルがはめ込まれており、PVDコーティングが施されたジャーマンシルバー製ムーブメントの一部を見ることが可能だ。また、39mm×9.5mmという比較的薄型で身につけやすいサイズにもかかわらず、無垢のSSケースにより実は50m防水を備えている。

MEC-1 Jump Hour

 デザインにおいてはこのほかにも、ふたつの興味深い演出がなされている。まずは12時の時刻表示の奥にスーパールミノバを施したターコイズブルーのディスクを配している点。分針の先端にも同色のチップを乗せることで、視認性を向上させている。また、ムーブメントは順方向でしか時刻調整が行えないようになっている。これは非常に繊細な表示機能を備えたムーブメントを傷つけないようにするための措置だ。「これにより耐久性が向上し、メンテナンスの頻度も低くなると考えています」と、創業者たちは話してくれた。

MEC-1 Jump Hour

 最終的に3人は、高級時計のなかでも手が届きやすい一部のブランドと、価格が高騰し続ける独立系時計ブランドのギャップを埋める架け橋になりたいと考えた。MEC 1は現在、SS製で50本限定のスースクリプション(予約販売)シリーズとなっている。価格は2万1000スイスフラン(約316万5000円)と、適正かつ競争力のある水準に設定された。このSS製MEC 1が売り切れたら、このスタイルのSS製ケースは2度と作らないことをブランドは明言している。しかし、心配しないでほしい。彼らは今後に向け、さまざまなプロジェクトを用意しているようだ。

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我々がなぜ気に入ったのか

ジャンピングアワー式の時計は、市場において特に希少な時間表示ではないかもしれない。だが、最も魅力的な機構のひとつであることは間違いないだろう。しかし視認性という点において、私が愛するジャンピングアワーのデザイン(タンク ア ギシェなど)は必ずしも優れているとは言えない。ジャンピングアワーのスケルトン化はそれをさらに損ねるようにも感じてしまうが、チームがこの機構を用いつついかに視認性を向上させたかという点に、MEC 1の最大の魅力がある。

MEC-1 Jump Hour

 次のふたつの画像を見て欲しい。スモークサファイアのクリスタルとアプライドセコンドインジケーター、アワーインジケーターのフレームが、光の入射角のわずかな変化でどのように変化するかを示している。光の角度が変わると、上部にあるアワーディスクとターコイズブルーの先端を持つ分針だけが強調され、一方でムーブメントの内部が透けて見えるようになるのだ。いずれにしても、さっと目を落としただけで比較的簡単に時刻を知ることができるようになっている。

MEC-1 Jump Hour
MEC-1 Jump Hour

 最初は順方向だけの時間設定に慣れなかったが、その根本的な事実を知って納得した。これまでの多くのジャンピングアワーは事実として非常に人気があったのだが、生産数が非常に少なく、時計が動かなくなることによるリコール率が非常に高かった。順方向のみの時間設定を採用することで“ダミープルーフ”を実現したとラミレス氏は言っていたが、消費者のためにもブランドの存続のためにも、その点は高く評価したい。また、この時計は非常に装着しやすい。ラグは私が個人的に好きなケースデザインよりも若干短いため、見た目の感覚からするともう少し小さな手首の方がフィットするかもしれない。しかしケースバックがフラットなこともあり、装着性に問題は感じられなかった。

MEC-1 Jump hour

 3人のうちふたりは時計業界での実務経験がなかったにもかかわらず、ファーストウォッチとしては素晴らしい仕上がりとなった。もちろん、提携先やスイスのプロダクトマネージャーなどから多少の助けはあったことだろう。当然のことながら3人はムーブメントをゼロから設計したことはなかったが、そのプロセスに密接に関わり、それぞれの意見を主張した。また、これまでにサファイアの分針を手作業でカットするような経験もしてきていない。ただ彼らはスイスで製造したものをすべてアメリカに送って組み立てることで、アメリカの時計製造の復興に貢献するという最終的な目標のために動いていた。


次に来るもの

アメリカの時計製造への献身は、私がこのブランドを応援し続ける理由のひとつであると同時に、彼らの未来に対する願いでもある。アメリカにおける時計製造の歴史を熱烈に愛する者として、工業化された同国の時計産業が崩壊したことで失ったものを考えると、悲しい気持ちになる。計画や希望はあくまでも予定でしかない。しかしMECのチームは、すでに少しずつ始まっている地域活性化の一翼を担いたいと熱く語っている。

MEC-1 Jump Hour

 加えて、今後の新作、MEC 2とMEC 3の計画もネタバレにならない程度にこっそり教えてくれた。ラミレス氏はブランドの10年計画として、アメリカで時計を製造するための設備と技術インフラを構築する予定であることを明かした。CNC加工用のマシンにしても、優秀な時計職人にしても、決して安いものではない。しかしこのことは、開発から発売までのプロセスを短縮するだけでなく、アメリカの時計製造の復活に貢献することにつながる。

 「我々はすでに5つの時計の研究開発を始めています」と、ラミレス氏は言う。「また、MEC 1からMEC 8まで、合計8つの時計の構想を書き出しています。そして、どうすれば極めて明確なDNAを持つこれらの時計を作ることができるのかを考えてきました。遠くからでも一見しただけで、そのブランドがわかる。それは私がいつもカルティエに求めていることであり、憧れでもあります」

 新モデルや既存モデルのバリエーションを年2回発表するというアグレッシブなスケジュールで臨んでおり、貴金属製MEC 1の通常生産バージョンも近々発表する予定だとチームは語る。顧客との関係を密にし、生産規模を小さくすることで、需要やフィードバックに迅速に対応できるようにするというのが彼らの目標だ。

 ブランドの壮大な計画については、これまでのように時間が解決してくれるだろう。ただ私はこのブランドに期待しているし、ラミレス氏が話していた“10年計画”にも注目している。CNCマシンが稼働し、アメリカの時計製造が本格的に復活する姿を見ることができたなら、どんなに幸せなことだろうか。

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MEC WatchesとMEC 1の詳細については、同社のウェブサイトをご覧ください。