trophy slideshow-left slideshow-right chevron-right chevron-light chevron-light play play-outline external-arrow pointer hodinkee-shop hodinkee-shop share-arrow share show-more-arrow watch101-hotspot instagram nav dropdown-arrow full-article-view read-more-arrow close close email facebook h image-centric-view newletter-icon pinterest search-light search thumbnail-view twitter view-image checkmark triangle-down chevron-right-circle chevron-right-circle-white lock shop live events conversation watch plus plus-circle camera comments download x heart comment default-watch-avatar overflow check-circle right-white right-black comment-bubble instagram speech-bubble shopping-bag

Hands-On パテック フィリップ 5370Pスプリットセコンドクロノグラフを実機レビュー おそらく年間最高のパテック

この1本は全てを満たす。

ADVERTISEMENT

※本記事は2015年3月に執筆された本国版の翻訳です。

5370は、パテック フィリップがここ数年で生産した最高の時計だと言いたい。もしかしたら5970以来、あるいはそれ以前を含めても最高の時計かもしれない。バーゼルワールドで知り合いや尊敬する人々から“ピュア・パテック”という言葉が聞こえてきたが、私も同感だ。この時計は、彼らが伝統を大切にしていること、そして単に売り上げだけでなく、人々が求めるものを大切にしていることを思い出させてくれる。ケース、ダイヤル、リューズ、キャリバーなど、新しい5370の全てが、まさにそれを体現している。では、それがどういうことか、実機を見てみよう。

 マクロ的に見ても5370Pが非常に特別なモデルであるのは、今日のパテックの最高技術を結集したからだ。 過去の技術の集大成である自社製の見事なキャリバー、伝統的なダイヤル(エナメル!)、そしてケースとリューズは1940年代のものを彷彿とさせる。パテックは、少なくとも1971年以降、2プッシュ式のスプリットセコンドを製造していなかったし、それまでは数年に1本以下のペースで特別な依頼を受けて作っていたにすぎない。私はRef.1563のことを言っているのではなく、むしろRef.1436について、実質的にスプリットモジュールを備えたRef.130について語っているのだ。ジャン-クロード・ビバー氏の個人的なコレクションに見られるような初期の例は、ラトラパンテを作動させる機能も兼ねたリューズを特徴としていたが、下に見られるような後期の例ではリューズの中にボタンが組み込まれていた。

 上の写真は、1961年にティファニーネーム付きで販売された希少な時計だが、2011年8月にアッパーイーストサイドの一般家庭の引き出しから発見された。1436についてお気づきかもしれないが、 5370のケースはこれに非常に似ているのだ。この時計は先週のバーゼルワールドで発表されたばかりの時計の前身といっても過言ではないだろう。

5370Pは、20世紀半ばの偉大なスプリットセコンドクロノグラフの後継モデルであり、間違いなく世界で最も魅力的な時計である。

59595950があるため、パテックは1436以降に純粋な2プッシュ式のスプリットセコンドクロノグラフを製造していないという、私の発言に疑問を感じる方もいるかもしれない。この2つの時計はモノプッシャー式のラトラパンテであり、超薄型であるため、伝統的なスプリットセコンドクロノグラフとは言い難いのだ。

 さて、本題に戻ろう。5370Pは41mmのプラチナケースをもち、パテックがここ数年で製造してきた中で最高の時計の1つであることは間違いない。このスプリットセコンドクロノグラフは、サファイアクリスタルのソフトな曲線と完璧に調和した凹型ベゼルを特徴としている。

 ラグは、緩やかなカーブを描き、見事な水平のサテン仕上げと融合している。各ラグの先端には美しいホワイトゴールドのカボションがあり、これは明らかに1436のケースを彷彿とさせる。楕円がかった長方形のクロノグラフプッシャーの間には、“タービン”スタイルのリューズがある。

 私がまだ触れていないことは、このダイヤルのバランス、美しさ、そして純粋な黒の色彩だ。5370Pは、ブレゲ数字をあしらった非常に素晴らしく、リッチなブラックエナメルダイヤルを備えている。このダイヤルはパテックによる自社製で、磨くだけで3時間以上もかかるという。ダイヤル素材には無垢のホワイトゴールドを用いており、850℃のオーブンで焼き上げ、制御された冷却方法によってガラスのような質感に凝固させる ― その結果、時間が経ってもあせない強い黒色が出来上がるのだ。6時位置の小さな“EMAIL”という単語(フランス語で“エナメル”の意味)は、この時計が非常に特別なものであることを示している。

ADVERTISEMENT

 裏はどうなっているかって? もちろん、裏蓋からは地球上で最高のクロノグラフキャリバーを垣間見ることができる。CHR 29-535 PSは、これまで、2012年に発表されたスプリットセコンド  クロノグラフ パーペチュアルカレンダーの5204にしか搭載されていなかった(2021年現在では、Ref.5370などにも採用)。この時計では、超精密技術が用いられたクロノグラフを最も純粋な形で手に入れることができる。

 このキャリバーには、ラップタイムが停止した際に、クロノグラフ車からスプリットセコンド車を切り離して不要な摩擦を排除するための新しいアイソレーター機構など、ラトラパンテだけの特別なイノベーションがいくつか搭載されている。また、パテックは2つのフラットなハートカムショルダーの間にルビーローラーを配置するスプリットセコンドレバーを開発し、クロノグラフ針とスプリット針の位置を正確に合わせている。

 このキャリバーの、目を見張るような仕上がりについても忘れてはいけない。スティールパーツには面取りが施され、その表面はストレートグレイン仕上げが。また、スプリットセコンドの締め金は、念入りに研磨されている。金色に輝くムーブメントは、真っ赤な受け石とのコントラストが美しく、もちろん、パテック フィリップ・シールが刻印され、日差は-3/+2秒に調整されている。

 5370Pの装着感はどうか? 素晴らしい。このケースは41mmだが、5170のように39.5mmの方がよかっただろうか? そうかもしれないが、5370Pはブラックダイヤルのスプリットセコンドクロノグラフであり、時計が数mm大きくなるのも無理はなく、この決断を批判するつもりもない。時計全体の厚さは13.56mmと決して薄くはないが、厚すぎるということもない。ケースサイズが41mmということで、このムーブメントを配置した際のバランスが非常によくなっている。このパテックはランゲのダブルスプリットよりも2mm近く薄い。1.8mmというのは大した差ではないかのように聞こえるかもしれないが、手首に装着したときの違いは歴然としている。

 5370Pの価格は24万9200ドル(約2560万円。記事公開当時の価格)だ。パテックは、プラチナ製でブラックエナメルダイヤル、ブレゲ数字のスプリットセコンドクロノグラフがいかに特別なものか彼ら自身が認識しており、このようなモデルが作られるのは非常に極めて少数だろうと言っている。アメリカの場合、2015年に市場全体で1〜3個の間だろうと推定し、最初の1本が発売されるのは7月頃だろうと予測した。

 5370Pは、パテック フィリップがここ数年でリリースした最高の時計の1つであることは間違いない。それは、ヴィンテージ・パテックを愛する私たちが待ち望んでいた時計であり、現代のパテックコレクター達に新たな情熱をもたせる原動力になった。これは伝統的なモデルとして受け継がれていくことだろう。

5370Pについての詳細はこちらを。 
※現在、ブラックエナメルダイヤルモデルは販売されていないが、ブルーエナメルダイヤルモデルの詳細を確認することができる。