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Introducing レジェップ・レジェピ、Only Watchに向けてクロノメーター アンチマグネティックを発表

高い評価を受ける独立時計師が、今年のチャリティオークションに向けて、……そしておそらくその先に向けて、SSケースに鮮烈な新ムーブメントを搭載した。

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ついに、Only Watchに向けてレジェップ・レジェピ(Rexhep Rexhepi)が用意したクロノメーター アンチマグネティック(Chronomètre Antimagnétique)の全貌が明らかになった。この独立時計師によるチャリティオークションへの出品については、先月のOnly Watch発表時に予告されて以来音沙汰はなかった。しかし、待った甲斐があったというものだ。クロノメーター アンチマグネティックはステンレススティール(SS)製で、アクリヴィア(Akrivia)が開発した手仕上げの新ムーブメントを搭載しており、ファラデーケージ(外部の電界を遮蔽する容器)で保護されている。ミッドセンチュリーに見られた耐磁時計へのオマージュでありながら、独立時計製造、とりわけレジェピの魅力である現代的なタッチをすべて備えている。

 Only Watch 2023に出品する時計において、レジェピは1950年代に流行したサイエンティフィックな耐磁時計にインスピレーションを得た。例えば、ロレックスのミルガウス、IWCのインヂュニア、ジャガー・ルクルトのジオフィジック、パテック フィリップのRef.3417 アマグネティックなどである。科学者や探検家が新発見をするような場所(地球の極地や原子力発電所など)は磁場が強いことが多く、そのような磁場に影響されずに時を刻み続けるツールウォッチが必要とされたのだ。

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ダイヤルは明らかに40年代と50年代にインスパイアされているが、その仕上がりはレジェピらしく現代的だ。

 現在のほとんどの時計とは異なり、これらのムーブメントの素材は磁気を帯びやすかったため、磁場からムーブメントを保護するためにファラデーケージが使用されることが多かった。アクリヴィアは、ジュネーブの著名なケース職人であるジャン-ピエール・ハグマン(Jean-Pierre Hagmann)と再び協力し、本モデルでそれを再現したのだ。彼はパテックからブランパンまでありとあらゆるケースの製造に携わったたのち、2019年に引退を表明し、レジェップ・レジェピ クロノメーター コンテンポラン II(Chronomètre Contemporain II)のケース、そして言うまでもなくOnly Watch 2019版CCI(クロノメーター コンテンポラン I)のケースを製造した人物である。

 ハグマン氏には珍しくケースはSS製で、ムーブメントリング、ケースバック、そしてダイヤルプレートが一体となり、ムーブメントを磁気から守るファラデーケージを形成している。さらにうれしいことに、レジェップ・レジェピの時計がSS製ケースを採用するのは、2019年にかつてバーゼル・ワールドとして知られた展示会(安らかに眠れ)でレジェピ氏自身がCCIのSS製プロトタイプを着用しているのを目撃して以来である。

 外側のねじ込み式ケースバックを(ケースバックに刻印された稲妻がロックする特別なキーで)外すとサファイアケースバックが現れ、ムーブメントの仕上げを見ることができる。ケースには全部で30個のパーツが使用されており、ステップベゼルの採用や、ポリッシュとサテンが混在する仕上げなど、ハグマン氏のケースに期待されるディテールがふんだんに盛り込まれている。ラグのポリッシュ仕上げの面取りを見て、私は初めてエイミー・ワインハウス(Amy Winehouse)の曲を聴いたときのことを思い出した。繊細でオールドスクールなディテールが見事に表現されている。マルチステップベゼルもCCIIのすっきりとした外観と比べると際立って見えるが、写真よりも実物のほうがより繊細に見えるかもしれない。私が気に入っているディテールのひとつ、ラグ裏の“JHP”刻印にも最後に言及しておこう。

 レジェピはもっともエキサイティングな若手独立時計時計師のひとりだ。ゆえに、ムーブメントについても詳しく見てみたい。クロノメーター アンチマグネティックに搭載されたものは、単なるCCIやCCIIの耐磁仕様ではない。そう、アクリヴィアの工房はOnly Watch 2023のために新しいムーブメントを開発し、レジェピ作品の特徴である完璧なシンメトリーと仕上げを完成させたのだ。

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外側のねじ込み式ケースバックをはずすと、サファイアケースバックが現れ、ムーブメントの仕上げを見ることができる。

 ムーブメントの中央にテンプがあり、センターセコンドの針を動かす輪列が収められている。また、CCIおよびIIと同じくゼロリセット機能を備えており、リューズを引き抜くと秒針はセンターセコンドを駆動する歯車の真上にあるハート型のカムによって、瞬時に12時位置に戻る(このメカニズムはクロノグラフのリセットとよく似ている)。しかし、クロノメーター アンチマグネティックでは、テンプの停止と秒針のリセットを1度に行う“オール・オア・ナッシング”システムを採用することで、アクリヴィアによるこれまでのリセット機構の改良を図った。リューズを引くとハンマーが作動し、ハート型のカムを押して秒針を12時位置にリセットするのだ。リューズを押し込むとクラッチレバーが戻り、再びテンプが動き始める。アクリヴィアによるとこのシステムによって、リューズを押し戻すと瞬時に秒針が動き出し、正確な時刻合わせと同期が可能になるのだという。

 ムーブメントの素材も注目に値する。レジェピでは初めてのことだが、一般的なムーブメントパーツである高炭素鋼の代わりに、すべての鋼鉄製パーツにSSを使用した。合金であるSSにはクロムが含まれるため、酸化や腐食に強くなっている。こうした特性は仕上げの難易度を高める要因にもなるが、アクリヴィアによれば、クロノメーター アンチマグネティックはほかのレジェップ・レジェピのムーブメントと同レベルに仕上げられているという。まだ実物は見ていないが、センターセコンドホイール用にブラックポリッシュが施されたブリッジはムーブメント全体に伸びており、私の琴線を刺激する。その一方で脱進機にはゴールドのアンクルが採用されている。これは確かに豪奢でもあるが、同時にパテックのようなブランドの初期のアマグネティックが、耐磁性を高めるために脱進機の部品の一部にゴールドを採用していたことを想起させる。

 さらにダイヤルは純銀製で、昔のサイエンティフィックなダイヤルにインスパイアされている。ダイヤルの製造工程でさえヴィンテージウォッチと同様だ。シルバーの下地にエングレービングを施し、ゴールドエナメルを塗ってオーブンで焼成することで色あせしにくいプリントが施されるのだ(これはパテックやほかの高級ブランドがかつて行っていたことであり、多くの硬質エナメルのパテック シグネチャーがダイヤルをクリーニングした後でもシャープに見えるのはこのためである)。最後に、3本の針は金無垢で仕上げられている。

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ジュネーブ旧市街にある、レジェップ・レジェピのアトリエにて。Image, Janosch Abel, for Hodinkee Magazine, Vol. 10

ダイヤルのデザインとその完成度はレジェピのすべてを見事に表現しており、同ブランドがおそらくもっとも勢いのあるスイスの新鋭独立時計師であることを物語っている。古いサイエンティフィックな ダイヤルやセクターダイヤルからインスピレーションを得つつも、決してオマージュやコピーには感じられない。極めて現代的なのだ。ダイヤルのエングレービングやエナメル加工など伝統的な時計製造技術を用いながらも、それはすべてコンテンポラリーな感覚を生み出すためのものとなっている。

 仮にパテック フィリップがコレクション性の高いアマグネティック Ref. 3417の現代版を作るとしたら、こんな感じだろう。事実、この相似はかなり根深いものだ。エナメルダイヤルのCCIIはパテック Ref.2526の現代版のようであり、もっとも美しくエレガントな3針時計であることだけを追求したタイムオンリーウォッチだと言える。一方のクロノメーター アンチマグネティックは、より実用的でありながら科学に傾倒した、ちょっと変わった時計だ。昔のサイエンスウォッチのような機能的な役割は果たさないが、クロノメーター アンチマグネティックからはそうした時計が備えていた魅力が今なお感じられる。しかしながら、伝統的な時計作りを現代風にアレンジしたレジェップ・レジェピの時計は独自の価値も有している。

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レジェップ・レジェピのCC1とRRCCIIに、スポーティでカジュアルなクロノメーター アンチマグネティックという兄弟機が生まれた。

 多くの小さなウォッチメーカーが、ヴィンテージのパテック フィリップや特に希少なSS製の時計にオマージュを捧げて話題を集めるのは、今やちょっとした成功への近道となっている。レジェピは同じ時代から、しかし決して陳腐には感じさせない方法でインスピレーションを得ることに成功している。

 クロノメーター アンチマグネティックは貴金属製のCCII(納品が始まったばかり)に続くモデルとしてふさわしいものであり、Only Watch 2019のプラチナ製CCIや2021年からのCCIIと同じように、異色かつ格別なものである。これらの時計と並んで、レジェピと成長を続けるアクリヴィア工房の次なる展開を感じさせる。

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レジェップ・レジェピのシンプルな3針モデルがSS製ケースになったって? そう、私たちはこの時計に一定の需要があるかもしれないと考えている。

 “マーケット”について簡単に説明しよう。Only Watchはクロノメーター アンチマグネティックに10万~15万スイスフラン(日本円で約1660万~2490万円)の査定額をつけている。2021年、レジェピがOnly Watchのために製作したプラチナ製CCIIは80万スイスフラン(日本円で約1億3255万円)で落札された。今年5月にはフィリップスで初めて一般販売されたCC1に92万4000ドル(日本円で約1億3545万円)という高値がつき、先週はアクリヴィアのAK-06が54万9700ドル(日本円で約8060万円)で落札されたばかりだが、個人間でもっと高額で取引されていただけにこの結果に落胆した人もいたようだ(比較的マイナーなオークションハウスでの落札)。つまりこう言いたいのだ。クロノメーター アンチマグネティックが11月にジュネーブで開催されるオークションに出品された際、どれほどの高値がつくかわからない。また、この時計がいつ量産されるのか、あるいはされる予定なのかについては不明だが、レジェピの過去の実績から考えるに近しいモデルがすぐに製品化され、まあ、いつかは納品されると考えて間違いないだろう。

レジェップ・レジェピ クロノメーター アンチマグネティック for Only Watch。サイズは直径38mmで厚み9.9mm(ラグからラグまでは48mm)、ラグ幅は20mm。SSケースはジャン-ピエール・ハグマン製で、ムーブメントリング、ケースバック、ダイヤルプレートは、ムーブメントを磁気から保護するファラデーケージを形成している。サファイアケースバックとねじ込み式のアウターケースバックがあり、特別にデザインされた鍵を使って取り外すことができる。

手巻きムーブメントはゼロリセットセコンド機能を搭載。ムーブメントにはゴールドのホイールとアンクル、ブレゲヒゲゼンマイ、ジャーマンシルバーのブリッジとプレートを含む239個のパーツが使用されている。シングルバレルで72時間パワーリザーブ。すべての部品は手作業で仕上げられており、アングラージュ(面取り)にブラックポリッシュ、コート・ド・ジュネーブ、手作業による面取りが施された歯車とスポークなど、さまざまな仕上げが施されている。ダイヤルは純銀、針は金無垢。レザーストラップ付き。詳しくはOnly Watchをご覧ください。