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2年に1度行われるチャリティーオークション、Only Watchに参加する73の時計メーカーが、11月5日にジュネーブで開催されるオークションに出品する62ロットを発表した。2005年、ラック・ペタヴィーノ(Luc Pettavino)氏が、デュシェンヌ型筋ジストロフィー研究のための資金調達を目的としてOnly Watchを設立。2年に1度、各時計メーカーが1点限りの作品を製作し、代わりにクリスティーズがオークションに出品するというイベントだ。ユニークなパテック フィリップウォッチが世界で最も高価な時計の記録を打ち立てたり、チューダーがユニークなブラックベイでインターネットを賑わせたり、またF.P.ジュルヌが常に唯一のムーブメントを生み出したりする場所でもある。
今年開催されるOnly Watchオークションのハイライトをいくつか紹介しよう。
オーデマ ピゲ ロイヤル オーク フライング トゥールビヨン オープンワーク Only Watch エディション
まずはオーデマ ピゲからだ。フライング トゥールビヨン オープンワークは、ロイヤル オークにセラミックケース、そしてオープンワーク(スケルトン)ムーブメントという、APが得意とするいくつかの要素を取り入れたモデルである。今年のOnly Watchモデルは、41mmのケースにホワイトセラミックのブレスレットを備えたもので、メインプレートとブリッジを鮮やかなブルーで仕上げたオープンワークムーブメントの自社製Cal.2972を搭載している。またAPは、ホワイトゴールドでできたアワーマーカーと針のほか、22Kゴールドの自動巻きローターも同じブルーとロジウムの色調で彩るなど、この特別なロイヤル オークムーブメントの装飾をアピールしている。
Lot 6。エスティメート: 30万~35万スイスフラン(日本円で約4830万円~5635万円)
ブルガリ オクト フィニッシモ トゥールビヨン オートマティック マーブル
アルファベット順に62本のロットを見ていくと、次にブルガリがOnly Watchのためのスペシャルなオクト フィニッシモ トゥールビヨン オートマティック マーブルを製作したことがわかる。一般的な40mmのDLC処理されたチタン製ケースとブレスレットは、ヴェルデアルピのグリーンマーブルの層で覆われている(ケースの厚さはわずか0.5mm、ブレスレットの厚さは0.4mmだ)。もちろん、文字盤にも薄い緑色のマーブルの層がある。6時位置の大理石からは、世界で最も薄い手巻き式フライングトゥールビヨン、BVL268のフライングトゥールビヨンが見える。
ブルガリによると、この大理石はスイスと、ブルガリの故郷であるイタリアをアルプス山脈を通じて結ぶ自然の通り道、アオスタ渓谷で採れたものだという。この大理石はローマの宝石商と、記念碑や大理石の遺跡があるローマ帝国との歴史的なつながりを意味している。ローマといえば、このロットに当選すると“郷に入れば郷に従え!(when in Rome!)”ということわざにならうように、ローマにあるブルガリの最新ホテルに1泊できる権利も得られるとのこと。
Lot 15。エスティメート: 15万~25万スイスフラン(日本円で約2415万円~4025万円)
F.P.ジュルヌ クロノメーター ブルー フルティフ
F.P.ジュルヌはいつもOnly Watchのために新しいムーブメントを製作している。そして今年も同様のことをした。今年は18Kローズゴールド製の新型手巻きCal.1522を搭載したクロノメーター ブルー フルティフである。パワーリザーブインジケーターとムーンフェイズがムーブメントの裏側に配され、シースルーバックを通してのみそれを見ることができる。
時計本体のサイズは42mmで、オールタンタルでできたケースとブレスレットが特徴だ。文字盤が真正面を向いていないと時刻が読みにくいことからこの名がついた。青いエナメルの文字盤には、光の反射でしか見えないフロスト加工を施した数字があり、“持ち主だけ”が楽しめるようになっている。
Lot 21。エスティメート: 20万~40万スイスフラン(日本円で約3220万円~6440万円)
ジェラルド・ジェンタ
ミシェル・ナバス(Michel Navas)氏とエンリコ・バルバジーニ(Enrico Barbasini)氏の指導の下、ラ・ファブリク・デュ・タン ルイ・ヴィトンで復活を果たしたジェラルド・ジェンタブランドが、今回初めてOnly Watchに参加する。ディズニーの創業100周年と、ジェンタが自身の名を冠した時計を初めて製作してから50周年という節目に合わせて、ブランドはジェンタのシグネチャーである八角形ケースに入ったミニッツリピーター機能を搭載したミッキーマウスウォッチを発表した。シャンルヴェ・エナメルの文字盤には、片手にバースデーケーキを持ったミッキーマウスがエナメルで描かれている。これはディズニーの誕生日とOnly Watchの第10作目にちなんだものだ。
40mmのWG製ケースには、ラ・ファブリク・デュ・タンが開発した新型Cal.GG-001が収められている。復活したジェンタブランドによると、これはデザイナーがスケッチを描いていたものの実際には製作されなかった時計であり、ジェンタの特徴であるミニッツリピーターと、ミッキーマウスのアニメーションが描かれたレトログラードが初めて一体となった時計だという。
Lot 27。エスティメート: 35万~50万スイスフラン(日本円で約5635万円~8055万円)
タグ・ホイヤー モナコ スプリットセコンド フォー Only Watch
タグ・ホイヤーは今年のOnly Watchエディションにて、ブランド初となる機械式スプリットセコンドクロノグラフをおなじみのモナコケースに収めたモデルを発表した。通常のモナコケースとは異なり、テクスチャー加工を施したチタニウム製のケースも、タグがこのプロジェクトのために開発した新素材である。内部には自社製自動巻きスプリットセコンドCal.TH81-00を搭載。サファイア製のシースルーバックと、インダイヤルがチタン製のブリッジで吊り下げられているサファイア製ダイヤルの両方から鑑賞することができる。
ブルガリのOnly Watchと同様、このモナココレクションにも時計以外の権利が付属しており、落札者は2024年5月に開催されるモナコF1グランプリに、タグ・ホイヤーとともに招待されるという特典付きだ。
Lot 55。エスティメート: 15万~30万スイスフラン(日本円で約2415万円~4830万円)
チューダー プリンス クロノグラフ ワン
チューダーはいつもOnly Watchに現れる。2023年、ブランドは90年代のクラシックなビッグ ブロック チューダー クロノグラフを再解釈した18金無垢ケースに、新しいクロノグラフキャリバーを乗せたプリンス クロノグラフ ワンを発表。ブランドはコラムホイール、シリコン製ヒゲゼンマイ、約70時間のパワーリザーブを備えたこの新しいプロトタイプキャリバーにMT59XXと名付けた。
チューダーのほかのOnly Watchモデルと同様、その説明文はチューダー愛好家の熱狂的な夢のようであり、間違いなくこれは数十万スイスフランで販売されることになるだろう。チューダーのOnly Watchは数人の有名なコレクターが、ポケモンテーマの“みんなまとめてゲットだぜ(gotta-catch-'em-all)”という激しい精神のように、ひとつひとつOnly Watchを奪い合うことで知られている。ここで掲載された微々たるエスティメートは、あなたや私のような謙虚なブラックベイ着用者を挑発するためだけのものなのだ。
Lot 58。エスティメート: 2万5000~3万5000スイスフラン(日本円で約405万円~565万円)
シルヴァン・ピノー Only Watch オリジン
シルヴァン・ピノーは、スイスでいま最も勢いのある独立時計師のひとりである。彼が手掛けたオリジンは2022年のGPHGでオロロジカル・レヴェレイション賞を受賞。そして今回のOnly Watch 2023のためにユニークオリジンを製作した。彼はオリジンを手に取り、ライトブルーとシルバーのツートーンカラーのギヨシェ文字盤を追加。これらをすべて40mmのスティール製ケースに収めた。このユニークな文字盤は、ピノーにインスピレーションを与えてきたトラディショナルな時計製造の要素を現代的にアレンジした時計に、クールでモダンな効果をもたらしながら、オリジンにしっくりとなじんでいる。
Lot 54。エスティメート: 7万~10万スイスフラン(日本円で約1130万円~1615万円)
ティファニー&リシャール・ミル ネックレスウォッチ
最後に、ふたり一組となるリシャール・ミルとティファニーは、Only Watch 2023のために時計とネックレスをつくりあげた。リシャール・ミルは数世紀前にスイスで発見されたシャーマン教の遺物である、“タリスマン・オリジン”にちなんだRMS14を製作。このネックレスは、スイスのブリアウッド(ブライアという堅い木質の根から作られる木材)、ゴールド、チタン、ロードナイトのネックレスに、RMの特徴であるトノーをネックレスで通したものである。これのプレス資料は時計のリリースというより神秘的な呪文のように読めるが、ユニークなリシャール・ミルに何を期待するのだろう?
一方ティファニーはバード・オン・ア・ロックブローチを、Only Watch向けに再解釈して“バード・オン・ア・ロック・メカニカル・ペンダント・ウォッチ”として製作。(みんなも)私と同じようにティファニーのブローチのことをよく知らないかもしれないが、目を閉じて裕福な友人の祖母を思い浮かべてみると、そのおばあさんはおそらくバード・オン・ア・ロックをつけているだろう。文字盤だけでも461個のダイヤモンドがあしらわれており、時計というよりどちらかというと宝飾品である。しかし、その華麗な文字盤の下には手巻きムーブメントが搭載されているのだ。
リシャール・ミル / Lot 51。エスティメート: 60万~80万スイスフラン(日本円で約9660万円~1億2890万円)
ティファニー / Lot 56。エスティメート: 35万~50万スイスフラン(日本円で約5630万円~8055万円)
不明: パテック フィリップ&レジェップ・レジェピ
パテック フィリップやレジェップ・レジェピなど、いくつかのブランドは提供を予告するに留めている。
まずパテックからは、次のようなヒントが提供された。来たる11月のフィリップ・スターン(Philippe Stern)氏85歳の誕生日に向けて、ティエリー(Thierry)氏とパテック フィリップは、30本限定の腕時計を製作するとのことだ。“まったく新しいムーブメントを搭載した、お気に入りのグランドコンプリケーションです。このムーブメントはこのトリビュートウォッチのためだけに設計・製造されたもので、2度と使用されることはありません(Only Watch 2023より)”。この限定モデルの最初の時計はOnly Watchのデザインでまず生産され、11月5日にオークションにかけられる。
一方、独立時計師のレジェップ・レジェピ氏は、自身のOnly Watchモデルに“クロノメーター アンチマグネティック”という名称をつけた。彼によると、本作は自身の作品の特徴をすべて備えながらも、手仕上げのムーブメントを囲むファラデーケージ(外部の電界を遮蔽する導体でできた器)によって磁気から保護された時計になるという。文字盤もまた、ヴィンテージの“サイエンティフィックダイヤル”からインスピレーションを得ており、時計の目的である耐磁性をさりげなく表現している。
この最初のOnly Watch発表で取り上げるロットを10にしぼるのは骨が折れる。どのロットにも興味深いストーリーが隠されているからだ。ただ幸運なことに、これらの時計が11月のクリスティーズ・ジュネーブで発売される前に、少なくとも私たちはいくつかの詳細を11月までに見ることができる。メインイベントが近づくにつれ、さらに詳しく紹介していくので期待していて欲しい。
Only Watchの全ロットや、オークションに参加するすべてのリストは、onlywatch.comでご確認を。
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