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How They Made It エルメス 《スリム ドゥ エルメス セ・ラ・フェット》 エルメスの独創性が宿るスケルトンの馬と騎手 2021年新作

圧倒的なディテールをもつ立体的なダイヤル。

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エルメスは、今日のラグジュアリー業界で最も歴史のあるメゾンのひとつであり、象徴的なレザーアイテム、ハンドバッグ、シルク製品、そしてプレタポルテのラインで古くから知られている。しかし、先週詳しく紹介したように、ここ数十年の間に、時計製造にもその領域を広げてきた。HODINKEEでもこのメゾンにはお世話になっているが、その最新ラインであるスポーティな《エルメスH08》のコレクションが発表されたことで、これまで以上に多くの人がエルメスの時計製造へのこだわりを知ることになるだろう。

 このことは、毎年発表される限定生産の“普通と異なる腕時計”を見れば一目瞭然だ。これらの時計は、エルメスのクラフトとメティエダールへの取り組みを強調するもので、ジュネーブで開催されたWatches & Wonders 2021では、この特別な旗の下に新しい時計が発表された。

 あなたもそうか分からないが、私は骨の髄までゾクゾクしてしまった。

Watches & Wonders 2021で発表された《スリム ドゥ エルメス セ・ラ・フェット》。©️ David Marchon

 新しい《スリム ドゥ エルメス セ・ラ・フェット》の特徴を知るために、私たちの古い友人であり、エルメス・オルロジェ社の時計開発担当クリエイティブ・ディレクターであるフィリップ・デロタルにインタビューをした。今回は、奥行きに逆らう立体的なダイヤルについて紹介しよう。

ステップ1:インスピレーションの発見

2012年にエルメスのメンズスカーフとして発売された、野村大輔氏によるエルメスのスカーフ《セ・ラ・フェット》。©️ Hermès

フィリップ・デロタル(以下、PD):最初のきっかけは、燕尾服にシルクハットをかぶった骸骨の騎手が描かれたカレ(スカーフ)でした。このスカーフをデザインしたのは、日本のアーティストであり、イラストレーターでもある野村大輔さんです。彼が2012年にカレ・コンテストのためにデザインしたこのカレを見たとき、私は彼に、このパターンを時計のダイヤルに応用したいと伝えました。彼は、今回の企画をとても喜んでくれました。

 他社でもダイヤルにスケルトンを用いることはありますが、私たちにとっては想定外です。私たちはこのようなことに慣れていません。そのため、私たちは非常に賢明な方法でこれを実現しようとしました。アウトラインが完成した時点で、それを実現してくれる職人を探し始めました。なぜなら、私たちが使いたい技術はとても難しいからです。

ステップ2:キャンバスの設定

©️ David Marchon

PD:メティエダールの時計には、通常、《アルソー》か 《スリム ドゥ エルメス》を用います。《スリム ドゥ エルメス》の利点は、ダイヤルの表面が大きいことです。表現できる面が大きいので、さまざまなテクニックを駆使して、とても面白いものを作ることができます。私たちにとって、ケースは常にデザインの一機能です。ここでは、非常に軽やかで空気感のあるデザインになっています。私たちは、デザインと時計の間に良い関係性を作ろうとしているのです。

 《セ・ラ・フェット》のダイヤルは、スイスで3人の職人によって作られています。一人はミニアチュール(細密画法)エナメルを、一人はパイヨンエナメルを、そして最後の一人はエングレービングを担当しています。

ステップ3:パイヨンの配置

©️ David Marchon

©️ David Marchon

PD:私たちは、さまざまな技法を探していました。最初は、ミニアチュールエナメルだけを使おうとしていました。でも、スケッチを見て、まずはベースを作り、そこにパイヨンエナメルを置くことにしました。明るさと透明感が得られるからです。

 アーティストは、金箔や銀箔のパイヨンを挿入します。これは、エナメルの層の間に金や銀の非常に小さな糸をセットすることで、光や透明感、レリーフなどのさまざまな効果を生み出し、デザインに命を吹き込むものです。

ステップ4:エナメルのミニチュアポートレートを作る

©️ David Marchon

©️ David Marchon

PD:そして、ミニアチュールエナメルは、手作業でエナメルを塗って磨いたホワイトゴールドの表面に、モチーフの輪郭をなぞることで実現しています。次に、天然オイルを混ぜたさまざまな色のガラスパウダーを、非常に細いブラシを使って装飾していきます。これを何度も塗り重ねて乾燥させ、窯で焼いて顔料とパイヨンを定着させます。

 このミニアチュールエナメルを描き、色に命を吹き込む職人を見つけました。そして、私たちは強いコントラストも求めました。カレを見ると、色のコントラストが効いていてとても美しいですね。キャラクターをリアルに表現しています。

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ステップ5: 彫って彫って、彫り進める

©️ David Marchon

PD:第3のステップは、エングレービングです。エングレービングを専門とする職人が、骸骨に命を吹き込むところから始めます。エングレービングでは、彫刻家が手にした彫刻刀やたがねを使って、人物の浮き彫りや深みを金で表現していきます。もともとのカレに描かれたデザインは平面的だったので、骸骨にもっと生命感を与えたいと思いました。

 これで、その骸骨が私たちを捕まえにくるかのように見えますね!

ステップ6:ケースとムーブメントの搭載

©️ Claude Joray

PD:ダイヤル全体の制作には、最初から最後まで約1週間かかります。非常に大きなスケールから非常に細かく小さなスケールにするのは、常に極めて難しいことです。

 完成したモデルは、自動巻きムーブメント、エルメス・マニュファクチュール H1950を搭載したホワイトゴールドのケースに、エルメスの工房で作られたブルーのアリゲーターストラップが取り付けられます。

ステップ7:感動を与える

©️ Claude Joray

PD:結果には満足しています。ご存じのように、いつもそうとは限りません。しかし、時には自分自身で満足できることもあります。私たちの目標は、時計で感動を提供すること、お客様に感動を与えることです。私たちは毎年、革新性、感動、そして好奇心をもって、メティエダールを提供しようとしています。

 このような方法を続けることは、私たちにとって非常に重要なことであり、それは職人のためでもあります。こうして、さまざまなサヴォワールフェールやメティエダールを継続させることができるのです。

このインタビューは、分かりやすく簡潔に編集されています。

《スリム ドゥ エルメス セ・ラ・フェット》 39.5mmWGケース、エルメス・マニュファクチュール H1950 極薄型ムーブメント、2万1600振動/時の機械式自動巻きムーブメント、42時間パワーリザーブ。 ダイヤルはパイヨンエナメルを施したホワイトゴールド、ミニアチュールによるエナメル仕上げを施したゴールド。 3気圧防水。 限定生産:世界限定8本 価格:1274万9000円(税込)

詳細は、エルメス公式サイト