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Business News 2025年5月のスイス時計輸出が急減、4月の関税駆け込み需要の反動

アメリカ向けの卸売輸出は25%減、スイス時計協会は「輸出数が実際の販売状況を上回っている」と警告。

スイス時計の輸出は4月に記録的な伸びを見せたあと、2025年5月に急減した。これは、米国の関税引き上げを見越した小売業者が高級時計を買いだめしたことによる反動である。スイス時計協会(FHS)が木曜日に発表したところによれば、5月の卸売輸出総額は21億スイスフラン(日本円で約3736億円)で、前年同月比9.5%の減少となった。アメリカはスイス時計の最大市場であるが、同国への5月の輸出は前月4月の149%増という急騰の反動で、25%の大幅減となった。日本、中国本土、香港、イギリス、フランスといった主要市場への出荷も軒並み減少している。

2025年5月のスイス時計主要市場別輸出状況。

Source: Federation of the Swiss Watch Industry (FH). 

 2025年の年初から5月までの累計では、スイス時計の輸出は前年同期比でわずか1.1%の増加にとどまっている。しかしスイス時計協会は実販売に関して異例のコメントを発表し、「この輸出結果は実際の販売状況を反映したものではなく、実際にはより厳しい傾向が続いている」と警鐘を鳴らしている。ヴォントベル(Vontobel)のアナリストであり、スイス株式調査部門の責任者であるジャン=フィリップ・ベルチー(Jean-Philippe Bertschy)氏は、「スイス時計協会からこのような慎重あるいは否定的な発言が出るのは非常に珍しく注目に値する」と述べた。ベルチー氏は顧客向けのリサーチノートのなかで、「5月の輸出データは今年初の減速の兆候を示している」と分析する。また、アメリカ市場の減少は主に関税に対応した4月の駆け込み需要の反動であるが、「他国市場における下降傾向はより深刻な懸念材料だ」と指摘している。

他国市場における下降傾向はより深刻な懸念材料だ。

– ジャン=フィリップ・ベルチー(ヴォントベル マネージングディレクター兼スイス株式調査部門責任者)

 中国が不動産危機による景気減速から依然として抜け出せないなか、2025年年初からのスイス時計輸出の増加分は実質的にすべてアメリカ市場によって支えられている。アメリカは全体輸出の21%を占めており、総輸出額に対する比率としては過去最高を記録した。5月の輸出データでは、3000スイスフラン(日本円で約53万円)超の時計を含む、ほぼすべての価格帯で減少が見られた。こうした高価格帯モデルは、少量生産・高価格化という近年の傾向のなかで、輸出総額の成長を牽引してきたカテゴリである。

2025年5月のスイス時計価格帯別輸出状況。

Source: Federation of the Swiss Watch Industry. 

 4月のいわゆる“リベレーション・デイ(米国開放の日)”演説において、アメリカのドナルド・トランプ(Donald Trump)大統領は、スイス製品(時計を含む)に対して31%の関税を課すと警告した。その後、両国が二国間合意を模索するなかで、この関税率は10%へと引き下げられた。アメリカ政府関係者は、スイスが合意の優先対象になっていると述べているものの、現時点では協定はまだ締結されていない。

 ロレックス、チューダー、オメガ、オーデマ ピゲといったブランドは、こうした関税への対応としてアメリカでの価格を引き上げている。主要ブランドのCEOによれば、アメリカの通商政策の急激な変化が、市場に混乱と先行き不透明感をもたらしているという。アメリカ連邦準備制度理事会(FRB)のジェローム・パウエル(Jerome Powell)議長も、今週水曜日の記者会見において“uncertainty(不確実性)”という言葉を15回以上使用しており、同会見では政策金利の据え置きと同時に、米国のGDP成長見通しが1.7%から1.4%へと下方修正されたことが発表された。