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Hands-On タグ・ホイヤー カレラ グラスボックスを実機レビュー

タグ・ホイヤーのようなメガブランドが遂げた、大胆な進化。フレデリック・アルノー氏の本気を感じる1本。

タグ・ホイヤーの新型カレラ、通称“グラスボックス”は、間違いなく同社のターニングポイントとなる時計だ。その魅力は先月公開した、アンソニーによるA WEEK ON THE WRISTのなかでも詳細に語られている。本記事と動画でのレビューでは、この39mmのカレラ グラスボックスのどこに注目すべきなのか、3つのポイントにまとめてみた。また、現在タグ・ホイヤーを率いている、CEOのフレデリック・アルノー氏から直接伺った話を含め、僕なりに本作がいかに特別な時計なのかを考察してみたいと思う。

1 数字以上に優れたサイジング

 近年のカレラはたびたび39mmというサイズでリリースされている。小型化のトレンドを受けたものではあるものの、このグラスボックスからケースがさらに工夫してシェイプされ、フィッティングが明らかに進化しているのだ。カレラ60周年アニバーサリーモデルなどで用いられた39mmケースはストレートに近いラグ形状で、短くて角度がついているが“腕に沿う”というほどではなかった。それが本作では、ラグをわずかにカーブさせたことにより着用者を選ばずつけやすくなった。さらには、ラグトゥラグのサイズにいたっては、カレラ60周年アニバーサリーモデルが47.7mmであるのに対し、46mmまで詰められた。これは実質的なサイズダウンであり、クロノグラフウォッチといえど、袖口に収まるようなスタイルを目指したのだと思われる。

2 オリジナルへのオマージュも感じるデザイン

 デザインにおいてはなんといっても大型の風防、通称“グラスボックス”を採用したことが最大の特徴だ。これまでのクラシカルデザインを用いたカレラも、大型のドーム風防を合わせることが慣例だったが本作の風防は特に際立っている。ケースの際まで覆うように配された“グラスボックス”は、サイドから見たときに煌めきを増すだけでなく、ケースをより薄く見せるような視覚効果ももたらす。この形状に合わせてタキメーターが印字されたフランジ部分は、別体パーツを用いて大きく隆起しミニマルな文字盤に視認性と個性を与えている。

 なお、非常に珍しいのが、文字盤の色によってダイヤルレイアウトが少し変化するのだが、それもまた画期的だ。ベースとなる黒と青文字盤で表情が変わるのだ。6時位置にデイト表示があり2カウンターのようなデザインの青に対し、黒文字盤ではデイト表示が12時位置(通称DATO:ダートだ)に変わり、いわゆる3つ目デザインとなる。同社内でヘリテージカレラの研究も進んでいるからこそ、過去の特徴的な意匠が盛り込まれたのだ。

3 地道な進化を遂げたムーブメント

 最後に、ムーブメントについても触れておくのだが、これはあくまで序章に過ぎないのかもしれない。HODINKEE読者ならば、現在タグ・ホイヤーでムーブメント開発の指揮を執る人物がキャロル・カザピ氏であることはご存知のことと思うが、彼女が監修したムーブメントに本作から切り替わっている。ただ、このCal.TH20-00は、厳密にはこれまでCal.ホイヤー02(そして古くはCH80)と名乗っていたムーブメントの改良版だ。パートごとに調整が入り、巻き上げ方式が両方向になったり一部の歯形が変わったりしているものの、基本的には同じものだ(日本の時計師にも話を聞いたが、やはり大きな変化はないそうだ)。ただ、カザピ氏の設計思想としては、非常に強固かつパワフルなベースムーブメントを開発したうえで、コンプリケーションまで展開するという特徴がある。その意味では、就任間もない現時点はまだ地ならしのような段階なのかもしれない。

 改良されたCal.TH20-00の行く末がカレラなのかモナコなのか…。タグ・ホイヤーのアイコンモデルで驚くべきコンプリケーションを見ることができるのは、おそらくそう遠い未来ではないはずだ。

 さて、本レビューの詳細はぜひ改めて動画で確認いただきたいものの、最後に強調しておきたいことがある。それは、タグ・ホイヤーにとってシグネチャーであるカレラがこれほどまでに大変革を遂げられたのは、CEOであるフレデリック・アルノー氏の手腕によるところが大きい。今回のアップデートは、時計好きの人にとってはガラリと変わった大きなものに映ると思うが、デザインとしてはよりミニマル方向へと舵が切られたものだ。いわば、これからの時代のベーシックとなるようなもので、短期的には大きく売上に貢献するようなものではないだろう。フレデリック氏がアルノー家の人間であることが作用しているのは間違いないが、それ以上に彼の覚悟の結果がこのグラスボックスに表れていると思う。今年のWatches&Wondersのあとのディナー会で、彼が語った言葉がいまでも忘れられない。

僕は確かにアルノー家のものです。しかし、タグ・ホイヤーにおいては、アルノー家のいち員としてではなく、ジャック・ホイヤーの孫であるつもりでいるのです

– フレデリック・アルノー氏

その他、詳細はタグ・ホイヤー公式サイトへ。