遡ること2016年、IWCは小振りなパイロットスタイルの最新モデル、マーク XVIIIを発表した。発売当時、我々の創業者ベン・クライマーは、審美的にもプロポーション的にも“ちょうどいい”と考察し、“世界で最も重要かつ象徴的なパイロットラインの後継者 "と評価した。そして彼は、1950年代に英国国防省の仕様に基づいて設計された、歴史的に重要なIWCのマーク XIについても言及していた。
最近その姿を消したIWC マーク XVIII(右)と、長い年月を経て伝説となったマークXI。
2016年のマーク XVIIIは、それまでの航空にインスパイアされたアイデアを少々文字どおりに捉え過ぎ、時計のサイズもやや大きめだったモデル群を、デザイン的に刷新したものである。XVIIIは、逆に控えめな日付窓(配置については聞きたくない!)とジャストサイズの40mmケースを採用し、コンサバティブな外観となった。高級時計ブランドが出していた(あるいは出している)、無難なツールウォッチに限りなく近いヒット作だった。
2022年7月に発表されたIWC マーク XXは、マーク XVIIの進化を表現している。この新しい40mmのパイロット・ウォッチに関するハンズオン記事をお見逃しなく。
そして2022年7月、IWCは、マーク XXを唐突に発表した。実は、IWCはこの時計ついて、公式にはいっさい発表しておらず、ウェブサイトに突如として登場したのだ。しかし、注意してほしい。マーク XIX(19)は存在しないのだ。マーク XXは、XVIIIに見られたゴルディロックス(黄金比)の要素を取り入れ、よりよいものに仕上げたものだ。文字盤のプロポーションは改善され、日付窓はよりインパクトのあるものに、針はより豪華なものに、そしてムーブメントはインハウス(彼らが言うには)となった。それはさておき、それはマーク XVIIIと見間違うほどで、発売当時、そしてその後数カ月のあいだ、IWCのコレクションのなかでマーク XVIIIと並行して扱われることとなったのである。
ブルー文字盤の新しいIWC マーク XX。
その時代は終わった。
新年の時点で、IWCのマーク XVIIIはなくなった。まるで存在しなかったかのように、生産中止となったのだ。一部スペシャルエディションのマーク XVIIIはまだ残っているが、中核となるモデル、特にブラックとホワイトの文字盤は正式に廃盤となっている。
マットな針とカラーマッチングされた日付窓が特徴的なマーク XVIII。
では、あなたにとってどんな意味があるだろうか? もしあなたが、新品のIWC マーク XVIIIを手に入れたいと願っていたのなら、残念ながらその時は過ぎてしまった。しかし2022年の後半、IWCは基本的にオートマティック・スピットファイアからマーク XVIII、そしてマーク XXまで、きわめてよく似た領域で3つのモデルを展開していたのだから、それはそれほど悪いことではないのだ。では、そのうちのひとつが去った今、何が残っているのか見てみよう。
2016年のマーク XVIIIは、それまでの航空にインスパイアされたアイデアを少々文字どおりに捉え過ぎたモデル群を、デザイン的に刷新した。
まずは2019年に発売されたオートマティック・スピットファイアで、マーク XVIIIにちょっとしたアレンジを加えた新しい時計である。オートマティック・スピットファイアは39mmと、先日終了となったばかりのモデルより1mm小さいサイズで、全体的にヴィンテージ感のあるダイヤルレイアウトが特徴だ。文字盤のレイアウトはヴィンテージ風のもので、すべてのマーカーにはフェイクパティーナが施され、数字にはフラットフォーのタイポグラフィを採用するなど、当時の流行に合わせたデザインが施されている。また、日付窓を備えているが、マーク XVIIIとは異なり、日付窓は文字盤と同色ではなくホワイトだ。さらに、XVIII(またはXX)のブラックレザーとは異なり、グリーンのNATOスタイルストラップのみの構成で、ブレスレット仕様は展開していない。
39mmのオートマティック ・スピットファイア。
そして、7月のサプライズ、王座の簒奪者であるIWC マーク XXがある。先に述べたように、この時計はXVIIIをベースに、場合によってはほとんど気づかないほどの微調整を加えている。IWCのワードマークを少し移動し、数字は文字盤の中央に寄せられ(スピットファイアと同様)、日付窓はカラーマッチングしたブラックではなくホワイトに変更された(これもスピットファイアと同じ)。XXはブラック、ブルー、グリーンの3色展開だが、XVIIIはスタンダードなブラックとホワイトに加え、特別仕様モデルも多数用意されていた。マーク XXのブルーダイヤルは、XVIIIの“プティ・プランス”と同じものではないことに注意が必要だ。マークXXに“プティ・プランス”は存在しないのだ。
IWC マークXX、ホワイトの日付窓と光沢のある針を持つ。
2022年7月に、この時計の紹介記事を執筆したとき、ブレスレットのオプションはまだなかったが、近日発売と聞いていた。現在はブレスレットが登場しているが、先代モデルとはまったく同じ仕様ではない。XVIIIがXXよりもツールウォッチとして仕上げられていたように(マットな針、フルブラッシュのブレスレット)、XXもブレスレットに関しては、その理想から遠ざかっているのだ。この新しいモデルは、IWCの定評あるマイクロアジャストシステムを含め、機能的には同じように見えるが、サテン仕上げのリンクに加え、ポリッシュ仕上げのリンクが採用されている。これは、新しいハンドセットのポリッシュ仕上げの金属を意識してのことだと思われる。いずれにせよ、購入希望者が知っておくべき違いだ。
IWC マーク XXのブレスレット。
IWC マーク XVIIIには長いあいだ魅了されてきた(購入には至らなかったが)ため、それがなくなってしまうのは悲しいことだ。しかし、ブランドには自社製品の改良に努め、無駄のないコレクションを維持する義務がある。IWCのパイロット・ウォッチコレクションで残っているオートマティック・スピットファイアとマークXXは、美観とサイズにおいて素晴らしいワンツーパンチを発揮している。
IWC マーク XVIIIに最後の別れを告げる。
このニュースをきっかけに、XVIIIはコレクターズアイテムとなるのだろうか? それは時間が解決してくれるだろう。マークXVIIIに一票を投じるとともに、2023年のウォッチズ&ワンダーズでIWCが何を発表するのか注目しよう。
HODINKEE shopでは、IWCの中古時計を多数取り扱っています。IWCのマークXX、オートマティック・スピットファイアの詳細については、ブランドのウェブサイトをご覧ください。
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