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Hands-On IWCの新型マークXXは確かによくなっているが、それは我々が望むマークシリーズなのか?

ヴィンテージマニアがマークシリーズの行く末について謙虚な提案をする。

 今年の初め、IWCは新しいマークXXをひっそりと発表した。プレスリリースも、ファンファーレも、アナウンスもない。正直なところ、これはとても新鮮なことだった。ブランドが小さな改良を加えるたびに山頂から叫ぶような世界において、ブランドが新しい時計をウェブサイトに掲載し、我々がそれを取り上げるのを待つというのは、ほとんど時代錯誤のように感じられたのだ。

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 しかし、我々はすぐに理解した。そんなシンプルな時計に対し、IWCのマークシリーズは常に人の数だけ意見を呼んできたが、最もクラシックで親しみやすいモデルラインのひとつとしてそれは当然なのだ。第2次世界大戦後、IWC(そして短期間ではあるがジャガー・ルクルトも)はイギリス国防省のために、IWCの誇るCal.89を搭載したシンプルで無駄のないパイロット・ウォッチ マーク11の製造を開始した。マーク11の生産が終わりに近づくと、IWCは市販用も生産するようになった。マーク11が製造中止となったのち、IWCはマークXII、マークXV…とモデルラインを継続した(13と14は世界の一部で不吉とされているためスキップされており、今回19をスキップしたことも容赦してあげよう)。

IWC Pilot's watch Mark XX

 言葉を選ばずに言うと、マークXXは我々が2016年から知っているマークXVIIIよりもいい時計だ。そして、ブレスレットで81万9500円(ストラップで68万7500円。ともに税込)、つまり旧マークXVIIIより12万6500円も高いのだから、そうであるに越したことはないだろう。変更点のほとんどは微妙なものだが、それらが組み合わさることで機械的に優れ、見た目も(つけ心地も)より洗練された時計になっている。しかし、それでいいのだろうか?

 7月にIWCのマークXXを紹介して以来、IWCはコレクションを充実させ、マットブラック、サンバーストブルー、サンバーストグリーンの3色のダイヤルに、ブレスレットの有無を加えた計6種類のバリエーションを揃えている。今回は、マークXVIII(と私物のマークXII)と並べて、ブラックとグリーンのブレスレット仕様をハンズオンし、ブルーダイヤルのストラップ仕様を撮影することができた(本記事で紹介している写真)。

 まず新しいマークXXの外観から見ていこう。マークXXはマークXVIIIと同じく直径40mmだが、ラグからラグまでの長さが49mmとXVIIIよりも2mmほど短く、より均整のとれた時計に仕上がっている。マークXVIIIは(私にとって)日常使いの時計としては大きすぎるギリギリのラインにあったが、この調整によってマークXXは「なるほど、これなら毎日何気なくつけられる」という領域にしっかりと押し上げられた。

IWC Mark XX
IWC Mark XX strap

 我々のスタイルエディターに“ヴィンテージ狂”とカテゴライズされるのが怖いため、本稿ではIWCがいかにして36mm径のマークシリーズを復活させるべきか、マーク11またはXIIがマークシリーズの完璧な反復であったかについて、万年筆のインクをこぼすことなくたたみかけるように説明したいと思う。

 その代わりに提案と呼ぶべきものはすべて最後に取っておいた。もしあなたが『ザ・ワイヤー(原題:The Wire)』(編注:アメリカの放送局HBOで放送されたテレビドラマシリーズ)を見たことがあるなら、それは私の個人的な“ハムスターダム(特徴づけ)”だと考えてほしい。ヴィンテージ狂の不当な決め付けは封じ込め、周りの迷惑にならないようにする(このハンズオンレビューによって)。ヴィンテージ狂のハムスターダムは最後に取っておくことにしよう。

 マークXXではケースの厚みを11mmから10.8mmに薄くしたが、実際につけてみるとほとんど気にならない。さらにブレスレットも新しく少し薄くなり、手首に自然になじむようになった。さらに重要なのはブレスレットに工具不要のマイクロアジャスト機構が5つ搭載されていることだ。これは、この価格帯の時計に標準仕様となりつつある、ありがたい重要なディテールである。マークXXは、IWC独自のクイック交換システムも備えている。ストラップやブレスレットの交換を前提としたこの種の時計には特に重要な機能だ。私からのアドバイス(いつものことだが)を伝えよう。ブレスレットで購入し、アフターマーケットで素敵なストラップを購入して遊んでみてはどうだろう。

IWC Mark XX review

 ケースと同様に、ダイヤルにもいくつかの変更が加えられ、よりバランスが取れている。意見が分かれそうなところからはじめよう。日付窓だ。日付窓をセットするのは……いや、今さら私が日付設定をしないと言ってもわからないだろう。私は日付窓のない時計を好むほうだが(Hodinkeeの初期の記事を読んで、すっかり洗脳されてしまった)、たまたま日付窓のある素晴らしい時計を買うことを止めたことはない(きちんと日付窓のあるマークXIIに対する私の愛については、以下で詳しく説明する)。すべては相対的なものだからだ。マークXXは、マークXVIIよりも優れた日付窓を備えている。マークシリーズが商業的な理由から日付窓を備えていることを考慮すれば、マークXXの日付窓は非常に優れているといえるだろう。

IWC Mark XX blue

 ダイヤルの最も顕著な変化は、マークXXのすべてのダイヤル構成のなかでもコントラストが強いホワイトの日付ディスクが採用されたことだ。たいてい私はブラックダイヤルのマークXVIIIに見られるよう、日付表示をダイヤルと同色にするアプローチを好む(どうしても窓が必要なら目立たないようにしてほしいのだ)。しかしここでは、日付ディスクの白がダイヤルのほかの白プリントとのバランスを取っていると思う。ここでダイヤルのほかの変更点も登場する。数字と日付窓の位置関係がよくなり、窓がほかのデザインともう少しシームレスにフィットしているのだ(正直、日付窓はまだ中央に寄りすぎていると思うが、おそらくこれは技術的な限界で、デザインの選択ではないのだろう)。3時、6時、9時横のミニッツマーカーがすべて長くなり(マークXVIIIではほかの太いマーカーと同じ四角形であった)、12時位置のマーカーとIWCのロゴも調整され、厄介なネガティブスペースが少なくなっている。マークXVIIIとマークXXを並べてみると、XVIIIのネガティブスペースが不格好に見えてしまう。さらに針はマットブラックからロジウムメッキに変更され、より目立つようになった。これらはすべて比較的小さな変更だが、マークシリーズの新しいエディションとして十分なものだ。

iwc mark xviii

マークXVIII

iwc mark xx

マークXX

 さて、日付表示については、もう十分だろう(でも本当にそうだろうか?)。スペック面ではマークXXはマークXVIIIからアップグレードされた。60m防水から100m防水となり、5日間のパワーリザーブを備えているのだ。

 もちろん後者はムーブメントの話だ。マークXXはリシュモン傘下のムーブメントメーカー、ヴァルフルリエから供給されるIWCのCal.32111という新しいムーブメントを搭載している。つまり“インハウス”の定義によっては、これは自社製ということになるだろう。しかし、そのスペックはマークXVIIIのセリタ製ムーブメントから一歩進んだもので、解釈よって左右されることはない。ムーブメントはエングレービングされたケースバック(と軟鉄製カバー)に隠されているが、IWCによれば、コート・ド・ジュネーブ仕上げとペルラージュ仕上げが施されているとのこと。このキャリバーの精度については言及も約束もされていないようだ。

IWC Mark XX pilot's watch caseback

 著名な野外冒険家であるジェームズ・ステイシーは、かつてこう語っている。「私にとってフィールドウォッチとは、可能な限り便利で信頼性が高く、かつ必要ないときには手首から消えるものでなければならない」と。もし、この言葉が優れたフィールドウォッチの条件であるならば、パイロットウォッチ兼フィールドウォッチであるマークXXは、間違いなくその条件を満たしているといえるだろう。

ヴィンテージ狂によるハムスターダム(特徴づけ)
IWC Mark XII neo-vintage pilots

著者の地味なマークXII

 IWCがマークシリーズをアップデートするたびに、「うう、なぜ私の好きなマーク〇〇を復活させないんだ?」という趣旨のことがよく言われる。そこで、私の偏見を披露しておこうと思う。私は1990年代のマークXIIを長年所有しており毎日使うお気に入りの時計のひとつだが、36mm、しなやかでヴィンテージ感のあるビーズオブライスブレスレットを持ち、JLCのCal.889を搭載したクラス最高のモデルだ。マーク11と同じ先端がカットされた時針は、まさに最高。そして、その日付窓の配置を見てほしい。日付窓を付けるならIWCはここに付けるべきなのだ!

 ええ、もちろん、マーク11には日付窓がなく、マークXII以来、日付窓が追加されたことはマーク11の純粋な部分をすべて冒涜しているといえることは理解している。その意見には共感もするし、もしIWCが日付窓を取り去りたいのであれば、私はそれを止めないだろう。しかしマークXIIは、彼らが日付窓を正しく配する方法を知っていることも示している。

 またマークXIIのフォントは、とにかく見栄えがいいと思うのだ。確かにエイリアルによく似ていてつまらない。でもマークXIIがエイリアルを使っているとしたら、マークXXのフォントは私の好みからすると、ちょっとコミック・サンズに近づきすぎて、間抜けになりかけている(特に“4”が気になるのだが、ちょっと外に出る必要があるだけかもしれない)。

 もしIWCがマークXII(あるいはXV、マークXV好きの人もいると思う!)のようなものを36~38mmで復活させたら
、そしてマークXIIのようにすべてのディテールを完璧に仕上げたら、それが大量に売れるかどうかはわからないが、私はそれが間違いなく“カルトヒット”としてすべてのブロガーたちが記述するのに十分な愛を得るだろうと確信している。ロレックスが昨年エクスプローラーを36mmに戻したが、私が言っているすべては先例があることだ。

IWC Mark Series (Mark XX and Mark XVIII)

従来のマークXVIIIと並べた新型のマークXX

 聞いてほしい。IWCにはすでにビッグ・パイロット43や、パイロット・クロノグラフ(レイク・タホはマジでヤバい時計だ)などの時計があり、大型時計のニーズはすべて満たしているのだ。そこでマークシリーズを利用して、もう少し小さく、もう少し伝統的なものを作ってみてはどうだろう? オマージュではなく、オリジナルのマーク11から最も重要なDNAを受け継いだ、真の意味でモダンなマークシリーズを。

 2015年、ジョン・メイヤーはIWC への公開状を書き、それはマーク シリーズについての私の気持ちの一部を、私が思っていた以上に明確に表現してくれた。「2000年代初頭のIWCが実用性を重視する人々のために設計されたとすれば、新会社はほかの高級品市場の成功に基づき、そこにいるに違いないと考えた人々のために設計されたものだった。どのような視覚的アルゴリズムでもてあそんでいたとしても、それは私が共感できない万能工具を使用しているのだ」

IWC Mark XX review

 これは新しいマークシリーズの時計について私が感じていることとまったく同じだ。世の中の人々のために作られたと思われるひと握りの妥協が、いい時計(それもいい時計だ!)を素晴らしい時計になることを妨げている。1990年代から2000年代初頭にかけて、IWCはほかのメーカーと同じように感じていた。つまりアンチロレックス、アンチラグジュアリー、てそしドイツとスイスが融合した精密な時計製造だ。しかし途中からマークシリーズは、あらゆる人にあらゆるものを提供する、まったくの中途半端な時計であることを目指し始めた。だが、それでは誰かにとっての特別な存在になることはないだろう。

 ジョンと同じように、私もIWCとマークXIIを愛しているからこそ、このようなことを言えるのだ。マークXIIとマークXXを並べてみると、両者の共通点を見出すことができ、とてもクールな印象を受けた。IWCといえば、パイロットウォッチを思い浮かべる人も多いだろう。初期の時計ライター、ウォルト・オデッツは、IWCのマークXIIを“パイロットでない人が最も好むパイロットウォッチ”と呼んだことがある。マークXXを気に入るかどうかは、パイロットウォッチを製造してきたIWCの歴史とのつながりを感じるか、あるいはそのオリジナルのDNAをあまりにも多く失いつつあると感じるかによって、多少なりとも変わってくるのではないだろうか。

IWC マークXXのサイズは直径40mm×厚さ10.8mm×ラグ幅49mm。マットブラック、サンバーストブルー、サンバーストグリーンのダイヤルがある。ステンレススティール製ケースは100m防水。Cal.32111は2万8800振動/時で作動し、5日間のパワーリザーブを備えている。現在発売中。価格はストラップ仕様が68万7500円、ブレスレット仕様が81万9500円(ともに税込)。詳しくは、IWC.comをご覧ください。

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