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Hands-On ロンジン スピリット チタンモデルを実機レビュー

競馬からアパート探しのときまで、すべてに対応可能な時計だ。


2ヵ月前、ロンジンは新しいチタン製の時計を発表した。ロンジン スピリットはまだ誕生したばかりだが、すでに人気の高いコレクションだ。発売と同時に、HODINKEEのローガン・ベイカーはこのモデルを「今年最高のパイロットウォッチ」と評している。IWCのビッグ・パイロット・ウォッチをはじめとする厳しい競争が繰り広げられたこの年に、私はその記事を見て興味を持った。

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 私がこの時計を初めて見たのは、HODINKEEのサイトに紹介記事が掲載されたその日だった。副編集長のノラ・テイラーとともに、馬術競技イベント「ロンジン ヘリテージ クラシック」に参加していた。馬(と蜂)とジョッキーが障害物を乗り越えていく様子を見ながら、印象的な料理が並んだ長テーブルについていると、ブランド担当者がニヤリと笑いながら私に時計を手渡し、「これを見てください」と言った。すでにその日に記事が掲載されていたためどんなものかは知っていたが、実機で見ることができ興奮した。

 興味深いのは、このモデルが私にとってまったく馴染みのないものではなかったということ。昨年、私はスピリット コレクションの最初のモデルであるロンジン スピリットをレビューした。本機は、大きなアプライドのアラビア数字、マットブラックのダイヤルと大型のリューズを備えた、スティール製で40mmのパイロットスタイルのウォッチだ。この時計をとても気に入り、当時の記事でもそう書いた。ロンジンがいかに典型的で原型的な価値を提案をおこなっているか、つまり同クラスの時計をはるかに凌駕する時計を作っているかについて述べたのだ。

 そこで目にしたのが、スティール製モデルとは少し異なるこのモデルだった。オリジナルは重量感があり、高級感があった。チタンはスティールよりも強度が高く(傷はつきやすいが)、はるかに軽い。また、2011年にシーアとデヴィッド・ゲッタがヒットさせた "タイタニウム(Titanium)"という曲も連想させる。チタン製の時計を触っていると、その見た目に反した感触に何度も驚かされる。とんでもなく軽いのだが、今回もそうだった。

 本機には同じくチタン製のブレスレットが装着されているが、全体の重さはプラスティックのペンよりも軽いくらいだ。手にしたときの感想は、「腕につけていることを感じさせないから、日常的に身につけられそうだ」だった。そう、私の感想はオタクっぽいものだった。 しかし、私がもっと時計らしいことを考える前に、この作品との時間は途切れてしまった。馬が木の上を飛ぶように、時計は私から取り上げられ、ほかの人が試すために連れて行かれてしまったのだ。

 その後、数週間は見る機会がなかったが、レビュー用のサンプルを手に入れることができたため、街に出ておもしろいことをしようと思った。妻と私は新しいアパートを探していた。ニューヨークで最初に住んだブルックリンを離れ、より広い場所を探していたのだ(ネタバレだが、実際はブルックリンに戻ることになる)。当時、どの地域も閉鎖されておらず、街全体が私たちの遊び場だった。ある金曜日の午後、新しいロンジン スピリットのチタンモデルを携えて、クイーンズにあるロングアイランドシティへと向かった。

 私はこの軽くてつけやすい40mmの時計を身につけて、ビルやユニットを次々と見て回った。あるアパートは30階の角部屋で、どこまでも続く日差しがあった。太陽の光が時計に当たると、この文字盤がオリジナルのスティール製バージョンとどのように違うのかがよくわかった。新しい文字盤にはグラデーションが施されており、ゴールドの数字と組み合わさることで、視覚的な面白さと輝きに溢れている。結局、そのマンションは予算オーバーだったので、南へ...7階へ行きついた。

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 このユニットは、アパートというよりもダンジョンのように感じられた。リビングの窓から見えるのは、巨大なレンガの壁で、日の光はすべて遮断されていた(残念ながらニューヨークではよくあること)。ここで、夜光の実力を試すことができた。同じく暗いベッドルームに入ると、グリーンに光るスーパールミノバの強さがはっきりとわかった。また、この時計のデザイン上の重要なアップグレードである、日付表示がない点にも気づいた。これによって文字盤上で完璧なシンメトリーがなされ、すべてのインデックスにアラビア数字が配されることにもなった。

 結局、ロングアイランドシティは空振りに終わった。どのアパートも私たちの好みに合うものはなかったのだ。しかし、その日を完全に無駄にしたわけではなかった。近所には、マンハッタンを見下ろすハドソン川沿いに公園や桟橋が広大に広がっている。晴れた日には、愛犬のミアも一緒に水辺を歩き、景色を楽しむことができた。また、この時計がいかに多機能であるかを知る機会にもなったのだ。

 確かに、チタンはスティールよりも暗い色をしているが、この時計は単色の外観を生かしている。秒針の赤、文字盤の印字やマーカーの金色は、チューダーのブラックベイの色合いを思い起こさせる。Cal.L888.4を搭載し、クロノメーター認定を受けたこの時計は、40万円を切る価格で、チューダーやオメガのような少し高級な時計に匹敵する価値を持っていると思う。文字盤に描かれた5つの星に匹敵するスター性を備えていると言っていいだろう。

 この時計は、チタンというモダンな素材が、チーズバーガーのアボカドのように伝統的なデザインを引き立てている。個人的に最も評価したのは、この時計がいかにシンプルであるかということ。クラスプ、ブレスレット(ファブリックストラップもある)、文字盤など、すべてが必要最低限に抑えられている。これは、毎日身につけても何も考えず、飽きることのない時計だと思う。次の住まいを探しているときも、この時計が絶えず気になるなんてことはなかった。しかし、この過密な都市でアパートを見つけることができないような運のなさを感じたとき、手首に視線を落とすと自然に微笑んでしまうような時計なのだ。その効果は絶大だった。本当に。 馬や不動産業者の前でこの時計を見る機会があったが、その効果は決して衰えなかった。

 本機は、ローガンが言っていたように、今年の密かなヒット商品のひとつになると思う。時計に求められる、数値化できないほどのシンプルさを備えている。それを超強力なケース素材と組み合わせることで、まさに...ハンバーガーのアボカドの上に卵を乗せたようなものになっているのだ。

ロンジン スピリット チタン 40mm Ref. L3.810.1.53.6: ケース径40mm、ねじ込み式リューズとクローズドケースバック、100m防水。チタン製ブレスレット。自動巻きCal.L888.4(2万5200振動/時、パワーリザーブ:72時間)。ブラックダイヤル、ゴールドのアプライドマーカー、針とマーカーにスーパールミノバを使用。価格: 38万9400円(税込)

詳細は、ロンジン公式サイトへ。

Photos, Kasia Milton

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