trophy slideshow-left slideshow-right chevron-right chevron-light chevron-light play play-outline external-arrow pointer hodinkee-shop hodinkee-shop share-arrow share show-more-arrow watch101-hotspot instagram nav dropdown-arrow full-article-view read-more-arrow close close email facebook h image-centric-view newletter-icon pinterest search-light search thumbnail-view twitter view-image checkmark triangle-down chevron-right-circle chevron-right-circle-white lock shop live events conversation watch plus plus-circle camera comments download x heart comment default-watch-avatar overflow check-circle right-white right-black comment-bubble instagram speech-bubble
Shop
November 28, 2020
November 28, 2020
Hands-On ロンジン スピリット 40mm 2020年の新作を実機レビュー

Hands-On ロンジン スピリット 40mm 2020年の新作を実機レビュー

飛行機乗りをとことん魅了する時計。

ADVERTISEMENT

パイロットウォッチは、常に過ぎ去った時代の感傷と歴史に満ちたイメージを彷彿させる道具の1つだ。飛行機乗り、戦闘機パイロット、そしてボマージャケットの時代。革の匂い、ギアのカタカタ音、計器パネルの様子、ピストンエンジンの轟音。今の飛行機には、もうそのような外観や感覚はどこにもない。だからこそ、現代のパイロットスタイルの腕時計に、そういった感傷を掻き立てられるのがたまらないのだ。ロンジン スピリットも、そういった腕時計の1つだ。シンプルで、判読しやすく、程良いサイズの腕時計。そして、ステンレススティールケースでこそ最も引き立つ、ちょっとしたニュアンスが散りばめてある。

 この時計は今年の初めに発表されたが、たいていの場合がそうであるように、広報写真を見ただけでは細部まであまりよく分からなかった。見た目は全く簡潔だ。大きなアラビア数字、ブラックダイヤル、SSケース、そしてレザーストラップ。しかし、写真だけを見て、何か訴えてくるものがあったと言えば嘘になるだろう。そして、実際に手にしてみると、これが価格の割に、とてつもない価値をもつ腕時計であることが分かった。

 本機を見て最初に気付いたのは、ダイヤルと面の多い外観で、それがデザインを作り上げている。一見すると、これは標準的なブラックダイヤルだ。光が当たると艶も出る。しかし、実際には、ダイヤルは非常にマットな艶消しで、直射日光の中では、その艶消し効果が一段と際立ち、角度によってはほぼグレーに見える。マットなダイヤルのフラットな雰囲気は本機の大きな魅力であり、少なくとも私には訴えてくる。それがヴィンテージ感をさらに高めており、率直に言って、標準的なブラックダイヤルよりも見ているのが非常に楽しいのだ。

 大きくくっきりとした立体的な白いアラビア数字も特徴的で、その書体はダーティー・ダースのダイヤルデザインを思わせ、別の見方をすれば、非常にモダンだとも言える。書体の話にもう少し踏み込むと、中でも私には平たい4が最もヴィンテージ感を帯びた数字として目に飛び込んでくる。また、7と5にもかすかなセリフが付いおり、古いスタイルの時計デザインを思わせるものになっている。外側へ目を向けると、ミニッツトラックもまた、興味を引くヴィンテージ感のある数字をたくさん使っている。ここでもまた平たい4が見られるが、6もとても格好のいいオープンな書体だ。このミニッツトラックは、腕時計を一見しただけでは、往々にして見逃してしまいがちな外観の1つだが、私としては、これがダイヤル全体のデザインをまとめているのだと思っている。

 書体についてもう少し続けると、本機はデイト表示にも、他のデザイン要素と一致したフォントを選んでいる。時として、デイトウィンドウの中の数字の選択が、デザイン全体の一貫性を壊し、時計としてのまとまりを失わせてしまうこともある。しかし、本機では、そこが時計全体のヴィンテージ感を強化している。さらにブラックの背景とマッチする文字列が、ダイヤルの対称性を(少なくともある程度は)維持している。もちろん、本機は3が欠けているため、シンメトリーとはいえないが、率直に言って、私はこの手の腕時計にはデイト表示が付いているほうが良いと考えているため、これは良しとする。デイト表示に1つ不満があるとすれば、数字がフェイクパティーナっぽく見える点だ。白のほうが、より一貫性があるだろうに。 

 概して、現代の文脈では、パイロットウォッチは42mmかそれ以上の、大きなサイズが主流だった。近年、多くのブランドで、その傾向が少し緩和されている。実際、具体的にいうと、IWCのマーク XVIII、あるいはもっと新しいところでは、オートマティック・スピットファイアなどが思い浮かぶが、それらはいずれも39から40mmの範囲内にある。本機に触れていたとき、それらの腕時計と非常に似たものを感じた。それらはみな、同じ生地から裁断したもののように感じられ、特定のヴィンテージモデルに根差したものではなく、完璧に現代のサイズなのだ(他の部分に明確なヴィンテージ風の特徴はあるが)。ロンジン スピリットは、これら他の腕時計よりもさらに少しばかりモダンな空気を醸しているが、それは数字が立体であることに関係しているのだろうと思う。マットなダイヤルには、明らかにヴィンテージ的美しさがある一方で、立体の数字は、ほぼその真逆の効果を生み出している。 

 ダイヤルは、SS製リングによって効果的に2つの部分に分けられている。リングの内側には、アラビア数字、ロンジンのロゴ、針、デイト表示が見える。6時の真上には、5つの立体の星とクロノメーターの文字も見えるが、これについては後ほど紹介する。SS製リングの上に重なるのは白い菱形のマーカーで、アラビア数字の位置に揃えてある。それらは小さいが、マットブラックのダイヤル表面に対するコントラストを与えており、夜光塗料が施されている。小さいながらも、粋なディテールの追加だ。 

 ダイヤルの2番めの部分であるSS製リングの外側に移ると、前述のミニッツトラックがあり、分表示が5分おきに記され、長い刻みの印が残りの分を示している。各々の分刻みマークの間には、小さな刻みマークも付いている。こうしたダイヤルの特徴の全てが40mmのケースに収まり、ケースの大部分にはサテン仕上げが施され、ポリッシュ仕上げのベゼルには、段が設けられている。ケースはレトロなツールウォッチ的な様相で、程よく湾曲しており、それがダイヤルデザインに非常によく合っている。 

 時針と分針は長細い矢の形で、サンドブラスト仕上げが施してある。秒針は実は、本機のデザインの中で最も魅力的な特徴だ。針の先が鮮やかな赤で塗られ、それがまるでラッカー塗装でも施したような外観を与えている。この針が外周部にあるミニッツトラックの最も深いところまで届いているのだが、私が言及したいのは、この秒針の先の方についている菱形だ。この菱形は、前述した立体の菱形マーカーと同サイズ。秒針がダイヤル上をなぞっていくと、その先についている菱形が、SS製リング上の立体マーカーと同じ位置になるのだ。これは些細なディテールだが、時が経つにつれ、思いもよらぬ思いやりが感じられるというデザインをもった腕時計であることを物語っている。 

 直径40㎜の腕時計にしては、銘の入ったリューズが非常に大きい。タマネギに似た形で、ある角度から見るとそれがいっそうはっきりとする。白状すると、最初は時計本体のサイズと比較したリューズの大きさについては気付かなかった。だが、本機を少しずつ着けていくうちに、その特徴が次第にはっきりとし、終いにはその思いが消えなくなった。根元に向かって細くなっていく様子は、それを見ているとたまに、自分がリューズをしっかり下までねじ込んだかどうか、定かでなくなることがあるほどだった。私は別にこれを決定的な欠点だと言うつもりはなく、ただ指摘しておく価値はあるだろうというだけのことだ。これは本機が追及しているように見える、ヴィンテージ的理想を強化するものである一方で、私としては、もっと小さな従来のリューズデザインであっても、本機の全体的な外観を損なうことにはならないだろうと思うのだ。 

ADVERTISEMENT

 ロンジンが本機にSS製のソリッドバックを採用したことを、私は実に気に入っている。全体のツールウォッチ的雰囲気にマッチするからだ。裏蓋のデザインは、ブランドロゴが入った地球儀のエングレービングで、下にワードマークも入っている。裏蓋プレートの周囲には6つのネジも見え、これが裏蓋を時計本体にしっかりと取り付けているように見える。本機の最も価値ある特徴の1つは、裏蓋の奥にある。ロンジン スピリットの内部で脈打つのは、ロンジンのCal.L888.4だ。これはETA(ETA A31.L11、また、そのベースは2892-A2)をベースとした設計で、64時間のパワーリザーブとシリコン製ヒゲゼンマイを備えている。だが、もっと興味深いのは、このムーブメントがCOSC認証を受けている事実だ。20万円を少し上回る額の腕時計にしては、非常に良心的なお値打ち品だといえる。 

 この時計の発光具合は非常によく、もちろん、それは厚みあるアプライドの白い数字のおかげでもある(スーパールミノバが塗られている)。一般的に、パイロットウォッチやそれに近い腕時計において、夜光はあえて取り上げるほどのものではないか、あるいは特定のマーカーだけに施されていたりする。しかし、本機にでは全ての数字、全てのマーカー、全ての針に夜光塗料が施されているため、明るい場所でも、暗い場所でも、同じようにダイヤルを楽しむことができる。

 本機を腕に着けてみて、私は40mmというサイズを実に楽しめた。ラグに長さがあるため、手首の面全体を覆う感じにはなるが、だが、それも決して時計が着用できなくなるような覆い方ではない。非常にクラシックなケースサイズを維持しながらも、なぜかもっと大きなパイロットウォッチの重厚感を醸し出すのだ。ケースの厚みも問題にはならず、本機は様々な状況で着けることが可能だと感じる。私が手にとることのできたレザーストラップの他にも、本機にはSS製ブレスレットの選択肢もある。

 サファイアガラスは、ロンジンが言うところの“両面無反射反射防止コーティング”を特徴としている。反射防止コーティングに関する私個人の経験を言えば、反射を抑えはするが同時に、光と作用し合ったときに時計に紫っぽい光沢が出てしまうのだ。そして、やはりここでもそれが出る。リューズとデイト表示の他に、私が本機の全体を楽しむに当たってデザイン上で少し妨げになる点が、唯一この部分であった。おそらく数層から何層か引けば上手くいくのではないだろうか。

 ロンジン スピリット 40mmは、上手く作られたヴィンテージ風の腕時計だが、特定の古いモデルへのオマージュではない。そのため、既存のデザインとの繋がりはない。その結果として、フライトジャケット的な美学や伝統的なスタイルの魅力を損なうことなく、ふんだんにモダンな雰囲気を感じさせる腕時計となっている。当時の空の旅は私たちにとって過去のものとなり、ロマンや哀愁に満ちた気持ちを掻き立てるような当時のイメージは、もはや思い出の中にしかない。だが、本機のような腕時計は、過ぎ去った時代の器としての役目を果たしてくれる。そして、それこそがまさしく腕時計が果たすべき役割なのだ。

ロンジン スピリット 40mm。Ref.L3.810.4.53.0は、100m防水。直径40mm、ねじこみ式リューズ、SS製のソリッドバック。銘が入ったバックル付きレザーストラップ。自動巻きムーブメント:L888.4は、2万5200振動/時、パワーリザーブ64時間。マットブラックダイヤル、アプライドインデックス、針とインデックスにはスーパールミノバ。価格:24万8000円(税抜)。さらなる詳細は ロンジンの公式サイトをクリック。

写真:カシア・ミルトン