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Hands-On ロレックス オイスター パーペチュアルの“セレブレーションダイヤル”がパーティにやってきた

伝統的な時計製造を守るロレックスがまったく予想外の動きを見せた、新しいオイスター パーペチュアルデザイン。それこそがこの時計が素晴らしいといえる所以である。

Photos by James Stacey

毎年やってくるこの時期。春の訪れとともに、桜の花の香りに誘われるように、時計コレクターや業界関係者が冬眠から目覚める。そして展示会のシーズンに向けて、習慣的に互いに問いかける質問の準備をし始める。WWRD、すなわちロレックスは何を発表するのか?(What Will Rolex Do?)

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 この質問には、「いつもとやっていることが一緒だ(笑)」といった風にドライに答える。というのもロレックスのデザインプロセスの反復的性質についての陳腐なコメントであり、2021年に発表したパームモチーフのデイトジャストのような最近の数々の革新的なリリースを、都合よく無視したものである。2018年のレインボーデイトナとかもそうだ。あるいは、2007年のグリーンクリスタルのミルガウスは? それか1970年代のステラデイデイト? 水深1万1000mまで潜れるダイバーズウォッチ? はたまた隕石からつくられた文字盤を持つGMTとか?

 そう、ロレックスには保守的な一面もある。これは戦略を間違えて失うものが大きい80億ドル(日本円で約1兆614億1600万円)規模の企業である以上、当然といえば当然である。しかしその先行している保守的な主義は、絶え間ない革新性と並行して進んでいる。ロレックスの時計は、驚異的な技術的達成と大胆な美学を特徴とすることが少なくない。ブランドはこのどちらか一方だけであると主張することは、ストーリーの半分を意図的に無視するということである。

ロレックス オイスターパーペチュアルの“セレブレーションダイヤル”のリストショット

 実はロレックスについてどう感じるかは、エンドユーザーの声に頑なに耳を傾けないロレックスという会社についてというよりも、あなたについてを物語っているというのが真実だ。これはYelp(海外の大手口コミサイト)以後の時代では珍しいことであり、ほとんどの人が意見を言う権限を与えられ、それが企業の行動に有意義な変化をもたらすと期待しているのだ。ロレックスのプロダクトデザイン、販売戦略、価格設定について、コレクターは実にさまざまな思いを抱いている。しかし、かつてジョン・アップダイク(John Updike)がテッド・ウィリアムズ(Ted Williams)について書いたように、“神々は手紙に答えない”のである。

 我々はこのような環境のなかで、31mm、36mm、41mmの3つのサイズが揃い、ケースとブレスレットに光沢のあるステンレススティールを採用した時刻表示のみの腕時計、オイスター パーペチュアルの新作を迎えた。これはロレックスが2020年にパステルピンク、ハンターグリーン、コーラルレッド、マリーゴールドイエロー、ターコイズブルーからなる、キャンディカラーのOPコレクションを投下した際に発表したデザインテーマを継承したものだ。このシリーズは驚異的な人気を博し、オメガタグ・ホイヤーといった競合他社が相次いで、独自のバリエーションモデルを市場に投入するほどの影響力を与えた。あるいは単なる偶然だったのかもしれないが。ただパテック フィリップが、カラトラバに色を塗って参入してきたとなると、やはり気になってくる。

ロレックス オイスターパーペチュアルの“セレブレーションダイヤル”の平置きイメージ

 では皆が追随してきた今、ロレックスはどうするのだろうか? それは51個からなる円形のマスに、5つのオリジナルカラーを集約させた“セレブレーションダイヤル”と回答した。サイケデリックなバブルバスに似た演出も見受けられる。もしくはガラス瓶に入った小さなジョーブレーカー(海外にある色とりどりなキャンディ)とか。見た目はマクドナルドにあるボールプールに例えることもできそう。挙げた例えに共通しているのは、いずれも楽しいということだ。そして、この70万円ほどするおもちゃを幸運にも手首に巻けることができたなら、その楽しみは目まいがするように、子供みたいに楽しめるに違いない。それをリリースの数時間後に巻いてみたが、ロレックスの素敵な女性にもぎ取られそうになるまで、狂ったようにニヤニヤと笑っていた。

 写真で見る限り、このセレブレーションウォッチは色や柄が散りばめられていて、どんな服にも合わせにくそうな印象がある。実際には、たまたまネイビーのピンストライプのスーツにバーントオレンジのタートルネックと合わせて着ていたのだが、みんなに素敵だねと言われた。まあ明らかにノーと答えない男をなだめるために言ったのかもしれない。いずれにせよ、ジーンズでもオールブラックでもオールホワイトでも、問題ないだろう。もしくは何でもいい。考えすぎないように。

ロレックス オイスターパーペチュアルの“セレブレーションダイヤル”、31mm、36mm、41mmの3サイズ比較

 セレブレーションは、はっきり言って、デイリーユースには向かないモデルだ。明らかに非現実的なのだ。しかし高級機械式腕時計のように完全に自由に買い物するものは、実用性はほとんど必要ないと私は主張したい。こういうのは欲しいから買うのである。最近、木箱に入った虹色の柄のラギオールナイフを持ち帰ったのも同じ理由だ。すでに持っていた、つまらない黒が十分使えていたのにだ。美しさというのは、我々に非合理的な行動を取らせる。昔からそうだった。

 さて、この時計のサイズについて、少し触れておこう。コレクターのあいだでは36mmが最も理想とするサイズなのか、それか時計に関する記事を書くことを生業とするエセ評論家たちが好むサイズなのか、はたまた本物の男性はジムに籠って前腕を太くするために鍛えていて40mm以上のサイズを着用しているのかといった議論が盛んに繰り広げられる。しかし議論するほどバカげたことは思いつかないが、私は36のほうが好きで、少なくとも41をつける前に31を巻いてみることを検討するだろう、と言うだけで十分だろう。

ロレックス オイスターパーペチュアルの“セレブレーションダイヤル”のリストショット

Photo by Mark Kauzlarich 

 スペックの話をするついでに、ふたつの大きいモデルのムーブメントにはCal.3230が、ちいさなモデルにはCal.2232が、なかに納められていることについても、話しておく必要がありそうだ。ただこの時点で、間違いなくわかるかと思うが、このような時計のムーブメントは私が最も気にしていることである。もし私がセレブレーションダイヤルを所有していたら、約70時間のパワーリザーブと高性能ショックアブソーバを搭載していることを評価すると思う。つまり、週末のレイブ(ダンスパーティ)にこの時計を身につけて行っても、盛り上がっている最中にリューズを巻いたり、歯車にぶつけたりする心配をしなくていいのである。だが何より、大部分は見た目が好きなのだ。

 その見た目も好きだし、それが表しているのも好きだ。ロレックスができること、すべきこと、何をするのかわかっているつもりでいる人たち(賛成派も反対派も同じ)に対して、パイを投げつけるような存在になっているのがいい。これは正真正銘のサプライズだ。時計の世界にはこのようなアイテムがもっと必要だと思うし、さらにいえばほかの世界にも必要だ。だってバランスを崩すのは爽快だと思わないか? 生きていることを実感することは? 朝、ベッドから出る理由のひとつは、その日何が起こるかわからないからではないだろうか? 人生は完璧に予測できると思った矢先に、フロリダ・アトランティックがベスト4に進出し、ロレックスはパーティシーンにあるヘリウム風船のすぐ隣で売られているような腕時計を生み出したのだ。

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詳しくはロレックスの公式ウェブサイトをご覧ください。HODINKEE Shopでは様々なロレックスの中古腕時計を取り扱っており、こちらからコレクションをご覧いただけます。