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Hands-On ロレックス パーペチュアル 1908は、我々が待ち望んでいたドレッシーなロレックスかもしれない

さようならチェリーニ。そして新しいパーペチュアルコレクションと、パーペチュアル 1908に挨拶しよう。

Photos by Tiffany Wade

ここでまさかの展開があった。私の初めてのWatches & Wondersでの出合いで腕から離せなかったのは、まったく新しいドレッシーなロレックスだった。もちろんアップデートされたスポーツモデルも何度も腕に巻いている。そちらは別の記事でご期待いただきたい。しかし新しいロレックス パーペチュアル 1908は、ロレックスにとってここ数年で最高のドレッシーウォッチかもしれない。

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 まずパーペチュアル 1908とは何だろうか? 同コレクションは18Kイエローゴールドまたはホワイトゴールドのケースに、ブラックまたはホワイトの文字盤を組み合わせた4種類からなる新作だ。ただこれは、単に4本の新しい時計が出たというわけではない。 実はロレックスはこのパーペチュアル 1908で、新しいパーペチュアルコレクションを発表したのだ。プロフェッショナルモデルに対する、ロレックスのドレッシーな回答であり、そしてここ数年、ややないがしろにされていた感じだったチェリーニラインに取って代わるものでもある。そして今、その理由がわかった。もし今後、このファーストパーペチュアル 1908の未来に期待してもいいのであれば、我々はロレックスのまったく新しい側面を知ることができるかもしれない。

ロレックス パーペチュアル 1908コレクション

 パーペチュアル 1908 は、その文字盤によりすぐに目を引く存在だ。ロレックスはこのホワイトダイヤルを、“インテンスホワイト”と呼んでいる(日本ではホワイトのみの表記)。ブラックダイヤルにはそのような形容詞は付かないが、実際に見て驚くのは、実はマットなブラックだったということだ。ほかのロレックスのいくつかのモデル、例えば、今年の新型チタン製ヨットマスターの文字盤に見られたものと似ている。しかしドレスウォッチともなれば、ちょっと驚くだろう。本当に、ドレッシーな時計というのはあまり注目を集めるものではない。スリムでスマートでエレガントであるべきで(さらに純粋主義者であれば複雑機構もなく、ゴールド製であることも求められる)、マットなブラックは人の心に呼びかけるものではない。ある光や角度によっては、少しグレーにも見えるだろう。

 一方、ホワイトダイヤルにはわずかにシボ加工が施されており、ほんの少し質感があるように感じられる。両モデルともほぼ同じ時間、つまりロレックスとの1時間の打ち合わせのあいだ1人30分程度着用したのだが、私はブラックとYGの組み合わせがいちばん気に入った。この結果は、ゴールドのなかでも、ホワイトメタルが最もエレガントなイメージがあると思っていた私にとって驚きだった(ロレックスはプラチナのことを、最も崇高な金属と呼んでいるが)。確かにWGとブラックは、1908のような品格のあるものを身につけるために、トム・フォードのタキシードにばかげた金額をかけてでも出かけたいと思わせる組み合わせだ。しかしYGのロレックスにブラックのダイヤルは、まるで混沌とした世界に秩序をもたらしてくれるような気がする。漆黒のオニキスダイヤルを持つヴィンテージデイデイトが好きなため、それを連想させるような感じだ。囁くと同時に叫ぶような、YGのロレックスにしかできない主張をしているのだ。

ロレックス パーペチュアル 1908コレクション、YGにブラックダイヤル
ロレックス パーペチュアル 1908コレクション、WGにブラックダイヤル
ロレックス パーペチュアル 1908コレクション、YGにホワイトダイヤル

 ロレックスによれば、1908の文字盤は1931年に発見されたヴィンテージモデルをベースにしているとのことだが、おそらくこのモデルのようなものだろうか? そしてそれをうまく見せつつ、見事にアップデートしている。12・3・9のインデックスにはアール・デコのようなモダンなサンセリフフォントが配置され、6時位置のインダイヤルは、より華やかなフォントによって完全に補っている。天文台スタイルの時針もまた、当時を感じさせるものだ。ところで1908年というのは、ハンス・ウィルスドルフがロレックスという言葉を商標登録した年にちなんだものであり、ブランド、特にロレックスのようなブランドは、商標なくしては成り立たないものだ(詳しくはジャン-クロード・ビバーに聞いて欲しい)

 そろそろ1908の39mmケースについて話しておこう。なんだか古いチェリーニのケースに似ているように思うが、きちんとアップデートを果たしている(特にサファイアクリスタルのシースルーバックが特徴的だろう)。スリムなケースにはドームとフルーテッドを組み合わせたベゼルを搭載。私のように、日常的にフルーテッドベゼルを使う自信がない? そんなあなたは運がいい。ドレスアップはしているが、決して大胆ではない。ケースはポリッシュ仕上げで、ロレックスから詳しいサイズは聞き出せなかったが割と薄め(9mmくらい?)で、手首にフィットするスリムなデザインだった。ラグからラグまでの長さは、私が部屋に入ったときに身につけていたブラックベイ 58(同じく39mmで、こちらのラグからラグまでは47mm)よりかは、明らかに小さかった。

ロレックス パーペチュアル 1908コレクション、ブラックダイヤルのアップ

 私はドレスウォッチの小振り化の必要性を口すっぱくして言っているのだが、正直に言ってこのケースの大きさはまったく気にならなかった。1mm、2mm、3mmと削っていけば、もっと好きになれたのだろうか? でもロレックスがそうしないのには多くの理由があり、そしてその多くは商業的な理由があることは理解しているつもりだ。自身の手首のサイズは6.3インチ(約16cm)と小さめだが、エアコンが効いたジュネーブのパレクスポ会場では6.5インチ(約16.5cm)かもしれない。パーペチュアル 1908は50m防水で、アリゲーターストラップの時計としては十分すぎるほどの防水性能を持っている。

 1908のムーブメントもよく見てみる必要があるだろう。そして今回ロレックスは初の試みとして、新しい自動巻きCal.7140を、サファイアクリスタルのシースルーバックから見せるようにした。これはロレックスが、プラチナの新型デイトナでも行っていることで、ムーブメントに施された、ロレックス コート・ド・ジュネーブと呼ばれる仕上げを喜んでアピールしていることがわかる。ロレックスCal.7140は、ロレックスのシリコン製ヒゲゼンマイであるシロキシを採用しており、これまでは31mmのデイトジャストのような小さいモデルにしか採用していなかったパーツである。以前ダニーが紹介したように、ロレックスが2種類のヒゲゼンマイを使用したモデルを継続してつくり続けていることは注目に値するが、今日、我々は初めて39mmという大振りな時計に搭載されたシロキシを見ることが叶ったのだ。そしてロレックスがクロナジー エスケープメントにシロキシ製のヒゲゼンマイを組み合わせるのは初めてのことである。そのほか、Cal.7140の特筆すべき点は、高精度クロノメーター、約66時間のパワーリザーブ、ゴールドでできた自動巻きローターなど、ロレックスが求められるすべてを備えている。

ロレックス パーペチュアル 1908コレクションのCal.7140

 パーペチュアル 1908を腕に巻いた瞬間に感じるもうひとつのディテールを正直にお伝えすると、それ以外では考えられないかもしれないのだが、セットされているアリゲーターストラップにはロレックスの二重折り畳み式デュアルクラスプ(バタフライクラスプのようなものだ)を採用しており、標準的なシングルロッククラスプよりも少し手首にフィットするようなデザインだった。しかし今となっては、精密工学に基づいたロレックスのクールエイドを少し飲みすぎてしまった(盲信して無批判に従ってしまう意図)かもしれない! ストラップの内側はグリーンで、これも“ロレックスはロレックスである”というシンプルな工夫だ。だが私ならもっとカジュアルなストラップにこれをつけて、どこにでも、どんなものにも合わせられるようにしたいと思う。

 パーペチュアル 1908は、YG製が261万9100円、WG製が276万8700円(ともに税込)で、10月から販売を開始する予定とのことだ。最初のドレッシーなロレックスとしては妥当なところだろう。パテックの新しいカラトラバ 6007G(税込で509万3000円)や6119(同じく税込で430万1000円)よりはずっと手ごろだが、ジャガー・ルクルトのようなブランドの同等の高級ラインよりかは高い。まあロレックスだからだろう。この価格は、1908をA.ランゲ&ゾーネのサクソニアと同程度に位置づけるものである。ハンドエングレービングのテンプ受けを好むユーザーもいれば、文字盤の名前に注目するユーザーもいるということだ。どちらが正しいとか間違っているとか、そういうことではない。

ロレックス パーペチュアル 1908コレクション、YGケースのサイド

 24時間前、ロレックスのなかで最初に執筆する時計が、ブランドのまったく新しいドレッシーな時計コレクションの先駆けとなる、新しいドレスウォッチであるとは想像していなかっただろう。しかしそれこそが、新しいパーペチュアル 1908の魅力を物語っているとも思う。1908だけではなく今日のWatches & Wondersでは、ロレックス、チューダー、IWC、そしてランゲ(それにしてもこのランゲはとんでもないスポーツウォッチだった)と、ひと握りのブランドのスポーツウォッチをたくさん見て回って紹介した。そして、その多くは素晴らしいものだ! しかし、究極のスポーツウォッチメーカーであり、プロフェッショナルウォッチと呼ばれるロレックスが、その無限の資源を、真新しいドレスアップウォッチの新しいラインに注ぎ込み、それを見事に成功させている。2023年のロレックス サブマリーナーが、1953年の初代ロレックス サブマリーナーから一貫した進化を感じるのと同じように、新しいパーペチュアル 1908コレクションは、そのあいだに何年も飛ばしてしまったとしても、ロレックスのドレスコレクションのあるべき姿を現代的に表現しているように感じる。復刻しただけではなく、昔からある時計を、現代風にアレンジを加えているのだ。

ロレックス パーペチュアル 1908コレクション、WG&ブラックダイヤルのリストショット

 ロレックスはこれをパーペチュアル 1908と名付けたが、実際には1931年に登場した時計からインスピレーションを得ている。1930年代から1950年代にかけてのこの時代は、ロレックスが本領を発揮した時代といえるのだろう。まずオイスターケース、そして初の自動巻きムーブメントの登場。やがてロレックスの時計はエベレストのクライマーや海のダイバーに仲間入りする。しかしこれらの時計は、現代にあるロレックスの時計の多くがそうでないように、繊細でエレガントなものだったのは確かだ。新しい1908でロレックスはこのヘリテージを、ここ数年見たことがないような形で捉えた。そしてそれが、私の心を掴んで離さない理由なのだ。

 パーペチュアル 1908の詳細については、ロレックス公式ウェブサイトをご覧ください。